小・中学校理科には,方向概念に関連する学習内容が数多く見られ,たいへん重要な概念の1つといえる。米国プロジェクト(ESS,SAPA, SCIS, MAPS等)においても,方向概念に関する学習活動が,さまざまな角度から設定されている。前報に引き続き本報では,空間概念の1つである方向概念の認識について調査した。また,ピアジェの“三つ山”問題が示唆するように,方向概念の認識に視点の移動は不可欠である。従って,視点の移動を,方向概念の認識の成否をみる1つの大きな指標として用いた。調査結果の分析より次のことがわかったので報告する。(1)左一右方向に関する認識が低く,その認識には,祝点の移動が不可欠であること。(2)小・中学校を通じ,平行概念に関する設問の正答率が低いこと。(3)方位に関する設間の誤答のタイプには,上一下概念との混同がみられたこと。(4) 鉛直一水平概念を認識している者は,小6でも約 5割と低く,誤答者には, 3つのタイプがみられたこと。(5)方位を三次元の方向として捉えている者は少なく,ほとんどの者が,二次元空問内での認識にとどまっていること。
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