日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成14年度日本調理科学会大会
選択された号の論文の152件中1~50を表示しています
  • 東四柳 祥子
    p. 1
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
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    本発表は、近代以降の料理書560冊を調査対象とし、その中に見られた家庭向けの日常食の「献立」に焦点をあてた考察である。近代の料理書に見られる日常食の「献立」の特徴の一つは、朝·昼·夕食の一日三食の食事内容を計画的に立てることを推奨する「三食献立」が、一般化することである。「三食献立」の内容·特徴について、さらに詳細な調査を行ってみたところ、「西洋料理紹介型三食献立」、「日常食型三食献立」の2つの型に大きく分類することが出来た。なお、本研究の調査資料とほぼ同時期に刊行された海外の料理書と比較検討したところ、その類似性からも、西洋料理書の献立の影響を強く受けている様子がうかがえた。
  • 賄食から共同炊事へ
    中野 典子, 馬場 景子, 宇野 良子
    p. 2
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
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    大正時代の糸偏の産業には、女性工場労働者の存在は非常に大きな意味を持っている。特に愛知県尾西市は、日本でも有数の織物産業の一大拠点であった。そのため工場法が実施された大正5年の時点で、労働者の健康の基礎となる食に関しての調査が実施されている。本研究で中心に扱ってきた資料は、愛知県工場會が行なった調査の基礎資料の一部であったことが、明らかになった。現存する資料としては唯一の資料である。さらに尾西市が織物城下町の様相を呈していた関係から、地域が一帯となって共同炊事場を経営することになっていく。この共同炊事場が初期の栄養学に果たした役割と、工場法による制度上の観点から考察していく。
  • 南 廣子, 舟橋 由美
    p. 3
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
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    山田政平著『四季の支那料理』を用いて、料理名の構造分析を行うとともに、料理書の内容と時代的背景について考察を行った。その結果、料理名は85例で調理法別に書かれており、平均文字数は3.74であった。食品名の出現率は48.0%で肉類はそのうち33.3%、魚介類は25.9%であった。調理法は30.2%で、「炒」、「炸」、「湯」、「凉拌」、「溜」などが、形状は11.1%で「絲」、「片」、「丸」など、その他の用語は8.9%で「白」「餅」、「浄」などがあった。数は1.8%と少なく、「三」、「八」、「十」の3文字であった。料理名中で第1コードに出現する要素は調理法が56.5%と1番多かった。料理書には材料や調理上の注意、支那料理の用語についても記載がされていたことより、当時の支那料理に関する知識の普及過程が伺えた。
  • 中村 典子, 吉田 真美, 後藤 潔
    p. 4
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
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    中国·朝鮮·日本料理におけるショウガ利用料理の内容を調べ、調味料を中心に3料理様式での使い方を比較、検討した。調査対象は料理書26冊に記載されている料理2629品であり、そのレシピから、ショウガが使用されている料理717品の調味料の使用状況について調べた。その結果、調味料使用数では3料理様式においてそれぞれの特徴がみられた。使用調味料数は中国料理で多く、香味野菜より調味料による複合された味が好まれ、朝鮮料理では香味野菜の種類は多く用いられるが調味料は少なかった。日本料理はショウガ本来の味を生かした使用法が特徴的であった。また日本料理は甘味料としてみりん利用が多く、中国料理は多様の酒類が使用され、朝鮮料理は塩味料として塩辛の使用が特徴的であった。
  • 澤田 崇子, 瀬戸 美江
    p. 5
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
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    近年、汎用型調味料が消費者に利用される割合が高くなり、販売量も増加している。本研究では、汎用型調味料を用いることが、家庭の味付けにどのような影響を及ぼすかを目的とし、長崎と大阪在住の女子短大生の家庭で使用される汎用型調味料について、アンケート調査を行った。また、短大生の家庭での調理担当者に、日頃食べ慣れている味付けで、5種類の料理を「すき焼きのたれ」または基礎調味料を用いて調理させ、調味料の使用量の比較を行った。その結果、(1)家庭で汎用型調味料を常備している割合は約70%みられ、そのうち「すき焼きのたれ」は約20%の家庭で購入されていた。(2)「すき焼きのたれ」を用いて5種類の料理を作成させたところ、長崎での「すき焼きのたれ」の使用量が多い傾向がみられた。
  • 饗庭 照美, 永岡 美沙, 南出 隆久, 冨田 圭子, 大谷 貴美子
    p. 6
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
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    アンケート調査とプロの料理人への聞き取り調査を通して, 現代の人々が持っている京料理のイメージと京の食文化について調査を行なった。京料理のイメージは, 多くの人が会席料理, 茶懐石, 日本料理と答えた。連想する食品·食材については湯葉や豆腐を挙げる人が多かったが, 料理人は鱧, 賀茂なすを挙げる人も多く食材や調理技術へのこだわりが感じられた。京料理の色彩イメージとして, 赤, 紫系統の色を挙げる人が多く, 京料理に「華やかさ」や「高貴さ」を感じていることが示唆された。京料理のイメージを因子分析すると, 「情緒性」としてまとめられる第一因子が抽出され, 京料理は, 食べる側の京の伝統文化に対するイメージが先行した料理であることが窺われた。
  • 畑江 敬子, 飯島 久美子, 小西 史子, 香西 みどり
    p. 7
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
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    国内での人の交流が盛んになり、また、食生活の多様化した現在、伝統的な正月の雑煮はどのような形で継承されているか全国的に実態を知ることを目的とした。北海道から沖縄にまたがる2564名から回答が得られた。2002年の正月に91.9%が雑煮を食べ、8.1%は食べなかったと答えた。雑煮を食べた日は、元旦が圧倒的に多く、全体の82%であり、正月中のそれ以外の日は食べた人のほうが少なかった。餅の形は、角餅が全国的に多いが、丸餅は近畿、中国地方に多く、四国、九州地方にも見られた。加熱方法は「煮る」が38%で最も多かった。だしの材料はかつおぶしと昆布の混合だしが最も多かった味付けは全国的には醤油が多い。味噌は少なかった。雑煮の具は地域性が薄まる傾向にあるが、それでもなお伝統的な様相を色濃く残していることがわかった。
