[目的]栄養サポートチーム(Nutrition Support Team;以下,NSTと略)の提案する栄養療法の中には,実施されない事例もある.当院のNSTが提案した栄養療法の実施率と未実施の理由を調査した.[対象および方法]2018年度と2022年度に当院のNSTが介入した入院患者を対象とした.両年の患者背景,介入回数,提案回数を調査し,提案した栄養療法の実施率,未実施の理由を比較した.[結果]提案した栄養療法の実施率は73.3%から97.0%へ増加した.また,ケアレスミスや主治医の否認による不適切な未実施が16.1%から0.6%へ,患者の拒絶による未実施は3.6%から0.6%へ減少した.[結論]当院のNSTが提案した栄養療法の実施率は経年的に向上しており,2020年度に始めた介入症例に対する事前の栄養相談,主治医との連携強化,食事・注射オーダーのダブルチェックが要因として考えられた.
2016年度から歯科医師が栄養サポートチーム(Nutrition support team;以下,NSTと略)回診に参加することで,歯科医師連携加算の算定が可能となったが,歯科医療従事者のNSTへの関与に関する報告は少ない.本研究は,オンライン質問票による歯科医療従事者のNSTの関与の実態を把握することが目的である.2023年5月~6月に,北海道のNST稼働認定施設72施設を対象にオンライン質問調査を実施した.回収率は31.9%(23施設)であり,NSTへの歯科医師,歯科衛生士の参加はそれぞれ9施設,7施設であった.歯科医師連携加算は6施設で算定していた.歯科医師の役割は口腔状態評価,歯科治療の必要性判断,歯科衛生士の役割は,口腔ケアの指導,口腔状態評価,口腔衛生管理であった.歯科医師は臨床栄養に関する知識不足,歯科衛生士はこれに加え一般的な医学の知識不足が指摘された.今後,歯科医療従事者がNSTへ参加するために卒前,卒後教育,生涯研修による臨床栄養教育の必要性が示唆された.