武蔵工業大学では、本学原子力研究所にTRIGA_II_型原子炉(MITR)を建設し、昭和38年(初臨界)以来、平成元年12月まで原子炉を運転してきた。この間、本学の教育・研究施設として、更には文部省(現文部科学省)の支援による医療照射を中心とする全国国公私立大学の共同施設として、多くの方に原子炉は利用された。平成元年12月に原子炉タンクの底部付近で一次冷却水の漏えいがあることがわかり、原子炉の運転を停止してきた。本学において原子炉の再開と廃止の両面から検討を行ってきたが、平成15年5月に原子炉の廃止が決定され、以後、今日まで廃炉措置の作業を進めてきている。昨年8月には、全ての使用済燃料を受入れ先の米国に送還し、このほか不要となった設備・機器の撤去と整理、放射性および非放射性廃棄物の分別と保管・管理の作業を現在行っている。これにより、使用してきた原子炉制御卓、制御棒駆動装置、冷却系統設備・機器等は不要となり、これらの設備・機器は、いずれ廃棄される途上にあった。
一方、武蔵工業大学では、平成20年度より工学部に原子力安全工学科を設置することになった。そこで、廃棄される予定の原子炉制御卓、制御棒駆動装置をそのまま利用し、これらの装置とコンピュータを連動させることで、実体感型の原子炉シミュレータとして再利用することが可能であることが、検討の結果わかった。幸い、平成19年度の文部科学省、経済産業省による原子力人材育成プログラム事業の支援を得ることになり、原子力安全工学科および大学院エネルギー量子工学専攻(既設)の学生の教育・研究の設備とするため、教員、学生が一緒になって、実体感型のTRIGA型原子炉のシミュレータを構築してきた。
本発表(1)では、本シミュレータを構築するまでに至った、武蔵工大炉の廃止と現状と題して、武蔵工大炉および原子炉シミュレータの概要を発表する予定である。
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