  • 岡本 洋子
    p. 8
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
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    食事を外食、中食、内食に分類し、食事場面における発話を中心とした状況がどのように異なるのか調べた。また、女子学生の昼食場面において日常的にどのようなやり取りがなされているのか明らかにした。女子学生2人組の発話内容の相違を比較した結果では、外食場面では、中食場面および内食場面に比べ、「家庭生活の話題」に対して「学校生活の話題」をより多く話すことが示された。食事形態別の単位時間あたりの発話数では、外食場面では中食場面および内食場面に比べ少ない傾向が認められた。女子学生2人組の昼食場面の発話内容は、食事の話題26.9%、食事に限定されない一般的話題70.8%であるという結果が得られ、女子学生が友人とする食事では食事はコミュニケーションの場であることが示唆された。
  • 保坂 由貴子, 菅原 悦子
    p. 9
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
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    匂い評価用語を用いた官能検査を行い、加熱による味噌汁の香気変化をより具体的に表現することを試みた。さらに、未加熱及び100℃30分加熱味噌懸濁液の香気濃縮物をAEDA法によって段階的に希釈してGC-O分析を行い、複数の試料、パネルを用いて香気変化をより客観的に評価するとともに評価用語での表現との関連性について検討した。官能検査の結果、一般的な加熱条件の味噌汁は「穏やかな」などの「良い匂い」であるが、加熱しすぎるとこれらは減少し、「重い」「良くない匂い」に変化すると考える者が多かった。一方のGC-O分析では、加熱後調製した味噌香気濃縮物では感知できた匂い数が減少し、AEDA法により「すっぱい+腐敗臭」などの「良くない匂い」を示す成分が高いFD-factorとなった。
  • 官能評価の観点から
    加藤 征江, 護摩堂 友美
    p. 10
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
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    【目的】ルーの材料として、バターの代わりに植物油(コーン油、サラダ油)を用いた時、及びそれら油脂の混合した時、それらルーの香気の差異や油脂の混合の効果を官能検査によって調べた。【方法】ルーの材料と調製: 小麦粉(日清製粉k.k.、薄力粉)をバター(雪印k.k.)、コーン油(味の素k.k.)、サラダ油(日清製油k.k.)によって、130℃のホワイト·ルーと170℃のブラウン·ルーを得た。官能検査: パネル(24人、女子大生)で、評点法、順位法、識別テスト法で検査を行った。【結果】バター·ルーは、バター様と甘い香りで、コーン油やサラダ油のルーよりも、ホワイト、ブラウンのルーともに、有意に高い評価であった。油脂混合では、バターとコーン油とを2:1に混合した時に効果があった。
  • 東口 みづか, 佐々木 弘子, 松本 仲子
    p. 11
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
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    精進だしの料理への利用の可能性について明らかにすることを目的として, 昆布, 干椎茸, 切干大根, 干瓢, 大豆を単独で取っただし(単独だし)と, 昆布と他の材料を併せて取っただし(混合だし)の呈味成分の分析を行った. さらに, 混合だしを用いてすまし汁, 大根の煮物, 凍り豆腐の煮物を調理し, 官能評価を行った. その結果, 昆布と混合でだしを取ることによるうま味の増加が認められ, 単独だしのクセが緩和された. 昆布+干椎茸だしはうま味, 昆布+切干大根だしは甘味, 昆布+干瓢だしは酸味が強いだしであったが, 昆布+大豆だしはいずれの味も弱いだしであった. すまし汁では昆布+干瓢だしと昆布+大豆だし, 凍り豆腐の煮物では昆布+大豆だしの適応性の低さが認められたが, それ以外の混合だしは料理への使用が可能であると判断された.
  • 川崎 寛也, 金森 弓枝, 山田 章津子, 布施 領太, 伏木 亨
    p. 12
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
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    日本人は日本料理の特徴的な風味である「鰹だし」の風味に執着ともいえる嗜好性を示してきたが, 執着は長期間にわたる嗜好性と関連があると考えられる。そこで, 「鰹だし」の風味の強化効果(執着)への関与をマウスによるCPP(条件付け位置嗜好性試験)法を用いて検討した。試験液としてデキストリンのみや鰹だしのみを用いた場合は強化効果が見られず, 鰹だし風味のデキストリン溶液, 鰹だし風味のカゼイン溶液を用いた場合では強化効果が見られた。このことから, 鰹だしに対する執着には鰹だし独特の嗅覚味覚刺激とエネルギーが同時に得られることが重要であると示唆された。このことは, 日本食離れのすすむ日本人に日本食がより好まれるようになるためのアプローチを探る上で重要であると考えられる。
  • 永谷 裕子, 池内 ますみ, 奥田 展子, 澤田 崇子, 升井 洋至, 水野 千恵, 山下 英代, 山田 克子, 横溝 佐衣子, 四谷 美和 ...
    p. 13
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    煮もの料理にみられる調味料とくに醤油の利用実態を明らかにするため, 129件のかぼちゃ煮もの料理レシピについて煮ものの種類と醤油の使用状況, 塩分, 調味料の添加手順, 煮つめ操作などについて分析した。煮ものに使用する醤油の種類は, うすくち醤油(併用を含む)が17%, また66%のレシピでは醤油を特定せず使用されていた。醤油および食塩の添加量から, かぼちゃ重量に対する塩分を算出した結果, うすくち醤油では平均1.2%, うすくち醤油以外では平均1.4%であった。煮つめる操作はとくにうすくち醤油(併用を含む)の場合, 他に比べ煮つめない傾向が強く, うすくち醤油を用いる方が, 食塩添加量が少ない傾向に加えて煮つめないことからも食塩摂取が抑制されることが示唆された。
  • 水野 千恵, 池内 ますみ, 奥田 展子, 澤田 崇子, 永谷 裕子, 升井 洋至, 山下 英代, 山田 克子, 横溝 佐衣子, 四谷 美和 ...
