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中川 博史, 早川 秀一, 小森 雅之, 西村 和彦
セッションID: P-199
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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【目的】構造異常タンパクがER腔内に蓄積するERストレス時に、異常タンパクをGolgi装置以降へと輸送することを防ぐために、ER-Golgi間タンパク輸送経路であるCOPII小胞輸送が抑制されるが、その調節の詳細は未だ不明である。本研究では、ERストレスセンサーのPERK経路とIre1α経路について、COPII小胞輸送の抑制制御に関与するのか検討を行った。【方法】ラット腎由来株化細胞のNRK細胞を用いた。ERストレス誘導にTunicamycin、PERK阻害剤としてGSK2606414、Ire1α阻害剤として4µ8Cを用いた。COPII小胞輸送の評価には、Brefeldin A処置により断片化しERと癒合したGolgi装置が、COPII小胞輸送依存に再構築される際の回復程度を指標とした。各薬剤は40分間の回復過程に処置した。Golgi装置は抗Golgi58K抗体による免疫染色により観察した。ERストレスの評価にはGRP78タンパクウエスタンブロットを用いた。【結果と考察】ERストレスによるCOPII小胞輸送の抑制はPERK阻害剤により回復した。一方IRE1α阻害剤は影響を示さなかった。IRE1αは活性化によりXBP1mRNAのスプライシングを起こす。近年IRE1αがASK1/JNK経路も直接活性化することが報告された。4µ8CはXBP1mRNAスプライシングのみを阻害しASK1/JNK経路は阻害しないことから、JNK阻害剤であるSP600125についてもCOPII小胞輸送抑制への影響があるか調べたが、COPII小胞輸送の抑制を回復することはなかった。以上よりERストレス時のCOPII小胞輸送の抑制にIRE1α経路ではなくPERK経路が関与することが明らかとなった。加えて、ERストレスマーカーGRP78の発現誘導がまだ見られない、40分という短い時間でCOPII小胞輸送抑制が観察されたことから、PERK下流の転写因子ATF4を経たタンパク発現を介すことなく作用する輸送調節機構の存在が示唆された。
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小田原 あおい, 松田 直毅, 鈴木 郁郎
セッションID: P-200
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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【背景】薬剤性の末梢神経障害は痛みなどの副作用を引き起こすことが知られている。ヒトiPS細胞由来末梢神経を用いて、薬剤性の痛み(副作用・毒性)を評価できれば、実験動物の代替えとなると共に、ヒトに対する評価が可能となる。そこで、本研究では、ヒトiPS細胞由来感覚ニューロンの機能(電気活動)を指標とした痛み応答評価系の構築を目指し、平面微小多電極アレイ(MEA)を用いて代表的な痛み関連分子および抗癌剤に対する応答の検出を目的とした。
【方法】ヒトiPS細胞由来末梢ニューロンをMEA上に培養し、代表的な痛み関連分子であるカプサイシン、メンソール、AITCに対する応答および末梢神経障害を引き起こすことが知られている抗癌剤であるビンクリスチン、オキサリプラチンに対する応答を調べた。また、in vivoで抗癌剤投与後にみられる副作用である冷過敏応答がin vitroにおいても観察されるか検証を行った。
【結果】培養したヒトiPS細胞由来末梢ニューロン特異的なイオンチャネルが発現しているかを免疫染色にて観察したところ、痛み情報の伝達に関与し、末梢神経に発現するNav.1.7や、カプサイシンなどの辛味成分を感受するTRPV1, わさび成分などを感受するTRPA1, メンソールや28℃以下の冷感を感受するTRPM8の発現を確認した。また、各種痛み関連分子に対する誘発応答が観察され、各種イオンチャネル拮抗剤存在下で誘発応答が消失する様子が観察されたことから、機能的なイオンチャネルが発現していることが明らかとなった。さらに、抗癌剤に対する誘発応答も観察され、中でもin vivoで観察されるオキサリプラチン投与における冷過敏応答現象を濃度依存的にヒトiPS細胞由来感覚ニューロンにおいて検出した。
【考察】MEAシステムを用いたヒトiPS細胞由来末梢ニューロンにおける各種痛み関連分子および抗癌剤に対する痛み応答の検出できたことから、本評価法はヒト末梢神経障害(毒性・副作用)の検出手法として有効であることが示唆された。
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西江 敏和, 田中 里奈, 戸坂 泰弘, 岡本 幸子, 川東 正英, 升本 英利, 榎 竜嗣, 山下 潤, 峰野 純一
セッションID: P-201
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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ヒトiPS細胞由来心筋細胞(iPS-CMs)を用いた心毒性試験は、in vivoでの薬剤誘発性不整脈を予測するためのツールとして期待されている。現在、複数種のベンダーの異なるiPS-CMsが上市されており、また、心毒性を測定するためのデバイスについても複数知られている。iPS-CMsを用いた心毒性試験を行うにあたっては、どのiPS-CMsを用いてどのような方法で播種した細胞を測定に供するか、あるいはどういったデバイスを用いて測定を行うのか等について、予めその特性を理解しておくことが求められている。
このような状況の中、我々は高純度(>95%)かつ高効率なiPS-CM製造方法を開発し、MiraCell® Cardiomyocytesとして製造を行い供給してきた。本研究では、2Dで播種したMiraCell® Cardiomyocytesについて、インピーダンス測定装置を用いて実施した心毒性試験の結果について報告する。インピーダンス測定装置を用いると、催不整脈作用だけでなく、抗がん剤であるDoxorubicinによる心筋細胞傷害を検出することも出来た。また、昨年我々が報告したiPS細胞由来の間葉系細胞と心筋細胞とを混合して三次元化した心筋細胞塊におけるTdP(Torsades de Pointes)様の現象について、MiraCell® Cardiomyocytes並びにMiraCell® Cardiomyocytesと由来の同じiPS細胞株を用いて作製した間葉系細胞を用いて検討を進めたところ、TdP様の現象を再現することが確認できた。
本研究結果から、MiraCell® Cardiomyocytes(from ChiPSC12)の特徴を明らかにすることが出来たと考えられた。
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財前 絹子, 宮﨑 智成, 加藤 仁士, 榎 成憲, 片山 誠一
セッションID: P-202
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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【背景・目的】2017年6月に「毒物劇物の判定基準」の改定が行われ,その判定に有効な代替法が例示された.しかしながら,単一の代替法では有用な知見を得ることが困難な場合もあり,具体的な代替法の活用方法は示されていない.そこで我々は毒物劇物の判定における代替法の利用性を高めることを目的とし,複数の代替法を組み合わせた背景値の収集を行った.【方法】代替法としてMatTek社のヒト3次元培養表皮モデル(EpiDermTM)を用いた皮膚腐食性試験(OECD TG431),J-TEC社のヒト3次元培養表皮モデル(LabCyte EPI-MODEL)を用いた皮膚刺激性試験(OECD TG439),並びに牛摘出角膜を用いた眼刺激性試験(BCOP法,OECD TG437)により,既知の劇物あるいはその製剤(劇物除外されている製剤も含む)について評価した.【結果】皮膚腐食性試験において,劇物除外されている製剤(10%硫酸,5%水酸化ナトリウム等)でも「腐食性」と判定されたものもあったが,その腐食性の強さの程度(3分及び60分暴露後の細胞生存率)は異なる結果であった.またBCOP法において,In Vitro Irritancy Score(IVIS)から「予測不可」と判定された物質が,皮膚腐食性試験では「非腐食性」を示す結果も得られた.このように既知製剤の刺激性の強さとの比較や,複数の代替法を組み合わせた結果を考慮することで,その物質の刺激性が劇物相当より弱いと判断できれば,劇物除外するための有用な情報となり得る可能性が考えられた.今回,複数の代替法で収集した背景値を紹介する.
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望月 秀美, 平澤 亜矢, 室田 里恵, 戸澤 ゆかり, 下井 昭仁, 佐藤 伸一
セッションID: P-203
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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[諸言]皮膚腐食性の評価は従来,実験動物が使用されてきた(OECD TG 404).しかし,in vivoで強い皮膚障害を起こすと予想される物質を実験動物を用いて検討することは強い苦痛が予想されることから動物福祉の観点から問題があり,改訂TG 404では代替法として,バリデーション済みのin vitroまたはex vivo試験法の実施を含めた階層的試験戦略によって皮膚腐食性及び皮膚刺激性を決定し,実験動物の疼痛及び苦痛を回避することが推奨されている.当社では既に再構築ヒト表皮EpiDermTMを用いたin vitro皮膚刺激性試験法(OECD TG 439)の実施は可能であり,今回新たにin vitro皮膚腐食性試験法(OECD TG 431)の実施に向けてバリデーションを実施したので報告する.
[方法]EpiDermTMを用いた皮膚腐食性試験法の標準プロトコルに準じ,OECD TG 431に記載されている12種類の物質(習熟度確認物質)について実施した.皮膚腐食性は,3分間曝露後の生存率が50%未満は腐食性(1A)物質,3分間曝露後の生存率が50%以上,且つ60分間曝露後の生存率が15%未満は腐食性(1B/1C)物質,3分間曝露後の生存率が50%以上,且つ60分間曝露後の生存率が15%以上は非腐食性物質と判定した.試験成立は,本試験法で定められた基準(陰性対照物質のOD値,陽性対照物質の生存率,各物質の変動係数)が許容範囲内であることを確認した.
[結果]皮膚腐食性の判定結果は,OECD TG 431に記載されている12種類のすべての物質について,ガイドライン記載のものと一致した.なお,12種類の物質のうち,乳酸及びエタノールアミンは当初データのばらつきが認められたが,物質の洗浄方法を工夫することでばらつきは小さくなり,最終的には試験成立条件を満たし,皮膚腐食性の判定も一致した.以上の結果より,本方法を用いたin vitro皮膚腐食性試験は,問題はなく実施可能と判断した.
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内田 有香, 織田 進吾, Michael D. ALEO, 檜杖 昌則, Lisa D. MARROQUIN, Petra H. KOZA ...
セッションID: P-204
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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[Purpose] Prediction of drug-induced liver injury (DILI) potential remains a major detection challenge due to multiple mechanisms. While immune and inflammation reactions are involved in pathogenesis of DILI, in vitro systems using immune cells for predicting DILI have not been studied extensively. We aimed to find potential biomarkers for predicting DILI in in vitro co-culture systems of peripheral blood mononuclear cells (PBMCs) with human liver cell lines.
[Methods] Human PBMCs were co-cultured with HepG2 or HepaRG using Transwell® inserts and treated with 5 DILI-positive drugs (amodiaquine, ketoconazole, tienilic acid, diclofenac, and trovafloxacin) or 5 DILI-negative drugs (chloroquine, mebendazole, ethacrinic acid, ketorolac, and levofloxacin). Total RNA extracted from PBMCs was subjected to microarray analysis to explore biomarkers that can distinguish between DILI-positive and DILI-negative drugs. Successfully validated genes were evaluated for their predictability of DILI potential of 21 drugs by ROC curves.
[Results and Discussion] Out of 14 genes validated by qPCR in HepG2/PBMC, 5 genes (PID1, MET, PTGS2, EREG, and IL24) showed relatively high AUC values. Compared with AUC values of each individual gene, higher AUC values (0.882 and 0.855) were obtained by multiple logistic regression analysis and total score method, respectively, of the 5 genes, with the former having the highest sensitivity (80.0%) and specificity (90.9%). The established PBMC co-culture system using the 5 biomarkers would be of utility to detect DILI potential in nonclinical drug development.
