県立秋田図書館や県立山口図書館の館長として,日本の近代公共図書館発展の礎を築いた佐野友三郎は,図書館界に身を投じる前の1895年から1899年までの約5年間,草創期の台湾総督府に勤務していた。本稿では佐野が総督府の開設要員として台湾に渡り,幹部官僚として初期総督府行政を担っていたことを台湾総督府文書などからたどる。また総督府時代の経験が,その後の彼の人生に大きな影響を与えたとみられることを検証する。
テクノロジー時代において,施設空間としての図書館の「場」の価値は,図書館の今後の発展に関わる重要なテーマである。このため,市民の認識から図書館の「場」としての価値を調査することは,今後の図書館事業発展の要素を明らかにする上で重要である。全体的な概要把握と傾向分析をするにあたり,公共図書館3館(上海図書館,浦東図書館,浜海新区図書館)のウェブコメント情報を選び,Python,Jieba分詞,SnowNLPからデータ収集と分析ツールなどを活用することで,高頻度単語の分布,感情分析,時系列変化の3つの側面から市民の認知に関するテキスト分析を実施した。結果として,公共図書館は依然として市民の読書にとって重要な「場」であること,公共図書館のサービスは非常に好まれ社会的評価も大変肯定的であったことが分かった。また,文化と観光の融合発展を促すことも,市民が公共図書館に対して抱く特徴的なイメージであることがわかった。テクノロジー時代において,公共図書館は「場」の価値について社会認識の変化に大きな注意を払うべきであり,文化と観光の融合を今後の重要テーマとして捉えることで,図書館の質的発展を促進することができると考える。
メタバースとは,複数の新技術の統合によって生み出される,仮想と現実を融合させた新しいタイプのインターネット・アプリケーションおよび社会形態であり,既存の各種技術を組み合わせ高度化したものである。メタバースがもたらす一連の新しい概念と技術は,現在図書館に構築中の「スマートスペース」サービスモデルに,まったく新しい考え方と手法を提供するだろう。本稿では,メタバースの概要及びメタバースとスマートライブラリーの関係について述べる。そして,利用者ペルソナ,バーチャルID,デジタルツイン,スマート・ブック・マネジメント等のスマートスペース技術シナリオの例を通して,仮想と現実が共存するこれからの図書館スマートスペースの形について検討する。本稿が図書館のスマートスペース構築の参考となることを期待する。
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