    p. 14
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    関西におけるうす味·うす色の煮もの調味に寄与しているうすくち醤油の調理特性を明らかにするため, かぼちゃ煮ものの塩分, 色および官能評価に与える醤油の影響を調べた. 醤油(うすくちまたはこいくち)をかぼちゃ重量の3.0∼10.5%, 砂糖を6.0%それぞれ添加してIH電磁調理器を用いて加熱した. 塩分はモール法で, 色はミノルタ色差計により測定し, 5段階評点法により官能評価を行った. 醤油添加量が同じ場合, 煮汁の塩分はややうすくち醤油の方が高かった. 煮もの表面の色は, うすくち醤油の方が色調が鮮やかであった. おいしいと評価されたかぼちゃ煮ものの醤油添加量は, うすくち醤油では6.0%, こいくち醤油では7.5%の場合であり, これらの煮もの塩分は, うすくち醤油の方がやや低かった.
  • 池内 ますみ, 奥田 展子, 澤田 崇子, 永谷 裕子, 升井 洋至, 水野 千恵, 山下 英代, 山田 克子, 横溝 佐衣子, 四谷 美和 ...
    p. 16
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は, うすくち醤油の調理特性を明らかにすることを目的とする。醤油を用いただいこん煮もの料理レシピを分析した結果, だいこん以外の材料に肉類, 魚介類, 油揚げを用いた料理が多くみられ, 使用醤油は“醤油”のみの記載が76%を占め, “うすくち醤油”16%, “こいくち醤油”3%であった。IH電磁調理器を用いてだいこんと厚揚げの煮ものを調製し, 塩分, 色差, かたさを測定し, 官能評価を行った。添加する醤油量を変えて(4∼14%)調製しただいこんと厚揚げの煮ものを比較した結果, 塩分はうすくちを使用した方が, こいくちよりやや高い傾向であった。かたさは醤油の種類·濃度の影響がなかった。色差はうすくちを用いた方がこいくちを用いたものより低かった。官能評価の結果うすくち8%添加が好まれた。
  • 横溝 佐衣子, 池内 ますみ, 奥田 展子, 澤田 崇子, 永谷 裕子, 升井 洋至, 水野 千恵, 山下 英代, 山田 克子, 四谷 美和 ...
    p. 15
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    関西ではうすくち醤油を用いた料理が好まれる傾向にあるが, 煮物調理での醤油は味や風味だけでなく食材の色にも影響するものである。そこで, 冷凍さといもを試料として煮物調理におけるうすくち醤油の調理特性を明らかにすることを目的に本研究をおこなった。料理本等からさといもの煮物レシピを収集し, 醤油や調理法などを分析した。電磁調理器を用いて煮物試料を作製し, 官能評価を実施して加熱時間や醤油添加量の違いによる比較をおこなった。また, 塩分濃度はモール法で, 色は色差計で測定した。レシピの分析の結果, 使用する醤油の特定がなされていないものが多くみられた。官能評価の結果, うすくち醤油の30分加熱が高い評価となり, 醤油添加量の比較でも, うすくちの18%が有意に好まれた。
  • 中津川 かおり, 菅田 仁美, 松本 睦子
    p. 17
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    炊飯時に備長炭を添加することで、米飯の食味が向上すると言われている。そこで炊飯時に備長炭を用いた場合の浸漬液や米飯の特性とそれらに関与する要因について検討を行った。備長炭浸漬液のpHは、添加濃度, 浸漬時間に比例して上昇したが、浸漬1時間後のpH9強を最大とし、それ以降は添加濃度, 浸漬時間を増加させても変動は認められなかった。普通炊飯と備長炭添加炊飯の米飯の含水率に差異は認められないが、1H-NMR測定の結果、備長炭添加でT1の値が短くなる傾向を得た。クリープ測定の結果、備長炭炊飯の米粒の方が瞬間弾性率が高く、弾力に富んだ米粒であることが示唆された。官能検査の結果から普通炊飯に比べ備長炭添加炊飯の米飯は、水っぽさがなく、好ましい硬さの食感となる傾向を得た。
  • 山本 信子, 横溝 佐衣子, 福田 満, 染谷 幸子, 水口 彩
    p. 18
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    健康志向ブームにより、簡便操作の加工玄米が普及しつつある。電子レンジ加熱のレトルトタイプと電気炊飯器で炊ける早炊きや発芽玄米などの種類があり、発芽玄米は、ウエットタイプから水分を白米に近似させた乾燥タイプが多くなった。そこで、発芽玄米(以後玄米を略す)の種類による食味の違いや特徴などの検討を行った。試料は乾燥発芽、籾発芽、ウエット発芽、早炊き、レトルトの5種類とした。官能検査や飯内部の加熱状態の電子顕微鏡観察を行い、テクスチャーや還元糖量なども測定した。その結果、乾燥発芽間では、総合評価に有意な差はなかったが、硬さとうま味に有意差がみられ、水分の多い乾燥発芽Aの評価が高かった。乾燥発芽Aは、籾発芽やウエット発芽との比較では有意に好まれ、電子顕微鏡観察では、乾燥発芽は細胞の形態を残しておりウエット発芽は澱粉粒が流れているのが観察された。
  • 丸山 悦子, 佐藤 真実
    p. 19
