日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
選択された号の論文の466件中301~350を表示しています
一般演題 ポスター
  • 中津 則之, 五十嵐 芳暢, 山縣 友紀, 松山 晃文, 秋丸 裕司, 秋丸 恵理佳, 大倉 華雪, 堀本 勝久, 福井 一彦, 江良 択実 ...
    セッションID: P-99
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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     薬剤性肝障害は医薬品の市場撤退・開発中止の主な要因の一つであり、克服すべき重要な課題である。医薬品の効率的開発および安全性確保のため、特に創薬早期において利用可能なin silicoおよびin vitro肝毒性予測技術の発展が強く望まれている。AMEDのプロジェクト「創薬支援インフォマティクスシステム構築」の一環である「肝毒性予測のためのインフォマティクスシステム構築」に関する研究において、我々は肝毒性データ収集とデータベース構築、in vitro肝毒性マーカーパネルの構築、肝毒性知識統合のためのオントロジーデータベースシステムの構築を担当している。本研究では、in vitroでの肝毒性予測を目指すため、FDAのLiver Toxicity Knowledge Base (LTKB)において肝毒性が示唆される医薬品を中心に、ヒト初代肝細胞における遺伝子発現データを収集し、データベースを構築している。一部についてはラットin vivoにおける肝臓の遺伝子発現データ・毒性データを取得している。これらのデータを用いて、約10個の肝毒性予測モデルから構成されるin vitro肝毒性マーカーパネルを構築している。さらに、肝毒性知識を体系化し、毒性機序の解釈を支援する肝毒性知識統合のためのオントロジーデータベースシステムを構築している。これらを総合して、肝毒性を予測・評価するシステムの構築を進めている。本発表では、研究の概要および進捗について報告する。

     本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の創薬支援推進事業の支援により行われた。

  • 藤江 智也, 忍 勇太朗, 鍜冶 利幸, 山本 千夏
    セッションID: P-100
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【背景】血管の内腔を一層に覆っている内皮細胞は,血液と直接接しているので,重金属の重要な標的である。当研究室では,鉛およびカドミウムによる内皮細胞機能の障害メカニズムを明らかにしてきた。しかしながら,これら重金属の相互作用に関する研究は少ない。本研究の目的は,内皮細胞における鉛およびカドミウムの相互作用と,そのメカニズムを明らかにすることである。【方法】培養ウシ大動脈血管内皮細胞に鉛とカドミウムを曝露し,形態学的観察により細胞障害性を評価した。タンパク質およびmRNA発現をウエスタンブロット法およびreal-time RT-PCR法によりそれぞれ解析した。細胞内金属量はICP-MSを用いて測定した。【結果および考察】内皮細胞にカドミウムを曝露したとき,1 μMから細胞層の障害が認められた。鉛を10および50 μMで曝露したとき,細胞障害は観察されなかったが,カドミウムを同時に曝露したとき,内皮細胞障害はそれぞれの単独曝露と比較して増強されていた。これまでに,鉛は小胞体ストレスを惹起することにより内皮細胞を障害することを明らかにしている。そこで小胞体ストレスに対する防御タンパク質であるGRP78およびGRP94発現を解析したところ,鉛曝露により上昇したGRP78およびGRP94 mRNA発現は,カドミウム同時曝露により抑制された。一方,鉛およびカドミウムの細胞内蓄積量はそれぞれの曝露によって増加していたが,同時曝露の影響は認められなかった。また,生体防御タンパク質メタロチオネインは,カドミウムによって誘導されていたが,鉛の同時曝露による影響は認められなかった。以上より,鉛の内皮細胞障害はカドミウムにより増強されること,またこの作用はGRP78およびGRP94誘導の抑制による小胞体ストレスに対する防御能の低下によることが示唆される。

  • 外山 喬士, 戸田 英汰, 永沼 章, 黄 基旭
    セッションID: P-101
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【目的】 当研究室での培養細胞を用いた検討により、メチル水銀によって合成誘導されたオンコスタチンMが細胞外に放出された後にTNF受容体3(TNFR3)の細胞外ドメインに結合することで細胞死を誘導することを明らかにしている。これまでに、脳中でのTNFR3の機能について検討した例はなく、個体レベルにおけるメチル水銀毒性とTNFR3との関わりは不明である。そこで、マウス個体を用いてメチル水銀による脳神経傷害へのTNFR3の関与について検討した。

    【結果及び考察】 まず、マウス各臓器中のTNFR3の発現量をイムノブロッティングにより調べたところ、腎臓や肝臓、脾臓でのTNFR3の発現量は非常に少なく、大脳と小脳において比較的高く発現していた。また、脳切片でのTNFR3抗体による免疫染色像は、神経細胞のNeuN抗体による免疫染色像と重なったことから、TNFR3は主に神経細胞で発現すると考えられる。メチル水銀 (25 mg/kg) を皮下投与し、3日後のマウス大脳におけるTNFR3の発現はcontrol群と比較し変わらなかった。次に、ローターロットテストによりマウスの運動機能を調べた。その結果、メチル水銀 (25 mg/kg) を皮下投与することによって運動機能の低下が認められ、この低下はTNFR3抗体の脳室内投与によって一部抑制された。また、マウスの大脳を摘出して作製した凍結切片をNeuN抗体を用いた免疫染色を行った。その結果、メチル水銀投与によって大脳皮質に存在するNeuN陽性細胞の減少が認められたが、この減少はTNFR3抗体の脳室内投与によって抑制された。また、メチル水銀によるアポトーシス誘導時に観察されたDNAの断片化もTNFR3抗体の脳室内投与によって抑制された。以上のことから、マウスの脳内で高く発現しているTNFR3は、メチル水銀による脳神経障害に関わる重要な因子である可能性が初めて示唆された。

  • 原 崇人, 酒巻 沙弥香, 中村 武浩, 山本 千夏, 鍜冶 利幸
    セッションID: P-102
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【背景・目的】プロテオグリカンは,コアタンパク質に対して高度に硫酸化されたグリコサミノグリカン糖鎖(GAGs)が結合した複合糖質であり,細胞膜表面や細胞外に産生される。プロテオグリカンのGAG糖鎖は増殖因子などの生体分子と結合して細胞増殖や遊走活性を調節するが,これらの機能にGAGsの硫酸化修飾が寄与することも知られている。当研究グループは,亜鉛錯体Zn-DMP(Dichloro(2,9-dimethyl-1,10-phenanthroline)zinc)が,血管内皮細胞の増殖活性を強力に促進させることを見出している。本研究の目的は,Zn-DMPが血管細胞から産生されるプロテオグリカン合成に及ぼす影響を明らかにすることである。【方法】Dense cultureとsparse cultureの血管内皮細胞および血管平滑筋細胞を調製し,[35S]硫酸を含む培地中でZn-DMPおよびその構造類縁体を処理した。細胞層および培地に蓄積したGAGsへの[35S]硫酸の取り込みはCPC沈殿法により測定した。【結果・考察】内皮細胞の細胞層および培地中に合成されたGAGsへの[35S]硫酸の取り込みは,Zn-DMPによりdense cultureでは濃度依存的に増加したのに対し,sparse cultureでは濃度依存的に減少した。これと比べて,血管平滑筋細胞のdenseおよびsparse cultureにおいては,顕著な変化は認められなかった。血管内皮細胞で認められたGAGsへの[35S]硫酸の取り込みの細胞密度依存的な変化は,Zn-DMPの配位子DMPでも生じた。中心金属の役割を検討したところ,Co-DMPやNi-DMPはZn-DMPと同様に内皮細胞のGAGsへの[35S]硫酸の取り込みを制御した。Cu-DMPおよびCd-DMPは顕著な細胞傷害性を示した。Zn-DMPおよび配位子によって発現が制御されるプロテオグリカン分子種については現在解析中であるが,これらの化合物による血管内皮細胞特異的なプロテオグリカン分子の合成調節機構の存在が示された。

  • 杉本 彩夏, 大須賀 亮平, 三浦 伸彦, 木村 朋紀
    セッションID: P-103
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【目的】カドミウム毒性は、金属結合タンパク質メタロチオネイン(MT)の誘導を介した生体防御系により抑制されることがよく知られている。しかしながら、MTは重金属解毒以外にも様々な作用を有しており、カドミウム曝露はMT誘導を介して、これら作用を攪乱する可能性が考えられる。我々は、骨髄球系細胞分化にMT発現抑制が関わるという報告に注目し、カドミウム曝露により、このMT発現抑制は阻害されるのか、また、このときに細胞分化も阻害されるのかを検討した。

    【方法】ヒト急性骨髄性白血病細胞株HL-60細胞にカドミウム処理後、all-transレチノイン酸(ATRA)による分化誘導を行った。各MTアイソフォームmRNAは、それぞれに特異的なプライマーを用いたqPCR法により分別定量した。細胞の分化は、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)還元能により評価することとし、NBT添加後、生成したホルマザンの吸光度測定および顕微鏡観察を行った。

    【結果および考察】MTアイソフォームのうち、MT1Gの発現は、分化した骨髄球系細胞で低下し、また、MT1G過剰発現は骨髄球系細胞分化を阻害することが報告されている。そこで50 nMカドミウム存在下で培養したHL-60細胞のMT1G発現量を測定したところ、2~4週間後には約4倍に増加していた。このとき、MT1XやMT2Aには顕著な発現変動は認められなかった。なお、5 µMカドミウム処理の場合には、3時間後にはMT2Aは20倍以上に増加した。つまり、HL-60細胞は、濃度によってはMT1G以外のアイソフォームも誘導される細胞であることが明らかとなった。次に、骨髄球系細胞分化へのカドミウムの影響を調べたところ、50 nMカドミウムでの2~4週間の培養により、ATRAによる骨髄球系細胞への分化は阻害された。以上の結果より、長期間のカドミウム曝露はMT1G誘導を介して細胞分化を撹乱する可能性が示唆された。

  • 新開 泰弘, 秋山 雅博, 鵜木 隆光, 石井 功, 熊谷 嘉人
    セッションID: P-104
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【目的】カドミウム(Cd)は親電子性を有し、低濃度ではセンサータンパク質のシステイン残基の化学修飾を介したレドックスシグナル伝達経路の活性化を引き起こし、高濃度では非特異的なタンパク質の化学修飾により毒性を発揮する。本研究では、パースルフィドやポリスルフィドなどの活性イオウ分子が高い求核性を有することに着目し、ポリスルフィドのモデルとしてNa2S4を用いてCdによって生じるシグナル伝達経路の活性化や肝毒性に対する活性イオウ分子の役割を明らかにすることを目的とした。【結果および考察】マウス初代肝細胞において、Cdの曝露によって引き起こされたHSP70およびメタロチオネイン-I/II(MT-I/II)の誘導および細胞毒性は、Na2S4の処理によって抑制された。ESI-MSにて解析したところ、CdとNa2S4の反応生成物として、硫化カドミウム(CdS)およびチオ硫酸カドミウム(CdS2O3)がそれぞれ検出された。そこでCdSおよびCdS2O3の細胞毒性をCdCl2と比較したところ、CdSは殆ど毒性を示さず、HSP70やMT-I/IIも誘導しなかった。CdS2O3の細胞毒性はCdと殆ど変わらなかったが、CdS2O3曝露時にNa2S2O3を同時処置すると、毒性の軽減が観察された。インビボにおいて、Cd投与による肝毒性はNa2S4の処理によって抑制され、CdSの曝露では肝毒性は殆ど認められなかった。以上より、ポリスルフィドはCdによるストレス応答タンパク質の誘導や肝毒性の惹起を負に制御する働きがあることを明らかにした。一方、Cdの解毒に関しては、CdSおよびCdS2O3の生成がみられたが、前者は安定な付加体であるのに対して後者は不安定な付加体であるために、CdSが少なくともCdの不活性化に寄与することが示唆された。Akiyama M et al. Chem Res Toxicol 2017.

