日本理科教育学会研究紀要
Online ISSN : 2433-0140
Print ISSN : 0389-9039
22 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 西條 敏美
    1981 年22 巻2 号 p. 1-11
    発行日: 1981年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    学習活動を行う場合のもっとも大切な心理的要素である学習意欲が,年間通してどのように変動するか,また学習意欲を起こしたりなくしたりするのはどのような場合であるかを,高校生を対象にして,質問紙法による毎月の調査から明らかにした。その結論は次のとおりである。(1)学年別に学習意欲の程度を見ると, 1学年は新入生として比較的高い学習意欲を年間持ちこたえられるが, 2学年では高校3年間の中だるみの時期として,年間学習意欲の低い状態が続く。しかし, 3学年になるとふたたび1学年以上に学習意欲を起こすようになる。(2)個々の生徒の学習意欲の年変動のパターンは, 15のパターンの類型に分類され,その中でもっとも多いのは,年度の途中で2度または3度学習意欲をなくす2谷型または3谷型の類型である。その時期は, 6月と10, 11月頃および翌年2月である。(3)その際.学習意欲を急激になくすのは, 4月から5月の問であり,反対に学習意欲を急激に起こすのは, 2月から3月の間である。(4) 理科各科目に対する生徒の学習意欲は,勉学全体に対する学習意欲より年間通して低い状態に置かれている。(5) 生徒が学習意欲を起こした理由としては,定期考査や大学入試が近いからとするものがもっとも多く,反対に学習意欲をなくした理由としては,科目や学習内容がむずかしくて,理解できないからとするものがもっとも多い。なお, 3学年においては,大学入試科目でない科目には,初めから学習意欲が起こらない傾向が強い。

  • 山路 裕昭
    1981 年22 巻2 号 p. 13-19
    発行日: 1981年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    ソ連における教科間結合の考え方は,決して新しいものではない。進歩的な教師達は,個人的にではあったが,教科間結合を教授一学習の場で利用してきた。けれども,一般に教科間結合が重視されるのは,もっばら教授要目作成時においてのみであった。しかし,1975年に開催された教授法研究会議第3回総会においては,この教科間結合を実際の教授一学習の場で組織的かつ体系的に利用すべきことが主張され,その実現のための具体的勧告も行われた。一方,全般的義務制中等教育という新しい状況下では,訓育と教授一学習の質的低下という問題が生じていた。このような問題に対応し,質的に高い教育をすべての生徒に与えるために,1977年のソ連共産党中央委員会とソ連閣僚会議の決定「普通教育学校の生徒の教授一学習と訓育およびその労働への準備の一層の改善について」は,教授要目の改訂を指示した。この教授要目改訂の基本方針の一つは,科学技術の新しい成果の導入ではなくて,むしろ不必要な教材の排除,教材の相応性と内的継承性および論理的順次性の重視であった。こうして1978年に公表された新しい教授要目の案の中には,「教科間結合」の項目が設けられていた。これは,教授要目改訂に関する要求と,教科間結合実現に関する要求が,まさに一致した結果と考えることができよう。すなわち,教科間結合は,全般的義務制中等教育の状況下で,その訓育と教授一学習の質的向上を計る目的で導入されたと考えられる。

  • 鈴木 智恵子
    1981 年22 巻2 号 p. 21-34
    発行日: 1981年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    「小学校教員養成課程の学生が,小・中学校理科教科書に掲載されている自然物をどの程度識別することができるか」を質問紙法により調査した結果を報告する。調査対象者は仏教大学教育学科 2回生の小学校教科専門「理科」の講義受講者90名である。調査の項目概要は下記の通りである。 (1)小・中学校理科教科書に載っている植物を識別する能力 (2)小・中学校理科教科書に載っている動物を識別する能力 (3)小・中学校理科教科書に載っている岩石と鉱物を識別する能力(4)星および星座を識別する能力 (5)栽培の経験と関心度 (6)自然観察への関心度

  • 石川 正, 関 利一郎
    1981 年22 巻2 号 p. 35-44
    発行日: 1981年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    観察とは,事物・現象に関する情報をすべての感覚器官を通じて収集する活動であり,基本的な科学の方法である。児童・生徒に観察の指導をする際,児童・生徒の観察能力の発達の実態を知ることが重要である。そこで,岩石(石英閃緑岩,礫質砂岩)を小学校4~6年生,中学校1~年生に自由に観察,記録させ,その記録を集計し,いろいろな観点から分析したり,考察したりした結果,次の事項が明らかになった。(1) 一般に,小学生高学年から中学生にかけて,観察力が量から質に変化している。(2)児童・生徒は観察活動に五感全部を活用せず,ほとんど視覚,触覚で情報を収集している。(3)かなりの児童・生徒が観察して得られる事実と,事実から導びき出される解釈とを混同している。