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    炊飯過程に溶出する米飯粒表面付着物は重要な食味判定因子である。本研究では溶出固形物を調製, でんぷんの分子量分布測定を行い, 米飯食味との関係を検討した。竹生らの変法による恒温炊飯を行い, 溶出液を凍結乾燥し溶出固形物とした。ゲル濾過高速クロマトグラフィーに多角度光散乱と示差屈折計を組み合わせたシステムを用い, 溶出固形物の分子量分布を求め, この他, 全糖, アミロース, タンパク質, 灰分, 粘度, レオロメータによる化学測定を行い, 官能検査等による食味評価との相関を求めた。食味評価の相関は, 付着性, 粘度, 溶出固形物中のアミロース, 全糖が高く, 粘りに関する項目の相関が高い。食味に分子量分布が関与していることが示唆された。
  • 池田 昌代, 加藤 みゆき, 長野 宏子, 阿久澤 さゆり, 大森 正司
    p. 20
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    ミャンマーの発酵米麺(モヒンガー)のタンパク質は、製造工程を経るごとに段階的に低分子化されている。これは未発酵麺には見られない現象であることから、米タンパク質の低分子化は発酵による微生物の影響が大きいものと考えられる。そこで演者らは、発酵米麺製造工程の浸漬米、シトギから微生物を分離し、分離微生物が米タンパク質に及ぼす影響について検討した。製造工程中の浸漬米、シトギからは、一般細菌、Bacillus属、Lactbacillus属、Streptococcus、大腸菌群及び酵母などの微生物が分離された。また、これらの微生物の菌体外酵素を米抽出タンパク質に作用させ、タンパク質泳動パターンを比較したところ、普通寒天培地から分離したBacillus属が、米タンパク質を特異的に分解していることが明らかになった。
  • 新形質米の米粉およびトレハロースが蒸しカステラの物性, 官能評価に及ぼす影響
    平尾 和子, 梅國 智子, 松永 直子, 濱西 知子, 高橋 節子
    p. 21
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では3種の米粉およびトレハロースを用いて蒸しカステラを調製し, これらがカステラの物性, 凍結·解凍安定性ならびに官能評価に及ぼす影響を検討した。試料はスノーパール(低アミロース米), 夢十色(高アミロース米)および日本晴(基準米)とした。トレハロースはショ糖の50%添加した。調製は米粉ならびに糖を総重量の31%, 鶏卵は38%に配合し, 攪拌混合した後蒸し加熱を行った。スノーパールを用いたカステラは硬さ, しなやかさおよびこしにおいて大きい値を示した。トレハロースを添加したカステラは凍結·解凍に伴う表面の硬さの増加としなやかさ, こしの減少を抑える傾向が認められた。またスノーパールを用いたカステラは, いずれの糖においても食感および総合評価の項目において有意に好まれた。
  • 蒸しカステラに及ぼすエリスリトールとシルクゲルの添加効果
    平尾 和子, 反町 秀子, 濱西 知子, 高橋 節子
    p. 22
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    本報告では, 低カロリー, 低吸湿性の甘味料であるエリスリトールおよび絹素材食品(以下シルクゲル)の添加が, 蒸しカステラの物性, 膨化率, 凍結·解凍安定性ならびに官能評価に及ぼす影響を検討した。エリスリトールとシルクゲルの置換率はそれぞれ25, 50, 75%とした。蒸しカステラは卵白を泡立て, 糖, 卵黄, 米粉の順に混合し, 20分間加熱後室温で1時間放冷して調製した。エリスリトールの置換率の増加に伴い, カステラのしなやかさ, こし, 膨化率が減少した。シルクゲル置換による蒸しカステラの物性および膨化率は, エリスリトール置換のものと同じ傾向を示した。凍結·解凍サイクルの経過に伴い, 蒸しカステラはしなやかさ, こしが減少したが, シルクゲル75%置換の場合, しなやかさ, こしの変化は僅かであった。
  • 高澤 まき子, 佐々木 弘美, 保井 明子
    p. 23
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    アマランスは、穀物の中でも蛋白質、繊維、ミネラルなどが豊富で、機能性食材として評価を得ている。小麦粉をアマランス粉に代替してスポンジケーキを作成し、その性状におよぼす影響をみた。材料配合割合は、卵100g、小麦粉70g、砂糖80gとし、アマランス粉代替率は小麦粉に対して0∼40%に変えてスポンジケーキの生地を調製した。生地比重はアマランス粉代替率20%以上になると大きくなったが、比容積は代替率が増加に伴い小さくなった。生地の色は代替率が増加に伴い明度と黄味度が減少、赤味度が増加し色差は大きくなり、ケーキ内相の色も同様であった。かたさは代替率の増加によりかたく、凝集性は小さく、破断応力、破断エネルギーは大きくなった。官能評価は代替率10%までのケーキが高い評価を得た。
  • 藤井 淑子, 楠瀬 千春
    p. 24