  • Manuel Ramiro PASTORINHO, Diana GONçALVES, Rafael BARROS, Tatiana SILV ...
    セッションID: P-105
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    Estarreja is a highly industrialized municipality in NW Portugal, well known for its historical mercury contamination. Some reports have linked hypertension and mercury exposure. In this work, we collected house dust samples and hair from the residents of this area, together with systolic (SBP) and diastolic (DBP) blood pressure. Hair mercury levels varied between 624 and 4535 ng/g, and mercury in dust varied from 93 to 9100 ng/g. No statistically significant association between dust and hair could be established (Spearman Rank Order Correlation, p=0.199). SBP varied between 175 and 116 whereas DBP ranged from 70 to 121 mm Hg, meaning that 28% of the participants were hypertensive. However, no statistically significant differences in mercury concentration between the hypertensive and normal group were found (One-tailed P-value = 0.444). Furthermore, no significant associations between SBP (p=0.826) or DBP (p=0.695) and hair mercury levels were obtained. However, 44% of individuals exhibited hair mercury levels higher than the acceptable dose set by the WHO (2000 ng/g), 72% exhibited levels higher than the acceptable dose set by the USEPA (1000 ng/g), and all participants exhibited mercury concentrations above the safe limit for Europe (580 ng/g).

  • 三浦 伸彦, 田中 廣輝, 北條 理恵子, 大谷 勝己, 吉岡 弘毅
    セッションID: P-106
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【目的】酸化チタンナノ粒子は化粧品や塗料をはじめとして幅広い分野で利用されている。我が国におけるチタンナノ粒子の使用量はカーボンブラック、シリカに次いで第3位であり、今後のさらなる使用が予測されることから、ナノ粒子による生体影響について多角的に評価しておく必要がある。チタンナノ粒子が示す精巣障害について慢性曝露による報告は増えつつあるが、急性影響についての報告はなされていない。我々は投与3日後でチタンナノ粒子による精巣障害を認め、その誘発機構について検討を加えたので報告する。

    【方法】酸化チタンナノ粒子(Aeroxide P25; TiNP)はリン酸二ナトリウム(DSP)に分散させて用いた。雄性C57BL/6JマウスにTiNPを尾静脈投与或いは経口投与し(10, 20または50 mg/kg体重)、投与3日後に精巣上体尾部中の精子数及び精子運動能を、HTM-IVOSを用いたCASAシステムにより測定し精巣障害指標とした。

    【結果及び考察】我々の先行研究で、TiNPを週1回、4週間投与し、最終投与3日後に精巣障害(精子数減少及び精子運動能低下)を認めた。しかしこの障害が総計4回の投与に起因するものか、或いは4回目の投与のみに起因するものか不明であったことから、TiNPを単回尾静脈投与し、投与3日後の精巣機能を調べたところ、精子数の減少は認められなかったものの、精子運動能が有意に明確に減少した。この結果は急性チタン障害を示し、投与後の短期間ではTiNPによる精巣影響は観察されず、成熟精子或いは精巣上体尾部に作用することを示す。そこで単離精子浮遊液にTiNPを直接添加したところ精子運動能は低下したことから、TiNPは成熟精子に直接アタックする可能性が考えられた。またTiNPにより精子運動能の低下が観察されたことから、精子浮遊液にTiNPを添加して3時間後の精子中ATP量を測定したところ、TiNP添加量依存的にATP量は低下した。さらにこの時、ATP産生に関与するATP-citrate synthaseのタンパク量も低下する傾向にあり、in vivoでの解析を急いでいる。以上の結果は、TiNPは精巣機能に慢性的だけでなく急性的にも作用すること、成熟精子が標的の一つであり、ATP産生系が抑制される可能性を示している。

  • 宇田 一成, 杉山 大揮, 沼野 琢旬, 原 智美, 萩原 顕昭, 河部 真弓, 米良 幸典
    セッションID: P-107
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【背景・目的】

     ナノ材料の呼吸器系への有害性評価においては、主に気管内投与法が用いられている。動物は、毒性試験若しくは長期がん原性試験に使用されるCrl:CD(SD)ラットやF344/DuCrlCrljラットが用いられるが、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の気管内投与法による長期がん原性試験では、F344ラットの使用が報告されている。BrLHan:WIST@Jcl (GALAS)ラットは、従来から安全性試験等に用いられており、特に2年間のがん原性試験に適した系統である。

     本実験では、気管内投与法を用いた2年間の発がん性試験により肺腫瘍及び中皮腫発生が報告されたMWCNTを、上述の3系統のラットに単回気管内投与し、投与3日後の肺及び胸腔における急性影響について比較検討を行った。

    【方法】

     動物は8週齢の雄F344/DuCrlCrlj、Crl:CD(SD)及びBrLHan:WIST@Jclラットを用い、いずれの系統もMWCNTを0.5 mg/kgの用量で気管内投与する群と媒体(0.5%のKolliphor P188含有生理食塩液)のみを気管内投与する媒体対照群を設けた。観察期間中は一般状態観察及び体重測定を行い、投与3日後に剖検し、肉眼的病理学検査及び器官重量の測定を行った。また、肺胞洗浄液(右肺)及び胸腔洗浄液を採取し、細胞分類及び生化学的検査を行った。

    【結果・まとめ】

     MWCNT及び媒体の投与に起因する一般状態の変化として、投与直後にラッセル音がみられたが、投与翌日には消失し、その後はいずれの系統にも異常所見はみられなかった。体重は観察期間を通して各系統ともMWCNT投与群と媒体対照群の間に有意な差はみられなかった。また、肉眼的病理学検査ではMWCNT投与群で肺の変色(黒)がみられ、被験物質の沈着を示唆する変化と考えられた。器官重量では、肺の相対重量は媒体対照群と比較していずれの系統でも有意な高値を示した。

     現在、胸腔及び肺胞洗浄液における細胞分類及び生化学的検査の解析、肺を含めた主要臓器の病理組織学的検査を行っており、上記の検査結果と併せて本学会にて報告する。

  • 北條 幹, 小林 憲弘, 長谷川 悠子, 安藤 弘, 久保 喜一, 海鉾 藤文, 田中 和良, 五十嵐 海, 村上 詩歩, 多田 幸恵, 生 ...
    セッションID: P-108
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【緒言】多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は気管内投与によりマウスの催奇形性を誘発するが,そのメカニズムが不明であるため,本研究では前処理方法の異なるMWCNTを用いて胎児に与える影響を比較検討した.【方法】投与試料は,未処理(T),250℃2時間の熱処理(HT)あるいは吸入ばく露試験用の分散処理(Taquann処理;TQ)を施したMWCNT(MWNT-7)を,それぞれ1%CMC-Na/PBSに懸濁させた3種類を用意した.気管内投与は,これらをICR系の妊娠マウスに1回当たり4 mg/kg体重で4回(妊娠6,9,12,15日目)あるいは3回(妊娠6,9,12日目)実施し,前者で妊娠17日目に帝王切開して催奇形性の解析を,後者で妊娠15日目に解剖して肺の病理組織学的・生化学的・分子生物学的な解析を,それぞれ行った.【結果・考察】試料液の肉眼的な観察ではHT・T・TQの順に分散状態が良く,母体や胎児に与えた影響も概ねこの順に強かった.母体の体重増加の抑制は,全投与群で見られたが,特にHT群で顕著であった.死胚の数はHT群のみで有意に増加し,胎児重量はT群とHT群で有意に減少し,HT群がより低値を示した.TQ群はいずれも対照群と同程度だった.また,胎児の内臓異常の頻度はT群とHT群で有意に増加した.一方,組織学的には,全投与群で肺実質の炎症性反応が見られたが,HT群では肉芽腫を伴う比較的強い応答であった.肺胞洗浄液中の好中球および好酸球の数はHT群で最も多く,TQ群は対照群と同程度だった.肺胞洗浄液のLDH活性および総タンパク質量も全投与群で増加していたが,TQ群の増加程度は比較的弱かった.さらに,肺組織におけるIL-6やCCL2のmRNA発現は,全投与群で増強し,特にHT群で顕著であった.以上より,MWCNTによる胎児の発生毒性の程度は母体の肺の細胞障害や炎症の程度に依存することが明らかとなり,その発生毒性は肺の炎症に起因する二次的作用であるものと示唆された.(厚生労働省科学研究費補助金(H27-化学-指定004)よる)

  • 豊田 優, 高田 龍平, 鈴木 洋史
    セッションID: P-109
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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     Recently, an outbreak of occupational bile duct cancer in young employees was reported in printing factories where 1,2-dichloropropane (1,2-DCP)-enriched cleaning solvents had been used for a long time in daily operation. Nevertheless, little is known about the relating carcinogenesis mechanisms. For the better understanding of cancer-causing risk of this industrial chemical, its carcinogenic property should be further addressed. However, contrary to tumor-initiating activity, there is little information about in vitro trials exploring whether 1,2-dichloropropane has tumor-promoting activity or not.

     In the present study, to examine the tumor-promoting activity of 1,2-DCP, we conducted in vitro cell transformation assay, one of the major alternatives to animal bioassays for the detection of carcinogenic potential. According to an authorized protocol by OECD with minor modifications, we employed Bhas 42 cells, a mouse cell line that has been considered to be a model of initiated cells, for promotion test. Our results show that 1,2-DCP could act as tumor-promoting agent, at least, in the culture system that mimics some key stages of in vivo multistep carcinogenesis. Together with our previous studies that focused on the potential mechanisms relating to the 1,2-DCP-associated occupational bile duct cancer in terms of metabolism and disposition (1, 2), our findings might provide a new route to better understanding of chemical hazard of 1,2-DCP.

    (1) Toyoda et al., Sci Rep. 6:24586, 2016.

    (2) Toyoda et al., Oxid. Med. Cell. Longev. 2017:9736836, 2017.