  • 勝俣 仁, 栗田 一良
    1981 年22 巻2 号 p. 45-52
    発行日: 1981年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    対流現象は熱の伝わり方の一つとして小学校第6学年において学習されており,多くの教科書の中に対流現象が起きているときの水の動き方を示すモデルが掲載されている。ところが,このモデルには理論的にも肉眼観察の立場からも,納得できない部分が多くある。そこで,加熱時の水温分布の時問的変化を詳細に調べることによって,正しい水の動き方を把えようと試みた。しかし,ふつうのアルコール温度計では精密な水温測定は望めないため,熱電対によって水温測定を行った。その結果,対流時の正しい水の動き方は次の通りであるとの結論に達した。水が加熱されているとき,熱源付近の水は膨張し密度が小さくなるために上昇する。この水は,水面まで達して表面上に広がる。しかし,次々に水が上昇してくるため,先に上昇した水は下に追いやられるようになる。そのときの下降のしかたはほぼ層状であり,決して,教科書中のモデルのように加熱している部分の逆の方から下降するわけではない。このことは,上昇する水を過マンガン酸カリウムで着色し,その動き方を観察した結果からも裏付けられた。また,加熱方法としては,授業で頻繁に使用されるアルコールランプやガスバーナーよりも,むしろ火力の弱いロウソクの方が対流時の水の動き方を観察するのに適していることもわかった。

  • 森本 信也, 栗田 一良
    1981 年22 巻2 号 p. 53-60
    発行日: 1981年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    本報においては,最新の燃焼理論に従って,従来の炎の構造に関する実験・観察の問題点を以下の諸点から検討した。(1) 予め原料気体に空気が混合されたガスバーナーの炎と,原料に空気の混合されていないろうそくや,ガスバーナーの炎との構造上の相異点 (2)内炎,外炎の定義 (3)ろうそくや,空気が予め混合されていないガスバーナーの炎の青色部の考察以上の諸点の検討の結果,教科書等における炎の構造の記述に関して,多くの誤記があることが明らかになった。

  • 松森 靖夫, 関 利一郎
    1981 年22 巻2 号 p. 61-71
    発行日: 1981年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    小・中学校理科には,方向概念に関連する学習内容が数多く見られ,たいへん重要な概念の1つといえる。米国プロジェクト(ESS,SAPA, SCIS, MAPS等)においても,方向概念に関する学習活動が,さまざまな角度から設定されている。前報に引き続き本報では,空間概念の1つである方向概念の認識について調査した。また,ピアジェの“三つ山”問題が示唆するように,方向概念の認識に視点の移動は不可欠である。従って,視点の移動を,方向概念の認識の成否をみる1つの大きな指標として用いた。調査結果の分析より次のことがわかったので報告する。(1)左一右方向に関する認識が低く,その認識には,祝点の移動が不可欠であること。(2)小・中学校を通じ,平行概念に関する設問の正答率が低いこと。(3)方位に関する設間の誤答のタイプには,上一下概念との混同がみられたこと。(4) 鉛直一水平概念を認識している者は,小6でも約 5割と低く,誤答者には, 3つのタイプがみられたこと。(5)方位を三次元の方向として捉えている者は少なく,ほとんどの者が,二次元空問内での認識にとどまっていること。

  • 隅倉 雄一, 栗田 一良
    1981 年22 巻2 号 p. 73-81
    発行日: 1981年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    “熱”とは,日常頻繁に使われる用語の一つであるが,科学的にはエネルギーの一形態であり,極めて抽象的であるが故に,児童・生徒にとって形成困難な概念の一つと言える。このことは,科学史的にも熱概念の成立過程が紆余曲折を極めたことからも推察できる。筆者らは,このような熱概念を小~中の児童・生徒がどのように認識しているかを探るための基礎研究として“熱”に対するイメージを明らかにするため,次の2点より実態調査を実施した。(A)自由記述による熱のイメージに関する問題 (B) 熱の具体的なイメージに関する問題その結果,以下の事項が明らかになった。(1)児童・生徒は,熱をそれが持つ性質として“あつい”“温かい”とする傾向が強い。(2) 熱を温度と混同している児童・生徒が多い。(3)学年が下がるにつれ,高温物体のみが熱を持っていると把える傾向が強い。(4) 熱には形も色もないと考えている者は,小学生で平均41%, 中学生で平均48%である。(5)ある物体の温度上昇とその物体の重さには関係があるとする者は,小学生で平均73%, 中学生で47%である。

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