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    生にんじんは水分含量が高い(90%)ため、スポンジケーキに多量に添加すると品質が劣化する。本研究では、共立て法で泡立た卵糖泡に、60分間茹でたにんじんのペーストを混合し、そこに粉を加え、にんじんを25%加えたバッターを調製した。バッター(400g)は、185℃で40分間焼成した。茹で人参添加でん粉ケーキは生を加えた場合と比較してオーブン内の膨張後の収縮が著しく抑制された。にんじん搾汁中の粗ペクチン量は、60分間茹でた場合に最多となった。にんじんを長時間茹でることにより粗ペクチンがにんじん保有の水分を抱合した状態でケーキの焼成が完了するため焼成時の収縮が抑制されたと考えられた。また、にんじん添加により、風味や食感が向上して官能検査でも高い評価を得たと考える。
  • 四宮 陽子, 藤井 智幸, 宮脇 長人
    p. 25
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    冷凍食品の氷結晶構造は解凍後の食品の品質に大きく影響するが, その形成機構の解明は不十分である。本研究では伝熱方向を制御して試料底面から一次元的に凍結を進行させ, 形成された氷結晶構造を実体顕微鏡で観察、コンピューター入力して画像解析(NIHimage使用)した。試料は寒天ゲルを使用し、凍結した試料はそのまま凍結乾燥した。寒天ゲルの底面から数mmは微細な氷結晶から成る過冷却層が形成され, それを核としたデンドライト構造が伝熱方向に進行する様子が観察された。デンドライト層横断面の氷結晶は楕円形で数10∼数100ミクロンであった。また、底面からの距離が長くなるにつれて氷結晶サイズは拡大した。
  • 藤井 彩香, 長尾 慶子
    p. 26
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
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    先に、複合系である食材中の熱伝導に対する水分量の影響を調べるためのモデル系を調製し、加熱下での熱移動速度とモデル系の熱拡散率との間に一定の関係があるとの知見を得たが、さらに食材の加熱による相変化が熱伝導に及ぼす影響を観察する目的でモデル系の改良を試みた。今回はモデル系の原型に含まれる小麦粉成分をデンプンに置換し、一連の加熱下でも系の保形性が維持されることを確かめ、併せて系の弾性率と粘度を温度を変えて測定した結果、水分量7%から50%の範囲で弾性項はほぼ一定の値を維持したが、粘性項は水分量に関らず、加熱温度の上昇につれて低下し、物性は脆性から延性へと変化する。
  • 長尾 慶子
    p. 27
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    食材に含まれる各種成分のうち、加熱により相変化を生じる事例として選んだデンプン系、油脂系、寒天·ゼラチン系、鶏卵系各試料を調製し、金属容器内の各試料を一定条件で加熱したときの各試料内部の温度上昇曲線を求めた。相変化に伴う吸熱現象が試料の温度上昇に著しく影響するのは油脂系および寒天系であり、ゼラチン系や鶏卵系の場合も試料の昇温速度を撹乱する状況が見られるが、デンプンの糊化が試料温度上昇曲線に影響することはない。各試料温度の上昇に伴う瞬間弾性率の増減は、必ずしも相変化温度には対応せず、米やとうもろこし起源のデンプン系では70℃以上の温度でデンプン分子の結晶部位に水が拡散することにより弾性率が一時的に低下する現象が観測される。
  • 香西 みどり, 西村 未紗, 橋野 真衣, 畑江 敬子
    p. 28
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    野菜の新たな調理方法として短時間の冷凍処理効果を検討した。キャベツの葉を1.5cm×5cm、ダイコンを1cm角に成型し、フリーザーバッグに入れて-5、-10、-20℃で2、15時間冷凍した後、袋のまま1、4時間解凍した。各冷凍·解凍条件を組み合わせた12通りの試料のドリップ、水分、色、物性を測定し、生試料と比較した。キャベツ、ダイコンともに水分含量は生試料と冷凍試料との値に差はなく、冷凍により茹でたような外観になり、噛み切りにくい漬物のような食感になった。キャベツにおけるカリウムイオン、アスコルビン酸量の測定では、-5℃冷凍での成分保持率が高いことが示された。また、冷凍·解凍後のダイコンを99.5℃で加熱すると軟化が抑制され、冷凍処理による硬化が起こっていることが示された。
  • 平尾 和子, 西澤 恭子, 濱西 知子, 高橋 節子
    p. 29
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    本報告では, アレルギー代替穀物として注目されている雑穀の中からヒエを取り上げ, 団子に添加した場合の物性, 食味特性ならびにトレハロース添加について比較検討した。ヒエ粉の添加率は10, 20および30%とし, 団子は, 米粉に熱湯を加え混捏後蒸し加熱を行い, 成形して室温に1時間放冷して調製した。団子の物性はカードメーターで硬さ·破断力を求め, 5℃で1, 3および7日間保存したものについても測定を行った。官能評価を行い物性との関連を考察した。団子の硬さ·破断力は, ヒエ粉の添加率が増すに従い増加した。ヒエ粉を用いた団子にトレハロースを添加した場合, 破断力は低下し, ショ糖を添加したものに比べて低温保存時の老化抑制効果が認められた。
  • 光沢発現
    瀧口 悦子, 片岡 あゆみ, 殿畑 操子, 饗庭 照美, 松田 秀喜, 光田 佳代, 石田 丈博, 中久喜 輝夫, 伊藤 剛, 平本 研二, ...