  • 五十嵐 智女, 髙部 道仁, 髙島 宏昌, 鈴木 洋, 牛田 和夫, 松本 真理子, 磯 貴子, 川村 智子, 井上 薫, 小野 敦, 山田 ...
    セッションID: P-110
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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     化審法既存化学物質であるサリチル酸ベンジルの人健康に係るスクリーニング評価に必要な毒性情報を得るため、国の既存点検プログラムにおいてin vitro遺伝毒性試験及び反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験を実施した。

     既報のAmes試験(Zeiger et al.1987)が陰性であったため、チャイニーズハムスター培養細胞を用いた染色体異常試験を行ったところ陰性であった。また、反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験では、雌雄のラットに本物質を0、30、100又は300 mg/kg/dayで交配前14日から雄は42日間、雌は授乳4日までの41~46日間強制経口投与した。300 mg/kg/day群の雌雄に軽微な大腿骨骨梁増加及び胸腺萎縮等、雌に胸腺重量の低値傾向が、100 mg/kg/day以上群の雄に胸腺重量の低値傾向、雌雄にT4低値又は低値傾向等がみられ、本試験における反復投与毒性のNOAELは雌雄共に30 mg/kg/dayであった。生殖発生毒性については、性周期、交配成績、黄体数、着床痕数、着床前死亡率、着床率及び生後0日の性比に被験物質投与の影響はみられなかったが、300 mg/kg/day群において、半数例に妊娠期間中全胚吸収、1例に全出産児死亡がみられ、全ての出生児が授乳2日までに死亡した。死産児5例(1腹)に神経管閉鎖障害が認められた。さらに30 mg/kg/day以上の群では生後0又は4日の出生児体重低値が認められた。本試験における生殖発生毒性のNOAELは親動物が雄300 mg/kg/day、雌100 mg/kg/day、児動物がLOAEL 30 mg/kg/dayであった。

     以上の毒性情報を総合的に検討した結果、本物質は非遺伝毒性で、スクリーニング評価において重視すべき最も低用量から発現する影響は発生毒性であると考えられ、他のサリチル酸類と同様に催奇形性も示唆された。

  • 松本 真理子, 田邊 思帆里, 芹沢 英樹, 髙部 道仁, 川村 智子, 五十嵐 智女, 磯 貴子, 井上 薫, 山田 隆志, 広瀬 明彦
    セッションID: P-111
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    多環芳香族炭化水素の一種であるアセナフチレン(CAS:208-96-8)は、不完全燃焼したコールタール等から大気中に放出され、環境経由でキノコ等に取り込まれ、ヒトに経口曝露し得る。一部の多環芳香族炭化水素は変異原性や発がん性を示すことが知られているが、アセナフチレンは安全性評価を行うための毒性情報が不足していた。そこで、我が国の化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)におけるスクリーニング評価に必要な情報を得るため、国の既存化学物質点検プログラムにおいて、本物質の28日間反復投与毒性試験(OECD TG407)及び遺伝毒性試験(Ames試験及びin vitro染色体異常試験;OECD TG471及び473)が実施された。反復投与試験では雌雄Crl:CD(SD)ラットにアセナフチレン0、4、20、100 mg/kg/dayの用量で強制経口投与した。その結果、最高用量群では、流涎、立ち上がり回数及び握力の低値が雌に、自発運動の低値が雌雄に認められ、摂餌量及び体重の低値が雌雄でみられた。また、同群では、腎臓への影響を示唆する摂水量・尿量の増加や尿沈渣における小円形上皮細胞の発現頻度の増加傾向、尿細管上皮細胞の好塩基性化及び軽微な単細胞壊死が雌雄全例で認められた。その他、最高用量群では、雌雄ともにコレステロール及びリン脂質の高値等、肝臓への影響を示唆する変化も認められた。また、投与量20 mg/kg以上の雌雄で相対肝重量の有意な増加が、20 mg/kg以上の雄及び100 mg/kgの雌において軽微な小葉中心性肝細胞肥大が認められた。これらの所見は概ね回復傾向を示した。以上より、本試験におけるアセナフチレンの無影響量は4 mg/kg/dayであると判断した。遺伝毒性については、Ames試験は陰性、in vitro染色体異常試験は染色体構造異常誘発性に関して陽性であった。本安全性試験により、アセナフチレンの亜急性毒性の標的臓器は肝臓及び腎臓であり、染色体異常を誘発することが明らかとなり、国際的に初めて本物質の有用な毒性情報を得ることが出来た。

  • 柳場 由絵, 小林 健一, 豊岡 達士, 須田 恵, 王 瑞生, 甲田 茂樹
    セッションID: P-112
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【背景・目的】国内の化学工場において膀胱がんの発症が多数報告された事例では、オルト-トルイジン(OT)をはじめとする芳香族アミン類が主に皮膚経路で吸収され、がんを誘発したと疑われている。現場調査から、OTや他のアミン類物質はいずれも極めて低いばく露量であることが判明した。一方、作業者の尿中から比較的高い濃度のOTまたはその代謝物が検出され、作業環境中濃度と大きな乖離を示した。この結果から、吸入ばく露以外の経皮吸収により体内に侵入したことが強く示唆された。OTについては、その経皮吸収を示唆した報告があるが、定量的情報はなく、体内に入った後どの臓器に分布するかは不明である。そこで本研究では、ラットを用いて、OT 経皮投与後のOTの全身への分布・動態等について検討した。

    【方法】雄性Crl:CD(SD)ラット(7週齢)を用い、イソフルラン麻酔下で背部を剪毛、毛剃毛し、テープストリッピング法により損傷皮膚とした。その後、[14C]OT経皮投与液を50mg/1.30MBq/4ml/kgの用量で塗布したリント布を用いて、8時間、24時間経皮投与した。投与終了後、リント布を剥離し、イソフルラン吸入麻酔下、炭酸ガスの過剰吸入により安楽死させ、全身オートラジオルミノグラムを作成した。投与後代謝ケージに収容し、採尿区間は投与開始後0~4時間、4~8時間、8~24時間の3時点とした。

    【結果・考察】投与後8時間で腎臓、膀胱等に放射活性が高く、それらの臓器に移行していることが観察された。一方、投与後24時間では8時間に比べると各臓器の分布濃度が減少していた。尿中排泄率からも投与後0~8時間の間で投与したOT濃度の76%が排泄されていた。これらの結果から、OTは投与後、速やかに経皮吸収され、腎臓(腎盂)、膀胱等に高濃度で移行すること。また、8時間以内に投与量の大部分が尿中へと排泄されることが明らかとなった。

  • 西岡 亨, 藤田 侑里香, 山根 雅之, 池田 直弘, 本多 泰揮, 森田 修
    セッションID: P-113
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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     国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)に沿った化学物質の適切な管理には、化学物質の有害性と暴露を定量的に評価し、ヒト健康と環境影響のリスクを科学的に解析することが重要である。今回、陽イオン性界面活性剤であるモノアルキル4級アンモニウム塩(QAC)について、香粧品や衣料用洗剤などの消費者用製品に広く使用されるアルキル鎖長C12~18のQACを対象とし、香粧品原料としての安全性評価に化学品規制の視点を加えた包括的なリスク評価を行った。

     シャンプー使用による経皮暴露にポンプスプレー製品使用による吸入暴露を加えた香粧品用途でのヒト暴露量は0.0023 mg/kg/dayとなり、衣料用洗剤使用時の経皮暴露に環境経由の暴露を加えた家庭品用途でのヒト暴露量0.0035 mg/kg/dayとほぼ同等と推定された。毒性の質や強度にアルキル鎖長の影響は認められず、使用期間を考慮した導出無毒性量(DNEL;香粧品:0.05 mg/kg/day、家庭品:0.025 mg/kg/day)以下の暴露と推定された。

     一方、水生生物に対する毒性は、藻類が甲殻類等に比べて強く、またアルキル鎖長が中程度のC14,16で強くなる特徴が観察された。河川水中での半減期は約22時間と推定され、アルキル鎖長の増加に伴い消失速度が遅くなる傾向が認められた。産総研-水系暴露解析モデル(AIST-SHANEL)および平衡分配法を用いて予測した全国河川中の環境濃度は、河川水で0.034 µg/L、河川底質で0.39 mg/kg-dryとなり、水生生物および底生生物に対する予測無影響濃度(PNEC;河川水:0.11 µg/L、河川底質:5.0 mg/kg-dry)以下であった。

     以上より、アルキル鎖長C12~18のQACは現在の使用状況において、ヒト健康と環境に対して有害影響を及ぼす懸念は低いことが示唆された。

  • Sung-Hwan KIM, Hyeon-Young KIM, Min-Seok KIM, Doin JEON, Kyuhong LEE
    セッションID: P-114
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    Nintedanib (NDN), a tyrosine kinases inhibitor, has been revealed anti-tumor, anti-inflammatory, and anti-fibrotic effects in several reports. In the present study, we investigated the protective effects of NDN against polyhexamethylene guanidine phosphate (PHMG)-induced lung fibrosis in mice. The following three experimental groups were evaluated: (1) vehicle control, (2) PHMG (1.1 mg/kg), and (3) PHMG&NDN (60 mg/kg). Mice in the PHMG group exhibited increased numbers of total cells and inflammatory cells in the bronchoalveolar lavage fluid (BALF) accompanied by inflammation and fibrosis in lung tissue. In contrast. mice in the PHMG&NDN group were attenuated these lesions in lung tissue. Moreover, the inflammatory cytokines and fibrotic factors, and the activation of NLRP3 inflammasome were significantly decreased in lung tissue of PHMG&NDN group compared with that the PHMG group. These results suggest that NDN may alleviate the inflammatory response and development of pulmonary fibrosis in the lungs of PHMG-treated mice.

  • Seunghyun LEE, Sou Hyun KIM, Young-Suk JUNG
    セッションID: P-115
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    Polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) are widespread contaminants resulting from the incomplete combustion of organic materials in the environment. The primary concern for the hazardous effect of PAHs is their ability to activate the pathway linked to the aryl hydrocarbon receptor (AhR) and lead to carcinogenesis. While previous research has demonstrated that oxidative stress plays a critical role in the AhR-dependent toxic response, the effect of PAHs on the biosynthesis of glutathione (GSH), which is a powerful endogenous antioxidant, has been paid only limited attention. In the present study, we utilized a global metabolomic approach, via high resolution magic angle spinning nuclear magnetic resonance spectroscopy, and found significant metabolome differences between non-tumorigenic liver cells (BNL CL.2; CL2) and transformed liver cells (BNL 1ME A. 7R.1; 1MEA) chronically exposed to 3-methylcholanthrene (3MC), a well-known carcinogenic PAH. One significant change identified was a lower GSH level for 1MEA cells as compared to CL2 cells. This was contrasted by increased levels of precursor metabolites to GSH synthesis, such as S-adenosylmethionine and cysteine. These changes were accompanied by a significantly reduced expression of γ-glutamylcysteine ligase (GCL), known to be the rate-limiting step of GSH synthesis. Furthermore, the protein level of cysteine dioxygenase was down-regulated; however, the concentration of taurine was unaltered. Taken together, this study demonstrated that transformed cells by chronic exposure of 3MC showed the inhibition of GSH biosynthesis by suppressing GCL protein expression and reducing cysteine availability, which could subsequently make cells vulnerable to oxidative stress.

