日本ハイパーサーミア学会誌
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18 巻, 4 号
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  • 発症予防と治療の新しい視点
    畑中 正一
    2002 年 18 巻 4 号 p. 181-189
    発行日: 2002/12/01
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル フリー
    レトロウイルスやC型肝炎ウイルスでは持続感染が成立する.その結果発病にいたるが, ハイパーサーミアによってこの持続感染を絶つことが出来る可能性がある.
    ハイパーサーミアはウイルスによってはその感染価を低下もしくは消失させることが出来る. レトロウィルスのHTLV-1は成人丁細胞白血病 (ATL) や中枢神経のミエロパシー (HAM) を来たす病因ウイルスであるが, in vitroでは37度c以上で感染能を著しく低下させることが知られている. C型肝炎ウイルス : HCV) ではE1, E2の熱感受性, インターフェロンに対するNS5Aの熱変化などを確かめる必要がある.
    ハイパーサーミアのさらに重要な視点は宿主の免疫系の活性化にある. とくにtoll-like receptor (TLR) を中心とする自然免疫 (innateimmunity) の活性化が著しい. インターフェロン, サイトカイン, リンフォカインなどがTLR, ILIRからのシグナル伝達により, おもに転写因子のNFkBを介して誘導され, マクロファージ, 樹状細胞 (肝臓ではクッパー細胞), NK細胞, NKT細胞,頼粒球,補体などが活性化されて末梢血中に至るまで増加する. さらに自然免疫に橋渡しされて獲得免疫 (acquired immunity) の再上昇 (booster) を促すことになる. こうしてハイパーサーミアによって誘導された免疫能の亢進がウイルスの感染細胞のアポートシス (apoptosis) をもたらす. その結果, ウイルスが増殖できなくなり, うまく行けば持続感染が完全に絶たれることになる.
    ハイパーサーミアによる宿主内のウイルス量の低下は少なくともキャリアから発病の遅延が期待出来る. さらに持続感染が絶たれれば, ウイルス感染症の発症が阻止されることになる.
    HTLV-1のキャリアは現在日本で100万人存在している. ハイパーサーミアによって致死的疾患で有効な治療法がないATLやHAMの発症を予防する新しい視点が求められている. 同じ事はHCVのキャリアにも言えることである.
  • 新海 政重, 上野 健吾, 本多 裕之, 小林 猛
    2002 年 18 巻 4 号 p. 191-198
    発行日: 2002/12/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    針状成形マグネタイトを開発し, 細胞内温熱療法における加温材として使用した.雌のF344ラットの大腿部皮下に移植されたグリオーマ固形組織に対する温熱療法の効果を検討した.針状成形マグネタイトを皮下腫瘍に挿入し, 118kHz, 384 Oeの交番磁場を照射した.ラットは照射を行わなかった対照群と3回照射された治療群とに分けられ, 腫瘍成長に対する温熱療法の効果を評価した.腫瘍の完全退縮は, 治療群の75%で観察された.組織学的観察の結果, 針状成形マグネタイトは, 対照群では挿入されたポイントのまわりにのみ存在していた.一方, 治療群の場合, 磁性微粒子が広範囲に拡がり, ほとんど腫瘍組織全体にわたって壊死細胞が観察された.マグネタイト微粒子は腫瘍の退縮と共に血流によって除去された.そのため, ラット大腿部から針状成形マグネタイトを取り出す必要はなかった.さらに, マグネタイト微粒子の注入時間がマグネタイトカチオニックリポソーム (MCL) の場合, 注入時の逆流を防ぐために少なくとも120分かかるのに対し, 2本の針状成形マグネタイトを腫瘍に挿入する時間はわずか3分だった.これらの結果は, 針状成形マグネタイトが温熱療法用の微粒子状発熱体を注入するための単純かつ効果的な方法であることを示唆している.
  • 黒崎 弘正, 丸野 広大, 宇木 章喜, 岡崎 篤
    2002 年 18 巻 4 号 p. 199-205
    発行日: 2002/12/01
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル フリー
    FDG-PETは生体組織の糖代謝を画像化することができるので, 癌の効果判定に有用と考えられている.今回, 放射線温熱療法を行なった3腫瘍についてFDG-PETで効果判定を行なった.3腫瘍とも放射線温熱療法後もFDGの取り込みが認められ, いずれも局所制御できなかった.集積の消失が認められない場合にFDG-PETは腫瘍効果判定において重要な役割を持つと考えられる.
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