    p. 30
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    近年、加工食品に多用されている化工澱粉について、特にリン酸架橋澱粉の架橋度と光沢発現との関係を明らかにする目的で、焼成又は濡れによる光沢発現の研究を行った。試料として、架橋度の異なる5種類のタピオカ澱粉を用い、各澱粉特性はRVAを用いて調べた。各澱粉溶液を加熱糊化後、すりガラス板に少量塗布して加熱、又は、ドライモジュール内で乾燥後、光沢度を測定し、電子顕微鏡を用いて糊化後の澱粉粒の状態等を、観察した。焼成·濡れいずれの場合も、架橋度と光沢度が反比例するという結果が得られた。電子顕微鏡像を比較すると、架橋度による澱粉の糊化状態の違いが明らかで、澱粉粒形の保持、溶出糖量との関連が示唆された。
  • 森高 初惠, 石原 三妃, 木村 修一, 福場 博保
    p. 31
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    うるち米粉を用いたカルシウム、マグネシウム添加トルティーヤ状食品の力学特性について検討した。うるち米粉、0.5%炭酸カルシウムをベースに硫酸マグネシウムまたは塩化マグネシウムを添加した未加熱生地、加熱生地、加熱後水浸漬生地を試料とした。米粉に0.5%炭酸カルシウムを添加すると、X線回折曲線のピークは減少し、加熱生地の破断応力は減少した。カルシウムと共に硫酸マグネシウムまたは塩化マグネシウムを混合した試料では、加熱生地、加熱後水浸漬生地の破断応力は増加したが、未加熱生地では減少した。カルシウム-硫酸マグネシウム添加加熱生地のX線回折曲線のピークは小さくなったが、塩化マグネシウムでは、加熱生地の結晶化度および放置生地の結晶化度に大きな変化は観察されなかった。
  • 温度分布の変化と非線形粘弾性に及ぼす素材の影響
    勝田 啓子, 川合 利加子, 丸山 悦子
    p. 32
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    工程管理の指標として、ケーキの膨化挙動をレオロジー·パラメータで記述することを試みた。ケーキ焼成中の容積変化は円柱と放物線の回転体として定量化することができ、力学測定時に荷重制御しギャップをモニタリングし、かつフーリエ変換による高調波成分の寄与分を同時算出することにより、力学的性質の変化と膨化挙動、そして構造変化を把握することができた。バター混練ケーキ生地は調製時点では線形性の範囲は非常に小さく不均一な構造をしており、加熱による温度上昇と共にバターの溶融が始まり、生地が均一化してくると膨化し、弾性率は小さいが伸展性がある間膨化し続け、硬化が始まると再び不均一な構造になり収縮してゆくというメカニズムの一端を明らかにすることが出来た。
  • 長野 宏子, 堀 光代
    p. 33
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    中国浙江省において伝統的にタデ科植物を利用した饅頭や酒等のスターター作りが行なわれている。この伝統的な製法および微生物の働きについて明らかにすることを目的に実験を行った。2001年中国·浙江省においてサンプルを採取し、微生物の普遍性をライト染色および選択培地を用いて菌の分離を行なった。また、分離した菌について10%NaCl生育試験、ゼラチン液化試験、コラーゲンに対する遊離アミノ酸量の測定を行なった。スターターの中には酵母·桿菌等、形態の異なる微生物の存在が明らかとなった。スターターから分離した微生物はゼラチン液化活性が見られたが、タデ科植物については活性が見られなかった。ゼラチン活性のある菌にはコラーゲンに対する高い分解力が見られた。
  • 朝見 祐也, 池田 清和
    p. 34
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    蕎麦は, 重要な食用作物であり, 世界各地で広く栽培·利用されている。蕎麦が食糧として重要であるにもかかわらず, 成分組成や物性上の特性については, 不明な点が多くあり, 必ずしもよく理解されているとはいえない。今回演者は, 蕎麦食品の加工·調理特性について明らかにすることを試みた。麺などの蕎麦食品の物性を加工·調理との関連から解析したところ, 蕎麦食品は特有の物性を示すことを認めた。一方, 塩類など種々の物質添加による蕎麦食品の物性を解析したところ, 幾つかの物質について物質添加による物性の変化が認められた。観察された蕎麦食品の物性およびその変化について, 蕎麦成分との関係を解析し, 得られた実験結果から蕎麦食品の加工·調理上の特性について考察した。
  • 友竹 浩之, 大日方 洋, 山崎 利喜男, 唐沢 秀行, 栢下 淳, 加藤 範久
    p. 35
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    製粉技術によってそば粉の蛋白質含量を増加させることに成功したので、得られた高蛋白質そば粉の特徴について調べた。蛋白質含量は36.5%と、3番粉(24.5%)よりもはるかに高かった。脂質含量についても5.6%と市販そば粉と比べて高かった。食物繊維およびルチン、ケルセチンの含量は、市販そば粉と大きく変わらなかった。高蛋白質そば粉の水への溶解性は他のそば粉よりも高く、溶液の粘度が高かった。吸水性は高蛋白質そば粉が最も高く、吸油性は3種類で差がみられなかった。乳化性については高蛋白質そば粉が最も優れていた。以上のことより高蛋白質そば粉は、通常のそば粉とは異なる物性(機能特性)をもった食品素材(蛋白質素材)として利用できることが示唆された。
  • 松本 憲一, 柳澤 宙, 渡辺 雄二
    p. 36
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    凉粉はでんぷんを抽出して加熱糊化後、冷やし固めた食品である。我々は中国でその製法や利用法の調査を行った。それに基づいてダッタン·普通そば凉粉を試作し、その性状や食味などについて比較検討した。試料としてダッタンおよび普通そばのヌキ(挽き割り)を用いた。それぞれのヌキ75gを木綿袋に入れて、水300mlの中で十分に揉み出した。同様の操作を水100mlで3回繰り返し、全ての液を合わせた。これを加熱してでんぷんを糊化後、試料バットに流し入れ3時間以上冷蔵庫中で放冷した。それぞれの一般成分、ルチン含量、物性の測定と食味試験を行った。一般成分には大きな差異はみられなかった。ルチン含量は試料により大きな差がみられた。物性は、ダッタンそばと普通そば凉粉で同様の傾向がみられた。
  • 磯部 由香, 伊藤 知子, 成田 美代, 田中 陽子
    p. 37