  • 石原 康宏, Christoph FA VOGEL
    セッションID: P-116
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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     Aryl-hydrocarbon Receptor Repressor(AhRR)は、ダイオキシン類の受容体として広く知られているAryl-hydrocarbon Receptor(AhR)の転写活性を阻害するタンパク質として発見された。しかし、最近は単にAhRシグナルの抑制だけでなく、炎症やがんにおける役割も報告され、多機能性のタンパク質であることが示唆されている。AhRは脂肪細胞分化を負に制御することが知られているが、AhRRの脂肪細胞分化への作用は調べられていない。本研究では、分化刺激により脂肪細胞へと分化するマウス繊維芽細胞3T3-L1を使用し、AhRRの脂肪細胞分化における役割の解明を目指した。

     3T3-L1をインスリン、デキサメタゾン、イソブチルメチルキサンチンで刺激すると、C/EPBβの一過的発現、C/EBPαとPPARγの持続的な発現上昇が認められ、細胞内への脂肪滴の蓄積が認められた。AhRの発現は脂肪細胞分化に従って低下した一方、AhRRの発現は分化初期に一過的に上昇した。siRNAを用いてAhRRをノックダウンすると、細胞内への脂肪滴の蓄積が抑制されたことから、AhRRは脂肪細胞分化を阻害すると考えられる。即ち、非常に興味深いことに、AhRとAhRRの脂肪細胞分化に対する作用は同じであった。AhRRノックダウンはAhRやCYP1A1、C/EPBα、C/EPBβの発現には影響しなかった一方、PPARγの発現と活性を上昇させた。

     以上の結果より、脂肪細胞分化の初期で発現するAhRRは、PPARγの発現を負に制御することによって、脂肪細胞分化を抑制していると考えられる。この抑制経路は、AhRシグナルやC/EPBシグナルとは独立した経路であることが示唆される。

  • 安孫子 ユミ, 中井 由実, Nho Cong LUONG, Jon M FUKUTO, 熊谷 嘉人
    セッションID: P-117
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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     我々はディーゼル排出微粒子およびPM2.5中の主要多環芳香族炭化水素キノン体である9,10-フェナントラキノン(9,10-PQ)が、レドックスサイクルを介して過剰のROSを産生することを見出した。また、9,10-PQは、ジチオール化合物であるDTTおよびジヒドロリポ酸により一電子還元を受けて9,10-PQセミキノンラジカル(9,10-PQ•)に変換され、このものが分子状酸素と反応してスーパーオキシドを産生することを明らかにした。さらに、本反応系で生じた不安定なチイルラジカル(R-S•)をDMPOアダクトとして検出した。一方、per/polysulfidesがDTTのように9,10-PQとレドックスサイクルを形成するか不明である。本研究では、persulfide(S2)/polysulfide(S3およびS4)と9,10-PQとの反応性を検討した。9,10-PQをNa2S2と反応させると、反応時間依存的な溶存酸素の消費が見られ、9,10-PQ•およびR-S•を示すピークをそれぞれESRにより検出した。また、R-S•のピークは反応後20分まで持続して検出されたことから、比較的安定なパー/ポリチイルラジカル(R-Sn•)であることが示唆された。電子受容体として、ビタミンK3、ピロロキノリンキノンおよびユビキノンをそれぞれNa2S2と反応させたところ、同様に溶存酸素の減少が見られ、それぞれキノンラジカルおよびR-Sn•が検出された。Na2S2との反応で見られたラジカル種の産生は、モノスルフィド(Na2SおよびGSH)との反応では認められなかった。以上の結果から、9,10-PQのような環境中電子受容体は、per/polysulfidesによる一電子還元反応の結果、9,10-PQ•に変換されるとともにR-Sn•を産生することが明らかとなった。9,10-PQは電子伝達系の“電子受容体”として結果的に細胞内恒常性を破綻する可能性が考えられる。一方、per/polysulfidesが電子伝達系の一端を担っていることが明らかにされ注目されており、9,10-PQによるper/polysulfidesとのレドックスカップルを介した電子伝達系の変動を引き起こす可能性が示唆された。

  • 香川(田中) 聡子, 大河原 晋, 百井 夢子, 礒部 隆史, 青木 明, 植田 康次, 岡本 誉士典, 越智 定幸, 埴岡 伸光, 神野 ...
    セッションID: P-118
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【目的】室内環境中の化学物質はシックハウス症候群や喘息等の主要な原因、あるいは増悪因子となることが指摘されているが、そのメカニズムについては不明な点が多く残されている。本研究では、室内空気中から高頻度で検出され、現在、室内濃度指針値策定候補物質として議論が進められている、2-Ethyl-1-hexanolおよびTexanolと、様々な消費者製品に広く用いられており、特にスプレー式家庭用品等の使用時には室内空気中から高濃度に検出されることがこれまでの実態調査から明らかになっている(-)-Mentholの複合曝露による影響をあきらかにする目的で、気道刺激に重要な役割を果たす侵害刺激受容体TRP (Transient Receptor Potential Channel)の活性化を指標に評価した。

    【方法】ヒト後根神経節Total RNAよりTRPA1 cDNAをクローニングし、TRPA1を安定的に発現するFlp-In 293細胞を樹立し、細胞内カルシウム濃度の増加を指標として対象化合物のイオンチャネルの活性化能を評価した。カルシウム濃度の測定にはFLIPR Calcium 6 Assay Kitを用い、蛍光強度の時間的な変化をFlexStation 3で記録した。

    【結果および考察】2-Ethyl-1-hexanol、Texanol および(-)-Menthol それぞれの単独処理ではTRPA1の活性化が認められない濃度域において、2-Ethyl-1-hexanolと(-)-Menthol、Texanolと (-)-Mentholの同時処理によって顕著なTRPA1の活性化が認められることが判明した。室内環境中には様々な化学物質が存在するが、本研究結果より、単独曝露時には気道刺激が引き起こされない場合でも、室内環境中に存在する化学物質の複合曝露によってTRPA1を介した感覚神経あるいは気道の刺激が引き起こされる可能性が考えられる。

  • 廣森 洋平, Wenxin HU, Fumei GAO, Hong ZHANG, 荒川 脩平, 原田 均, 永瀬 久光, 中西 剛, Jia ...
    セッションID: P-119
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【目的】有機リン系難燃剤は様々な素材の燃焼を防止する目的で使用されているが、近年に水圏環境への汚染が問題となっている。実際に中国における調査の結果、血中および胎盤中から有機リン系難燃剤が検出されたことが報告された。有機リン系難燃剤の中には核内受容体であるperoxisome proliferator-activated receptor γ (PPARγ)のアゴニストとなるものがあることが明らかとなっているが、PPARγは胎盤の内分泌機能を制御し、妊娠の維持に関与している事が知られている。したがって、有機リン系難燃剤がPPARγを介して胎盤の内分泌機能を撹乱する可能性が考えられる。そこで本研究では、胎盤で検出された有機リン系難燃剤のPPARγアゴニスト活性を評価し、胎盤内分泌機能に対する影響について検討を行った。

    【方法】PPARγアゴニスト活性は、レポーターアッセイにより評価した。また、ヒト胎盤細胞株であるJAR細胞に被験物質を48時間処理後、生成されるプロゲステロンをエンザイムイムノアッセイによって定量を行った。また、3β-HSD I mRNA発現量を定量的RT-PCRにより測定した。

    【結果】過去に報告のあった、Triphenyl phosphate (TPhP)、Tributyl phosphate (TBP)の他に新たに、2-ethylhexyl diphenyl phosphate (EHDPP)がPPARγアゴニスト活性を有する事が明らかとなった。また、TPhPは20µM以上、EHDPPは10µM以上で、JAR細胞のプロゲステロン産生を有意に上昇させた。また、これらの化合物は3β-HSD I mRNA発現量も濃度依存的に有意に上昇させた。さらに、JAR細胞のPPARγ mRNA発現をノックダウンしたところ、EHDPPの作用は減弱した。

    【考察】EHDPPは、PPARγを介してヒト胎盤のプロゲステロン産生を上昇させることが明らかとなった。現時点での胎盤中の有機リン系難燃剤の濃度は、内分泌機能に影響を及ぼす濃度を下回っていたため、そのリスクは小さいと考えられるが、今後注意を要すると考えられる。

  • 久保田 彰, 李 宰承, 若山 裕己, 中村 倫子, 川合 佑典, 芳之内 結加, 岩田 久人, 平野 将司, 中田 晴彦
    セッションID: P-120
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    ビスフェノールA(BPA)は、エストロゲン受容体(ER)を介した内分泌攪乱作用や中枢神経系に対する毒性を引き起こすことから、国内外でリスクの再評価や規制が実施されてきた。一方、BPAの代替物質としてBPS、BPF、BPAFなどの利用が近年増加しつつあるが、その安全性評価は立ち遅れている。そこで本研究では、ゼブラフィッシュを用いてin silicoおよびin vivo解析により多様なBPA代替物質の内分泌攪乱作用を評価した。分子シミュレーションソフトを用いてERの3Dホモロジーモデル(アゴニストモード)を構築し、BPA代替物質との結合状態をin silicoでシミュレーションしたところ、多くの物質で相互作用エネルギーはBPAよりも低値を示した。胚を用いてin vivo曝露試験を行ったところ、多くのBPA代替物質は濃度依存的にアロマターゼ(CYP19A1b)のmRNA発現を誘導した。いずれの物質もE2に比べて用量効果は低いが、BPA、BPE、BPFは同等の最大効力を示した。またBPCおよびBPAFは、最大効力は低いが相対的に高い用量効果を示した。Bis-MP は、用量効果・最大効力ともに高値を示した。さらにin silicoシミュレーションにより算出したERα・ERβ1との相互作用エネルギーが低い物質ほど、in vivoにおけるCYP19A1b誘導のEC50値も低い傾向がみられた。他方、部分アゴニスト作用を示したBPCおよびBPAFは、E2誘導性のCYP19A1b発現を抑制した。ERの3Dホモロジーモデル(アンタゴニストモード)を構築しin silico解析したところ、BPCおよびBPAFとERαの結合状態は、ヒドロキシタモキシフェンとERαの結合状態と類似しており、相互作用エネルギーも低い値であった。本研究の結果から、BPA代替物質とERの相互作用をin silico解析することで、in vivo曝露試験によるエストロゲン様作用、抗エストロゲン作用を評価できることが示唆された。

  • Jerome DEVOY, Davy ROUSSET
    セッションID: P-121
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    Beryllium toxicity is a long-known issue in the workplace. Beryllium exposure is associated notably with pulmonary disease preceded by sensitization to the element, and lung cancer. To protect workers exposed to beryllium, workplace exposure threshold limit values have been lowered to 50 ng.m-3 by the American Conference of Governmental Industrial Hygienists.

    The relevance of urinary beryllium as a biological indicator of exposure was investigated. Skin-wipe samples were also collected from some workers before and after the working day.

    Three French enterprises were visited: a copper-beryllium alloy foundry, an aluminium-beryllium alloy foundry and an aluminium smelter. Seventy-eight volunteers, working as foundrymen, millers and blacksmiths, were monitored. Their beryllium urinary excretion levels were all close to those observed in populations with no occupational exposure, except for the foundrymen. The urinary beryllium profile for the aluminium smelter mirrored the fluoride one.

    A relationship between atmospheric exposure and urinary excretion could not be established from statistical analysis. The urinary beryllium dose cannot therefore be used as a marker of beryllium exposure. Variations in urinary concentrations might be explained by different parameters, such as skin exposure or beryllium solubility, and by individual factors such as hygiene and smoking status. In contrast, skin-wipe samples showed a systematic increase in beryllium content before and after the working day. Skin-wipe samples may be the most appropriate indicator to evaluate beryllium exposure.

  • Min-Seok KIM, Sung-Hwan KIM, Doin JEON, Hyeon-Young KIM, Dong-Hun LEE, ...
    セッションID: P-122
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    Cigarette smoke (CS) causes chronic diseases, particularly lung diseases such as chronic obstructive pulmonary disease (COPD), lung cancer, and desquamative interstitial pneumonia. The present study aimed to assess the effects of repeated exposure to CS in polyhexamethylene guanidine (PHMG)-induced pulmonary fibrosis. Mice were exposed nose-only inhalation to CS (300 mg/m3) for 4 hours/day, 14 days/week. The following four experimental groups were evaluated: vehicle control (VC), PHMG, CS, and PHMG + CS. Animals in the PHMG group exhibited increased the numbers of total cells and inflammatory cells in the bronchoalveolar lavage fluid (BALF), lung hydroxyproline (HP) content, and histopathological changes, including macrophage infiltration and granulomatous inflammation/fibrosis in the lung. These parameters were exacerbated in mice in the PHMG + CS group. In contrast, mice in the CS group alone displayed only minimal macrophage infiltration in pulmonary tissue. The expression of fibrogenic mediators was significantly elevated in lungs of mice in the PHMG group compared with that VC. Further, the expression of fibrogenic mediators was enhanced in pulmonary tissue in mice administered PHMG + CS. These results demonstrate that repeated exposure to CS may enhance the development of PHMG-induced pulmonary fibrosis.

