日本理科教育学会研究紀要
Online ISSN : 2433-0140
Print ISSN : 0389-9039
26 巻, 3 号
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  • 須田 郁子
    1986 年26 巻3 号 p. 1-10
    発行日: 1986年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    先に兵庫県の小学校校地に生育する野草の分布調査を行い、全校に共通する野草の種類を明らかにした。1)その結果、兵庫県下の大部分に生育すると思われる野草42種を明らかにすることができた。本報告は、新潟県の小学校校地に生育する野草を調査した結果である。1983年夏から1984年秋にかけての4回の調査で確認できた野草は、延べ440種余りであった。その内、全校に共通することが確認されたのは、ドクダミ、イヌタデ、シロザ、スベリヒュ、ツメクサ、タネッケバナ、シロツメクサ、カタバミ、オオバコ、ヒメジョオン、ヒメムカショモギ、ヨモギ、スズメノカタビラ、カゼクサ、メヒシバ、アキメヒシバ、イヌビエ、ツユクサの18種である。また、大部分(17校、85%以上)の小学校で確認した野草は26種である。これら44種の野草は新潟県下の小学校校地にかなり広く分布していることが予想される。さらに、新潟県の調査と兵庫県の調査1)との比較によって、両県の小学校校地にほぼ(85%以上の小学校に)共通する野草は23種であることがわかった。

  • 高橋 成和
    1986 年26 巻3 号 p. 11-19
    発行日: 1986年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    小学校5学年の教科書に、弦やゴムひもの振動についての素材が掲載されている。そこで扱われる内容は、振動の振幅と音の強さの関わりである。この教材に関連して本論文は、水平に張ったゴムひもを手で摘み上げ、静かに離したあと、それがどんな形で振動するかについて議論する。まず、教員志望の学生や、小学校の先生がたが想起されるその形は、どんなものであるかを調査した。解答の大半は正弦波形であった。これは一概に誤りとはいえないが、しかし╱╲字形に折り曲げて摘んだゴムひもが、初めから正弦波形で振動するのであろうか。この解答は波動方程式の解として与えられるが、これを具体的な姿で示すために、振動中のゴムひもを写真に撮影してみた。すると、振動の初期において、ゴムひもは三つの線分に折れ曲っていることが分る。しかも、その折れ曲り点は、次のように運動する。(1)摘み上げたときにゴムひもが構成した╱╲字形と、両固定端の中点に関するこの対称図形とを合せてできる菱形や平行四辺形の周囲を回る。(2)摘み上げた点が左右に分れて出発し、両固定端の中点に関する摘み上げた点の対称点ですれちがい、出発点で再会する。(3)その速さは、この周囲を構成するゴムひもを伝わる波の速さに等しい。このようにして、折れ曲り点を結ぶ線分は等速で往復運動をし、その左右の線分は静止している。

  • 金 仁煥, 船元 重春
    1986 年26 巻3 号 p. 21-28
    発行日: 1986年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    さきに金仁煥が行なった高等学校化学教科書の分析結果が、学習指導の実態とどのようにかかわっているかのアンケート調査結果について報告する。小学校教員養成課程の大学生を調査対象とし、全国的に13大学からの資料のうち、各大学に共通な部分として3 • 4年次の学生の回答を集計した。総数582、その概要は次のとおりである。1)化学の履習状況:化学I 99.3% 化学II 43. 1 % 基礎理科 0.7%  2)授業形態:大勢として教師主導型 3)実験上の基礎的技能修得状況:加熱技能をはじめ、上皿天びんやメスシリンダーの使用、ろ過の仕方など簡単なものについては、義務教育段階で高率に修得ずみであるが、試薬の調製やガラス細工などについての高等学校での修得率は極めて低調である。4) 15社中、採択部数の多い上位7社の教科書のうち、 5社以上の教科書に扱われている17項目の生徒実験に関する実態。① 70%以上の学生が生徒実験として学習したものは僅か6項目である。②教科書にあげられた生徒実験にも拘らず、 10項目が20%以上教師実験で代行されている。③実験の機能として学生が指摘している大部分は、「学習内容の理解に役立つ」である。④実験で楽しかったとする理由の筆頭は、「実験がおもしろい」であり、次いで「実験の成功や円滑さ」からくる満足感である。⑤実験で困ったこととしては、実験時間の不足と、実験結果をまとめることの難しさの訴えが多い。総じて生徒実験は、書かれた自然科学の知識の検証による理解と定着との役割に奉仕する手段として位置づけられている傾向にある。しかしながら、観察・実験を強調する現代科学教育の実現に向けて、また大学における教員養成の改善充実をはかる上からも、高等学校化学教育でとくに生徒実験の一段の重視が期待される。しかも単に生徒実験の機会を多く設けるだけでなく、実験の計画や準備から後始末まで、すべての行程が文字通り生徒実験であり得るよう、生徒実験の質的改善が望まれる。