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    加熱により赤く着色するという特徴を持つ「ツタンカーメンの豆」の一般成分として、水分、タンパク質、脂質、灰分、ミネラル、遊離アミノ酸、食物繊維について定量したところ、その含有量はエンドウとほとんど差がなかった。本試料1gから加熱抽出で得られる色素成分のDPPHラジカル捕捉能は約0.3m molのトロロックスに相当し、エンドウよりもかなり高かった。本試料の調理加工食品への利用方法として、製あん適性について検討を行った。製あん適性については、豆を加熱し、あん粒子の状態にした際に細胞外に流出したデンプン量を測定し、小豆その他あん原料豆との比較を行い、検討した結果、本試料のあん原料としての利用の可能性が示唆された。
  • クリシギゾウムシの氷結温度による殺虫処理法の検討
    鵜飼 光子, 小板 由美子, 玉木 雅子, 里見 洋司
    p. 38
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    クリの殺虫処理として報告されている氷結温度処理を利平クリに応用し、その有効性について検討した。試験区は-2℃で17日間保存後、0℃で11日保存したもの、慣行区は0℃で28日間保存したものである。測定項目は虫の害の有無、官能評価、HPLCによる糖組成の定量、色調の測定などである。試験区では虫の発生が抑えられ、霜はつきやすいが凍ることはなく、外観は高く評価された。糖分はHPLC測定値及びBrix値とも試験区の方が低くなる傾向にあった。蒸し操作は試験区では外観及び香りにおいて高く評価された。電子レンジ加熱ではいずれも硬くなり低い評価であった。甘さは蒸し操作や茹で操作において試験区で強くなる傾向にあった。
  • 松本 憲一, 佐々木 絵美, アミール ソハニ, 都甲 研一
    p. 39
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    イラン産柑橘(リムシリン)は「メディカルフルーツ」と呼ばれ、我が国ではあまり知られていない。そこでイランでの生産量や利用法、一般成分分析、その果実の特性や特徴を活かした加工法などについて検討した。リムシリンの糖度は8.5前後、pHは5.5前後、ビタミンCはレモンの1/2、カリウムは160mgであり、柑橘類特有の風味を呈していた。加工品の結果として、果汁にステビアを入れたジュースは、爽やかな味の飲み物となり、pHや糖度の経時変化は見られなかった。中双糖や蜂蜜に漬けた糖蔵品では、中双糖を用いた物が見映え、味ともに好まれた。低糖度マーマレードジャムは粘度、風味、色合いとも良かった。果実および果皮を蒸留酒に浸漬したところ色、香りなどが移行した果実酒となった。
  • 佐藤 靖子, 鈴木 惇
    p. 40
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    擂りおろしたジネンジョの粘性物質を組織学的に調べうるかを検討した。ジネンジョは、厚さ5mmに切り出したものとすりおろしたものを用いた。材料は10%ホルマリン液およびカルノアで固定後、パラフィンに包埋して薄切し、Acrolein·Schiff、過ヨウ素酸·Schiff(PAS)およびPAS-Alcian blueで染色した。ジネンジョ組織のデンプン粒子の周囲とその間にはAcrolein·SchiffおよびPAS-Alcian blueに染まる粘性物質が存在した。これらの染色性により、この物質は糖タンパク質と酸性多糖類が混在するものと考える。すりおろすことによりこの粘性物質はデンプン粒子を抱え込み筒状に伸びた。
  • 山下 貴稔, 角谷 美沙子, 貞包 忠義, 白砂 尋士
    p. 41
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    亜麻仁を50℃以下の低温で搾油した低温圧搾亜麻仁粕を粉砕して試料とし、食品への利用を検討した。対照として亜麻仁の粉砕物を調製した。試料と対照を55℃で保管し、抽出した油分の過酸化物価を比較すると、対照より試料の方が低く酸化安定性が高かった。試料または対照を50%配合したクッキーを調製し、酸化安定性と共に風味の経時変化を官能的に評価したところ、過酸化物価の上昇は試料の方が少なく、風味の劣化も試料の方が少なかった。試料の製パン性への影響を調べたところ、試料は酵母の発酵を阻害せず、良好なパンを得ることができた。低温圧搾亜麻仁粕は製菓および製パンなど様々な用途に利用できることがわかった。
  • 福田 靖子, 柴田 靖史, 熊崎 稔子
    p. 42
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    食用油は従来の油糧種子に加えてナッツ類から搾油した油や焙煎種子油などが出回っているが, その酸化安定性に関する報告は少ない. 多数の油脂の酸化安定性を迅速かつ高感度に測定する方法としてTGAについて検討した. 市販食用油は種子, ナッツ系, 着色油, その他13種類を用いた. TGAはTG/DTA同時測定装置を用いて酸化による重量増加および発熱の開始温度を測定した. 重量法で酸化安定性を測定するとともに, tocopherolをHPLC法にて測定した. その結果, サラダ油に対してTGAでの重量増加の開始温度が高く, I.D.が長かった油はマカデミアナッツ油であった. 同油はTGA, 重量法から酸化安定性が高いことが分かった. 抗酸化力の強いγ, δ-toc.の含量が高く, 多価不飽和酸が極めて少ないことが影響している.
  • 嶋田 淑子, 飯島 久美子, 小西 史子, 香西 みどり, 畑江 敬子, 齋藤 利則
    p. 43
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    食品用脱水シートでから揚げの揚げだねを前処理することによる、揚げだねのおいしさと揚げ油の劣化に及ぼす影響について検討した。揚げだねとして鯖と鶏肉を用い、脱水シートで1.5時間包んだ後、180℃の油で3分間揚げて試料とした。対照として脱水シート処理をしないものを用い、それぞれ15回連続して揚げ作業を行った。試料と対照を組み合わせ、官能検査を行なった結果、脱水シートを使用したから揚げは対照より有意に好ましいとされた。揚げ油の劣化を、酸価(A.V.), アニシジン価(An.V.), 色差ΔEで評価した。さし油をして連続してから揚げをした場合, 脱水シート処理した揚げだねを揚げた油の方が、A.V., An.V., 色差ΔE, いずれも低く抑えられ脱水シート処理によって揚げ油の劣化が抑えられたといえる。
  • 油の劣化判定に対するカルボニル価の影響
    武智 多与理, 安藤 真美, 伊藤 知子, 井上 吉世, 大野 佳美, 櫻井 愛子, 杉山 文美, 高村 仁知, 露口 小百合, 中原 満子 ...