  • 栗本 雅之, 山田 隆志, 白石 寛明, 山本 裕史, 広瀬 明彦
    セッションID: P-123
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【背景・目的】医薬品を含む化学物質の適正な管理によるリスクの最小化が国際的に合意されている現在、欧米では新薬申請時に環境影響評価データを提出することが義務付けられており、わが国でも2017年に自主的なガイドライン案がまとめられたところである。本研究は、医薬品の環境影響評価を支援するシステムとして構造活性相関等を利用した環境影響予測手法を開発することを目的とする。

    【方法】藻類、甲殻類、魚類の環境影響情報(慢性毒性値)は、European Medicines Agencyのpublic assessment reports、製薬企業のHPから公開されているSafety Data Sheets/環境リスク評価データ等から収集した。環境影響を予測する構造活性相関ソフトウエアとしてUSEPAのECOSAR v.1.11および国立環境研究所のKATE on PAS2011を使用した。

    【結果】収集した医薬品の最低NOEC値を医薬品分類別に比較すると、抗悪性腫瘍剤<中枢神経/精神神経用薬<抗菌剤<抗ウイルス剤<糖尿病治療薬の傾向が見られた。さらに、薬理作用によってNOEC値の傾向と種の感受性が異なることが示唆された。次に、構造活性相関による予測精度を一致率(予測値/実測値)が100倍以内となる医薬品数で評価した。甲殻類に対する影響予測では、ECOSARのAliphatic Aminesに分類された医薬品のうち92%(38剤中35剤)、Amidesでは96%(26剤中25剤)、KATEのamides or imides では100%(5剤中5剤)、primary amines aliphatic/aromatic では80%(5剤中4剤)の予測精度が得られた。

    【謝辞】本研究は、AMED医薬品等規制調和・評価研究事業「構造活性相関手法に基づいたヒト用医薬品の環境影響評価手法の開発に関する研究」の助成により実施した。

  • 秋月 さおり, 日浦 政則, 田原 晴信, 森下 幸治, 神村 彩子
    セッションID: P-124
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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     ワルファリンはビタミンKを競合阻害することにより血液凝固因子の生合成を抑制することから、抗血液凝固薬として用いられている。多くの薬剤や食品がワルファリンと相互作用し、ワルファリンの作用を増強/減弱することが報告されている。そこで、本研究では、血液凝固因子の産生やワルファリンの代謝に関与する肝臓にて機能する尿素回路に注目し、これを構成するアミノ酸であるL-オルニチン、L-アルギニンおよびL-シトルリンがワルファリンの薬効に関与する可能性を検討した。14週齢のKbl:JW系雄性ウサギ(n=2または3)にワルファリン(2 mg/kg体重)とアミノ酸(0、20、100、500および1,000 mg/kg体重)を同時強制経口投与し、48時間後までプロトロンビン時間を測定したところ、500 mg/kg および 1,000 mg/kgのL-オルニチンを投与した際に、ワルファリンを単独で投与した場合に比べ、投与後24時間から48時間にかけてプロトロンビン時間が延長すること、その際、血中ワルファリン濃度が上昇することが示された。しかしながら同用量のL-オルニチン単独投与ではこれらの現象は認められなかった。また、in vitro系における検討ではL-オルニチンはヒトシトクロムP450の活性を阻害しなかったことから、ワルファリンの代謝に影響を及ぼさないことが示唆された。さらに、L-オルニチンはワルファリンとヒト血清アルブミンとの結合に影響せず、従ってアルブミンの薬物結合能を阻害しないことも推測された。詳細なメカニズムは不明であるが、尿素回路構成アミノ酸の種類によって薬剤への影響が異なる可能性が考えられる。なお、現在ヒトでL-オルニチンとワルファリンの相互作用は報告されていない。

  • 片山 優助, 安孫子 ユミ, 秋山 雅博, 熊谷 嘉人
    セッションID: P-125
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【目的】環境中親電子物質はタンパク質の化学修飾を介してレドックスシグナル伝達の活性化および毒性を引き起こす。先行研究において、persulfides および polysulfides は求核性が高いため親電子物質-イオウ付加体を生成することを明らかにした。例えば、per/polysulfidesは親電子性有機金属MeHgを捕獲して、反応性の低いビスMeHgサルファイド ((MeHg)2S) を形成する。そこで、本研究ではMeHgを親電子物質のモデルとして用いて、 (MeHg)2Sに変換することでMeHgを不活性化するようなper/polysulfidesがイオウ化合物を豊富に含むとされるニンニク等の食用植物中に含まれるか否か明らかにすることを目的とした。

    【結果・考察】本研究では、per/polysulfides を含む食用植物としてニンニクおよびタマネギに着目した。ニンニクおよびタマネギの搾汁とMeHgとを反応させると、いずれの抽出液においても(MeHg)2Sが生成した。当該搾汁を高分子画分および低分子画分に分け、(MeHg)2Sの生成を検討すると、特にニンニク搾汁の低分子画分に、(MeHg)2Sを生成するようなper/polysulfidesが多く含まれていることが明らかとなった。そこで、ニンニク中のper/polysulfides を分離するために、ニンニク成分をヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、酢酸エチル、メタノールおよび水で抽出し、(MeHg)2Sの生成を確認したところ、ヘキサン抽出画分が(MeHg)2Sを効率よく生成した。以上のことから、ニンニク中に含有される脂肪族炭化水素類は分子内にMeHgを低毒性代謝物である(MeHg)2Sに変換するper/polysulfides を豊富に含むことが示された。本研究成果は、環境中親電子物質とper/polysulfides を同時に摂取することで、当該物質による健康リスクを軽減することを示唆している。

  • 久保田 彰, 李 宰承, 川島 千帆
    セッションID: P-126
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    十勝地方において、2016年は6月の長期的な降雨や日照不足が起こり、さらに8月には4つの台風が上陸するという異常気象に見舞われた。そのため、飼料用トウモロコシの生育不良や甚大な倒伏被害が発生し、収穫までの間のかびの侵入や増殖によるかび毒の産生や、収穫時の土壌混入によるサイレージの品質低下が起きている可能性がある。また、牧草サイレージにおいても例年に比べて刈遅れやサイレージ調製時の水分量が多く、品質への悪影響が懸念された。しかし、様々な種類のかび毒測定には費用と時間がかかるため、調査事例はほとんどない。そこで本研究では、十勝管内の一農場で生産調製されたトウモロコシサイレージと牧草サイレージについて2015年から定期的に貯蔵中のかび毒汚染の濃度をモニターし、2016年における台風災害の影響について検討した。また、飼料用トウモロコシの主要な病害罹病部位におけるかび毒濃度の調査を実施した。牧草サイレージでは調製した年によるかび毒の違いはなかったが、トウモロコシサイレージにおいては2015年に比べて2016年ではフモニシン類は同程度であったが、デオキシニバレノール(DON)やゼアラレノン濃度が高かった(p<0.0001)。このことから2015年と2016年ではトウモロコシサイレージにおける主なかび毒汚染の原因菌が異なっていた可能性が考えられた。また、2016年にかび毒が高まった要因として赤かび病への罹病の他、茎腐れ病への罹病が疑われた。栽培中のトウモロコシから採取した主要な病害部位におけるかび毒は赤かび病罹病部位からフモニシンB1およびDONが高濃度で検出されたが、その他の病害部位からはほとんど検出されなかった。以上より、台風による甚大な被害の発生した2016年はDONを中心とするかび毒濃度が高まっており、その直接的な原因としてF. graminearumによる赤かび病および茎腐れ病発生の可能性があると考えられた。

  • 伊藤 勇一, 武士田 寛人, 齋藤 和智, 本田 大士, 川本 泰輔, 藤田 侑里香, 劉 舒捷, 松村 奨士, 額田 祐子, 池田 直弘, ...
    セッションID: P-127
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    [背景・目的] αリノレン酸(ALA)-ジアシルグリセロール(DAG)油は、ALAを構成脂肪酸とするDAGに富む食用油で、脂肪を代謝する力を高める作用を持つことが報告されている。ALA-DAGはアマニ油に数%及びナタネ油に0.1%程度含まれる成分で、食経験を有するが日常的な摂取量は限定的である。摂取されたALA-DAGは消化管でモノアシルグリセロール及び脂肪酸として細胞内に取り込まれ、その後再合成を経てトリアシルグリセロール(TAG)として全身に吸収される。上記を考慮し、ALA-DAG油の安全性について、一般的な毒性試験の他、直接ALA-DAGとして暴露される舌-消化管での局所影響に着目し評価を実施した。

    [方法] ALA-DAGによる局所影響が無いことを確認するため、舌及び消化管に対する影響を中期多臓器発がん性試験(26週間混餌投与、最高用量5.5%)にて検討した。消化管吸収後の全身影響を、90日間反復毒性試験(OECD TG408、混餌投与、最高用量5.5%)及び催奇形性試験(同TG414、強制経口投与、最高用量5mL/kg)にて、ALA-TAG油を対照物質として評価した。さらに、遺伝毒性を、Ames試験、in vitro 小核試験及びin vivo小核試験(同 TG471,TG487及びTG474)にて評価した。

    [結果] 中期多臓器発がん性試験では、舌・消化管に対する有意な前がん性及び腫瘍性の組織変化は認められなかった。反復毒性試験及び催奇形性試験において最高用量までALA-DAG油による毒性学的影響は認められず、反復投与試験での無毒性量は雄2916及び雌3326mg/kg/日及び母動物及び胎児に対する無毒性量は4715mg/kg/日であった。遺伝毒性はいずれの試験においても認められなかった。

    [結論] ALA-DAG油は基本的な安全性を有するものと考えた。

  • なし
    セッションID: P-128
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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  • 小川 秀治, 美谷島 克宏, 清宮 航, 岩岸 夏菜, 飯田 那奈, 皆川 早紀, 小森谷 朱音, 小栁 美穂子, 林 新茂, 煙山 紀子, ...
    セッションID: P-129
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【目的】本研究は、食品成分による大腸炎の予防・改善方策を見出すための検討として、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎モデルを用いてラカンカ抽出物の効果を検討した。

    【方法】実験は、ラカンカ抽出物(以下、ラカンカ)を用いて、2種類行った。実験1は、雄性C57BL/6JJcl系マウスを各群5匹の6群に分け、投与条件を対照・1.5% ラカンカ(混餌)・1.25% DSS(混水)・1.25% DSS+0.15% ラカンカ・1.25% DSS+0.5% ラカンカ・1.25% DSS+1.5% ラカンカとして、1週間の期間で実施した。実験2は、同マウスを各群5匹の4群に分け、投与条件を対照・1.5% DSS・1.5% DSS+0.5% ラカンカ・1.5% DSS+1.5% ラカンカとした。実験2においては、DSSの5日間投与後に5日間休薬期間を設け、この休薬期間中にラカンカを投与し、これを2周期繰り返して、実験開始の20日後に解剖した。いずれの試験においても、体重・摂餌量・臓器重量・大腸の長さを測定し、炎症関連遺伝子発現解析、大腸の病理組織学的検査を実施した。

    【結果・考察】実験1では、DSS群で一般状態が悪化し、体重が減少し、大腸粘膜において炎症・細胞浸潤・粘液細胞の減少・E-Cadherinの染色性増加を観察し、脾・肝の炎症関連遺伝子と大腸のMCP-1遺伝子の発現が増加したが、ラカンカの投与によりいずれも軽減する傾向を示した。実験2ではDSS群で大腸炎の病態発生が認められたが、DSS休薬期間中においても一般状態の悪化を認め、ラカンカの明らかな改善効果も確認できなかった。以上の結果は、ラカンカがDSS誘発大腸炎モデルにおいて抑制的に作用する可能性を示したものの、その抑制効果は明らかでなかった。

