ジオリアクター研究(地下高温域でのCO
2の流動と化学反応による鉱物固定に関する研究)は,地温勾配の高い我が国の特徴を活かし,CO
2が岩石との化学反応により炭酸塩鉱物として固定される反応を加速させることによる新規のCO
2貯留方法の開発を目的として,富山大学,京都大学,三菱マテリアルテクノ,地熱技術開発,電力中央研究所と共同で実施している。平成18年度から20年度にかけて, RITEの研究開発として,「ジオリアクターによる排ガス中CO
2の地中直接固定化技術開発」が実施され,雄勝花崗閃緑岩とCO
2溶解水を反応させる室内試験が行われた。これらの試験結果を基にTOUGHREACTを用いた地化学シミュレーションが実施され,様々な条件(温度,CO
2濃度,岩石粒径等)で実験結果を再現する最適な地化学パラメータを取得した。高温地域における二酸化炭素地中貯留の対象候補としては,花崗岩類のほかに,玄武岩,安山岩等も考えられる。特に玄武岩はカルシウム含有率が高く,炭酸カルシウムの生成による二酸化炭素固定がより多く期待できる。ここでは,雄勝花崗閃緑岩との反応により取得された地化学パラメータを基に,玄武岩,安山岩とCO
2溶解水を反応させる地化学シミュレーションを行い,雄勝花崗閃緑岩の場合との挙動の違いを比較検討し,貯留層岩石の違いによる炭酸カルシウム生成速度,沈殿量の違いについて検討した。解析結果は以下の通りまとめられる。‹BR›(1) 200℃,150℃,100℃のすべての温度条件において,同じ温度条件で比較すると,玄武岩,安山岩,花崗閃緑岩の順に方解石の沈殿量が多く,沈殿開始時期も早い結果となった。これはカンラン石,輝石類の含有の有無及びその量比が関係していると考えられる。‹BR›(2) 玄武岩,安山岩,花崗閃緑岩とも,同じ岩石条件で比較すると,温度が高いほど方解石の沈殿量が多く,沈殿開始時期も早い結果となった。100℃の計算(30日間)では,いずれの岩石においても方解石が沈殿しなかったが,200日間の計算では,玄武岩において約90日目から方解石が沈殿している。低温条件でも時間をかければ方解石の沈殿は進むと考えられる。
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