日本精神保健看護学会誌
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28 巻 , 2 号
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原著
  • 高橋 有里
    2019 年 28 巻 2 号 p. 1-9
    発行日: 2019/11/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    油性徐放性製剤の筋肉内注射後に発生する硬結は,患者に痛み等の苦痛をもたらしている.本研究は,動物実験で硬結予防に効果があると示唆された筋収縮運動を実際に試み,その有効性について明らかにすることを目的に行った.

    ハロペリドールデカン酸エステル注射液の筋肉内注射を定期的に受けている入院患者10名を対象とし,対照群と介入群に分けた.対照群は注射後に何もせず,介入群は注射後に中殿筋が収縮するよう下肢の外転運動を30回行った.その結果,硬結は両群ともに5名中2名に発生した.しかし,対照群では両側に発生し,圧痛があり,4週間後まで継続して観察されたが,介入群は発生が一側のみに留まり,圧痛はなく,注射2週間後には消失したとの差があった.また,運動を行うことに対する患者の負担はなく,看護師も肯定的であった.

    したがって,注射後に中殿筋の収縮運動を行うことは,硬結を予防するのに有効であることが示唆された.

研究報告
  • 奥田 淳
    2019 年 28 巻 2 号 p. 10-19
    発行日: 2019/11/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,医療観察法通院処遇対象者への訪問看護に携わる看護師が抱く困難を明らかにすることを目的とした.指定入院医療機関に従事した経験のない訪問看護師18名を対象に半構造化面接を実施した.得られたデータをKrippendorffの内容分析の手法を用いて分析した.

    訪問看護師は,【医療観察法に必要となる観察と評価を正確に行う難しさ】【再他害行為を意識した支援における関わりの難しさ】【処遇終了の判断要因である社会復帰を地域生活において支援する難しさ】【処遇制度の規則にしたがって支援を提供する難しさ】【多職種連携支援において他職種と連携する難しさ】【対象者の受入れによるリスクと処遇上の制限による業務管理の負担感】を抱いていたことが明らかになった.

    困難の背景には,訪問看護師が対象者の支援において,再他害行為防止を留意していることが考えられた.また,困難の内容から,処遇制度上の規則により生じた困難の特徴が示唆された.

  • 平松 悦子, 難波 峰子, 木村 美智子
    2019 年 28 巻 2 号 p. 20-29
    発行日: 2019/11/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,熟練精神科訪問看護師が統合失調症者に対して実践する臨床判断を明らかにすることである.

    精神科訪問看護師14名を対象に半構造化面接を行い,SCATを用いて分析を行った.結果,地域生活継続に向けた3つの臨床判断の側面と,7つの概念が明らかになった.

    熟練精神科訪問看護師は,統合失調症者の刺激に対する脆弱性や他者に適切な症状を表出しにくいという特性を踏まえ,利用者との関係判断として【訪問初期の受け入れ状況】と【訪問ごとの関係を保つための距離】を判断していた.また,訪問前と訪問時の状況判断として【いつもと異なるその人らしくない違和感】【その日の生活・精神症状・服薬の状況】【医療的介入の必要性】を判断していた.さらに地域生活継続の状況判断として【関係者を巻き込むスピーディな調整】と【生活の継続】を判断していた.

  • 野津 春枝, 安保 寛明
    2019 年 28 巻 2 号 p. 30-38
    発行日: 2019/11/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    背景:英国でBuss & Perry (1992)がAggression Questionnaire (AQ)を開発し,信頼性と妥当性が検証されている.AQは日本語版攻撃性質問票として翻訳され精神疾患を有する人の使用例が散見されるが,信頼性と妥当性は未検証であった.

    研究目的:治療中の精神疾患を有する人における日本語版攻撃性質問票の信頼性と妥当性の検証を行う.

    対象と方法:入院中の精神疾患を有する成人を対象とし再テスト法を行った.新版不安尺度STAIと日本語版攻撃性質問票を併せ,併存的妥当性の検証を行った.分析はSPSS Ver.25を使用した.

    結果:有効回答115名を分析対象(有効回答率66.09%)とした.日本語版攻撃性質問票のt検定で,再テストによる有意差はなかった.クロンバックのα係数は,0.91であった.各尺度間には1%未満の強い正の相関があった(r=0.45, p<0.01).

    考察:日本語版攻撃性質問票のα係数が0.70以上あるため内的一貫性が,尺度間に正の相関があるため併存的妥当性がそれぞれあると考えられる.

    結論:治療中の精神疾患を有する人において,日本語版攻撃性質問票の信頼性と妥当性が検証された.