  • 伊藤 昭人, 勝 尚子, 阿部 浩幸, 森谷 年則, 池田 博信, 飯高 健
    セッションID: P-130
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【目的】各種ワクチンあるいは、抗体医薬品を含むタンパク性医薬品は、主に皮下投与、筋肉内投与などの注射剤として用いられている。これらの注射剤投与の際に生ずる痛みは、広義の副作用と言える。このため、同等の薬効を持つ複数の医薬品からは、患者のQOL向上を考慮し「より痛みが少ない」方が選択されるべきであるが、前臨床試験の段階で痛みを予測、評価することは容易ではなかった。今回、注射時に発生する筋電図を用いて、痛みの定量化を試みたので報告する。

    【材料、方法】雄性Wistarラットに鎮痛効果がほぼ無いとされるペントバルビタール麻酔を施した。半腱様筋に双極釣針電極を、GNDをラットの頭部皮下に設置した。Powerlab 8/35本体へ筋電図を取り込み、更にこの筋電図から絶対値波型(整流化、RMS)を描かせた。双極釣針電極設置後、後肢の指を強くpinchし、筋電図が大きくなること確認した。大きくならない場合は双極釣針電極の設置部位を変更し、同様に筋電図を確認した。投与部位は足底皮下とし、対照群には生理食塩液(50μL、pH6.5)を設けた。疼痛惹起が予想される投与液として、10%食塩液(50μL)、pH 3の希塩酸(50μL)及び200μLの生理食塩液を使用した。投与液を充填した針付きシリンジ(29G)を足底部皮下に刺入し、筋電図が安定したことを確認後に投与を実施し、投与前及び投与後のRMS波型から各解析パラメータ(単位時間積分値:μV.s、単位時間積分値のΔ%、最大peak値:μV)を求めた。

    【結果】10%食塩液(50μL)、pH 3の希塩酸(50μL)及び200μLの生理食塩液ともに投与直後から筋電図の電位上昇を認め、何れのパラメータでも有意な高値もしくは高値を示す傾向が認められた。しかし、疼痛惹起物質によって筋電図の上昇幅及び持続時間に差があり、複数のパラメータを総合して考慮する必要があると考えられた。今回の試験結果は、前臨床試験における注射剤投与に伴う痛みの定量化を示唆しており、有用な評価系であると考えられた。

  • 髙石 雅樹, 平賀 建, 武田 利明, 浅野 哲
    セッションID: P-131
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【目的】マイトマイシンC(MMC)はDNA架橋形成により抗がん活性を示すと共に、フリーラジカルを産生することが知られている抗がん剤である。MMCは起壊死性抗がん剤に分類され、投与ミス等により薬剤が血管外漏出すると、重篤な皮膚傷害を引き起こすことが知られている。一方で、明確な投与ミスが無い場合でも、静脈注射時は無症状であったにも関わらず、約1週間後より投与部位に炎症が認められ、その後潰瘍に移行することがあり、この症状が長期化するため、問題となっている。

     そこで、MMCの血管外漏出誘発及び皮膚傷害メカニズムを、ヒト由来培養細胞株を用いて検討した。

    【方法】①正常ヒト皮膚線維芽細胞(SF-TY細胞)にMMCの臨床用薬液とその10倍, 100倍希釈溶液を24時間曝露し、乳酸脱水素酵素(LDH)放出量を指標にした細胞傷害性を測定した。②ヒト肝臓がん細胞(HepG2細胞)にMMCの臨床用薬液の50倍希釈液を24時間曝露し、細胞内マロンジアルデヒド(MDA)濃度を測定した。③ヒト血管内皮細胞(HUV-EC-C細胞)にMMCの臨床用薬液とその2倍, 10倍希釈溶液を2時間曝露し、細胞生存率を測定した。

    【結果・考察】①MMCの臨床用薬液とその10倍希釈溶液曝露により、有意に細胞傷害性が増加した。②MMC曝露により、細胞内MDA濃度は約3倍まで有意に増加した。③MMCの臨床用薬液とその2倍希釈溶液曝露により、有意に細胞生存率が低下した。

     従って、MMCの皮膚傷害では、細胞膜の崩壊が起こることが明らかとなり、この傷害に酸化ストレスが関与することが示唆された。また、MMCは血管内皮細胞に対しても傷害性を示すことが明らかとなり、血管内に投与されたMMCが血管内皮を傷害することにより、MMCの血管外漏出を誘発して皮膚傷害を引き起こすことが示唆された。

  • 横山 英明, 小林 章男, 近藤 千真, 大信田 慎一, 高橋 統一, 益山 拓, 正田 俊之, 菅井 象一郎
    セッションID: P-132
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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     Acyl CoA: diacylglycerol transferase(DGAT1)は,小腸上皮細胞において遊離脂肪酸とジアシルグリセロールからトリグリセリド(TG)を再合成する酵素である。DGAT1阻害薬であるJTT-553は,薬理作用(小腸上皮細胞におけるTG再合成の阻害)により,食後の血中脂質の増加を抑制する。JTT-553をラット及びサルに1ヵ月間反復経口投与したところ,血漿中トランスアミナーゼ活性の上昇が認められたが,他の肝障害パラメータの増加や肝障害を示唆する病理組織学的変化は認められなかった。本血漿中トランスアミナーゼ活性と摂餌の関連性について検討した結果,血漿中トランスアミナーゼ活性の上昇は,JTT-553投与後に給餌を行った場合にのみ認められる変化であることに加え,その上昇に関与する因子は脂質であることがわかった。JTT-553投与後にコーンオイルを負荷し,組織(肝臓及び小腸)中のトランスアミナーゼ活性を測定した結果,肝臓中トランスアミナーゼ活性に変化はなかったが,小腸中トランスアミナーゼ活性は上昇した。本結果から,JTT-553による血漿中トランスアミナーゼ活性の上昇は,肝臓ではなくJTT-553の薬理作用発現の場である小腸に由来した変化と考えられた。本変化は,アクチノマイシン(タンパク合成酵素阻害薬)及びオルリスタット(脂質吸収阻害剤)の前処置で消失したことから,小腸中のトランスアミナーゼ蛋白の合成亢進並びに小腸上皮細胞における脂肪酸の蓄積に関連した変化と考えられた。

     以上のことから,JTT-553の反復投与後に認められた血漿中トランスアミナーゼ活性の上昇は,肝障害によるものではなく,薬理作用発現の場である小腸におけるトランスアミナーゼ蛋白の合成亢進及び脂肪酸の蓄積に関連する変化と考えられた。

  • 北岡 諭, 鳩貝 壌, 落合 和
    セッションID: P-133
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【目的】Benzodiazepine系の薬物midazolamは、痙攣発作の治療や手術時の麻酔の導入・維持を目的に、second trimester(妊娠3ヶ月)以降の妊婦に対して限定的ではあるものの依然使用されている。しかしながら、胎児に移行したmidazolamの薬物動態は、全く明らかになっておらず、現在のところ胎児に対する安全性の予測は困難な状況にある。そこで本研究では、midazolamを妊娠中に使用した際の胎児における薬物動態を詳細に解析することにより、midazolamの胎児への影響を明らかにすることを試みた。

    【方法】Second trimester(妊娠14.5日)のマウスに、midazolam(2.0 mg/kg)を尾静脈より処置した。投与後、10-300分目にマウスを解剖し、母体の脳及び血漿並びに胎児全体あるいは胎児の脳におけるmidazolam及びその代謝物1′-hydroxymidazolamの移行量をLC-MSで定量分析した。

    【結果・考察】胎児の脳におけるmidazolamあるいは1′-hydroxymidazolamのAUCinfは、母体の脳におけるAUCinfと比較すると、それぞれ44.7%と44.5%であり、両薬物ともに母体の脳の約1/2の量が胎児の脳に移行していることが明らかになった。さらに、midazolam及び1′-hydroxymidazolamの母体における血中から脳への移行性と、胎児における全身から脳への移行性を比較したところ、母体では血中に比べ脳のそれぞれの濃度が1.86倍及び1.02倍高かった。胎児においてもそれぞれ1.79倍と0.75倍となり、midazolamと1′-hydroxymidazolamの末梢から脳への移行性は、母体と胎児で差がないことが示唆された。

    本研究の成果は、母体の血中midazolam濃度のデータから胎児の脳に移行するmidazolamの量を推測できる可能性を示唆している。今後、さらに詳細な解析を行うことによって、妊娠中のmidazolamの投与設計に対して明確な科学的根拠を与えることができるものと期待される。

  • Joonsoo PARK, YongWoo CHOI
    セッションID: P-134
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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     Dasatinib is a divond-generation multi-target tyrosine kinase inhibitor (TKI) that has activity against many imatinib-resistant BCR-ABL mutant forms, c-Kit tyrosine kinases, and Src. While skin hypopigmentation is a well-recognized adverse effect of first generation TKIs; it has rarely been reported with dasatinib yet. We report a rare case of vitiligo induced by dasatinib. A 41-year-old male with a history of chronic myeloid leukemia was initiated on dasatinib as part of a treatment. After 2 months of treatment, he developed skin hypopigmentation on left shoulder and arm area. With skin biopsy, the histopathologic diagnosis with HMB45 and Melan-A staining was confirmed by vitiligo. The patient with dasatinib-induced vitiligo continued to receive treatment with the drug during which time areas of skin hypopigmentation persisted and progressed. We reported rare case of vitiligo induced by treatment of dasatinib.

  • Jihong CHOI, Yiseul KIM, Joonsoo PARK
    セッションID: P-135
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    As the voluntarily reporting Adverse Drug Reaction (ADR) by Electronic Medical Record (EMR) it is possible to manage the history of ADR from individual patients, and be able to contribute to patient safety. Therefore, the ADR monitoring team at Daegu Catholic University Medical Center has been studying ADR collected through EMR.

    From JAN 2014 to DEC 2017 voluntarily reported ADRs are 796 Cases. The prevalence of ADR was as follow: non-narcotic analgesics (33.2%), antibiotics (27%), contrast medium (20.1%), narcotics (9.5%), circulatory drugs (2.6%), anti-cancer drugs (1.4%), digestive drugs (1.4%). The most common symptom was skin reaction (39.4%), followed by nausea/vomiting (38.4%), nervous symptom (8.9%), circulatory symptom (3.5%), respiratory symptom (3.1%). 13 cases were reported as serious adverse reaction such as anaphylaxis (1.6%). According to The World Health Organization-Uppsala Monitoring Center (WHO-UMC) causality criteria, 258 cases (32.4%) were 'Certain', 507 cases (63.7%) were 'Probable'. 19 cases (2.4%) were 'Possible' and 8 cases (1%) were 'Unrelated'.

    Based on this study, non-narcotic analgesics and antibiotics were the most common causative drugs, and the most common clinical features were skin reaction and gastrointestinal symptoms. However, since there is a limit to the single center study, it is necessary to look at trends in multi-center studies or long-term studies in the future.

