聖マリアンナ医科大学雑誌
Online ISSN : 2189-0285
Print ISSN : 0387-2289
ISSN-L : 0387-2289
47 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • 佐々木 貴浩, 古畑 智久, 臼井 創大, 小野 龍宣, 野田 顕義, 宮島 伸宜, 大坪 毅人
    2019 年47 巻2 号 p. 59-64
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/28
    ジャーナル フリー

    目的:当院での上部消化管穿孔手術で,腹腔鏡下手術と開腹手術を比較し,問題点について検討した。
    対象及び方法:過去,当院で施行した上部消化管穿孔手術は44例で,腹腔鏡下手術(Lap群)38例,開腹手術(Open群)6例を対象とし,検討項目は患者背景因子,周術期因子を検討した。
    結果:Open群で,平均年齢が76.8 (42–91) 歳と有意に高く (P=0.001),大開腹既往が4例と有意に多かった (P=0.0005)。手術時間,出血量,術後在院日数,合併症に有意差は認めなかった。平均洗浄量は,Lap群が5,060 (2,000–20,000) mlと有意に少なかった (P<0.001)。また技術認定医の手術参加はLap群38例と有意に多かった (P=0.001) が,Open群では,高齢ではなく手術既往がないにもかかわらず技術認定医が不在のため,開腹術を選択した症例を認めた。
    結論:手術方法の選択では,高齢者で大開腹既往がある場合は開腹手術を選択することが多かったが,今後,全身状態に問題がない症例については,積極的に腹腔鏡下手術を考慮にいれる必要があると考える。

  • 山徳 雅人, 杤本 しのぶ, 西山 真衣, 眞木 二葉, 長谷川 泰弘
    2019 年47 巻2 号 p. 65-71
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/28
    ジャーナル フリー

    目的】皮質性小脳萎縮症(以下CCA)における嚥下機能の罹病期間による違いについて検討した。
    材料および方法】2008年6月〜2013年3月までに当院にて嚥下造影検査(以下VF)を施行したCCA 45例を罹病期間,International Cooperative Ataxia Rating Scale(以下ICARS)の合計点,検査時の食形態,誤嚥性肺炎既往の有無を診療記録より後方視的に調査し,VFまでの平均罹病期間が約10年であったことから,症状出現からVF施行までが10年以下(早期群)と10年以上(後期群)に分類した。またVF所見(水分10 mlと米飯)にて,誤嚥・喉頭侵入の有無,口腔通過時間(OTT),咽頭通過時間(PTT),咽頭遅延時間(PDT),米飯の口腔・喉頭蓋谷・梨状窩残留を調べた。統計はStudent t検定,Mann-WhitneyのU検定,Fisherの正確確率検定を用いた。
    結果】早期群:25例(罹病期間7.2年,常食25例),後期群:20例(罹病期間15.3年,常食16例・全粥食4例)で,全例誤嚥性肺炎の既往はなかった。VF所見における各位相の時間は,米飯にて後期群で全て延長していた。食塊残留割合は,後期群で喉頭蓋谷,梨状窩の残留が有意に多かった。
    考察】CCAにおいては,発症10年以上経過しても常食を継続されている症例が多いが,位相時間が延長し咽頭残留を有意に認めた。このことから食形態の質は維持しながらも嚥下機能低下への留意は必要と思われた。

症例報告
  • 塚原 歩, 慶野 大, 須藤 明希菜, 新井 奈津子, 宇田川 紀子, 森 鉄也, 山本 仁
    2019 年47 巻2 号 p. 73-78
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/28
    ジャーナル フリー

    ビタミン (Vit) B12は主に動物性食品に含まれており,DNA合成,赤血球造血,神経機能の維持に必須となる水溶性Vitである。VitB12は健常母体から出生した乳児においては在胎中に肝臓で貯蔵されるため,VitB12欠乏性巨芽球性貧血は,小児期発症は稀であるが,貧血以外に精神運動発達遅滞を認めることがある。今回,われわれは発達遅滞を契機に診断したVitB12欠乏性巨赤芽球性貧血の乳児例を経験したので報告する。症例は10か月女児で,“笑わない”と発達遅滞を主訴に受診した。初診時まで離乳食は進まず,母乳栄養。母は外国人で菜食主義であった。血液検査で大球性貧血と汎血球減少,骨髄検査で巨赤芽球の出現を認めた。血清VitB12が低値であり,VitB12欠乏性巨芽球性貧血と診断し,経口VitB12製剤の内服を開始したところ汎血球減少の改善を認めたが,軽度精神発達遅滞が残存している。発達遅滞の原因の鑑別にVitB12欠乏を挙げる必要があり,菜食主義者の出産・母乳育児の際はVitB12摂取の必要性を啓発する必要があると考えられた。

  • 小林 城太郎
    2019 年47 巻2 号 p. 79-83
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/28
    ジャーナル フリー

    76歳男性に生じた径55 mmの腹部大動脈瘤に対しY字型人工血管(ゼルソフト)による腹部大動脈瘤置換術を施行した。術後経過は順調であり,術後5年目の腹部CT検査で特に異常を認めなかったが,その後当科を受診しなくなった。術後7年8カ月時に他院での腹部CT検査によって巨大な人工血管周囲Seromaと右水腎症を認められて当科に紹介された。人工血管の再置換(トリプレックス)を施行し,術後Seromaは消失して右水腎症も軽快した。切除した人工血管の構造に破綻はなかったが,全長にわたって血管壁の組織化がほとんど見られなかった。人工血管移植後数年に及ぶ遠隔期でのSeroma発生は他にもわずかながら報告があり,術後の経過観察を長期にわたって継続することが重要だと考えられた。

feedback
Top