  • 加藤 崇洋, 香月 富士日
    2019 年 28 巻 2 号 p. 39-47
    発行日: 2019/11/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究は新人看護師を対象とした質問紙調査による横断研究であり,リアリティショックに影響を与える要因の明確化を目的としている.

    基本属性(8項目),SOC尺度(13項目),職場における他者からの支援尺度(56項目),リアリティショック尺度(62項目)からなる質問紙を,新人看護師472名に配布し,318名が分析の対象となった.

    リアリティショック尺度を従属変数とする,ステップワイズ法における重回帰分析の結果,SOCの合計点(β=-0.53),先輩看護師からの精神支援(β=-0.27),上司からの業務支援(β=-0.16),最終学歴が看護専門学校(看護大学が基準)(β=-0.11),配属病棟が希望通りであったか(β=-0.07)がリアリティショックに影響を与える要因であった.重回帰分析の調整済決定係数は0.61であった.SOCはリアリティショックに最も影響があるという結果となり,SOCが低い看護師にリアリティショックに対する介入をすること,SOCを向上させるための支援が必要であると考えられる.

  • 高妻 美樹
    2019 年 28 巻 2 号 p. 48-56
    発行日: 2019/11/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,入退院を繰り返す精神障害者が地域の居場所を持っていることについての想いを記述することを目的とし,質的記述的研究方法を用いた.

    対象者6名のインタビュー内容を分析した結果,居場所を持っていることについての想いの中核は,「居場所で自分の意思で行動をしたい」であった.対象者は,入院により行動が限られる体験をするが,居場所に戻ると自分のペースで生活ができるようになっていた.しかし,家事や金銭管理をしなければならない現実に直面していた.その後,安心感がもてる対人交流や,好きな場所へ行くこと,好きなことや趣味の時間を過ごすようになった.さらには,やりたいことや夢を抱きながら生活をし,夢を持つことで活力を得ていた.その一方で,今後の現実的な不安を抱きながら,入院を一時的な休養の場として捉え,症状と共に生きていくことを受け入れていた.

    本研究では,対象者と居場所への想いを共有し,対象者が願う居場所で生活が継続できるように関わることが重要であると示唆された.

  • 荒木 孝治, 瓜﨑 貴雄, 山内 彩香, 小松 尚司
    2019 年 28 巻 2 号 p. 57-68
    発行日: 2019/11/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,精神科病院における統合失調症患者に対するターミナルケアの実態とターミナルケアに臨む看護師の態度に関連する要因を検討することである.全国の精神科病院973施設の看護師(1名/施設)を対象とし,郵送法による質問紙調査を実施した.質問紙は142部回収(回収率14.6%)し,有効回答の79部を分析した.質的分析の結果,精神科病院において看護師は,設備やマンパワーの不備があるなかで,患者や家族の思いを尊重した看護を実践しているが,精神科病院が孤立していて他院の協力が得られない状況や,患者の意思確認が難しい状況があるなど,その実践には様々な困難を伴うために,看護を否定的に捉えていることが明らかとなった.一方,量的分析の結果,①設備やマンパワーの充実度が高い,②患者と家族への精神的なサポート体制がある,③身体合併症看護への不安が小さい,④看護組織チーム力が高いと,看護師のターミナルケアへの態度が肯定的であることが示された.

  • 大谷 利恵, 高橋 秋絵, 植田 奈津実, 玉木 敦子
    2019 年 28 巻 2 号 p. 69-78
    発行日: 2019/11/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,心理社会的ハイリスク妊産婦に訪問指導員としてメンタルヘルス支援を行う看護職が感じる困難を明らかにすることである.6名の訪問指導員に行った半構成的インタビューの内容を質的記述的に分析した.

    その結果,訪問指導員が感じる困難は,【最初の関わりには緊張が伴う】,【連絡がつかないため支援ができない】,【支援を受け入れてもらうのが難しい】,【継続支援を受け入れてもらうのが難しい】からなる『妊娠期から予防的にメンタルヘルス支援を行うことに伴う困難』,【コミュニケーションや関係構築が困難な妊産婦との関わりが難しい】,【家族を巻き込む支援が難しい】,【精神状態に関する見極めが難しい】,【精神疾患を持つ,または精神状態の不安定な妊産婦への関わりや支援が難しい】からなる『様々な精神状態の妊産婦を支援することに伴う困難』,【関わりや支援が適切であったのか確信が持てない】,【自分自身の気持ちを平常に保つのが難しい】からなる『支援者としての気持ちの揺れに伴う困難』があった.

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