  • 宮島 敦子, 比留間 瞳, 迫田 秀行, 相澤 雅美, 上田 麻子, 中岡 竜介, 蓜島 由二
    セッションID: P-136
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【目的】医療現場で発生する医療機器の不具合として、プラスチック製医療機器が併用する薬剤の影響により破損、劣化、閉塞する事例が報告されている。医薬品と医療機器の組合せは多様であり、相互作用の全貌は未だ解明されていない。我々は、相互作用の発生を網羅的に解析する簡易試験法を開発し、溶液のpHおよびアルコール類による影響について検討した。また、ハザードが検出された組合せについて、細胞毒性を指標としてプラスチック製医療機器と併用薬剤との相互作用による生物学的安全性に関するリスクを評価した。

    【方法】試料には市販のプラスチックシート(PC、PET、PMMA、NY)を用い、医薬品を模した溶液(被験液)にはpH 2-12の緩衝液、消毒用エタノール(EtOH)および70%イソプロパノール(IP)を用いた。単純浸漬の他、試験片を曲げた状態で被験液中に4週間浸漬する試験を行った。細胞毒性試験は、プラスチックシートを被験液に4週間浸漬し、水洗、風乾、滅菌後、ISO 10993-5に従い、チャイニーズハムスター肺線維芽細胞V79用いてコロニー形成法により実施した。

    【結果と考察】単純浸漬のみでは、プラスチックシートの表面性状や表面粗さに大きな変化が認められなかった。応力を負荷した曲げ浸漬試験法により、PC、PETとアルカリ溶液(pH 11、12)の組合せでハザードが検出され、PETの方がPCに比べて折損が多かった。アルコール類では、PMMAとEtOH、IPの組合せでハザードが検出された。PC、PETとアルカリ溶液の組合せにおいて、細胞毒性は観察されなかった。PC、PMMAはアルコール類に浸漬後、シート性状に変化が観察されたが、細胞毒性の発現は認められなかった。以上の結果から、pHおよびアルコール類については、折損や性状変化が観察された組合せでも、プラスチック材料側に新たな細胞毒性は発現しないことが確認された。

  • Taehyun KIM, Dongseok SEO, Hyejin JEON
    セッションID: P-137
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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     Polyhexamethylene guanidine (PHMG) is a guanidine derivative that is used as a biocidal disinfectant, often in the form of its salt polyhexamethylene guanidine hydrochloride (PHMG-HCl). PHMG-HCl is one of the cause agents of the humidifier fungicide accidents in Korea. Therefore, this study was conducted to investigate the inhalation toxicity of PHMG-HCl. The inhalation toxicity of PHMG-HCl was assessed by observing F344 rats exposed for 4 hr using the whole body chambers. The rats were exposed to the concentrations of test chemical 0, 20, 80, 160 and 280 mg/m3. Three males and three females died in the rats exposed to the concentration of 280 mg/m3. As the results of clinical signs, nasal hemorrhage, rale, decrease respiration rate, and decrease in locomotor activity were observed in the rats inhaled to the concentrations of 160 and 280 mg/m3. Animal’s appearance were overall emaciation or weakening after exposure. Nasal hemorrhage in the rats exposed to the concentration of 280 mg/m3 was observed in 2 males on the day of exposure. In the changes of body weight, the rats exposed to the concentration of 160 and 280 mg/m3 showed continuous weight loss after exposure. At necropsy, the findings of ballooning and pale discoloration of lung, and small of thymus were observed in the rats exposed to the concentration of 160 and 280 mg/m3. Based on these results, LC50 value was calculated to be 276.9 mg/m3 in both gender under the study conditions.

  • 石川 晋吉, 松村 一史, 喜多村 延政, 石森 かな江, 高浪 雄一郎, 伊藤 重陽
    セッションID: P-138
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    気液界面培養によりヒト気道上皮を再構成した培養モデルとしてMucilAirが存在する。また、気液界面培養を行った細胞にエアロゾルを直接曝露するための装置がVitrocell systemsから市販されている。我々はこれら技術を用いてたばこ煙の生物影響を調査した。喫煙器を用いて試験用燃焼性たばこ3R4Fを喫煙し、MucilAirへのたばこ煙直接曝露を行った。曝露から48時間後に細胞毒性やサイトカイン分泌を確認するとともに、MicroArrayを用いて遺伝子発現への影響を確認した。また、我々は同様の技術により間接加熱式たばこNovel tobacco vapor product (NTV) から発生するたばこベイパーの曝露がこれらの項目に与える影響も調査した。たばこ煙曝露では用量依存的な細胞毒性の上昇、IL-8の分泌亢進が観察された。遺伝子発現解析からは、用量依存的な変動遺伝子数の増加が観察された。細胞毒性が検出されない用量で変動が見られた遺伝子を用いてパスウェイ解析を行ったところ、炎症反応との関連が報告されているシグナル (NRF2, Toll-like receptor, p38 MAPK) などの活性化が予想された。一方で細胞毒性が検出された用量において変動が見られた遺伝子を用いた解析からは、上記とは異なるシグナルが検出され、多くが抑制的に変動していることが予想された。この結果から、MicroArrayデータが細胞毒性の状態を反映して変動していることが推察された。一方でたばこベイパーの曝露では遺伝子発現データから生物影響を検出することはできなかった。これらの結果は、燃焼性たばこ (3R4F) の主流煙中に存在する生物活性を持ついくつかの成分が、NTVのたばこベイパー中では量的に少ないという我々の過去の知見と合致するものと考えられた。

  • 永山 愛美, 諸角 芳友, 小松 弘幸, 秋江 靖樹
    セッションID: P-139
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【目的】従来安全性薬理試験における呼吸機能評価は主にラットで実施されてきたが,近年はマウスでの評価も増えてきている.さらに,再生医療等製品の安全性評価では免疫不全動物が推奨されるなど,様々な動物種に対応する必要がある.我々は,これらの状況に対応すべくSDラット,ICRマウス及びNOGマウスの呼吸機能を測定し,比較検討した.

    【方法】雄性SDラット及びICRマウスに,ジモルホラミン(呼吸機能促進)30 mg/kg及びクロルプロマジン(呼吸機能抑制)100 mg/kgを単回投与し,投与前及び投与後0.5,1,2,4,6,24時間にホールボディプレチスモグラフ法によりemka TECHNOLOGIES社の呼吸機能解析装置を用いて,呼吸機能を測定して1回換気量,呼吸数,及び分時換気量を評価した.また,NOGマウスにはヒト間葉系幹細胞(hMSCs)及びHeLa細胞の懸濁液を単回尾静脈内投与し,投与前及び1,2,4,8時間に呼吸機能を測定した.

    【結果】ICRマウス及びSDラットのジモルホラミン投与群は投与後0.5~1時間,クロルプロマジン投与群は投与後0.5~24時間において薬物に起因した呼吸機能の変化が認められた.NOGマウスへのhMSCs及びHela細胞投与群では測定期間中,呼吸機能への変化は認められなかった.本学会では動物種ごとの呼吸機能の経時的変化及びICRマウスとNOGマウスにおける呼吸機能の比較結果について報告する.

  • 阿部 一, 堀 寿子, 平井 亮, 梅田 明広, 髙橋 秀美, 渡辺 大, 石川 勉
    セッションID: P-140
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【背景】Respiratory Inductive Plethysmography(RIP)は胸部及び腹部の誘導ベルトを用いることにより、非侵襲的に呼吸機能を測定する方法である。今回、Jacketed External Telemetry(JET)システム(DSI社)を用いたRIP(JET-RIP法)により、覚醒下のイヌの呼吸機能を測定するとともに、呼吸亢進薬または呼吸抑制薬投与後の呼吸機能パラメータの変化について検討した。

    【材料及び方法】ビーグル犬の雄6頭を用いて、まず、呼吸機能の背景(日内変動)データ収集のために、約24時間(明期12時間、暗期12時間)の波形データを連続記録し、これを投与前の検査データとした。次に、アセタゾラミド(ACZ、呼吸亢進薬:100 mg/kg、P.O.)またはペントバルビタールナトリウム(PB、呼吸抑制薬:25 mg/kg、I.V.)を投与し、投与前約1時間から投与約24時間後までのデータを収集した。得られた波形データは、Ponemah Physiology Platform(DSI社)を用いて1時間間隔で解析し、呼吸数(BPM)、一回換気量(TV)、分時換気量(MV)、最大吸気流量(PIF)及び最大呼気流量(PEF)を算出した。

    【結果及び結論】各種呼吸機能パラメータの日内変動として、BPM、MV、PIF及びPEFはイヌの活動量の盛んな明期に高値で推移し、活動量が低下する暗期には低値で推移した。一方、TVには日内間で大きな変動はみられなかった。ACZ投与により、投与6時間後までに全てのパラメータの増加が認められた。PB投与では、投与4時間後までにBPM、TV、MV及びPIFの減少が認められたが、投与6~12時間後にはBPM、TV及びMVは増加に転じた。以上の結果から、JET-RIP法により覚醒下のイヌの呼吸機能の評価が可能であり、呼吸機能への影響を探索する上で有用であると考えられた。

  • 内海 雄一, 本川 佳幸, 山本 渉, 岡井 佳子, 久保 多恵子, 谷川 洋一, 中島 謙治, 澤部 壽浩, 山崎 奈穂, 守本 亘孝, ...
    セッションID: P-141
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【目的】心毒性は、創薬における開発中止の主な原因のひとつとなっている。近年、CiPA(Comprehensive in vitro Proarrhythmia assay)に基づいた催不整脈リスク評価の考え方の認識が広がり、スクリーニング毒性評価への応用が進んでいると考えられる。このような現状を踏まえ、より効率的な医薬品開発の一助となることを期待し、創薬研究における心毒性評価の実施状況を必須・オプション、自社・委託を含めて調査した。

    【方法】2017年8月に日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 基礎研究部会加盟企業61社にアンケートを配布し、創薬段階をステージごとに分け(Hit identification、Hit to Lead、Lead Optimization、Candidate selection)、オフ・ターゲットプロファイル、hERG、CiPA提唱アッセイ、in vivo等に関する実施状況を調査した。

    【結果】45社から回答を得た。オフ・ターゲットプロファイルは、ステージの後期で実施する企業が多かった。hERGアッセイの手法として、ステージ初期ではオートパッチ法、後期ではマニュアルパッチ法を実施する企業が多かった。CiPA提唱のアッセイの中で、in silico評価を実施している企業は少なかった。QT延長・催不整脈リスク、循環器評価におけるin vitro及びin vivoの試験は、ステージ初期ではほとんど行われず、ステージが進むごとに実施数が多くなった。器質的心筋毒性評価の多くはオプションで実施されていた。今回の調査により、製薬企業におけるCiPA提唱アッセイに対する対応状況並びに心毒性評価の現状が明らかとなった。

  • 本川 佳幸, 内海 雄一, 山本 渉, 岡井 佳子, 久保 多恵子, 谷川 洋一, 中島 謙治, 澤部 壽浩, 山崎 奈穂, 守本 亘孝, ...
    セッションID: P-142
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【目的】心毒性は、創薬における開発中止の主な原因のひとつとなっている。近年、CiPA(Comprehensive in vitro Proarrhythmia assay)に基づいた催不整脈リスク評価の考え方の認識が広がり、スクリーニング毒性評価への応用が進んでいると考えられる。このような現状を踏まえ、より効率的な医薬品開発の一助となることを期待し、創薬研究における心毒性評価の実施状況を調査した。

    【方法】2017年8月に日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 基礎研究部会加盟企業61社にアンケートを配布し、創薬段階をステージごとに分け(Hit identification、Hit to Lead、Lead Optimization、Candidate selection)、オフ・ターゲットプロファイル、hERG、CiPA提唱アッセイ、in vivo等の試験内容を調査した。また、各社ごとの安全マージンの設定についても調査した。