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山崎 ちひろ, 吉實 康美, 柳 愛美, 小川 裕子, 石田 雄二, 石田 誠一, 立野 知世
セッションID: P-205
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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我々はこれまでに、免疫不全肝障害(cDNA-uPA/SCID)マウスをホストとして作製したヒト肝細胞キメラマウス(PXBマウス®)から、高い肝機能を長期間維持する新鮮ヒト肝細胞(PXB-cells®)を分離する方法を確立し、本細胞を用いたin vitro CYP誘導評価試験系の確立を目指して検討を行ってきた。これまでに、誘導剤暴露時の培地(誘導培地)に含まれるジメチルスルホキシド(DMSO)の添加濃度により、肝細胞のCYP基礎発現量および対象薬剤によるCYP誘導倍率が変化することを示した。今回はCYP3A4誘導能を持つことが知られているデキサメタゾン(Dex)の本試験系におけるCYP基礎発現量および対象薬剤による誘導倍率に対する影響を確認するため、各種濃度のDex存在下で対象薬剤 (リファンピシン, Rif) の誘導評価を実施した。その結果、培地中への添加濃度が50~1000 nMの場合、PXB-cellsにおけるCYP3A4の基礎発現およびリファンピシンによる発現誘導倍率に対するDexの影響は小さいことが確認された。また、本評価系における肝細胞のドナー間のバリデーションを目的として、2種類の異なるドナー由来PXB-cellsを用いて、Rifおよびβナフトフラボンの各標的CYPに対する誘導能を評価したところ、いずれのドナー由来のPXB-cellsにおいても、各誘導剤によるCYP誘導を確認できた。さらに、本評価系においてフェノバルビタール(PB)によるCYP2B6の誘導についても評価した。その結果、PBにより、CYP2B6およびCYP3A4の発現誘導が確認された。以上の結果から、PXB−cellsを用いることにより、CYP1A2, 2B6, 3A4の発現に対する候補化合物の誘導能が評価可能であることが示唆された。
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Zsuzsanna NEREDA, Takeshi SAKATA, Daniel GLIESCHE, Roelof DE WILDE, Zs ...
セッションID: P-206
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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Drug Induced Liver Injury (DILI) is a major reason for discontinuing drug development programs and identifying potential risk for DILI is therefore important. Several in vitro tests have been developed to assess hepatotoxicity risk. Models using polarized primary hepatocytes with functional drug metabolizing enzymes and transporters, such as sandwich cultured hepatocytes, spheroids, randomly cocultured hepatocytes and micropatterned cocultured hepatocytes (HepatoPac) are because of their in vivo-like properties considered to be among the more physiologically relevant models. A drawback of many in vitro tools however is lab-to-lab variability. Micropatterned co-cultures (HepatoPac) have a tightly controlled architecture and because of this we hypothesized its lab-to-lab variability might be minimal. In addition, the model has a life-span of several weeks in culture, allowing repeat dosing of test compounds. We therefore evaluated the known hepatotoxicant amiodarone in HepatoPac and compared results to published data. Using albumin, urea, adenosine triphosphate (ATP) and glutathione (GSH), we found TC50 (the concentration that decreases a response by 50%) values close to published values. After single dosing, similar TC50 values were obtained on day 5 and 9 using intracellular ATP and GSH levels. After dosing every 2 days, we measured TC50 values of increasing potency over time, using albumin and urea levels in the medium. No toxicity was observed for negative control acetylsalicylic acid (aspirin) at any of the conditions. In conclusion, we successfully used the HepatoPac toxicity assay in our lab and demonstrated low variability between our and published data, indicating the robustness of this method between labs.
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Daniel GLIESCHE, László SZILáGYI, Takeshi SAKATA, Daniele ZINK
セッションID: P-207
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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Renal proximal tubular cells (PTCs) are essential for the renal elimination of xenobiotics due to their roles in compound transport, metabolism and secretion. Therefore, drugs and their metabolites may damage PTCs and lead to acute kidney injury or chronic kidney disease. Methods for analyzing PTC toxicity are needed for predicting potential drug mediated nephrotoxic effects. Until recently, in vitro methods for predicting nephrotoxicity in humans were not available and animal models were the methods of choice. However, animal models have a low throughput, are expensive and the outcomes often poorly predict human toxicity. Human and animal PTCs display major differences with respect to transporter and drug-metabolizing enzyme expression patterns.
Recently, the first in vitro methods for the accurate prediction of nephrotoxicity in humans became available. These include a high-throughput screening (HTS) method for screening of larger compound libraries. The HTS platform was developed without using pre-defined endpoints, instead, predictive cellular changes were identified by phenotypic profiling after compound treatment. Using a HTS imaging and machine learning system, 129 phenotypic features were assessed, and groups of 4-5 predictive features were selected and used as endpoints.
The predictive method has been pre-validated with 44 chemically diverse compounds, with well-characterized effects on human kidneys. The method utilizes primary human renal proximal tubule or HK-2 cells in 384-well format, and the test balanced accuracies are 82% (primary PTCs) and 89% (HK-2 cells), respectively. The results indicate DNA damage as a key determinant for PTC toxicity, which was mediated by various nephrotoxicants directly or indirectly via ROS generation. The combination of cell-based systems with computational algorithms can be used for efficient and accurate HTS in vitro kidney toxicity predictions, and is currently applied in collaboration with the US Environmental Protection Agency for the prediction of the human nephrotoxicity of ToxCast compounds.
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根岸 公祐
セッションID: P-208
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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【背景・目的】
低分子構造に着目し、その毒性/活性を予測することはこれまで盛んに研究され創薬の現場でも活用されている。しかしながら、その低分子が作用する(親和性のある)タンパク質『群』をベースにした毒性/活性予測は、実用的な事例は少なく、特に創薬研究で用いられている商用データベースを使った報告は多くはない。今回、分子間相互作用情報(テキストマイニングベース)と創薬化学情報からターゲット分子情報を抽出し、これらに対し、Fisher’s Exact Testを実施し得られた毒性情報と、臨床試験や市販後調査で報告されている毒性との比較を行った。
【方法】
本発表では、低血糖以外の重度な副作用が少ないとされるフェニルアラニン誘導体(グリニド系:Nateglinide、Repaglinide)の承認薬に着目し、これらが作用するタンパク質『群』を対象にして解析を行った。タンパク質群は、文献で報告されているものと、アッセイ試験が報告されているものを2種類のデータベースから抽出した。これらをインプット(On/Off ターゲット分子群)としてパスウェイ解析ソフトPathwayStudioでFisher’s Exact Testを実施した。この結果の精度を検証するために、FDA/EMA全文を収録しているPharmaPendiumにて臨床試験や市販後調査で報告されている毒性と得られた結果の比較を行い、マッチングした毒性を元にその割合を算出した。
【結果】
ターゲット分子群から得られた予測結果と承認/報告文書を比較したところ、Nateglinideでは、62.5%(5/8)、Repaglinideでは、75%(8/10)となった。この結果からDrug discovery研究利用での実現の可能性を見出した。
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齋藤 文代, 寳珠山 五月, 竹山 春子, 畠山 慶一, 大島 啓一, 望月 徹
セッションID: P-209
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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【目的】Diethylnitrosamine (DEN) は、肝臓等の様々な臓器で腫瘍を引き起こす代表的な化学発がん物質で、DENによる発がんメカニズムを解明するために、昨年度の本学会で2~18週間反復投与した肝臓における動物試験結果及び経時的な遺伝子発現プロファイルの変化について報告した。本研究では、13及び18週間投与群の肝臓でみられた腫瘍性病変について、非腫瘍性病変との遺伝子発現プロファイルの差異を解析することで、メカニズム解明を試みた。さらに、ヒト肝がんのマイクロアレイデータとの比較から、ヒト肝がんとラット腫瘍性病変に共通する変動遺伝子を探索した。
【方法】5週齢・雄Crl:CD(SD) ラットにDEN (0及び4 mg/kg/day) を13及び18週間反復経口投与した後、肝臓で発生した腫瘍性と非腫瘍性病変領域に分けて採取し、マイクロアレイで遺伝子発現量を解析した。ヒト肝臓サンプルは57例 (54~84歳、男女比3:1) をがん部位と非がん部位に分けて採取し、マイクロアレイで遺伝子発現量を解析した。
【結果と考察】18週間投与後のラット肝臓の非腫瘍性病変領域では、媒体対照群に対して細胞増殖や炎症応答が活性化し、脂質代謝やコレステロール輸送で機能低下がみられた。腫瘍性病変領域では微小管ダイナミクスやfocal adhesion形成に関連する遺伝子発現の増加が更に亢進しており、これらの変化が組織学的に周辺の肝細胞と腫瘍性病変を明瞭に区別できる要因と考えられた。さらに、ラット肝臓の腫瘍性病変とヒト肝臓のがん部位で発現量が変動した遺伝子を比較したところ、細胞周期や細胞分裂に関連した遺伝子に共通した変化がみられた。これらの結果から、発がん性物質投与によってラット肝臓で腫瘍性病変に至るメカニズムの一端を分子レベルで明らかにすることができた。さらにヒト肝がんと共通した変動を示す遺伝子が同定できたことで、ラット肝臓における腫瘍の悪性化メカニズム解明に寄与する可能性が期待される。
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堀内 祥行, 山本 誠司, 吉田 徳幸, 内藤 幹彦, 小比賀 聡, 奥井 文, 植村 英俊, 井上 貴雄
セッションID: P-210
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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近年、修飾核酸を搭載したアンチセンス医薬の開発が進んでいる。「Gapmer型」ならびに「Mixmer型」と呼ばれるアンチセンス医薬は、それぞれ「RNA分解」および「立体阻害(RNA結合分子の結合阻害)」の機序で作用するものであり、これらのアンチセンスには一本鎖オリゴ核酸の一部に糖部を修飾した修飾核酸が導入されている。糖部修飾核酸をアンチセンスに導入すると、アンチセンスと標的RNAとの結合力が飛躍的に向上することが知られており、これにより薬効(有効性)も顕著に向上する。
一方、オリゴ核酸には低分子医薬品や抗体医薬品にはない特有の毒性が生じる可能性があり、その一つとして、Toll-like receptors(TLR3, 7, 8, 9)を介した自然免疫系の活性化が知られている。この中で、TLR9は非メチルCpGを含んだ一本鎖DNAを認識し、自然免疫を活性化するため、一本鎖DNAをベースとするアンチセンス医薬の開発においては、TLR9の活性化に特に注意を要すると考えられている。
本研究では、近年開発が進む比較的短鎖のアンチセンス(15-20塩基長)について、自然免疫活性化を評価するモデルアンチセンスを作出するため、ヒトTLR9安定発現細胞を用いてTLR9を活性化する18塩基長のオリゴ核酸を同定した。次に、このアンチセンスに対して、種々の糖部修飾核酸を「Gapmer型」あるいは「Mixmer型」で導入し、TLR9を介した自然免疫活性化能を検証した。さらに、様々なTLRを発現するヒト末梢血単核球細胞(PBMC)を用いて、サイトカイン分泌を指標に修飾核酸導入の影響を解析した。この結果、修飾核酸の導入により、自然免疫の活性化が大幅に減弱することを見いだした。さらに、TLR9安定発現細胞とPBMCの結果を比較することにより、TLR9に依存しない自然免疫活性化経路があることを明らかにした。今後、この経路を評価するための試験系の確立を検討する。
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Roy FORSTER, Marie-Eve DUCLOS, Jean-François PROST
セッションID: P-211
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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GM102 is a first-in-class glyco-engineered monoclonal antibody (mAb) targeting Anti-Müllerian Hormone Receptor II (AMHRII) and is in development for the treatment of gynecological cancers. The safety of GM102 was evaluated in mature female cynomolgus monkeys in a toxicity study with 4 cycles of intravenous administration (separated by 2 week intervals), at dose-levels of 30, 100 or 300 mg/kg. During the in vivo phase clinical investigations included cageside observations, rectal temperature, blood pressure, ECG and ophthalmology. Laboratory analyses included toxicokinetic profile, hematology, blood biochemistry, urinalysis, hormone assays (cortisol, estradiol, progesterone, anti-müllerian hormone), pro-inflammatory cytokines, anti-drug antibody (ADA) and Troponin I levels. At the end of the study, a complete histopathology evaluation was performed. No abnormalities related to the administration of GM102 were observed during the in vivo phase. Systemic exposure of GM102 at the highest dose-level was 318 563 ± 54 004 µg.h/mL (AUC0-t) at the end of the treatment period. No effects were observed at hematology or blood biochemistry investigations. No abnormalities were observed in the hormone, Troponin I, cytokine or ADA measurements. At histopathology examinations, no adverse findings were recorded in GM102 treated animals. The highest tested dose‑level of 300 mg/kg was considered to be the No Observed Adverse Effect Level. These findings present a satisfactory safety profile of GM102 in view of its potential clinical use.
