Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene
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9 巻, 3-4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 堀 清記, 辻田 純三, 黛 誠, 田中 信雄
    1981 年 9 巻 3-4 号 p. 151-159
    発行日: 1981/12/15
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    海抜1500m-1800mに住んでいるパプアニューギニア高地人の成人男子11名と西宮市在住の日本人成人男子11名について, 身体計測と運動中の発汗反応の測定を行った。パプアニューギニア人の測定は8月に, 日本人の測定は9月に行った。発汗反応の測定は25℃の室内で午後3時より開始した。仕事量45okg・m/minの自転車労作計を用いたペダル踏み運動を20分間行わせ, 背部の局所発汗速度と汗のNa濃度を発汗カプセル源紙法で測定した。パプアニューギニア高地人は日本人と比較して, 身長が低く, 体重は軽く, 皮下脂肪厚が薄く, 体脂肪含有量が少なかった。これらの差はいずれも統計学的に有意であった。パプアニューギニア高地人のローレル指数および比胸囲は日本人のそれらより有意に大きかった。パプアニューギニア高地人の局所発汗速度は日本人のそれより可なり低く, 又前者の汗のNa濃度は日本人のそれより有意に低かった。パプアニューギニア高地人の身体的特徴および彼等の発汗反応が日本人のそれと異なっているのは, 彼等が日本人より高温環境によく馴化したことによると思われる。
  • 古谷 正人, 岡 三希生, 伊藤 義博, 岡 好万, 尾崎 文雄
    1981 年 9 巻 3-4 号 p. 161-165
    発行日: 1981/12/15
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    Trypanosoma gambienseに対するマウスの感染防御機構の解明を図る目的で, 同原虫由来マイクロソーム画分を抗原としてFreund's complete adjuvantと共に免疫した。免疫後3~21日にわたり経日的に得た免疫マウスの脾細胞あるいは抗血清を正常マウスに伝達し, 同原虫感染に対する抵抗性を観察した。
    免疫3あるいは5日目の脾細胞を移入したマウスのみ50個の原虫攻撃に対して特異抵抗性を示した。この抵抗性は脾細胞移入直後の硫酸デキストラン500による処理で消滅した。
    抗血清の受身伝達では, 免疫7日目の血清に非常に強い抵抗性付与能が認められた。また免疫5, 14, 及び21日目の血清を受身伝達したマウスの約1/3は3×103個の原虫攻撃に抵抗したが, 免疫3日目の血清にはこれらの効果は認あられなかった。
  • 戸田 正夫, 石崎 達, 高岡 正敏
    1981 年 9 巻 3-4 号 p. 167-173
    発行日: 1981/12/15
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    A male patient of 21 of age was infected with Plasmodium falciparum resisted to chloroquine during his stay in Parawan Island, Philippines.
    Typical fever attacks occurred just after coming back to Japan and he was hospitalized. The patient turned to worse within a few days due to high fever attacks and acute increase of parasitemia even by oral administration of chloroquine, and then he was treated with quinine intravenously as well as orally, in combination with pyrimethamine and sulfamono-methoxine, which resulted to establish complete cure of this patient.
    Among his clinical course, such findings were positive in high grades as leucopenia, thrombocytopenia, prolongation of prothrombin time, decrease of fibrinogen, antithrombin III and fibrin degradation products (FDP) in blood. Highly activation of SK plasmin was also recognized.
    Thcse findings were resembled with DIC syndrcm even though withcut actualization in this catient. Food trrmfusicn, rrecTieatie n of corticosteroid ard hecarin were very useful for recovery from those situation.
