学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
6 巻, 1 号
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目次
原著
  • 井戸川 由花, 鷲澤 尚宏, 小西 敏郎
    原稿種別: 原著
    2024 年6 巻1 号 p. 3-15
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/29
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    【目的】栄養サポートチーム(nutrition support team;以下,NSTと略)稼働認定施設で作業療法的栄養サポートがどのように行われているかを調査し,栄養サポート業務の質の向上に寄与することを目的とした.【対象および方法】一般社団法人日本臨床栄養代謝学会NST稼働認定施設を対象としwebアンケートを用いた横断的調査を行った.作業療法士(occupational therapist;以下,OTと略)在籍群とOT非在籍群,OT関与NST群とOT非関与NST群を比較した.【結果】OT在籍群で総病床数は少なく(P < 0.001),平均在院日数は長かった(P = 0.03).OT非関与NST群で作業療法的栄養サポートの実施割合は高く,OT関与NST群ではニーズやデマンド,精神心理面,認知機能の専門的作業療法支援の実施割合が高かった.【結論】OTは入院期間が長く中小規模の病院でNSTに参加していることが多く,質の高い作業療法支援を提供するにはOTがNSTに関与することが望ましいと考えられた.

総説
  • 内田 真哉, 井川 理, 山下 弘子, 山口 真紀子, 福田 恭子, 風岡 拓麿, 石田 なおみ, 小原 真菜美, 中西 裕明, 石橋 裕子
    原稿種別: 総説
    2024 年6 巻1 号 p. 17-22
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/29
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    本邦では多くの患者が誤嚥性肺炎でなくなる.一般的に高齢者の誤嚥性肺炎は加齢,活動性の低下といったフレイルの状態から,徐々に介護期・終末期に移行し,終末期ともなると患者の経口摂食に対する要求を満たすことは困難となる.

    本論では介護期・終末期における誤嚥性肺炎患者の摂食への要求に対して,手術を含めた栄養改善療法の意義について考察し,この時期における適切な治療の方向性を共有するため,その栄養療法の選択と予後についてのイメージグラフを作成した.

    また,終末期誤嚥性肺炎に対する外科的治療の適応は未確立だが,有効例を挙げて考察を加えた.症例は77歳,男性,脳梗塞後の脳血管性パーキンソニズムで,サルコペニアによる嚥下障害にて繰り返す誤嚥性肺炎を認めた.当科への転院時,体重30 kgを下回り,Methicillin-Resistant Staphylococcus Aureus(MRSA)肺炎となっていたが,誤嚥防止術として声門下喉頭閉鎖術を施行し,患者の望むカレーライスの摂食が可能となった.

臨床経験
  • 柳橋 美幸, 田邉 亜純, 藏田 能裕, 松本 泰典
    原稿種別: 臨床経験
    2024 年6 巻1 号 p. 23-29
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/29
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    【目的】末梢挿入型中心静脈カテーテル(peripherally inserted central venous catheter;以下,PICCと略)管理における,シアノアクリレート製カテーテル接着剤(catheter securement cyanoacrylate adhesive;以下,CSCAと略)の有用性を検討する.

    【対象と方法】当院で PICCを挿入した117例を対象とした.従来の無縫合固定器具のみで固定した群(Control群32例)とCSCAを追加した群(CSCA群85例)に分け,カテーテルの逸脱距離と出血の程度を比較した.

    【結果】CSCA群でカテーテルの逸脱が抑制され(12.0 ± 11.8 mm vs. 4.0 ± 4.3 mm,p < 0.01),刺入部からの出血も少なかった(21例(65.6%)vs. 6例(7.1%),p < 0.01).

    【結論】CSCAの使用で合併症を低減できる可能性があるが,医療者の負担をより少なくするカテーテル管理法を検討する必要がある.

症例報告
  • 村上 怜, 内田 真哉
    原稿種別: 症例報告
    2024 年6 巻1 号 p. 31-35
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/29
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    74歳女性.脳梗塞の既往があり徐々に低活動・低栄養などでサルコペニアへ移行し嚥下障害による誤嚥性肺炎を反復した.数度目の誤嚥性肺炎で入院の際,るい瘦(Body Mass Index 13.5 kg/m2)著しく重度の嚥下障害も認めた.主治医は,いわば「終末期」であり経口摂取は困難・看取りの段階と判断したが,本人・家族は経口摂取再開へ強い意欲を持っていた.多職種カンファレンスで倫理的問題も含め再検討し,誤嚥防止術(声門下喉頭閉鎖術)施行の方針とした.術後,嚥下造影検査で誤嚥の防止と嚥下機能の改善を確認し,少量から経口摂取を再開した.最終的に経口摂取のみで十分な栄養摂取が可能となり,2カ月後退院時に体重は6.5 kg増加し,栄養指標も改善した.以後は誤嚥性肺炎での入院は無く在宅生活を継続している.従来,サルコペニアの嚥下障害は誤嚥防止術の主な対象ではなかったが,リハビリテーション栄養療法が奏効しない場合に本手術の適応となる可能性がある.サルコペニアの病態は症例毎に多様であり,本手術は発声機能を失うという代償を内包するものであるため,その適応には倫理的な点を含め慎重な検討を要する.