    p. 44
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    本分科会では、フライ油の使用限界を官能的に判定する方法として、風味点数を用いる方法を確立してきた。風味点数を判定する指標として、寄与が大きいと考えられるCOVを取り上げ、COVの差によって油を判別することが可能なのか、官能検査によって確認した。その結果、COVが新鮮油に近いレベル(COV<10)においては、COVの微妙な差まで判別できていた。しかし、COVが高くなると(COV>15)、COVの違いにより油が判別できなくなった。特に、風味点数3付近のCOVでは、ほとんど判別できなかった。以上の結果から、COV約10以下程度の劣化度合いでは、油の劣化判定に対するCOVの影響が大きいが、それ以上劣化が進むと、風味点数の判定に、他の要因が関与する可能性が示唆された。
  • 薄木 理一郎, 佐々木 詩乃, 鎌田 久仁子, 安齋 香子
    p. 45
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    ジアシルグリセロール(以下、DGと表記する)を主成分とする食用油のフライ特性を明らかにするために、DG油とトリアシルグリセロール油(以下、TGと表記する)の2種をフライ油とし、フライドポテト、かき揚げ、フライドチキン、チキンカツの4種の揚げ種を用い、10回目まで個別に揚げ調理した。フライ油の熱酸化の程度を測定すると同時に、揚げ物の官能検査を行い比較検討した。その結果、DGで揚げたものは揚げ回数3回目あたりまでは、油っぽさが少なくTGよりも嗜好的に好まれたが、回数が進むと、次第に油っぽさが気になり、臭いもTGに比べ油臭さが目立つようになり、着色も強くなった。一般特数の値では、未使用のDGの値が高かったが、熱酸化の進行程度に大きな差はなかった。
  • 大野 佳美
    p. 46
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    本来、食用油の主成分はトリアシルグリセロール(TG)であるが、DGを多量に含む食用油が特定保健用食品として市販されている. そこで、少量の油脂を使用する炒めものを想定した基礎実験を行い、同時に従来の油(TG油)と比較検討した. IH調理器(ナショナル、家庭用、KZ-PH1)を使用し、ステンレス鋼およびアルミニウム、なべ底の厚さ1.6mm、直径14cmのなべを使用して弱火および中火で炒めもの実験を行った. アニシジン価、カルボニル価、酸価、過酸化物価の測定結果から、DG油の酸化過程はTG油と同様であり、いずれの食用油も200℃以下における短時間の加熱では油脂の性状の温度による変化が少ないと考えられた.
  • 小川 久惠, 松本 仲子
    p. 47
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    ジアシルグリセロールを主成分とする油(DAG)の調理特性について油を多量に使用する揚げ物、炒め物、サラダドレッシング、マヨネーズを試料として検討した。方法は、DAGと同一原料から搾油しかつ脂肪酸組成、トコフェロール含量等を揃えたトリアシルグリセロール(TAG)を対象にして、使用油量の違いによる比較、調理後の時間経過による比較などについて官能評価を中心に、揚げ物の吸湿量、化学的変化、マヨネーズの物性測定及び乳化状態について比較した。その結果、DAGの揚げ物は時間経過に伴いテクスチャーの評価が低下し、吸湿性も有意に大であった。マヨネーズはDAGの官能評価値が高く、乳化が安定していた。その他の点においては両油間に差はみられなかった。
  • 古賀 貴子, 野村 秀一, 太田 英明, 古賀 菱子
    p. 48
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    ジアシルグリセロール(DAG)の調理特性に関し、1) 乳化剤として改質乳清タンパク質(PWP)を用いた場合のDAGの乳化力をトリアシルグリセロール(TAG)と比較し、2) その乳化液状ドレッシングの調製を検討した。1) DAG:酢=50:50, 60:40, 70:30, 80:20(w/w)とし、それぞれに対し、1∼5%PWP、8.15%調味料を添加後、撹拌した。80:20を除く全試料は0/W型を示した。分離水相部の割合および粒径から、TAGに比しDAGは乳化力が低い傾向にあった。2) PWPを乳化剤としたDAGによる乳化液状ドレッシングの良好な材料配合はDAG:酢=50:50および60:40に対し、XGは0.2%および0.15%、PWPは5%、調味料は8.15%であった。これらはともにチキソトロピー的流動を示し、用途や嗜好に適した利用が可能なものであった。
  • 郷土料理の調理実態
    中村 喜代美, 新澤 祥恵
    p. 49
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    今日の食生活の変化のなかでの郷土食の位置づけを考えるため、アンケート調査により石川県の郷土料理の調理実態を検討した。調理状況では調理しているが多いのは、なすのオランダ煮、なすのそうめんかけで、少ないものは鯛の唐蒸し、鮒の甘露煮であった。また、以前は調理していたが、今は作らないというものが多いのは押しずし、えびすが、調理したことはないが、食べたことがあるでは蕪ずしがあげられた。調理法の情報源では、どの料理も母親が上位を占めているが、一部、家庭外からの情報によるものが過半数を超えるものもあった。調理しない理由として、家族が好まないからが多い料理には太きゅうりのあんかけやつる豆の煮つけがあげられ、市販調理品の利用が多い料理には蕪ずしなどがあげられた。
  • 魚の盛りつけについての一考察
    新澤 祥恵, 中村 喜代美
    p. 50
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    鰈は一般に黒い方を表にして盛りつけするが、当地においては、従来より、白い方を表にして盛つけることが多いことから、当地の特徴的な食作法について、アンケート調査により検討した。鰈を盛りつける時、どちらを表にするかの質問については約2/3が白い方を表にしており、全国一般の盛りつけと異なっている。現在の盛りつけはいつ頃からかという質問については、9割弱がずっと以前からと回答しているが、白い方表のものでは早くから現在の盛りつけの方法をとっているものの比率が高かった。また、現在の盛りつけ方の習得方法では、黒い方表のものが、学校等や本·テレビ等など家庭以外からの情報によるものの比率が高くなっていた。
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