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村田 和之, 山口 建, 牟田口 国則, 重山 拓摩, 藤原 淳, 森川 裕司, 植松 敦史, 佐藤 伸一, 谷口 昌広
セッションID: P-212
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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バイオ医薬品の売上は年々増加しており,今後も着実に伸びることが予想される.その中でも抗体医薬品が占める割合は高く,開発が活発である.医薬品開発の中で血中濃度を測定するバイオアナリシスは,薬物動態をはじめ,非臨床安全性試験での薬物の暴露評価,臨床試験での安全性,有効性の確認など大切な評価データを取得する.従来,抗体医薬品の血中濃度は,ELISAなどのLBA法で測定されている.しかし,これらの方法には,測定用の試薬として抗体を準備するためにコストと時間を要する,検量線範囲が狭い,交差反応の可能性があること等の問題点が挙げられる.これらの点を補完する方法として,LC/MS/MS法が注目されている.その特徴は,抗体試薬が不要である,検量線範囲が広い,高い精度及び真度を示す,複数化合物の同時測定が可能であること等が挙げられる.その方法は,抗体医薬品を酵素により消化し,生成するペプチド断片を測定対象とする.ほとんどの抗体医薬品は,部分的にヒトIgGの配列を持ち,それらに共通の定常領域(Fc)と抗体医薬品毎に異なる相補性決定領域(CDR)を含んでいる.本研究で我々は,トラスツズマブをモデルとして,Fc及びCDR由来のペプチド断片を測定対象とした同時分析法を開発した.トラスツズマブをカニクイサルに2 mg/kg及び10 mg/kgの用量で静脈内投与し,投与後21日まで採取した血漿中濃度を新規に開発した分析法で測定した.また,LC/MS/MS法の妥当性を検証する目的で同じ血漿試料をELISA法で測定した.いずれの方法でもほとんどの全ての血漿試料でトラスツズマブを検出でき,LC/MS/MS法及びELISA法で測定した濃度推移は相関した.これらの結果より,新規に開発したLC/MS/MS法はELISA法の代替法として使用できる.特にFc由来のペプチド断片を測定する本方法は,あらゆる組み換え抗体医薬品に適用可能であり,抗体試薬の準備が困難な初期非臨床試験で有用性を発揮できる.
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Takatoshi KOUJITANI, Shinji KUSAKAWA, Satoshi YASUDA, Takeshi SATO, Ke ...
セッションID: P-213
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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[Introduction] The undifferentiated pluripotent stem cells (PSCs) are naturally tumorigenic, giving rise to “Teratoma”, and therefore, the establishment of validated assays to detect the residual undifferentiated PSCs in the cell therapy products is of paramount importance for minimizing the risk of PSCs-based tumorigenicity. NOD/Shi-scid, IL-2RγKO Jic (NOG) mice is considered adequate animal model to detect tumorigenicity potential of PSCs in vivo. Therefore, the mouse in vivo study was selected and validated in MEASURE.
[Assay protocol] 20-week in vivo tumorigenicity studies were conducted in 5 facilities with the same protocol using male NOG mice at subcutaneous dose levels of 102, 103, 104 or 105 of human induced pluripotent stem (iPS) cells (Cellartis® human iPS cell line (ChiPSC18)) spiked in 106 Normal Human Dermal Fibroblasts and Corning® Matrigel® matrix at a dose volume of 100 µL (spiked concentration ranges from 0.01% to 10%). Parameters included clinical observations, body weights, food consumption, measurement of subcutaneous nodule size in the injection site, gross pathology, and histopathology. In addition, the 50% Tumor Producing Dose (TPD50 value) was calculated.
[Results and Conclusion] Subcutaneous nodule of teratoma at the injection site was observed in all groups in all facilities with TPD50 of 10, 18, 18, 32, 120 or 680 in 6 studies. Therefore, tumorigenicity potential of the iPS cells can be detected by the study methods of the preliminary in vivo study. The main in vivo studies are conducted at lower dose levels in 4 facilities.
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Takeshi WATANABE, Satoshi YASUDA, Shinji KUSAKAWA, Hatsue FURUKAWA, Ma ...
セッションID: P-214
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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[Introduction] The undifferentiated pluripotent stem cells (PSCs) are naturally tumorigenic, giving rise to teratoma, and therefore, to detect the residual undifferentiated PSCs in cell therapy products is important for minimizing the risk of PSCs-based tumorigenicity. The in vitro highly efficient culture assay using the culture system, which favors the growth of PSCs, is able to directly detect a trace amount of undifferentiated PSCs and was selected as the assay for validation in MEASURE.
[Purpose] As the first step of validation, preliminary studies were conducted in 4 facilities to confirm the reproducibility of reported highest detection sensitivity (0.001%, Tano et al, PLoS One, 2014) with several clones of iPSC and culture conditions.
[Methods] Cell suspensions of iPSCs (clones; 201B7, 1231A3, ChiPSC18) were prepared using E8F or AK03N medium. Six (0.001%) and 30 (0.005%) iPSCs were spiked into 6 x 105 hMSCs, and were plated onto cell culture matrix LN521 (for E8F) or iMatrix511 (for AK03N) coated 10 cm dishes. After about one week incubation, iPSC colonies were identified by alkaline phosphatase staining and the number of colonies was counted manually under microscopy.
[Results] iPSCs colonies were detected under the 6 cells spiked condition for any iPSC clones and culture conditions at all the 4 facilities.
[Conclusion] The detection sensitivity (0.001%) was confirmed at the multiple facilities.
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Akihiko AZUMA, Takuya KURODA, Orie TERAI, Daisuke TOMURA, Shunsuke NAK ...
セッションID: P-215
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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[Introduction] The undifferentiated pluripotent stem cells (PSCs) give rise to teratoma. So the establishment of validated assays to detect these cells in the cell therapy products is important for mitigating the risk of tumorigenicity. The droplet digital PCR using LIN28 mRNA as a marker of undifferentiated cells, is a powerful method to detect a trace amount of undifferentiated PSCs because of its sensitivity and easy handling. Therefore, the droplet digital PCR was selected as one of the assay in MEASURE, a public-private partnership for research on standardization and validation of methods for tumorigenicity assessment of regenerative medical products.
[Purpose] As first step of validation, we conducted preliminary study to confirm variation of the assay among 4 facilities using a common cell mixture.
[Method] A cell mixture was prepared by spiking undifferentiated human induced pluripotent stem cells (hiPSCs) into Retinal Pigment Epithelium (hRPE) with several levels. Each facility conducted droplet digital PCRs after the on-site RNA purification. We also tried to determine the lower limit of detection (LLOD) of each assay by using multiple lots of primary hRPE as backgrounds.
[Results] hiPSCs were detected with high sensitivity at all the 4 facilities. Inter-laboratory variance was so small that the LLOD was 0.003% or less.
[Conclusion] The variation of sensitivity of droplet digital PCR using LIN28 as an undifferentiated marker was confirmed to be small at the multiple facilities.
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Kiyoko BANDO, Shinji KUSAKAWA, Junichiro SAITO, Hideki ADACHI, Takafum ...
セッションID: P-216
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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[Introduction] The differentiated cells derived from pluripotent stem cells (PSCs) have potentials to transform to malignant cells, and thus, the establishment of validated assays to detect these cells in cell therapy products (CTPs) is of importance for minimizing the risk of PSCs-based tumorigenicity. The soft agar colony formation (SACF) assay can detect transformed cells which show anchorage-independent cell growth. However, its sensitivity is not sufficient for quality control assessment of CTPs. The Digital SACF assay using an image analyzer has high sensitivity, but has not been generally used yet. Therefore, it was selected as the assay for validation in MEASURE.
[Assay protocol] The malignant cells are spiked into normal cells (mimic the final product including malignant cells, e.g, HeLa/hMSC suspension), and cell suspension is mixed with medium and agar, and then placed on the bottom agar layer. After about 4-5 weeks of culture, dual fluorescence stained colonies are detected using image analyzers.
[Progress] Preliminary experiments were conducted to evaluate efficiency of single cell-derived colony formation from a HeLa cell in soft agar culture with or without hMSCs in order to identify potential variation that affects the study results. The colony formation rates in HeLa/hMSCs tended to vary as compare with those of HeLa only. Next, the preliminary study, which intends to detect a HeLa cell spiked to 106 hMSCs, is being conducted.
[Future plan] The main study at the multiple facilities will be planned to evaluate the detection sensitivity and its reproducibility.
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Sono WATANABE, Ken KONO, Chihiro TAKAHASHI, Shinko HATA, Mutsumi SUZUK ...
セッションID: P-217
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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[Introduction] The differentiated cells derived from pluripotent stem cells (PSCs) have potentials to transform to malignant cells and thus, the establishment of validated assays to detect the malignant transformed cells in cell therapy products (CTPs) is of paramount importance for minimizing the risk of PSCs-based tumorigenicity. The cellular immortality testing is a simple and sensitive method to detect immortalized/tumorigenic cells. We examined the growth of hMSCs contaminated with various doses of HeLa cells to validate the protocol of the cell growth analysis in MEASURE.
[Purpose] As first step of validation, we conducted preliminary study to confirm the reproducibility of the previous reported highest detection sensitivity (0.0001%, Takada/Kono et al, Regen Ther, 2016) at 3 facilities.
[Methods] At P=5 of hMSCs, 1×106 of hMSCs mixed with 1 (0.0001%), 10 (0.001%), and 102 (0.01%) cells of HeLa cells were seeded into T175 flasks. The cells were maintained in Dulbecco's Modified Eagle's medium (DMEM) until P=10. In each passage, 106 cells in the suspension were re-seeded into T175 flasks and cultured until the next passage. The growth rate was calculated by the following equation: Growth rate (doubling/day)=[log2 (Nn+1/Nn)] / (Dn+1-Dn); Nn:Number of cells at passage n, Dn:Date on passage n
[Progress] Preliminary experiments were conducted to identify potential variation that affects the study results at 3 facilities.
[Future plan] The main study at the multiple facilities will be planned to evaluate the reproducibility of the detection sensitivity.
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Yoshiteru KAMIYAMA, Yoichi NARITOMI, Asako UCHIYAMA, Takeshi HANADA, Y ...