    【結果】45社から回答を得た。ステージ後期のオフ・ターゲットプロファイルのターゲット数は、50以上100未満が多かった。hERGアッセイの算出パラメータは、ステージ初期の1濃度のみの阻害率算出から、ステージ後期のIC50算出と移り変わりが読み取れた。マルチイオンチャネルの評価対象は、INaFast/Nav1.5及びICaL/Cav1.2が最も多かった。In vivoで使用される動物種は、覚醒下のECG/血圧ではラットも使用されるが、イヌ及びサルの使用が多かった。安全マージンの算出根拠は、ステージ後期では、in vivoモデルにおけるCmax又はヒト予測濃度が大半を占め、許容する安全マージンの範囲は、それらに対して10倍以上30倍未満又は30倍以上100倍未満に回答が集まった。今回の調査により、製薬企業におけるCiPA提唱アッセイに対する対応状況並びに心毒性評価の現状が明らかとなった。

  • 山本 渉, 内海 雄一, 本川 佳幸, 岡井 佳子, 久保 多恵子, 谷川 洋一, 中島 謙治, 澤部 壽浩, 山崎 奈穂, 守本 亘孝, ...
    セッションID: P-143
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【目的】心毒性は、創薬における開発中止の主な原因のひとつとなっている。近年、CiPA(Comprehensive in vitro Proarrhythmia assay)に基づいた催不整脈リスク評価の考え方の認識が広がり、スクリーニング毒性評価への応用が進んでいると考えられる。このような現状を踏まえ、より効率的な医薬品開発の一助となることを期待し、創薬研究における心毒性評価の実施状況を調査した。

    【方法】2017年8月に日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 基礎研究部会加盟企業61社にアンケートを配布し、創薬段階をステージごとに分け、オフ・ターゲットプロファイル、hERG、CiPA提唱アッセイ、in vivo等の試験内容を調査した。アンケートでは、対象を低分子化合物、抗がん剤あるいはバイオ医薬品・ワクチンに分けて、実施状況を調査した。そこで、集計結果を低分子化合物及び抗がん剤、バイオ医薬品・ワクチンに分けて、サブ解析を実施した。

    【結果】45社から回答を得た。内訳は低分子化合物38社、抗がん剤4社、バイオ医薬品・ワクチン3社であった。抗がん剤、バイオ医薬品・ワクチンの創薬研究では、オフ・ターゲットプロファイルを実施している会社は一部であった。ステージ初期(Hit identificationやHit to Lead)から、hERGアッセイを積極的に取り入れている会社は少なかった。CiPA提唱アッセイを実施している会社はなかった。QT延長・催不整脈リスク、循環器評価は、主にCandidate selectionで、覚醒あるいは麻酔下で大動物が使用されていた。QT延長、血圧、心拍数に関して、許容される安全マージンの傾向は把握できなかった。今回のサブ解析により、抗がん剤、バイオ医薬品・ワクチンを対象にした創薬研究では、心毒性評価の進め方が低分子化合物とは異なる現状が明らかとなった。

  • 義澤 克彦, 竹之内 明子, 榎本 祐子, 木下 勇一, 結城 美智子, 圦 貴司, 岡本 芳晴
    セッションID: P-144
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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     網膜色素変性症(RP)は最終的に失明を来す代表的な眼科疾患で根本的な治療はなく、この病態の理解と治療法の開発が必要である。今回、カニやエビなどの甲羅・殻に含まれる抗酸化物質であるキトサンオリゴ糖(COS)について、N-メチル-N-ニトロソ尿素(MNU)誘発ラット網膜変性症の抑制効果を検証した。

     7週齢の雌SDラットに40mg/kg MNUを単回腹腔内投与した。MNU投与7日前から1、4、8%COS水を飲水投与し、MNU投与後6、12、24、72時間および7日に眼球の組織標本を作製し、網膜厚による視細胞比率並びに網膜障害率を算出した。さらに網膜の視細胞死(TUNEL、γH2AX)、網膜機能保持率(PDE6β)、酸化障害(HO-1、TG)の有無について免疫組織学的に検証した。

     7日後ではMNU単独群に比べて4%COS併用群で中心部網膜の視細胞比率が有意に高かった。一方、8%COS併用群では網膜視細胞比率が有意に減少し増悪化がみられた。網膜障害率はMNU単独群に比べて4%COS併用群で有意に軽減したが、8%COS併用群では増悪化した。12あるいは24時間のCOS併用群でTUNEL陽性細胞数、γH2AX、HO-1及びTG陽性細胞の出現が軽減した。7日後のPDE6β保持率は、COS併用群で有意に高値を示した。

     以上の結果から、4%COS投与によってMNU誘発の視細胞アポトーシスを構造的・機能的に抑制し、その抑制効果は網膜での酸化ストレス抑制が関与していることが示唆された。8%COS投与群は体重減少が顕著であり、全身性ストレスが網膜障害の増悪化に関連したものと推察された。適切なCOSの投与量を用いることにより、RPの発症や進行の改善に役立つ可能性が示唆された。

  • 坂井田 泰二, 島戸 望, 曽我 高臣, 久保田 友成, 野々村 博子, 鈴木 信介, 野田 ゆり, 水谷 和子
    セッションID: P-145
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    (目的)

    ミニブタの網膜電位図(ERG)を記録する際の暗順応時間及び刺激条件について検討した。

    (方法)

    ゲッチンゲンミニブタ(4~8カ月齢)を用いて、暗順応時間の検討では、暗順応時間を0分、30分、60分、90分、120分で検討した。ERG刺激条件では、ISCEVスタンダードの条件に加え、Dark-adapted 0.03 ERG 及びLight-adapted 10.0 ERG の刺激条件を検討した。本検討は、いずれも麻酔下での実施を前提とし、社内動物倫理委員会の承認を得ているものである。

    (結果)

    暗順応時間の検討では、60分以降の波形に明らかな反応の違いがみられなかったことから、暗順応時間は60分が適当であると考えられた。

    ERG刺激条件では、ISCEVスタンダードの推奨条件である、Dark-adapted 30.0 ERG の刺激条件は反応が強すぎ、ミニブタにおいては不適であると考えられた。因って、Dark-adapted 0.01、0.03、3.0、10.0 ERG、Light-adapted 3.0、10.0 ERG、Light-adapted 3.0 flicker ERGが適切であると考えられた。

    (まとめ)

    以上、ミニブタの網膜電位図の記録においては、暗順応時間が60分、刺激条件がDark-adapted 0.01、0.03、3.0、10.0 ERG、Light-adapted 3.0、10.0 ERG、Light-adapted 3.0 flicker ERGが最適と考えられた。

  • 大芝 泰弘, 山田 恭史, 豊吉 亨, 長瀬 孝彦
    セッションID: P-146
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【目的】今回、ヒト加齢性・進行性難聴と類似し、高音域の難聴を発症するC57BL/6J(以下、B6)マウスを用いて、聴覚毒性作用を有する薬物を投与することにより、聴覚毒性の発現の有無を確認した。

    【方法】群構成は正常群、Furosemide群、Cisplatin群、両薬剤の併用群を設定し、18日間の反復投与を行った。マウスの聴力測定は8、16および32 kHzの周波数の刺激に対するABRを投与後19日に測定した。さらに、螺旋神経節細胞(SGC)をH.E.染色により観察した。

    【結果】Furosemide群およびCisplatin群では、8および16 kHz対するABR閾値は正常群と比較して有意な差は認められなかったものの、32 kHzでは有意な聴力低下が認められたことから、周波数が高くなるにしたがって聴力低下は重篤化する傾向がみられた。両薬剤の併用群では、聴力低下がより顕著になった。

  • 田中 豊人, 鈴木 俊也, 猪又 明子
    セッションID: P-147
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【目的】殺虫剤の共力剤であるピペロニルブトキシドについて行動毒性試験を行い、雌マウスの行動に及ぼす影響の有無について検討する。

    【方法】ピペロニルブトキシドを混餌法によりCD1マウスに0(対照群)、0.025%、0.1%、0.4%となるように調製して雌マウスに投与して行動に及ぼす影響について検討した。

    【結果】雌マウスの平均摂餌量は5・6・9・11週齢の投与群で増加した。平均体重は2・28・42日目に高濃度投与群で抑制された。多様式T型水迷路試験では所要時間には投与による影響は見られず、錯誤回数は低濃度投与群で増加傾向が見られた。8週齢の探査行動では平均移動速度が用量依存的に抑制され、経時パターンは高濃度投与群で平行幅が有意に異なった。11週齢の探査行動では総移動距離が用量依存的に短縮され、経時パターンは高濃度投与群で平行幅が有意に異なり、水平移動回数は全投与群で減少し、平均移動速度は用量依存的に抑制され、経時パターンは高濃度投与群で平行幅が有意に異なった。また、立ち上がり回数は全投与群で減少した。

    【まとめ】本実験においてピペロニルブトキシドの投与により、雌マウスの探査行動に用量依存的な影響が観察された。以前の報告で観察された雄マウスへの促進的な影響とは反対に雌マウスでは抑制的な影響が観察されたことから、ピペロニルブトキシドの行動に及ぼす影響には性差があることが示唆された。本実験で用いられたピペロニルブトキシドの用量はADI値を基に算出された(0.025%がADI値の約200倍相当)ものであるが、厚生労働省などが算出した人の食品からの摂取量(0.0326–0.570μg/kg/日)はADI値(0.20mg/kg/日)の1/100以下であるので、食品からの現実的なピペロニルブトキシドの摂取量では人に対して影響を及ぼさないものと思われる。

  • 島村 昇吾, 坂本 峰至, 山元 恵, 宮本 篤, 白石 光也
    セッションID: P-148
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    【背景と目的】胎児性水俣病では、母体胎盤を通じたメチル水銀暴露による影響を受け、胎児で脳障害に伴う様々な中枢神経症状が引き起こされるが、胎児脳に対するメチル水銀毒性発現メカニズムに関しては十分には理解されていない。Myristoylated alanine-rich C-kinase substrate (MARCKS)は中枢神経系に豊富に発現し、神経細胞の分化や成熟に関わっているタンパク質である。特に胎児期の脳の正常な発育に必須であること、またその機能がリン酸化により制御されることが知られている。そこで本研究では、ヒト胎児期における脳の発育段階に相当する幼仔ラットを用いて、メチル水銀投与の影響とMARCKSタンパク質との関連を明らかにすることを目的とした。【材料と方法】雄幼仔ラット(14日齢)に塩化メチル水銀(0-10 mg/kg/day)を10日間連続経口投与し、脳におけるMARCKS発現量およびリン酸化量の変化をWestern Blot法により、またMARCKSリン酸化陽性細胞数および陽性細胞面積率を免疫組織化学染色により検討した。【結果と考察】Western Blot法による検討では、対照群とメチル水銀投与群との間にMARCKS発現量の変化は認められなかったが、メチル水銀投与群の大脳皮質と小脳においてMARCKSリン酸化量の濃度依存的な上昇傾向が認められた。免疫組織化学染色では、大脳皮質においてグリア系と考えられる細胞でのリン酸化MARCKSの強い陽性反応がメチル水銀投与群で観察され陽性細胞数の上昇傾向が認められた。一方、リン酸化MARCKS陽性細胞面積率は有意に低かった。メチル水銀投与群でのヘマトキシリン・エオジン染色像では、リン酸化MARCKSが陽性を示した部位でグリア系細胞の増生が認められた。以上の結果から、増生したグリア系細胞でのMARCKSリン酸化反応の促進が示唆され、これが幼仔ラットにおけるメチル水銀毒性の発現に関与している可能性が考えられた。

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