日本精神保健看護学会誌
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30 巻, 1 号
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原著
  • 福田 大祐, 森 千鶴
    原稿種別: 原著
    2021 年30 巻1 号 p. 1-11
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/06/30
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    本研究は,精神科看護職者の看護実践能力を評価する尺度を作成し信頼性と妥当性を検討することを目的とした.文献的統合により53項目,5件法からなる質問紙原案を作成した.4つの施設に勤務する看護職者206名を対象に質問紙を配布し,有効回答は150部であった.項目分析により3項目を削除し,最尤法(Promax回転)による探索的因子分析を行った結果,13項目が削除され,全37項目,5因子が抽出された.第1因子「患者-看護師関係を形成する力」,第2因子「専門知識を活用する力」,第3因子「患者の主体性を引き出す力」,第4因子「安全なケアを意識する力」,第5因子「自己研鑽を続ける力」と命名した.全体のCronbachのα係数は0.95(下位尺度は0.76~0.91)であった.以上から,精神科看護職者の看護実践能力評価尺度として信頼性と妥当性を確認し,看護職者の自己評価や教育への活用可能性が示唆された.

  • 大橋 冴理, 船越 明子
    原稿種別: 原著
    2021 年30 巻1 号 p. 12-20
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/06/30
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    本研究は,問題行動を呈し児童・思春期精神科病棟に入院した思春期の被虐待児に対する看護介入を明らかにすることを目的とした.児童・思春期精神科病棟での臨床経験が通算5年以上,かつ,問題行動を呈する思春期の被虐待児への看護について経験したことがある看護師9名に対して,個人面接による半構造化インタビューを行った.分析には,テーマ分析を用いた.

    その結果,問題行動を呈して入院した思春期の被虐待児に対して《子どもがスタッフから大切にされていると感じられるように関わる》《子どもが安心できる枠組みを提供する》《問題行動以外の表現方法の習得を助ける》《退院後の生活に向けて気持ちを固めていくことをサポートする》《子どもの拠り所をつくる》という5つのテーマと,テーマの下位に存在するより具体的な看護師の行為を示すサブテーマを明らかにした.

  • 田邊 要補
    原稿種別: 原著
    2021 年30 巻1 号 p. 21-28
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/06/30
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    電子付録

    目的:この研究は,精神障がい者の内面化したスティグマ尺度の短縮版・日本語版の信頼性と妥当性を検討することを目的とした.

    方法:精神障がいをもち,定期的に精神科外来に通っており,社会福祉施設を利用している242名に対して,自記式質問紙を用いて調査を行い,230名(有効回答率:95.0%)を分析対象とした.再テストは,155名の参加者に行い147名を分析対象とした.

    結果:全体の内的整合性のα係数は.81であり,再テスト信頼性係数はr = .78であった.基準関連妥当性に関して,日本語版ISMI-10尺度は抑うつと正の相関関係があり,自尊心,エンパワメントとは負の相関関係があった.構成概念妥当性については,2つの因子が得られた.因子名は第1因子を「内面化したスティグマ」,第2因子を「スティグマ抵抗」とした.

    結論:日本語版ISMI-10尺度は,日本語版ISMI-29尺度と同じ程度の信頼性・妥当性が確認された.

  • 柏 美智
    原稿種別: 原著
    2021 年30 巻1 号 p. 29-39
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/06/30
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    本研究は,困難に陥った一般病棟看護チームのレジリエンス表出による回復のプロセスを記述することを目的とした.看護師経験が6か月以上で,一般病棟に勤務する常勤看護師20名を対象に半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの手法に基づき分析した.

    困難に陥った一般病棟看護チームのレジリエンス表出による回復のプロセスは,【混迷】の中でチームが粘り強く耐えて【模索】し始めることで,看護師個々の相互関係を【醸成】し,さらにチームとして【強化】することで,安心空間の創出という【変容】に至るプロセスをたどったと解釈された.これら5局面において,【醸成】における〔対話の成立〕の有無がその後の【変容】にまでつながる契機となり,チームは相互作用を高めながらレジリエンスを表出して回復すると考察された.このプロセスにおいて,省察の場,つながりを求めること,経験知を蓄積していくことの重要性が示唆された.

研究報告
  • 安達 寛人, 塩谷 幸祐, 田口 玲子, 長谷川 雅美
    原稿種別: 研究報告
    2021 年30 巻1 号 p. 40-49
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/06/30
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    本研究は,一豪雪地域で生活を継続している統合失調症を持つ人の経験について当事者の語りから明らかにすることを目的として,精神科デイケアまたは就労支援事業施設に通所している統合失調症者11名を対象に半構成的面接を実施し,質的帰納的に分析を行った.

    結果,本研究における豪雪地域で生活する統合失調症を持つ人の経験は,【健康維持の心がけと習慣化】【日常生活維持のための自己決定】【積雪環境への適応】【周囲の人々からの支え】【今後の生活への希望となるものの獲得】【自分の病気と療養生活の受け入れ】【対人関係における配慮】【問題や課題の保留と我慢】の8カテゴリーに分類された.積雪環境において,彼らは自身の気分変調への対処や気持ちの整理をし,周囲のサポートを受けながら【積雪環境への適応】をすることで生活を継続していることが明らかとなった.本研究では,当事者が健康を維持できるよう配慮しながら,積雪に関連した移動手段の確保や余暇活動の支援の重要性が示唆された.

  • 福嶋 美貴
    原稿種別: 研究報告
    2021 年30 巻1 号 p. 50-58
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/06/30
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    本研究の目的は,精神科看護師のリカバリー志向性と倫理的行動の関連を明らかにすることである.精神科看護師に1)基本属性,2)精神科看護師の倫理的行動測定尺度,3)リカバリー志向性(RAQ-7)からなる無記名自記式質問紙調査を実施し,187名の回答を得た.

    RAQ-7合計得点を平均値で2分し,低群および高群を設定したところ低群は76名(40.6%),高群は111名(59.4%)であった.2群間で倫理的行動測定尺度の各項目を検討した結果,「ニーズへの対処」,「敬意・謝意の表出」および合計得点で有意差が認められた.RAQ-7合計得点を従属変数とするロジスティック回帰分析の結果,関連していたのは「ニーズへの対処」(OR = 1.593)であった.対象者その人そのものを理解しようと努め,ニーズを敏感に察知しそれに応える姿勢がリカバリー志向性を高める.

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