セッションID: P-218
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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[Introduction] Nonclinical assessment of biodistribution (BD) of Cell Therapy Product (CTP) is important to predict the safety and the efficacy profiles. Therefore, the establishment of validated assays to evaluate the distribution and the elimination pathway after administration of CTP is needed. However, the methodology as well as strategy for BD evaluation of CTP remains far from harmonized. Quantitative PCR (qPCR) detecting Alu sequences in human genome is selected as one of the methods to evaluate the BD of CTPs in nonclinical studies. The aims are the evaluation of qPCR quantitation assay and the identification of the issues for the quantitation approach for the establishment of the standard BD methodology in MEASURE.
[Assay protocol] The standard curve samples for qPCR assay are selected from genomic DNA extracted from human derived cells or the synthesized DNA. The sensitivity and the linear range of the assay are evaluated from the standard curves run. The inter- and intra-assay precision and accuracy of the qPCR assay of the samples are determined by evaluating the QC sets. The matrix effect is also evaluated.
[Progress] Preliminary experiments were conducted to identify potential variation that affects the study results by the member companies. The quantification range were similar among the multiple study sites, and further evaluations for the precision, accuracy, and matrix effects of the qPCR assay are being conducted.
[Future plan] Based on the preliminary results of qPCR assay, in vivo biodistribution study will be conducted as a multisite study.
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小松 弘幸, 橘田 久美子, 赤根 弘敏, 小川 光英, 鈴木 慶幸, 秋江 靖樹
セッションID: P-219
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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【目的】再生医療等製品の評価において,組織中の移植細胞の検出は免疫染色あるいはPCR法で実施されている.通常,PCR法では新鮮凍結組織を用いるが,マウスから組織標本用と新鮮凍結組織を分けて採取するのは困難な状況が想定される.そこで今回,病理検査用として保存しているホルマリン固定組織及びパラフィン包埋組織から核酸を抽出し,PCR法による移植細胞の検出を試みた.
【方法】ヌードマウス背部皮下にPBS,間葉系幹細胞(hMSC)及びHeLa細胞を移植して形成された腫瘍をサンプルとして用いた.腫瘍は定法に従いホルマリン固定後,パラフィンブロックを作製した.腫瘍が形成されたのはHeLa細胞移植群のみであったため,PBS及びhMSC群は移植部位の組織を使用した.ホルマリン固定組織から直接あるいは各ブロックからパラフィン切片を作成し,脱パラフィン後DNAを抽出した.抽出したDNAは2種類のヒトAlu配列特異的プライマー(Alu-A,Alu-B)を用いた定量PCRで検出した.
【結果】パラフィン切片からのDNA抽出は,組織の溶解に時間がかかるものの実施可能であった.ホルマリン固定組織及びパラフィン切片から抽出したDNAを用いてAlu配列を増幅した結果,用いた2種類のプライマーのいずれにおいてもHeLa細胞移植群の腫瘍で増幅がみられた.一方,PBS及びhMSC群の移植部位付近からのサンプルでは増幅は認められなかった.以上より,ホルマリン固定組織及びパラフィン切片から抽出したDNAを用い,PCR法によって移植した細胞を検出できる可能性が示された.検出感度向上のためDNAの抽出法やPCR条件を検討し,その結果も併せて報告する.
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吉岡 忠夫, 馬場 暁子
セッションID: P-220
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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【目的】カルボン酸系医薬品の主要代謝物であるアシルグルクロニド (GA) は生体内蛋白質等の求核部位に対する求電子活性を有しており、薬物性肝障害等の有害作用への関与が推察されている。我々はGAの血中移行過程における化学変化機序の解明を目的として、アリール酢酸系NSAIDsのFelbinac (FB) 由来GA (FBGA)をモデル化合物として、ヒト血清アルブミン (HSA) 存在下でのin vitroの消失過程について速度論的検討を行った。
【方法】FBGAとHSAをリン酸緩衝液 (pH 7.40、37℃) 中でインキュベートし、FBGA、分子内アシル転位体(Isomers)及び遊離FBを定量した。脂肪酸(C4~C18:1)、FB及びSiteⅠとⅡの各ligand添加の影響も検討した。
【結果・考察】①[HSA]0可変条件ではFBGAの初期消失速度定数(k)は[HSA]0に依存して減少した。FB遊離にはHSAのエステラーゼ様活性の関与が示唆された。FBGAの一次消失過程の後半に見られる逸脱はFB遊離量の増大に因るものと思われる。②[HSA]0固定(0.15 mM)で脂肪酸の一定濃度添加条件では、k値はC8~C10脂肪酸辺りで極小値を示した。C10脂肪酸添加濃度0.20 mMでk値は極小値を示した。③k値に対するSiteⅠ-ligandのTolbutamide添加は殆ど影響を与えなかったが、SiteⅡ-ligandのKetoprofen(KP)あるいはFB添加はk値を有意に減少させた。④[HSA]0固定でFBGA濃度可変条件;FBGA濃度依存的にk値は一定値まで漸増した。また、HSAへの親和性はFBGA<Isomersであった。以上の結果から、HSAによるFBGAの消失過程にIsomers及びFBとの相互作用がエステラーゼ様活性に影響する推定消失機序を提唱する。
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落合 和, 鳩貝 壌, 北岡 諭
セッションID: P-221
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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【目的】大麻に含まれる主成分にcannabidiolとΔ9-tetrahydorocannabinolがある。Cannabidiolは、抗腫瘍作用や鎮痛作用など、種々の薬理作用を示すことが報告されている。また、cannabidiolは、Δ9-tetrahydorocannabinolとは異なり、大麻を使用した際に見られる多幸感、陶酔、幻覚等の精神作用を示さない薬物である。我々は、これまで報告されているcannabidiolの作用から乳がんの治療に適しているのではないかと考えた。さらに、我々は、妊娠中の乳がん治療を想定し、cannabidiolの安全性について評価を試みた。本研究では、妊婦にcannabidiolを投与した際の胎児中の薬物動態を母体から胎児への移行性とその蓄積性に着目し、解析した。
【方法】妊娠14日目のマウスに、経時的に尾静脈内へcannabidiolを投与した。薬物を投与後、経時的に帝王切開で胎児を取り出し、各臓器(脳、肝臓および消化管)をそれぞれ摘出した。各サンプルは、固相抽出で前処理し、cannabidiolをLC-MSで定量分析した。
【結果・考察】妊娠中期にcannabidiolを投与すると、速やかに母体から胎児へ移行することがわかった。しかしながら、胎児に移行したcannabidiolは、胎児の体内に蓄積することなく、速やかに胎児の体内から消失していた。胎児中のcannabidiolはいずれの臓器からも、時間の経過と共に速やかに消失していた。Cannabidiolは、母体から胎児へ移行するが、胎児の体内に蓄積しなかった。一般的に、薬物の効果や副作用は、その薬物の蓄積している組織を解析することで、おおよそ推定することが可能である。そして、cannabidiolを母体に投与しても胎児の体内に蓄積しなかった。つまり、cannabidiolは胎児の発生に対して影響が少ない薬物であると言える。したがって、cannabidiolは、妊娠中のがんに対する新たな治療薬となることが期待される。
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赤川 唯, 村田 英治, 小林 亮介, 松元 さなえ, 原田 智隆, 岩井 淳, 大西 康之, 平塚 秀明
セッションID: P-222
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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【背景・目的】
2017年11月のICH総会にて,マイクロサンプリング法に関するQ&Aが最終化されたことにより,今後,マイクロサンプリング法が普及していくことが予想される.マイクロサンプリング法で実施することにより,動物の身体的負担の軽減が実現できるとともに,特に小動物試験では,使用動物数の削減及び毒性と薬物暴露評価を同一個体で行うことが可能となる.一方で,従来のサンプリング法との同等性や主試験群の動物からの採血が毒性評価に及ぼす影響に関する報告が十分とは言えない.そこで我々は,第44回(2017年)日本毒性学会学術年会において,マイクロサンプリングは,6時点までの採血回数では生体への影響は少なく,急性毒性評価への影響も少ないことを報告した.今回,さらに反復投与毒性試験における毒性評価及び薬物動態に及ぼす影響について検討するため以下の実験を行った.
【方法・結果】
7週齢の雌雄SDラットを用いて各種薬剤をそれぞれ4週間反復投与し,初回及び最終回投与時に外側尾静脈または鎖骨下静脈から微量頻回採血(約0.05 mL/時点;初回:6時点,最終回:7時点)を実施し,TK測定試料を採取して血漿中薬物濃度を測定した.毒性評価としては,一般状態観察(1日2回),体重測定(週1回),血液学的検査,血液生化学的検査及び病理学的検査を実施した.本発表では,実験結果ならびにマイクロサンプリングによる各種検査データや薬物動態データへの影響,さらには採血部位の違いによる影響について報告する.
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檜杖 昌則, Chang-Ning LIU
セッションID: P-223
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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化学療法誘発性末梢神経障害(CiPN)は抗がん剤治療を受けている患者での有害事象としてしばしばみられ,抗がん剤の開発における主要な安全性検討事項の一つである。CiPNリスクの評価として,神経および後根神経節(DRG)の病理組織学的検査や,アロデニア/疼痛反応検査などの行動学的評価を毒性試験に組み込むことは可能であるが,より鋭敏で簡便な評価項目が求められている。最近の研究で,ラット摘出培養神経を用いた試験で神経の機械的性質に対してパクリタキセルが影響を及ぼすことが示された。本研究では,ラットおよびマウスにビンクリスチン(VCR)を投与してCiPNモデルを作成し,投与期間中に歩行解析による行動学的評価を実施し,剖検時には,病理組織学的検査とともに,腓腹神経および坐骨神経をそれぞれラットおよびマウスから採取して生体力学的特性の評価を行った。また,マイクロRNA(miR)評価のため,神経およびDRGを採取した。生体力学的特性の評価では,最大負荷および負荷/伸長比は,溶媒対照群と比べて,VCR投与群で有意に低下した。miR評価では,miR-388は,溶媒対照群と比較してVCR処置ラットでは統計的に有意に低下したが,マウスでは有意に増加した。さらに,歩行解析では,VCR処置マウスでは paw print areaが有意に減少したが,ラットでは有意な変化はみられなかった。末梢神経およびDRGのHE染色およびその他の評価系ではVCR処置に伴う変化は認められず,また,ラットで行った後肢上皮厚の評価においても変化はみられなかった。これらのことから,ex vivoでの末梢神経の生体力学的特性の評価は,げっ歯類でのCiPNを予測する新規手法として鋭敏な評価項目となると考えられた。また,歩行解析および神経組織のmiRの検討も,動物モデルでのスループットの高い評価として有用である可能性が示唆された。
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木村 康, 友廣 雅之, 岡部 毅, 木下 潔, 小林 章男, 佐々木 正治, 前田 充則, 水戸部 祐子, 本山 径子, 米澤 理一郎, ...
