脊椎転移に対する体幹部定位照射とは,厳重な固定と画像誘導下に行うピンポイント照射技術と強度変調放射線治療技術を組み合わせて,脊髄の線量を低減しつつ,脊椎転移に対し脊髄の耐容線量を超える高線量を照射する技術である。日本でも2020年4月に保険承認された。
有痛性脊椎転移に対する検証的ランダム化比較試験にて通常照射に対する体幹部定位照射の優越性が報告された。今後有痛性脊椎転移に対して体幹部定位照射が標準治療となるものと思われるが,脊椎体幹部定位照射は決して容易な治療ではなく,質の低い治療を行うと重篤な有害事象をきたしかねない。また,脊椎体幹部定位照射では通常照射と比較して治療計画および照射実施に要する労力は桁違いであり,膨大な数の有痛性脊椎転移患者に対し遅滞なく体幹部定位照射を施行するためのマンパワーの確保も重要な課題である。
複数の探索的ランダム化比較試験にてオリゴメタスタシスに対し局所療法を行うことで生存期間が延長する可能性が示唆されており,現在多数の検証的ランダム化比較試験が行われている。オリゴメタスタシスに対する局所療法においては体幹部定位照射が中心的役割を担う。とくに脊椎転移において手術は高侵襲であり,体幹部定位照射が重要となる。
再照射,脊髄圧迫,有痛性非脊椎転移に対しても,体幹部定位照射を用いた治療開発が試みられている。
2020年4月に脊椎転移に対する体幹部定位照射 (Stereotactic Body Radiation Therapy: SBRT) の保険適応が承認された。骨転移に対するSBRTの位置づけ,期待される役割に関して概説する。
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