聖マリアンナ医科大学雑誌
Online ISSN : 2189-0285
Print ISSN : 0387-2289
ISSN-L : 0387-2289
48 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • 佐々木 信幸
    2021 年 48 巻 4 号 p. 177-182
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/12
    ジャーナル フリー

    非侵襲的に脳神経活動性を変化させる反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)は,脳卒中症状のより本質的な改善を目指す新たなリハビリテーション治療的技術として,近年著しい発展を遂げている。慢性期においては,半球間抑制のバランスを正常化させるニューロモジュレーションを行うことで上肢麻痺が改善することが知られているが,急性期においては,それに加えて病巣の進展自体を妨げるニューロプロテクション効果があることも示されている。
    特に急性期では下肢機能の改善に対する需要が高い。下肢は同側性支配率の高い近位帯が機能において重要な役割を果たすため,両側の下肢運動野を共に賦活するような手法も有効である。またリハビリテーション治療自体への参加が不良な自発性低下を示すような場合には,内側前頭前皮質から背側前帯状回を賦活するrTMSが有効である。急性期脳卒中に対するrTMSは,改善にかかる時間を短縮するというよりも,最終的な改善度自体を高める可能性が示されている。安全かつ有効な補助的治療手段と考えられる。

  • 中村 直樹, 岡田 幸法, 宮下 久之, 篠崎 美緒, 小林 真梨子
    2021 年 48 巻 4 号 p. 183-189
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/12
    ジャーナル フリー

    脊椎転移に対する体幹部定位照射とは,厳重な固定と画像誘導下に行うピンポイント照射技術と強度変調放射線治療技術を組み合わせて,脊髄の線量を低減しつつ,脊椎転移に対し脊髄の耐容線量を超える高線量を照射する技術である。日本でも2020年4月に保険承認された。
    有痛性脊椎転移に対する検証的ランダム化比較試験にて通常照射に対する体幹部定位照射の優越性が報告された。今後有痛性脊椎転移に対して体幹部定位照射が標準治療となるものと思われるが,脊椎体幹部定位照射は決して容易な治療ではなく,質の低い治療を行うと重篤な有害事象をきたしかねない。また,脊椎体幹部定位照射では通常照射と比較して治療計画および照射実施に要する労力は桁違いであり,膨大な数の有痛性脊椎転移患者に対し遅滞なく体幹部定位照射を施行するためのマンパワーの確保も重要な課題である。
    複数の探索的ランダム化比較試験にてオリゴメタスタシスに対し局所療法を行うことで生存期間が延長する可能性が示唆されており,現在多数の検証的ランダム化比較試験が行われている。オリゴメタスタシスに対する局所療法においては体幹部定位照射が中心的役割を担う。とくに脊椎転移において手術は高侵襲であり,体幹部定位照射が重要となる。
    再照射,脊髄圧迫,有痛性非脊椎転移に対しても,体幹部定位照射を用いた治療開発が試みられている。
    2020年4月に脊椎転移に対する体幹部定位照射 (Stereotactic Body Radiation Therapy: SBRT) の保険適応が承認された。骨転移に対するSBRTの位置づけ,期待される役割に関して概説する。

原著
  • 小西 公子, 芳賀 俊明, 袖長 光知穂, 蜂須 貢, 笠貫 浩史, 古茶 大樹
    2021 年 48 巻 4 号 p. 191-196
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/12
    ジャーナル フリー

    近年関心が高まっている多剤服用による認知機能低下やフレイルなどは血中抗コリン活性の上昇が原因と考えられており,高齢者の身体的・精神的機能低下を促進する可能性がある。しかし抗コリン活性を測定する手段がなく,薬剤因性認知症を検証することが困難であった。
    1980年にTuneらは血中抗コリン活性を測定する手段としてラット前脳膜画分への [3H]-quinuclidinyl benzylate ([3H]-QNB) 結合阻害活性測定法を開発した。
    しかし,この方法は研究者によるデータのバラツキが大きかった。そこでNobregaらはラット前脳膜画分の代わりにムスカリンサブタイプ(M1)受容体を発現させた培養細胞を用いた方法を確立した。しかし,その方法は測定に時間がかかり,危険性を伴う放射性廃棄物を大量に排出する方法であった。
    そこでSAAを効率よくかつ迅速に正確な測定法を確立することを目的とした。
    本研究では,液体シンチレータを固形シンチレータに変更した。
    その結果放射性廃棄物は液体が80分の1,固体が60分の1に削減でき,測定時間も20分の1に短縮でき,測定コストも30分の1となった。
    今後この方法を使用することで効率よく薬剤性認知症患者の診断に活用,および認知症患者の薬物適正使用に役立つと思われる。

  • 黄 世捷, 伊佐早 健司, 望月 篤, 伊野 美幸, 明石 嘉浩, 信岡 祐彦
    2021 年 48 巻 4 号 p. 197-210
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/12
    ジャーナル フリー

    医学部における卒前の臨床実習で求められる医療面接技能,プレゼンテーション技能,臨床推論能力の養成のため,ICT (Information and Communication Technology) を利用した実践型Problem-Based Learning (ePBL; electronic PBL) を2019年に導入した。
    ePBLでは,グループ内の学生全員が各自のデバイスから同時に課題スライドに記入し,症例に関するプロダクトの共同作成を行った。患者情報の一部(医療面接・神経所見・心雑音など)を動画・音声で提示することで,視覚・聴覚情報から,分析・言語化する課題を設けた。また医療面接で聴取すべき項目や行うべき身体診察を列挙するだけでなく,実際の医療面接・診察手技のロールプレイの撮影を課題とした。ICTを利用することで,実践的なPBLを最小限の教員配置で実現可能となった。2020年の新型コロナウィルス感染症の流行(以下,コロナ禍)により,全員が自宅からの遠隔グループワークとなったため,模擬診察など一部のロールプレイや動画撮影が困難であったが,ePBL形式やICTを活用した動画視聴課題やチューターレス運用に関して学生から高い評価が得られた。本邦における医学教育の課題を解決しうる新たな教育手法として,導入の経過から今後の課題に関して検討した。

学会・講演抄録
feedback
Top