セッションID: P-224
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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医薬品の非臨床安全性評価に疾患モデル動物を用いることにより,薬理学的作用,薬物動態,疾患に関連する標的分子の発現,臨床での用法/用量及び安全性に関して有益な情報が得られる可能性が指摘されている。そこで,安全性評価での疾患モデル動物の使用状況を理解するために,CTD及び審査報告書の調査(対象:1999年9月〜2015年5月に承認された医薬品)並びに製薬協でのアンケート調査を実施し,第43回学術年会(2016年)において,疾患モデル動物を用いた安全性試験が一定数実施されていることを報告した。その後,Morganら(2017)から同様な趣旨のアンケート調査報告があり,我々の調査結果とほぼ一致する内容であった。
今回,我々は2015年6月〜2017年5月に承認された品目のCTDを対象に,追加調査を実施した。その結果,疾患モデル動物を用いた安全性試験数が近年増加傾向であることが明らかとなった。また,規制当局からの要求によって実施された試験がこの2年間に3試験認められ,疾患モデル動物を用いた安全性評価に対する規制当局の関心の高まりが示唆された。本発表では,追加調査の結果並びに疾患モデル動物を用いた安全性試験の具体例を紹介する。今後,医薬品の非臨床安全性評価への疾患モデル動物の有効活用がさらに進むことを期待したい。
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篠田 康彦, 高城 誠太郎, 太田 笑美子, 山﨑 真輝, 中川 博之
セッションID: P-225
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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【目的】
コンタクトレンズやその保存液や医薬品等の安全性評価をする際、培養した細胞の上に4箇所に切れ目を入れたコンタクトレンズを密着させる方法や、細胞培養プレートのインサートへ細胞培養し、インサート下部を押し込むことで細胞とコンタクトレンズを間接的に接触させる方法で評価していた(ISO18189、日本動物実験代替法学会第28回大会 P-27)。この場合、細胞とコンタクトレンズとの接地面積が小さいことや本来の眼の形状でのコンタクトレンズ等の評価ができていないという問題点があった。今回新たに開発した材料は薄膜でありながら、しなやかさに特徴がある。この特徴を活かしコンタクトレンズの曲面に近い形状で毒性評価を行えるインサート(以下、曲面毒性評価器具)を開発した。本研究では細胞培養から評価系を利用した毒性試験までの方法について検討する。
【材料及び方法】
曲面毒性評価器具へ薄膜材料を置き、リコピンを塗付したコンタクトレンズを密着させた。その後、コンタクトレンズを取り外し膜に転写したリコピンを定性的に評価した。
開発した薄膜材料を6well plateへ置き、L929細胞を播種し1日間培養を行った。次に毒性試験をするために、開発した薄膜材料を曲面毒性評価器具へ移し替えた後に、曲面に沿わせ培地を加えた。その後コンタクトレンズを上からかぶせ、塩化ベンザルコニウム溶液の段階希釈系列培地を添加しその毒性を評価した。
【結果及び結論】
開発した薄膜材料を曲面毒性評価器具へ置き、且つコンタクトレンズ装着面と密接することを色素を用いた試験により確認した。この現在L929の細胞生存性とコンタクトレンズ、薬剤を用いた毒性試験を確認中であり,その結果を含めて新たなコンタクトレンズ評価系について報告する。
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青木 明, 河合 龍也, 岡本 誉士典, 植田 康次, 礒部 隆史, 大河原 晋, 埴岡 伸光, 香川(田中) 聡子, 神野 透人
セッションID: P-226
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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【目的】化学物質の新規皮膚感作性代替試験法の構築に向けた試験系の開発が行われている。そのうち、Interleukin 8 (IL-8) プロモーターの下流にLuciferaseを組み込んだプラスミドをヒト単球由来細胞株THP-1に導入した試験系 (IL-8 Luc assay) が報告されている。しかし、この方法はIL-8プロモーターの特定領域を外来的に導入した系であるため、化学物質によるIL-8の発現誘導を完全に模倣できてはいない。そこで本検討は、ゲノム編集技術のCRISPR/Cas9システムを用いてIL-8遺伝子座にGFPを挿入して、内在性IL-8プロモーター制御下でIL-8とGFPを共発現するTHP-1細胞を作製し、本細胞株を用いたIL-8 GFP assayの樹立を試みた。
【方法】monomeric GFPをコードするpCMV-AC-mGFPベクターをXhoI処理し、自己切断ペプチドP2Aを組み込んだpCMV-P2A-mGFPを作製し、PCR法によりP2A-mGFPを得た。P2A-mGFPを相同組換え修復を用いてIL-8遺伝子座の終始コドン直前に挿入するために、挿入する位置の前後約1000 bpの配列をホモロジーアームとしてP2A-mGFPの両端に組み込んだドナーベクターを作製した。10% FCS含有RPMI-1640培地で培養したTHP-1細胞に、IL-8の終始コドン近傍に設計したsgRNAをCas9蛋白質とドナーベクターと共にエレクトロポレーション法によって導入した。ゲノム編集後のTHP-1細胞は、限界希釈法でシングルセルクローニングを行った。P2A-mGFP配列のIL-8遺伝子座へのノックインの検証は、PCR法とシークエンス解析により行った。
【結果および考察】PCR法により設計通りの位置にP2A-mGFPが挿入されたクローンを選別し、シークエンス解析によりP2A-mGFP配列と周辺配列に変異がないクローンを得た。そのクローンに感作性物質の2,4-Dinitrochlorobenzene (DNCB) を3.13、6.25 μMの濃度で6時間処理しRT-PCRを行った結果、IL-8とmGFP mRNAは共にDNCB処理で誘導された。さらに、蛍光顕微鏡によりDNCB処理によるmGFPタンパク質の発現誘導も観察できた。以上より、内在性IL-8プロモーター制御下でGFPを発現するTHP-1細胞の作製に成功した。
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浜島 敏之, 須山 由美, 林 良太, 葛西 義明, 入口 翔一, 大塚 博比古, 福井 英夫
セッションID: P-227
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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サルでは末梢で胸腺機能を評価するマーカーが確立されていなく、胸腺生検によるリンパ球の解析や病理評価が必要な場合がある。本検討では、胸腺機能の経時的変化を同一個体で評価する為の、繰り返し胸腺を採材する手法について胸腔鏡法と開胸法とを比較検討した。胸腔鏡法では胸腺の描出が容易でなく、摘出が困難であったことから、熟練した技術と適切な手術器具の選定が必要と考えられた。一方、開胸法では左右の第3あるいは第4肋間を約2 cm切開し、直視下で胸腺を採取することが可能であり、出血も少量であった。
そこで、開胸法で同一動物から胸腺を4あるいは5週間間隔で計3回採材した。その結果、同一動物から繰り返して胸腺の採材が可能であった。赤血球数及び好中球数にわずかな変化を示す個体がみられたが、その他、出血や感染を示す変化はみられず、一般状態、体重、血液学的検査値、胸腺の病理組織学的検査に繰り返しの開胸手術及び胸腺採材による侵襲ストレスに起因する懸念される変化もみられなかった。次に、胸腺の採材間隔を4~5週間から2週間に短縮した場合の影響について検討した。その結果、2回目の採材では胸腺細胞(CD45+CD20-細胞)数に影響はなく、胸腺の病理評価は可能であったが、その2週間後に実施した3回目の採材では、胸腺細胞が著明に減少し、胸腺を病理組織学的に確認できなかった。原因は短期間に実施した過度な手術侵襲ストレスにより胸腺が萎縮したためと考えられた。
以上、サルの胸腺から繰り返して組織を採材するために簡便な開胸法が適していること、及び採材の間隔は4週間程度であれば手術侵襲ストレスに起因した変化は認められないことが明らかとなった。
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森岡 舞, 宇田 一成, 今井 則夫, 藤原 あかり, 沼野 琢旬, 河部 真弓, 米良 幸典
セッションID: P-228
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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【背景・目的】
ナノ材料の呼吸器系への有害性評価においては、気管内投与法が用いられている。気管内投与法は吸入暴露試験に比べ、安価、簡便であり、肺への投与量を比較的簡便に推定する事ができる。しかし、ナノ材料の溶液中での分散性は、使用する媒体に依存し、様々な種類の媒体が使用されているのが実情である。
本実験では、ナノ素材の有害性評価を実施した文献で報告されている6種類の媒体を、スプレーゾンデを用いてラットに単回気管内投与し、投与3日後の肺及び胸腔における急性影響について比較検討を行った。
【方法】
動物は8週齢の雄Crl:CD (SD) (日本チャールス・リバー株式会社)を用い、①生理食塩液、②純水、③リン酸緩衝液(PBS)、④KolliphorⓇ P188含有生理食塩液 (0.5%KP188)、⑤0.1%Tween 20及び⑥1%BSA含有PBSをそれぞれ1 mL/kgの用量で単回気管内投与をした。観察期間中は一般状態及び体重測定を行い、投与3日後に剖検し、肉眼的病理学検査及び器官重量測定を行った。また、肺胞洗浄液(右肺)及び胸腔洗浄液を採取し、それぞれの細胞分類及び生化学的検査を行った。
【結果・まとめ】
全ての媒体において死亡動物はみられなかった。一般状態では、投与直後にラッセル音がみられたが、翌日には消失し、その後はいずれの群においても異常所見はみられなかった。胸腔洗浄液の細胞分類及び生化学的検査、また、肺胞洗浄液の総細胞数では無処置群と比較していずれの媒体群においても有意な差はみられなかった。肺胞洗浄液の細胞分画においては、生理食塩液及びPBS群で好酸球数の有意な低値がみられ、0.5%KP188群で好中球数の有意な高値がみられた。また、生化学的検査では0.5%KP188群でアルカリフォスファターゼ、総蛋白、アルブミンの有意な高値がみられた。現在、肺を含めた主要臓器の病理組織学的検査を行っており、上記検査結果と併せて本学会にて報告する。
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鎌田 満稔, 島田 知季, 林 良太, 大塚 博比古, 福井 英夫
セッションID: P-229
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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テレメトリー送信器を留置した動物を用いて心血管系に及ぼす影響を評価する安全性薬理(テレメトリー)試験では、薬物作用の有無と血中薬物濃度との関係が評価上重要である。一般的にサルでは採血時のハンドリング操作が心血管系パラメータに影響を及ぼすことが知られていることから、血中薬物濃度(TK)測定を別試験として実施することが多い。しかし、同一試験内にTK測定を組み込むことができれば、心血管系変化とその時点での血中薬物濃度との関係を同一個体で評価することができ、実験回数及び被験物質量の削減も期待される。今回、テレメトリー試験へのTK測定の組み込みを目的として、以下の検討を行った。社内トレーニングプログラム(入荷後4週間のヒト親和性向上トレーニング+4週間のハンドリングトレーニング)及び行動量測定で判定基準をクリアしたサル4頭に送信器を埋め込み、ケージ内採血のトレーニングを1日2回(午前及び午後)、1回当たり2分以内で約2ヵ月間行った。その結果、4例中3例はトレーニング開始2週目までに、残り1例は開始7週目までに、トレーニング効果が完全に獲得され、TK採血操作が心血管系パラメータに大きな影響を与えなかった。これらの動物に、α1受容体作動薬エチレフリン及びCa拮抗薬ニフェジピンを投与して、ケージ内TK採血を実施した条件で心拍数及び血圧を評価した。その結果、データ取得中のTK採血操作は、エチレフリンによる血圧上昇、ニフェジピンによる心拍数増加及び血圧下降の程度に影響を及ぼさないことが明らかとなった。以上より、サルのテレメトリー試験へのTK採血の組み込みは、試験前にトレーニングを行うことにより、個体ごとに血中薬物濃度を考慮した精度の高い心血管系評価が可能であった。また、本法は実験回数及び被験物質量の削減に繋がり、動物愛護及びコストの観点からも有用であると考えられた。
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横山 雄一, 加藤 杏子, 上田 直子, 石毛 孝征, 谷口 友美, 野澤 亮介, 高塚 隆之
セッションID: P-230
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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【背景・目的】近年の医薬品開発において難溶性の候補化合物が増加しており,低曝露により毒性試験が困難なケースが生じている.これらの難溶性化合物開発における溶解改善手法として,発表者らのグループはこれまでナノ懸濁液を用いた曝露改善手法について報告してきた[1], [2].これらの報告における調製容量は探索段階での毒性試験,げっ歯類での毒性試験での適応を想定したナノ懸濁液調製容量(100 mL以下)であった. 今回,シンキー社製NP-500TWINを用いて,大動物反復毒性試験での適用を想定した調製容量でのナノ懸濁液の調製方法について検討したので報告する.