  • 若林 仁美, 唐沢 浩二, 岡本 まとか, 千葉 正博, 田中 克巳
    原稿種別: 症例報告
    2024 年6 巻1 号 p. 37-40
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/29
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    経口抗凝固剤であるワルファリンカリウム(以下,ワルファリンと略)はProthrombin Time-International Normalized Ratio(以下,PT-INRと略)をモニタリング指標として薬効評価が行われる.今回,ワルファリンの増量にPT-INRが呼応せず,用量調節に苦慮した症例を経験した.患者の経過からPT-INR低値の要因を検討したところ,とろみ調整剤の使用開始時期と一致していることが判明した.とろみ調整剤は誤嚥予防を目的に用いられ,キサンタンガムなどの水溶性食物繊維を主成分とする.近年では血糖や血圧の改善効果などを期待して様々な栄養剤に含有されるようになった一方で,医薬品の食物繊維への吸着や,とろみ調整剤による錠剤の崩壊遅延や溶出時間延長などが報告されている.本症例では,ワルファリンがとろみ調整剤に含有されるキサンタンガムと相互作用を生じたことで,PT-INRの低下をきたした可能性が示唆された.

  • 関 美好, 畑尾 史彦, 横田 敬子, 西浦 歩, 田村 清美, 平中 久美子
    原稿種別: 症例報告
    2024 年6 巻1 号 p. 41-44
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/29
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    Body mass index(以下,BMIと略)35 kg/m2以上の高度肥満症は内科的治療に抵抗性であり,減量・代謝改善手術である腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の保険適応である.同手術に加えて自主的にパーソナルトレーニングを併用し,劇的な減量を達成した3症例を経験した.【症例1】初診時BMI 51.6 kg/m2,手術に加え週4回のトレーニングで術後2年でBMI 24.6 kg/m2となり,高血圧が寛解した.【症例2】初診時BMI 48.6 kg/m2,手術に加え週5回のトレーニングで術後2年でBMI 28.6 kg/m2となり,睡眠時無呼吸症候群が寛解した.【症例3】初診時BMI 37.1 kg/m2,手術に加え週5回のトレーニングで術後6カ月でBMI 25.4 kg/m2となり,2型糖尿病が寛解した.【結論】適切な栄養指導による食事管理に加えて,積極的に運動を併用することで減量・代謝改善手術の効果が,より高まる可能性が示唆された.

研究報告
  • 久保田 啓介, 遠藤 さゆり, 磯田 一博, 鈴木 淳司, 山口 良子, 小野 幸恵, 市川 奈津子, 稲垣 綾子, 日下 浩二
    原稿種別: 研究報告
    2024 年6 巻1 号 p. 45-50
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/29
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    【目的】周術期には口腔衛生環境が悪化するので口腔ケアが重要である.上部消化管手術から中長期間経過後での口腔衛生状態の変化を調査した.【対象および方法】2018~2021年に食道胃切除再建術を実施した16例を解析した.臨床情報と歯科診察情報を収集した.口腔衛生状態,齲歯の変化をWilcoxon符号順位検定で検定した.齲歯の増加に関与する因子をχ2-検定と多変量解析で解析した.【結果】手術から中長期間の経過で齲歯は増加する傾向を示した.齲歯の増加に関与する因子として単変量解析では肥満度指数,原疾患,再入院理由が有意であり,多変量解析では食道がん(p = 0.066),化学療法以外再入院(p = 0.128)が関与する傾向を示した.【結論】上部消化管手術の中長期経過後には齲歯が増加し,この増加には食道がん,化学療法以外再入院が関与する傾向を示した.

委員会報告
  • 熊谷 厚志, 松井 亮太, 宮崎 安弘, 青山 徹, 奥川 喜永, 島本 和巳, 牧 宏樹, 松尾 晴代, 光永 幸代
    原稿種別: 委員会報告
    2024 年6 巻1 号 p. 51-64
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/29
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    【目的】日本臨床栄養代謝学会(Japanese Society for Clinical Nutrition and Metabolism;以下,JSPENと略)若手会員による将来構想委員会「JSPEN-U45(以下,U45と略)」は,JSPEN会員の学術活動状況と将来への考えを調査するためにアンケートを企画した.

    【対象および方法】アンケートはGoogleフォームで作成され,2022年2月に全会員宛てに電子メールで告知,実施された.

    【結果】実施時会員22,434人のうち3,756人(16.7%)から回答が得られ,うち1,200人(31.9%)が「取り組んでいる研究がある」と回答した.「ない」理由の上位は「アイデアがない」,「方法がわからない」,「指導者がいない」等であった.45歳以下のアンケート回答者2,415人のうち1,048人(43.4%)が「U45活動に参加したい」と回答した.

    【結論】U45は会員の臨床研究を支援するセミナーの開催や共通データベースの構築,若手会員が参加できる「U45クラブ」の設立など,JSPENの未来を創る活動を進める.

学会参加記
編集後記
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