  • 伊藤 守, 牧村 進, 鈴木 直義
    1981 年 9 巻 3-4 号 p. 175-185
    発行日: 1981/12/15
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    実験的Babesia gibsoni感染犬における脾臓細胞培養上清, リンホカインの好中球および単球走化性因子について基礎的検討をおこない, 以下の所見を得た。
    1) 犬好中球走化性の測定にはアガロース・プレート法を用いて犬末梢血液白血球数, 約2.5×105/well, 10%非動化犬血清含有アガロース・プレートにて2時間の培養条件が最適であった。
    2) 犬好中球走化性は, バベシア感染後3週のリンホカインおよび感染後3日の末梢血液リンパ球培養上清中に認あられた。
    3) 単球走化性はバベシア感染後3週および慢性期のリンホカイン, ならびに感染後7日以降の末梢血液リンパ球培養上清中に認あられた。
    以上のことから, 犬ピロプラズマ感染に伴って, 白血球走化性因子は感染犬の脾臓細胞および末梢リンパ球培養上清中に出現することが明らかになった。
  • 高岡 宏行, KIM M. HANSEN, 高橋 弘, JOSE O. OCHOA, ELFEGO L. JUAREZ
    1981 年 9 巻 3-4 号 p. 187-197
    発行日: 1981/12/15
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    中米グァテマラの標高の異なる5地点 (350-1,500m) に設置した百葉箱内でOnchocerca voloulusミクロフィラリア保有者から吸血させた媒介ブユSimulium ochraceumを飼育し, その後のo.v.幼虫の発育と同時に設置した自記温度計より算出された有効温量との関係を調べた。標高350mのEscuintlaでは有効温量から4日目に第3期幼虫の出現が予測されたが第6日, 7日目に死亡したブユ雌でもまだ第2期後期幼虫しか見られなかった。一方, 標高650mのMária Santísimaではほぼ有効温量から推測されるとおりに第8日目に第3期幼虫への発育が観察された。ここより標高の高い3地点 (1,200m, 1,250m, 1,500m) では, 各々15日, 25日, 25-28日目に第3期までの幼虫発育が予測されたが飼育したブユの大半がこれらの期間内に死亡したことにより十分な観察を行いえなかった。これら3地点では, 飼育開始後7-13日の間に死亡したブユ体内で見出された幼虫はまだ第1期後期までしか発育していなかった。しかしながら標高1,500mのGuatemala市において飼育開始後16日目に死亡した1個体のブユから第2期後期まで発育した幼虫が見出されたことから, 標高の高い場所でも非常にゆっくりとではあるがo.v.幼虫の第3期までの発育は可能であることが示唆された。
  • 加茂 甫, 山根 洋右, 川島 健治郎
    1981 年 9 巻 3-4 号 p. 199-205
    発行日: 1981/12/15
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    福岡市在住の男子船員 (当時57歳) から, 1969年12月に自然排出された, 裂頭条虫と思われる虫体が同定のたあ送られてきた。虫体は頭節を有する完全な標本であったが, 小柄 (約600mm) で, 肉厚の, ずんぐりした黄褐色の外観を呈し, 一見してこれまで人体寄生種として知られている裂頭条虫とは異なるもののように思われた。著者らはこれを, 人体寄生裂頭条虫のさらに新しい海洋種として, 特徴の概要をとりあえず学会に報告しておいたが (加茂ら, 1978), このたびDiphyllobothriumcameroni Rausch, 1969として同定を確定し, 和名としてカメロン裂頭条虫を提唱した。本種はミッドウェー諸島近海で捕獲されたタイヘイヨウモンクアザラシ (Monachus schauinslandi) から得られた標本に基づいて、Rausch (1969) が命名記載した種類である。人体から得られた標本は, 形態的特徴が極めてよくRausch (1969) の記述に一致し, とくに子宮孔が生殖孔の後壁に開口する点が他種に見られない特徴である。貯精嚢や虫卵などの計測値が人体排出標本で全般的に大きいのは, アザラシの腸管にくらべて広大な人の腸管内で, 大きく成長できたことによる差異であろうと思われる。走査電顕による卵穀表面像は, 深い点刻が密に分布し, 点刻間の面がきあ粗い性状を示し, Hilliard (1972) のいう海洋性の特徴を認あた。これはカメロン裂頭条虫の人体から見出された最初の例であるが, 恐らく偶発的なものであろう。感染源は人間とタイヘイヨウモンクアザラシとの共通の食物となっている海産の魚類であろうと思われるが, まったく不明である。
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