【材料と方法】難溶性化合物のモデル化合物としてフェニトイン,ニフェジピン,ナプロキセン,スピロノラクトン,ピロキシカム等を用い,微細化装置としてNP-500TWIN(シンキー)を使用した.粒度分布測定はMastersizer2000(マルバーン)を用いて測定した.
【結果】今回確立した調製方法により,濃度100 mg/mLのナノ懸濁液800 mLを一度の調剤において調製でき,大動物の反復投与毒性試験に十分な量の投与液を調製することが可能であった.また今回検討した5つのモデル化合物すべてにおいてd50<300 nm,d90<800 nmの粒度分布が得られ,適切にナノ化された懸濁液が調製できた.本発表ではナノ懸濁液の安定性評価に関する結果についても併せて報告する.
[1] Komasaka et al., Chem. Pharm. Bull. 62 1073–1082 (2014)
[2] 藤村 他., 第39回年会(P-215)/第41回年会(P-142)
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伊藤 格, 今泉 隆人, 安藤 次郎, 内藤 愛, 金原 智美, 早川 浩太, 山田 鉄矢, 佐久間 隆介, 久保田 友成, 長瀬 孝彦
セッションID: P-231
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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【目的】マウスでは採血量に限度があることから、一般毒性試験において、クエン酸Naを用いる凝固系を省略または別個体で実施してきた。そこで、クエン酸Na血液とこれまで血球算定を実施してきたEDTA-2K血液あるいはヘパリンNa血液との算定値の比較を行った。
【材料および方法】イソフルラン麻酔下で、10週齢のCrl:CD1(ICR)マウス雌雄各10例の腹大動脈から、EDTA-2K血液(血液 [27]:100 mg/mL EDTA-2K水溶液 [1])、ヘパリンNa血液(血液 [27]:ヘパリンNa注射液 [1])あるいはクエン酸Na血液(血液 [9]:3.2%クエン酸Na [1])を採取した。さらに、クエン酸Na血液を採取した後に、注射筒を換え、抗凝固剤処理をしていない血液を採取した。また、ヘパリンNa血液あるいはクエン酸Na血液の一部をEDTA-2Kコーティングチューブに入れ、EDTA-2K混合血液とした。血液学的検査及び血液生化学的検査(クエン酸Na血液を除く)を実施し、測定値を希釈率で除して補正した。
【結果】クエン酸Na+EDTA-2K混合血液の血球算定では、EDTA-2K血液と比較して同一項目において雌雄両性で有意差は認められなかった。よって、クエン酸Na+EDTA-2K混合血液は希釈補正することにより、血球算定を実施可能であった。一方、EDTA-2K血液の凝固系の値は、クエン酸Na血液と比較して有意差が認められ、ヘパリンNa血液は、測定不能であった。また、EDTA-2K血液あるいはヘパリンNa血液の血漿を用いた血液生化学的検査では、血清と比較して有意差が散見された。したがって、クエン酸Na血液を採取後、抗凝固剤処理をしていない血液を採取することで、ガイドラインに記載された一般毒性試験の全血液検査項目を同一個体で測定することが可能である。
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長尾 友子, 池田 博信, 伊藤 昭人, 山本 真史, 飯高 健
セッションID: P-232
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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【背景】心臓の拍動は交感神経と副交感神経の両方から調節されている。心拍の周期変動の周波数成分をパワースペクトル解析し低周波成分(LF:Low Frequency)と高周波成分(HF:High Frequency)に分けた時、LF成分は交感神経活動と副交感神経活動両方の影響を受けて形成され、HF成分は主に副交感神経活動の影響をより多く受けるとされている。また、両者の比をとった指標(LF/HF比)は交感神経活動の指標として用いられている。そこで、我々は血圧の脈波から心拍変動の周波数解析を行い、交感神経の活動又は副交感神経の活動を数値化した。さらに、薬剤投与後のLF成分及びHF成分を求め、自律神経の活動を捉える事が可能か検討した。
【方法】テレメトリー送信機(HD-S10、DSI社)を埋め込んだ雄性SD系ラットの血圧を無麻酔・無拘束下で24時間以上連続測定した。血圧脈波から心拍変動の周波数成分をパワースペクトル解析し、LF成分(0.04~0.6 Hz)とHF成分(0.6~2.4 Hz)のパワー値ならびにLF/HF比を求めた。無処置でHF成分及びLF/HF比の明期と暗期の差を確認した後、媒体及び自律神経系に作用する薬剤を投与した。
【結果】明期は暗期に比べHF成分が多く、LF/HF比は低い傾向を示した。交感神経作動薬のフェニレフリン単独投与ではLF/HF比が増加し、副交感神経遮断薬のスコポラミン単独投与はHF成分の減少が認められた。また、交感神経β受容体遮断薬のナドロールと交感神経α受容体遮断薬のフェノキシベンザミン併用投与ではLF/HF比の減少が認められた。
【考察】ラットに自律神経に作用する薬剤を投与した際の交感神経活動及び副交感神経活動の変化を、心拍変動解析によって求めた。その結果、HF成分ならびにLF/HF比を指標として自律神経の活動を捉える事が可能であった。
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坂井 勝彦, 水流 功春
セッションID: P-233
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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【背景と目的】近年、医薬品開発の非臨床・安全性試験では体外ジャケット式テレメトリーによる評価を行う試験系が多くなってきた。しかし、テレメトリー送信器による測定よりは心電図波形のノイズが多く、また従来の保定下での心電図測定では検出されていなかった不整脈の起因の特定に困窮している現状である。その反面、非侵襲的に長時間測定可能であり、臨床と同様の測定法との大きな利点を有する。この2つのバランスをより良い解析評価の方法の検討を目的とした。
【方法】カニクイザル(Macaca fascicularis)において体外ジャケット式テレメトリーJET-System〔Data Sciences International (以下DSI)〕を使用し心電図を24時間以上のデータを無拘束下にてPonemah〔DSI〕で取得したデータをPonemah で解析を実施し、Data Insights™〔DSI〕を用いて評価法を検討した。
【結果と結論】従来の行ってきた評価よりもData Insights™を併用した解析評価が有用性と再現性が確認できた。これによりData Insights™の機能を有効的利用することにより従来よりも標準化された手順の元に再現性の高いデータによる評価が可能になった。
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國枝 正幹, 杉山 賢, 小松 弘幸, 秋江 靖樹
セッションID: P-234
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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2017年にISO10993-4「血液適合性試験」の改訂により,血液接触デバイスにおけるin vivo血栓性試験が追加された.本試験方法は,血管内カテーテル操作の技術を有していれば可能であるが,デバイスへの血栓付着のスコア化の習得には,実際のデバイスを用いた評価が必要であると考えられる.そこで我々は,2種のガイドワイヤーの血栓性評価の検討をNAAI(Non-anticoagulated arterial implant)モデルを用いて行ったので報告する.
【方法】麻酔下で抗凝固剤非処置ビーグル犬の総頸動脈からシースイントロデューサーを介し,0.035インチガイドワイヤーAまたはBを大腿動脈まで挿入した.30分後,高単位ヘパリンナトリウムを静脈内投与し,ガイドワイヤーを血管から取り出して評価した.スコアは,【スコア0:血栓形成が皆無または最小限である】,【スコア1:最小限の血栓形成,物質表面の1%から25%覆われている】,【スコア2:わずかな血栓形成,物質表面の26%から50%覆われている】,【スコア3:深刻な血栓形成,物質表面の51%から75%覆われている】,【スコア4:広域で血栓形成,物質表面の76%から100%覆われている】として評価した.
【結果】ガイドワイヤーAを処置した結果,スコアは1~2で,赤白色または赤色の血栓(全周性または部分的な血栓)が散在していた.それに対し,ガイドワイヤーBのスコアは4で,評価部位のほぼ全域に赤色の血栓(ほぼ全周性の血栓)が付着していた.以上より,上記基準で血栓性をスコア化し判定可能であることが示された.NAAIモデルは血栓性試験にて用いられるモデルの中でも血栓形成がしやすい条件であることから,今後は,適切な抗凝固剤量で実施するAAI(Anticoagulated arterial implant)モデルを用いた評価検討も併せて報告する.
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谷本 憲昭, 内田 景子, 松岡 奈央子, 仁科 嘉修, 馬場 伸之
セッションID: P-235
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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【背景】近年,動物福祉向上の観点から,動物実験に環境エンリッチメント(EE)を導入することが必須となってきている.げっ歯類用にも,隠れ家となるシェルター,巣材,齧り木など,様々なEEが販売されており,これらは一般毒性試験でも使用されている.雄マウスは,その生来の攻撃性のためにしばしば闘争を引き起こして同居する動物を傷付けることがあり,毒性試験の評価項目に影響することから闘争を回避することが望ましい.マウスにおける巣材やシェルターといったEEへの反応性は系統により異なり,闘争を防止する,或いは逆に助長することが報告されている.本試験では弊社で毒性試験に用いるCrl:CD1(ICR)マウスを用い,EEの組み合わせにより闘争を回避できる飼養条件および各種毒性評価パラメータへの影響を検討した.
【方法】6週齢のCrl:CD1(ICR)マウス(雄,各群12例)を各種のEE組み合わせ条件で群飼育し(プラスチックケージ・床敷・3匹群飼育.EE:①パルトーイ三角,②パルトーイ三角+エンヴェロドライ,③パルトーイ三角+イグルー,④パルトーイ三角+エンヴェロドライ+イグルー),注射用水を2週間強制経口投与した条件で,ケージごとに午前中30分間の闘争の頻度を集計した.また,各種EE組み合わせ条件での一般毒性試験評価項目への影響を検討した.試験間の偏りを考慮し,同じ試験デザインを3回実施した.
【結果】①②の条件と比べて③④の条件で闘争の頻度が低い傾向が認められたことから,Crl:CD1(ICR)マウスではイグルーにより闘争が抑制されることが示唆された.①②群では闘争による咬創,痂疲形成が認められた.現在1回目の試験を終了し2,3回目の試験が進行中である.その結果と合わせ,各種EE組み合わせ条件における一般状態,体重,摂餌量,血液学的検査,血液生化学的検査,器官重量への影響についても報告する.
