学会誌JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
6 巻, 4 号
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目次
原著
  • 神﨑 智子, 山岡 茉以, 平野 容子, 三原 千惠
    原稿種別: 原著
    2024 年6 巻4 号 p. 183-187
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/04/02
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    【目的】摂食嚥下障害患者において頭部挙上評価が簡易な摂食嚥下機能の指標となるか検討した.【対象および方法】対象は嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査を実施した41例.頭部挙上評価は舌骨上筋機能グレードを使用しグレード4を良好群,グレード<4を不良群とした.最大舌圧,摂食嚥下障害臨床的重症度分類(Dysphagia Severity Scale;以下,DSSと略),Mini Nutritional Assessment Short-Form,Barthel Index(以下,BIと略)を測定した.【結果】98%が低栄養のリスク状態であった.良好群は最大舌圧(p = 0.007)とBI(p = 0.0136)が不良群に比べ有意に高かった.DSSの内訳は2群間で有意差はないものの,不良群ではDSS ≤ 4「誤嚥あり」が72%を占めた.【結論】頭部挙上評価は舌圧測定困難時に簡易な嚥下関連筋群の筋力評価の一助となることが示唆された.

症例報告
  • 九鬼 直人, 小野 賀功, 菅原 大樹, 山岡 敏, 星 玲奈, 後藤 俊平, 細川 崇, 上原 秀一郎
    原稿種別: 症例報告
    2024 年6 巻4 号 p. 189-193
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/04/02
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    症例は14歳女児.West症候群と脳室周囲白質軟化症による脳性麻痺のために当院小児科をかかりつけとする児である.12歳時に胃食道逆流症状が出現し,精査加療目的に当科に紹介となった.精査の結果,胃食道逆流症とセレン欠乏症の診断となった.胃食道逆流症に対して腹腔鏡下噴門形成術および胃瘻造設術を行い,セレン欠乏症に対して逆流防止術後からセレン含有栄養補助飲料を経管投与した.術後初期は胃からの排出不良を認めたため経胃瘻的空腸チューブでの経管栄養管理を行ったが,低セレン血症の改善は得られなかった.術後2カ月時に同栄養剤の経胃瘻投与が可能となると血清セレン値は正常値になった.消化管を用いてセレン補充を行う際には投与経路によりセレン吸収が不十分となる可能性がある.本症例からはセレンの十二指腸または上部空腸での吸収が重要と考えられ,至適でない投与経路の場合には血清セレン値の改善が不十分となる可能性が示唆された.

  • 繁光 薫, 矢尾 真弓, 今井 博美, 田村 しのぶ, 近藤 たみ, 土居 恵美, 梅田 明和, 平良 明彦
    原稿種別: 症例報告
    2024 年6 巻4 号 p. 195-200
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/04/02
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    症例は76歳,女性.受診半年前より経口摂取量が減少し5 kgの体重減少,その後歩行障害・咳嗽・見当識障害・構語障害が出現.MRIで中脳水道周囲,視床内側部,乳頭体に両側対称性にDiffusion-weighted imaging(DWI)・Fluid attenuated inversion recovery(FLAIR)で高信号域,血中ビタミンB1低下を認め,Wernicke脳症と診断した.ビタミンB1補充で見当識障害は改善したが,CTで横行結腸とほぼ全胃の脱出を伴う高度食道裂孔ヘルニアによる心肺圧排所見を認めた.心臓超音波検査で左室駆出率低下・拡張障害・肺高血圧を呈し,頻脈性心房細動・低栄養・高度食道裂孔ヘルニアによる心不全と診断した.経腸栄養・リハビリを行いつつ,利尿剤およびβブロッカー貼付剤を開始し,循環動態の正常化・栄養状態改善の後,第27病日に腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復術を行った.術後経過良好で術後17日目に転院した.Wernicke脳症・心不全をきたした高度食道裂孔ヘルニアに対し,チーム医療により良好な転帰を得た.

  • 吉本 早奈恵
    原稿種別: 症例報告
    2024 年6 巻4 号 p. 201-205
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/04/02
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    症例は59歳,女性.19歳頃より抑うつ気分が出現し,現在まで精神科での治療を受けていた.59歳時,抗精神病薬を過量内服し救急搬送され,血液検査でRBC 291 × 104/μL,Hb 10.4 g/dL,MCV 96.2 fLと貧血を認めた.3日後,当院入院した.RBC 373 × 104/μL,Hb 9.8 g/dL,MCV 100 fLとなり,血清葉酸2.2 ng/mLと低値であったため葉酸15 mg/日の補充を41日間行った.RBC 264 × 104/μL,Hb 9.9 g/dL,MCV 101.4 fLと貧血の改善は認めなかった.網状赤血球増加,間接ビリルビン高値,胆石および脾腫の合併から慢性的な溶血を認め,溶血性貧血を疑い血色素異常症スクリーニング検査を行った.赤血球膜Band3検査にて低下,小型球状赤血球も認め遺伝性球状赤血球症(hereditary spherocytosis;以下,HSと略)と診断された.HSでは葉酸補充が推奨されているが,溶血の亢進を認める場合,葉酸を補充してもHbの増加を認めるのは困難である可能性がある.

施設近況報告
  • 横浜 吏郎, 明石 弥生, 但馬 久貴, 玉木 陽穂
    原稿種別: 施設近況報告
    2024 年6 巻4 号 p. 207-211
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/04/02
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    [目的]栄養サポートチーム(Nutrition Support Team;以下,NSTと略)の提案する栄養療法の中には,実施されない事例もある.当院のNSTが提案した栄養療法の実施率と未実施の理由を調査した.[対象および方法]2018年度と2022年度に当院のNSTが介入した入院患者を対象とした.両年の患者背景,介入回数,提案回数を調査し,提案した栄養療法の実施率,未実施の理由を比較した.[結果]提案した栄養療法の実施率は73.3%から97.0%へ増加した.また,ケアレスミスや主治医の否認による不適切な未実施が16.1%から0.6%へ,患者の拒絶による未実施は3.6%から0.6%へ減少した.[結論]当院のNSTが提案した栄養療法の実施率は経年的に向上しており,2020年度に始めた介入症例に対する事前の栄養相談,主治医との連携強化,食事・注射オーダーのダブルチェックが要因として考えられた.

研究報告
  • 大橋 伸英, 水野 愛理
    原稿種別: 研究報告
    2024 年6 巻4 号 p. 213-217
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/04/02
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    2016年度から歯科医師が栄養サポートチーム(Nutrition support team;以下,NSTと略)回診に参加することで,歯科医師連携加算の算定が可能となったが,歯科医療従事者のNSTへの関与に関する報告は少ない.本研究は,オンライン質問票による歯科医療従事者のNSTの関与の実態を把握することが目的である.2023年5月~6月に,北海道のNST稼働認定施設72施設を対象にオンライン質問調査を実施した.回収率は31.9%(23施設)であり,NSTへの歯科医師,歯科衛生士の参加はそれぞれ9施設,7施設であった.歯科医師連携加算は6施設で算定していた.歯科医師の役割は口腔状態評価,歯科治療の必要性判断,歯科衛生士の役割は,口腔ケアの指導,口腔状態評価,口腔衛生管理であった.歯科医師は臨床栄養に関する知識不足,歯科衛生士はこれに加え一般的な医学の知識不足が指摘された.今後,歯科医療従事者がNSTへ参加するために卒前,卒後教育,生涯研修による臨床栄養教育の必要性が示唆された.

編集後記
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