  • 小堀 志津子, 川上 進, 深谷 雅明
    1986 年26 巻3 号 p. 29-34
    発行日: 1986年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    ゾウリムシは、小・中・高校を通じて理科学習の多種多様の観察・実験に活用することができるすぐれた生物教材の一つである。したがって、これまでその培養方法については、多くの著書・論文等に述べられているが、小・中・高校などにおいて、簡便・確実に、かつ効率的にゾウリムシを培養することができる方法は、未だ、確立されているとはいい難い。そこで、著者等は、これまで報告されている培養方法の中から代表的なものについて比較検討し、パクテリアを移植しない簡便な方法により、学習指導に効果的に活用しうるゾウリムシの培養方法の開発を試みてみた。得られた結果を要約すると次のごとくである。(1)ゾウリムシの増殖率は、小麦粉ときな粉を等量ずつ混ぜて1.2gとし、これらを1ℓの脱イオン水に溶かした培養液において最も良い値が得られた。(2)この培養液を用いて、小・中・高校において簡易に使用しうる容器の中で、どの容器が最も培養に適しているかについて比較検討を試みたところ、腰高シャーレのように口径が大きくて深さのある形をした容器が最も高い増殖率を示した。しかし、試験管のように口径の小さい容器でも培養液量をその容積の60%前後にすると腰高シャーレの場合の最高の増殖率とほぼ同程度の値が得られることがわかった。試験管は腰高シャーレに比べて費用もかからず、かつ取扱いも簡便であり、また負の走地性を利用してゾウリムシを分離するのにも都合が良いという利点を持っているから、簡易で効果的な培養容器として極めて実用的なものであるといえるであろう。(3)培養容器は滅菌処理を行うと良い結果が得られる。乾熱滅菌処理をしたものを用いた場合、非滅菌容器を用いた場合と比べて約 2倍の増殖率が得られた。家庭用蒸し器を用いて間欠滅菌処理を行った場合でも、乾熱滅菌処理の場合とほぽ同じ値が得られるから設備の不足のため乾熱滅菌ができない場合には、この方法を利用するとよい。

  • 角屋 重樹
    1986 年26 巻3 号 p. 35-41
    発行日: 1986年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    本研究は、大学生を対象として行った調査結果をもとに、中学1年と3年とを対比することから、中学生の仮説テスト方略の実態を明らかにしようとした。このため、 2種の非因果的課題(封筒課題と4枚カード課題)および2種の因果的課題(発芽課題と脂質課題)から成る質問紙調査を、 1年171名、 3年164名に実施した。結果は、以下のようになった。(1)仮説を双条件文と解釈する全課題を通した中学生の割合は、約56~64%であった。(2) 課題の正誤に現われる仮説テスト方略は、両学年において非因果的課題と因果的課題とでは異なった。更に、 1年では、非因果的課題を構成する下位の課題間でも異なった。

  • 広瀬 正美, 大森 雅彦, 橋本 健夫
    1986 年26 巻3 号 p. 43-48
    発行日: 1986年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    教科書は、学校教育において重要な役割を果たしているが、教科教育的、客観的な教科書分析法が確立しているわけではない。そこで本研究では、教科書分析法として以下の4項目を提案し、議論した。(1)教科書の内容を、①文章、②写真、③さしえ、④グラフ・表の4つに分け、それぞれの面積が全体に対して占める割合(各面積率)を調査する。(2)教科書本文を、①疑問をなげかける文、②事象を説明する文、③行動を促す文、④注意をする文の4つに分け、それぞれの個数が全体に対して占める割合(各個数率)を調査する。(3)使用されている単語の難易度とその個数により、教科書本文の難易度を算出する。(4)各面積率.各個数率の出版社によるばらつきより、教科書の個性の度合(個性度)を算出する。この方法により、小学校理科の新・旧教科書を分析、比較し、先の改訂による変化をまとめた。この結果と改訂の主旨がよく一致することにより、本教科書分析法は教科書の定星化の可能な内容についてみると、一つの特色を見出すことが可能な方法であることが判明した。

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