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木村 恵人, 美濃部 典子, 松田 仁美, 堀 克彦, 小杉 祥子, 石本 明宏, 飯高 健
セッションID: P-236
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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【背景・目的】突発性肺線維症(IPF)は肺胞に損傷・炎症が起こり、その修復のためにコラーゲンなどが増加して間質が厚く硬くなる疾患である。発症原因は不明のことが多く、詳細な機序については解明されていない。今回、肺線維症モデルの病態の進行の確認とIPF治療薬である抗線維化剤(ニンテダニブエタンスルホン酸塩:オフェブ)の効果を検討したので報告する。
【方法】8週齢のSlc:ICR雄性マウスにブレオマイシンを5日間連続静脈内投与した。ブレオマイシン初回投与から3日に1回体重測定を実施した。病態の進行を確認するため、初回投与28、42及び56日後に肺を摘出し、肺重量の測定、肺中ヒドロキシプロリン(HP)量の測定、病理組織学的検査を行った。オフェブの薬効検討では、3及び10 mg/kgをブレオマイシン初回投与日から1日1回42日間経口投与した。
【結果】ブレオマイシンの5日間連続静脈内投与により、肺相対重量の増加及び肺中HP量の増加が認められた。病理組織学的検査においては線維化病巣の形成が確認され、経日的に線維化領域は増加した。
また、オフェブを42日間投与した結果、10 mg/kgは肺相対重量及び肺中HP量の増加抑制が認められた。
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田中 勝貴, 安達 光, 二条久保 大祐, 北澤 多喜雄, 寺岡 宏樹
セッションID: P-237
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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ダイオキシン受容体(AHR)経路と炎症性経路は相互に影響しあうことが報告されているがその機序は不明な点が多い。初期ゼブラフィッシュにはマクロファージと好中球しか存在しない単純な自然免疫モデルとしても有用である。発達初期ゼブラフィッシュはダイオキシン(2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin: TCDD)やその他のAHR2アゴニストに対して高い感受性を示し、心臓周囲浮腫などの循環障害を容易に定量化できる。当研究室では、ダイオキシン誘発性心臓前方浮腫に酸化ストレスや2型AHR(AHR2)-2型シクロオキシゲナーゼ(COX2)-トロンボキサン受容体(TP)経路が関与することを報告してきた。本研究では、初期ゼブラフィッシュにおけるTCDD誘発性浮腫に対する起炎物質(リポ多糖、LPS)の影響を検討した。LPSは低濃度TCDDによる浮腫を増強し、その作用はTP拮抗薬および抗酸化剤により抑制された。酸化ストレス誘導剤であるパラコートはLPSと同様の作用を示した。LPSおよびパラコートは、AHR2の発現量には影響せずに、TCDDによるCYP1A発現を増大させた。また、LPSおよびパラコートはTP作動薬(U-46619)による浮腫を増強し、この増強は抗酸化剤で抑制された。以上の成績より、発達期ゼブラフィッシュにおいて、起炎物質が酸化ストレスを介してTCDD毒性を増強することが示された。酸化ストレスはAHR2経路およびTP受容体経路の両者に作用すると考えられる。
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岩下 直樹, 東條 竜也, 白井 明志, 石井 雅己, 浅井 史敏
セッションID: P-238
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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【背景】肥満遺伝子(fa)を有するWBN/Kob-Leprfaラットは過食および肥満を呈し、早期より脂質異常症および高血糖を発症する2型糖尿病モデル動物である。ヒトにおける2型糖尿病の合併症として糖尿病性白内障ならびに網膜症が良く知られている。本研究では老齢WBN/Kob-Leprfaラットにみられる眼球病変についてWistarラットと比較検討した。
【材料および方法】実験には雄性WBN/Kob-LeprfaラットおよびWistarラットを各7匹使用した。すべてのラットは定期的に体重および血糖値を測定した。40週齢に達したラットを一晩絶食し、麻酔下で採血後、眼球を採取した。採取した眼球をスーパーフィックスで固定し、パラフィン包埋後、薄切切片を作製、ヘマトキシリン-エオジン染色を施し光学顕微鏡で観察した。
【結果】Wistarラットの血糖値は40週齢までほぼ一定であったのに対し、WBN/Kob-Leprfaラットの血糖値は17週齢でピークに達し、40週齢まで高血糖が持続した。高血糖発症後のWBN/Kob-Leprfaラットの体重は減少傾向にあった。病理組織学的検査では、WBN/Kob-Leprfaラットの全例において、水晶体の変性・壊死に起因する白内障及び、び慢性の網膜萎縮が観察された。網膜萎縮は網膜全層に及ぶ強いものであり、網膜全域に観察された。また、WBN/Kob-Leprfaラットでは結膜の水腫も観察されたが(6匹/7匹)、角膜及び虹彩には明らかな変化は観察されなかった。
【結論】以上の成績より、WBN/Kob-Leprfaラットはヒト糖尿病患者と同様の白内障及び網膜萎縮を発症することが明らかとなった。老齢WBN/Kob-Leprfaラットはヒト糖尿病性白内障および網膜症のモデル動物として有用であろう。
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織田 進吾, 宮崎 菜々華, 賈 茹, 常山 幸一, 横井 毅
セッションID: P-239
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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[目的] 肺癌治療EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるゲフィチニブ (GEF) は、臨床において間質性肺炎を引き起こすとともに、稀に重篤な肝障害を引き起こすことが知られる。GEFはチトクロムP450による反応性代謝物の生成、及びその代謝物の解毒的グルタチオン抱合が報告されている。本研究では、GEF誘導性肝障害マウスモデルを作出し、肝障害発症機序を明らかにすることを目的とした。[方法] 7週齢の雄性C57BL/6Jマウス (n = 4-7) に絶食下、1日1回24時間毎にʟ-buthionine (S,R)-sulfoximine (BSO) 700 mg/kgを腹腔内投与し、GEF 750 mg/kgを経口投与した。初回投与から12, 24, 48時間後に剖検した。[結果・考察] 血漿ALT値は、GEF投与24時間後において84 ± 41 U/L (GEF群; mean ± SD)、1474 ± 1943 U/L (BSO+GEF群)、48時間後において3654 ± 3575 U/L (GEF群)、7658 ± 8736 U/L (BSO+GEF群) と、GEF単独でも上昇したが、BSOとの併用で更なる上昇が認められた。両群においてALT値に比例した単細胞性またはびまん性の肝細胞壊死を認め、一部の個体で核の破砕が認められた。肝還元型/酸化型グルタチオン存在比は、対照群と比較してBSO群で20%、GEF群で30%低下したのに対し、BSO+GEF群において50%低下した。GEF群及びBSO+GEF群においてBax mRNAの発現上昇が認められたが、カスパーゼ3/7活性の変動は認められなかった。以上、GEF誘導性肝障害において酸化ストレスが認められ、グルタチオンは保護的に作用することが示された。一方で、アポトーシス反応は優勢ではないことが示唆された。
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領家 克典, 豊田 薫, 鈴木 優典, 高橋 明美, 高橋 統一, 益山 拓
セッションID: P-240
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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【背景】フルクトースは清涼飲料水や菓子に甘味料として多く含まれているが,高脂血症や高尿酸血症のリスクファクターとしても知られており,その過剰な使用は社会問題となっている。フルクトース摂取による非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)モデル動物などの医薬品開発研究への応用も期待されているが,長期間のフルクトース摂取が全身諸臓器に与える影響を一般毒性学的観点から調べた報告は少ない。そこで,炭水化物源をフルクトースに置換した飼料をSDラットに長期間与え,全身諸臓器に及ぼす影響を経時的に調べた。
【方法】雌雄のSDラット(飼育開始時5~6週齢,5~10匹/群/解剖時点)に標準飼料(CRF-1)もしくは高フルクトース飼料(D11707R)を1,14もしくは27週間与え,動物の一般状態観察,体重・摂餌量測定,尿検査,血液学的検査,血液生化学的検査,眼科学的検査,臓器重量測定及び病理組織学的検査を実施した。
【結果】フルクトース摂取に関連した変化が主に肝臓,腎臓及び胃で認められた。肝臓では,1週目から肝細胞の脂肪化が認められ,その後14及び27週目には肝細胞壊死等の変化に発展した。これらに関連する変化として,血漿中総コレステロール及び中性脂肪濃度及び肝機能パラメータの上昇が1週目から認められた。腎臓では1週目から尿細管の変性及び拡張とともに血漿中及び尿中の電解質,カルシウム及び無機リンの変動及び尿中pHの低下が認められ,14及び27週目には尿細管において慢性進行性腎症の発現頻度の増加及び鉱質沈着が併せて認められた。胃では1週目から胃底腺粘液細胞の肥大及び炎症性細胞浸潤が認められ,14週以降には膵腺房細胞化生が認められた。これらの発現頻度はフルクトース摂取期間の延長に伴い増加した。上記の変化の他にも血液学的検査及び血液学的検査等でフルクトース摂取の影響を示唆する変化が認められたが,それらはいずれも軽微であった。
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瀧 憲二, Zaher RADI
セッションID: P-241
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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マイクロRNA(miRNA)は,多くの疾患病因に対して遺伝子発現調節により重要な役割を果たす小さなノンコーディングRNAである。種々のmiRNAの発現様式が,様々な免疫学的要因疾患で報告されている。炎症性腸疾患(IBD)患者では,腸上皮細胞および末梢血において特異的なmiRNA発現プロファイルが報告されている。
多数の化学誘発性の大腸炎モデルが広く使用されており,2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)は,IL-12およびTNF-αを含むTh1媒介免疫応答の活性化を惹起するため,IBDモデルとして使用されている。我々は溶媒対照およびTNBS処置マウスの結腸上皮においてmiRNA発現プロファイルを調べた。2つの標準化アプローチとして,LoessおよびQuantileを適用し,10個の有意に発現変動したmiRNAが得られた。そのうち,miR-142,-224,-342,-410,-434,-467e,-674は増加し,miR-99,-125,-324は減少した。さらに,miR-125は,TNBS処置マウスの結腸上皮において,miR-125のターゲット遺伝子であるTNF-αの発現が増加している一方で,miR-125の発現は約10倍減少していた。また,miR-224は,TNF-α処置マウスにおいて約6倍増加していたが,TNF-αアンタゴニストで処置されたクローン病患者の血清中で増加することが報告されている。
今回のmiRNA発現プロファイルは,miRNAがIBD病因に寄与しているか,または内在する免疫学的過程を反映している可能性があることを示している。miRNA発現解析は,IBD患者における疾患のモニタリングまたは診断に有益であり,miRNA/調節遺伝子経路の解析は,IBDの治療戦略を提供することができると考えられる。
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野中 聖子, Lina LUO
セッションID: P-242
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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種々のメタボローム解析により,胆汁酸は肝障害および肝疾患のバイオマーカーとなる可能性が示唆されている。これらの解析では,主に健康な個体と肝疾患を有する個体の生体試料(血清または尿)の比較により,バイオマーカーとなりうるパラメータが特定されている。これらの多くの試験では,健康な個体と比較して肝疾患を有する個体で種々の胆汁酸が上昇することが報告されている。このことから,コール酸,グリココール酸およびタウロコール酸など種々の胆汁酸は,非臨床および臨床試験における薬物性肝障害(DILI)の有用なバイオマーカーとなる可能性が期待されている。一方,摂食により胆汁酸放出が刺激されることから,疾患または薬剤による血清中胆汁酸への影響と区別する必要がある。そこで,本研究ではビーグル犬およびカニクイザルを用いて血清中胆汁酸プロファイルに対する摂餌の影響(経時変化・摂餌量)について評価した。
