医療分野における無線通信技術の利用は,その利用による利便性向上と信頼性担保とのバランスの上に成立している.例えば,病院内で患者の心電図や血圧,呼吸などの生体情報 (バイタルデータ) の無線モニタリングは,患者を非拘束で常時モニタリングできるという利便性向上が得られる反面,患者の生命を託すことができる高い信頼性が要求される.現在,このようなバイタルデータ伝送には医療用テレメータが用いられているが,センサの高度化や無線ボディエリアネットワーク (BAN:Body Area Network) 等の無線通信技術の新たな流れを考慮すると,バイタルデータ伝送を含めた多岐にわたる医療分野への無線通信技術の導入が避けて通れない時期に差しかかっている.
本論文では,医療施設における無線通信利用の現状と課題を示した後,無線通信技術を活用した医療情報ネットワーク高度化について述べる.このような医療情報ネットワークの構築によって,バイタルデータの連続的なデータ収集に基づく高度な医療サービスの実現が期待される.
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