試験動物から摂餌前および摂餌後に採血し,9種の血清中胆汁酸(コール酸,ケノデオキシコール酸,デオキシコール酸ならびにこれらのタウリンまたはグリシンの抱合体)の経時的変化(イヌ:0.5, 1, 2, 4, 6, 24時間,サル:0.5, 1.5, 4時間)について,バリデートされたLC/MS/MS法を用いて測定した。イヌでは,摂餌後に最も上昇したのはタウリン抱合体で,総胆汁酸の上昇のタイミングと相関していた。これは,タウリン抱合体がイヌで最も多い胆汁酸の構成成分であることに起因すると考えられた。サルでは,摂餌前においてはデオキシコール酸が血清中総胆汁酸の58%を占めるが,摂餌後にはタウリン抱合体およびグリシン抱合体が上昇したことにより,血清中胆汁酸の構成割合が顕著に変動した。
以上の知見が,薬剤開発などにおいて摂食後の血清中胆汁酸をバイオマーカーとして評価する場合の背景値として役立つことが期待される。
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中村 亮介, 荒川 憲昭, 前川 京子, 斎藤 嘉朗
セッションID: P-243
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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【目的】血清と血漿は、タンパク質の網羅的測定に広く利用されている解析対象試料である。血清が全血を一定時間静置することによって血餅と分離されるのに対し、血漿は凝固防止剤を添加して血球成分を遠心分離することによって得られる。この時、遠心分離までの放置条件(温度・時間)からの逸脱や、血漿と血球との間に存在するバッフィーコート(BC)層のコンタミネーションなどが起こると、タンパク質組成に大きな影響を及ぼしうる。これらは研究室や臨床検査室における結果のミスリードにつながるため、どのようなタンパク質が放置条件やBC層コンタミネーションの影響を受けやすいかを解析した。
【方法】インフォームド・コンセントの下、健康成人男性4名の上腕部から全採血を行ない、EDTA採血管に7 mL分取した。これを直ちに遠心分離した条件N、4℃で6時間及び30時間放置後に分離した条件P及びS、室温で30時間放置後に分離した条件Wの4通りの血漿試料を調製した。条件Nについては、血漿画分の最上層をU画分、中間層をM画分、BCを確実に含む最下層をB画分として分取した。これらの検体中のタンパク質発現量を、アプタマーを用いる網羅的発現解析技術(SOMAscan)を用いて解析・比較した。
【結果及び考察】血漿試料P, S, Wにおいて、試料Nに比べて発現が変化したプローブは、それぞれ102, 99, 119種であり、169種がいずれかの調製条件で変化していた。放置により発現が増加するのはヒストン等の核内タンパク質等、減少するのはBtk等の血球系細胞が持つシグナル伝達分子が多かった。Histone H1.2はBC層の混入があるB画分でU画分の19.7倍の値を示した。Platelet factor 4など血小板に特徴的なタンパク質も増加していた。これらのタンパク質は、血漿試料の調製条件からの逸脱により試料中の混入量が大きく増減するため、これらのタンパク質が見かけ上変動している臨床検体由来の血漿試料は、その調製条件に、温度・時間・BC層のコンタミネーション等、何らかの不備があった可能性を考慮すべきと思われる。
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高田 早苗, 本多 久美, 安野 恭平, 島田 信, 渡辺 智宏, 西矢 剛淑, 森 和彦
セッションID: P-244
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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【目的】腎障害の診断のために様々な尿中バイオマーカー(BM)が測定されているが、マウスに関する報告は少ない。本研究では、B6C3F1/Crlマウスの尿中BM(kidney injury molecule1[KIM-1]、albumin、osteopontin、neutrophil gelatinase-associated lipocalin[NGAL]及びclusterin)の背景値を収集するとともにシスプラチン(CDDP)腎障害時のBMの変動を調べた。
【方法】無処置の8又は10週齢のB6C3F1/Crlマウス雌雄各20例を用いて尿中BMをMILLIPLEX® MAP Mouse Kidney Injury Magnetic Bead Panelとレビス®尿中アルブミン-マウスで測定した。次に、8週齢の雄マウス(5例/群)にCDDPの10又は20 mg/kgを単回皮下投与(Day 1)後、Day 3~4に24時間尿を採取して尿中BMを測定するとともに、Day 4に血漿中腎パラメーター(尿素窒素[UN]及びクレアチニン[CRE])及び腎の病理組織学的検査を実施した。
【結果・結論】マウスでは、KIM-1、albumin及びNGALは全例で測定可能であり、週齢差はみられなかった。Albuminは雌が雄の約2倍の高値を示し性差がみられた。Osteopontin及びclusterinは18/80例が定量下限未満であり、糞の混入によって低値を示した。CDDPの10及び20 mg/kgでそれぞれ軽微及び軽度な近位尿細管の単細胞壊死が惹起された。軽微な腎障害例において尿中albuminの増加傾向、軽度な腎障害例ではKIM-1、albumin及びNGALの有意な増加がみられた。CDDPの20 mg/kgでは血漿中UN及びCREの有意な増加もみられたが、マウスにおいても尿中BMがより感度に優れることが示唆された。
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青木 正美, 須藤 雄介
セッションID: P-245
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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血中のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)は、肝障害のバイオマーカーとして使われているが、毒性試験では肝臓に病理組織学的変化がみられなくても上昇するケースがしばしば認められ、肝臓以外の由来を考慮する必要があるが、毒性試験に使用される動物種の臓器・組織におけるそれらの発現分布及びその動物種差に関する情報は限られている。我々は以前、ラットの諸臓器・組織におけるALT、AST及びGLDHの分布について調べた結果を報告した(日本毒性学会年会, 2017)。今回はイヌの全身諸臓器・組織におけるこれら酵素の分布について、活性値及びタンパク質発現量(ALT及びASTはアイソフォームとして)の両面から解析を行い、ラットのそれと比較した。ASTは肝臓以外の多くの臓器・組織においてその活性とAST1, 2タンパク質の発現を認め、ラット同様に全身に渡り広く分布する酵素であることが明らかとなった。GLDHは肝臓における活性及びタンパク質発現量が他臓器・組織よりも圧倒的に高く、ラット及びイヌともに血中GLDHは肝臓が最も主要な由来臓器であると考えられた。ALTはラットでは肝臓に次いで小腸のALT活性が高かったが、イヌ小腸のALT活性は低く、また肝臓ALT活性総量の体内比率はイヌの方が高かった。イヌのALT活性は、他に心臓、胃及び骨格筋等で高く、さらに器官重量(器官のサイズ)を加味すると白色脂肪もALT活性総量の多い組織であった。イヌを用いた毒性試験において、肝臓の病理組織学的変化を伴わない血中ALT, AST及びGLDHの変動がみられた場合は、これら由来候補となる臓器・組織について、器質的変化の有無、これら臓器・組織へ影響を及ぼす病態あるいは被験物質の作用を考慮した評価が必要であると考えられた。
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作田 直道, 三木 篤子, 花香 奈津美, 大江 みどり, 田中 光恵, 村田 英治, 緒方 英博, 平塚 秀明
セッションID: P-246
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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【緒言】腎障害を予測することは極めて重要であり,非侵襲的かつ経時的に得ることが可能な尿は有用性が高い.ラットの場合,検査に必要な尿量を確保するためには一定時間の蓄積尿を用いる必要があるが,ラット尿中における腎障害バイオマーカーの安定性に関する情報は乏しく,採尿中に各種バイオマーカーの活性が変化するかどうかは不明である.そこで我々は,ラットに腎毒性を誘発する薬剤を投与して尿を採取し,経時的に測定を行うことで尿中腎障害バイオマーカーの安定性を検討した.
【方法】ラット(雄性,10週齢)にシスプラチンを5 mg/kgの用量で単回腹腔内投与した.投与日を第1日として,第6日に新鮮尿(最長3時間の蓄積尿)を採取した.採尿は氷冷下で行い,得られた尿を用いてClusterin,B2M,αGST,GSTYb1,RPA-1,NGAL,KIM-1及びOsteopontinをECL法にて測定し,Cystatin-C,総蛋白,アルブミン,NAG及びクレアチニンを自動生化学分析装置にて測定した.採取直後に測定した尿中腎障害バイオマーカー値を初期値とし,室温保存25時間後,冷所保存25時間後,凍結保存(約-80℃)25時間後の測定値を比較した.
【結果】測定したバイオマーカーのうち,NAG,GSTYb1,NGAL及びOsteopontinについては,初期値と比較して室温保存25時間後の測定値に減少傾向が認められた.さらにOsteopontinは冷蔵保存25時間後の測定値も同様に減少傾向が認められた.その他の項目については,いずれの条件下でも測定値に大きな変化は認められなかった.以上の結果より,測定するバイオマーカーの項目によって尿採取時の温度条件を考慮する必要があると考えられた.
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山口 崇, 甲斐 清徳, 森 和彦
セッションID: P-247
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
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【背景と目的】非げっ歯類の臨床検査値は、げっ歯類と比べて個体差(個体間変動)が大きく、その検査値の基準範囲からの逸脱の有無は、必ずしも投薬による影響の有無を意味しない。そのため、投薬前に取得した各個体のベースラインや生理的な検査値の変動(個体内変動)も考慮して投薬の影響を判断することが重要であるが、判断基準に評価者の主観が入りやすいため、評価者間のばらつきの一因となり得る。このような場合、個体内変動及び分析機器の変動から算出される基準変化値(Reference change value:RCV)が有用な指標とされている。本研究では、臨床検査値の変動をより適切に評価するため、イヌ及びサルの臨床検査項目の短期的な生物学的変動の大きさを明らかにし、95%信頼限界のRCV(95%RCV)を算出した。
【材料と方法】雌雄のビーグル犬(n=53~162、検査項目によってn数が異なる)及びカニクイザル(n=175~669)の、投薬前の2検査日に実施した血液学的検査値及び血液化学的検査値を対象に、生物学的変動(個体間変動及び個体内変動)の大きさを統計学的に推定した。また、分析機器の精度管理データより分析機器の変動の大きさを推定し、個体内変動と分析機器の変動を基に95%RCVを算出した。
【結果とまとめ】各項目の95%RCVを評価することにより、イヌ及びサルの臨床検査値の変動が生理的変動であるか異常変動であるかを、これまでよりも客観的に判断できるようになった。当施設におけるイヌ赤血球数の95%RCVは9.1%で、同一個体の連続する2点間(例えば投薬前後)の検査値変動が±9.1%を超える場合は、基準範囲内であっても有意水準5%で統計学的に有意な変化があったと判断できる。したがって、従来の基準範囲に加えてRCVを臨床検査値の評価に使用することで、検査値の変動をより適切に評価できると考えられる。
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魚田 孝志, 保田 昂之, 山口 崇, 吉池 通晴, Venkatesh KRISHNAN, Kurien ABRAHAM
セッションID: P-248
発行日: 2018年
公開日: 2018/08/10
会議録・要旨集
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FDAへの申請において、非臨床試験についても電子データの提出が義務化されたことにより、各社ではSEND標準のデータセット作成が始まっている。SENDはCDISCによって定められた電子データの格納方法を示す標準であり、データセット名、変数名、利用可能なコードリスト等が規定されている。従来は、データの可視化や統計解析を実施する際、システムやツールの利用においてデータセットの仕様に応じた変数の設定等を行う必要があったが、このSEND標準のデータを用いることで、試験データの可視化や統計解析の手順を自動化することが可能になる。また、いまだ課題はあるものの『標準化されているデータである』ことから、データソースが異なっていたとしても試験データの統合が可能になり、試験を跨いだ解析等、申請以外での有効的な利用についても期待されている。
本発表では臨床検査値を格納しているLBドメインに着目した。過去に実施された複数試験のデータを統合し、そのデータを基に生物学的変動を評価できる仕組みを構築した。具体的には個体内変動及び分析機器の変動を基にした基準変化値(Reference change value:RCV)を求め、視覚的に評価を可能とするものである。SEND標準では各動物の臨床検査値が試験ごとのデータセットで管理されることから、データハンドリングによるデータセットの統合、解析処理、データの視覚化といったプロセスを実施している。ただ、この仕組みを構築する上で課題もあった。
検査項目によっては、性差や産地差等を考慮することも必要であるが、SEND Implementation Guideで定められている情報のみでは不十分であった。そのため、その情報を補う方法を検討し構築を行った。本発表では臨床検査値の評価プロセスを紹介し、今後の課題について言及する。
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