日本精神保健看護学会誌
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30 巻, 2 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
総説
  • 麦山 真純
    原稿種別: 総説
    2021 年30 巻2 号 p. 1-8
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2021/11/30
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    本研究は,文献レビューを通して摂食障害を持つ者のリカバリープロセスを考察することを目的とした.システマティックレビューにより,摂食障害のリカバリープロセスに関連する文献16件を対象に,「研究年」「研究対象者」「研究方法」の概要と,文献内容における共通点をまとめた.その結果,「リカバリーのプロセス」「リカバリーのプロセス内の要素」に分類された.リカバリーを語る内容から,摂食障害を持つ者のリカバリーは,摂食障害を持ちながらも語れない時期から摂食障害を病いと認識し,現在の体験として語る時期を経て,摂食障害の体験を過去のものとして語る時期をたどるプロセスであると考えられた.そして,摂食障害の体験を過去のものとして語ることは,他者から認められる体験に繋がり,自己を受け入れることができた体験であると考えられた.また,摂食障害を持つ者が他者からの受容と自己を受容することは,リカバリープロセスのターニングポイントと示唆された.

原著
  • 守村 洋, 伊東 健太郎
    原稿種別: 原著
    2021 年30 巻2 号 p. 9-18
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2021/11/30
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    本研究は,当事者参加型シミュレーション教育プログラムの試みと,それによる学生の学びを探求することを目的とする.オプトアウトを経て同意を得た学生のレポートを質的に分析した.結果,精神障害を抱えた当事者から得る学び,リカバリーの視点による当事者理解,精神看護の実践と展望,精神看護におけるスキル,シミュレーション教育からの学びと期待,当事者参加型演習からの学生の成長,そして差別・偏見が存在する現実の7つのカテゴリー,22のサブカテゴリー,92のコードが抽出された.考察として,当事者参加型演習をシチュエーション・ベースド・トレーニングと位置付けたことで,精神看護学シミュレーション教育プログラムを発展させることができた.また,学生の学びとして,知識およびスキルが修得され,自信からの成長とともに態度の変容が明らかになった.自身を語ることについて,学生はリカバリーの視点で考えることができた.

  • 田中 理恵, 松田 宣子
    原稿種別: 原著
    2021 年30 巻2 号 p. 19-28
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2021/11/30
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    本研究は精神科看護師の看護実践におけるやりがいを明らかにすることを目的とし,精神科に勤務する中堅看護師14名に半構成的インタビュー調査票を用いて面接調査を行った.分析した結果,926のコードから27のサブカテゴリーが生成され6つのカテゴリーが抽出された.

    精神科看護師の看護実践におけるやりがいとして,【患者の人生に関与する】【人対人の関わり】【患者の思わぬ一面の発見】【看護師の忍耐による患者の変化】【看護師の治療者としての能力と存在意味の実感】【スタッフからの承認】の6つが見出された.このような現象を体験できることによって,精神科看護師は看護への原動力を深められると考えられた.

  • 松本 陽子, 木村 幸生
    原稿種別: 原著
    2021 年30 巻2 号 p. 29-38
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2021/11/30
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    本研究の目的は,生活習慣病発症および重症化リスクの高い精神科訪問看護利用者の意思決定を大切にしながらも生活習慣の改善に向けた精神科訪問看護師の関わりのプロセスを明らかにすることである.8名の看護師を対象に半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した結果,14概念,6カテゴリーが生成された.看護師は利用者に対して【看護師から見た生活上の気がかりを発信】し【利用者の生活習慣改善に対する意識の継続を後押し】していた.一方で【意識づけから実行継続へ進まないことに妥協】し,継続困難を【生きづらさとして理解】して【精神の安定が最優先】という認識で【その人らしい回復への見守り】をしていた.つまり,利用者の意思決定を大切にしながらも生活習慣の改善に向けた関わりとは,生活習慣の改善が進みにくいということを障害特性や生きづらさとして理解した上で精神の安定を最優先に考え,生活者としてその人らしく回復できるよう見守り,段階的かつ継続的に支援していくプロセスであると考えられる.

  • 寺岡 貴子, 深堀 浩樹, 野末 聖香, 福田 紀子
    原稿種別: 原著
    2021 年30 巻2 号 p. 39-49
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2021/11/30
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    本研究では,日本の認知症高齢者を在宅介護する家族介護者の体験を明らかにするために,Noblit & Hareの手法によりメタ統合を行った.

    対象論文は2008年以降で絞り込み,和文献9件,英文献2件を抽出した.分析の結果,家族介護者の体験は10カテゴリーに統合された.【主体的なストラテジーが構築】できる家族介護者は, 【介護を続けるための工夫】や【介護体験を意味づけ】ていた.一方,【介護をめぐる家族関係の乱れ】や【サービスの利用の難しさ】がある場合には,認知症を隠秘し,玄関を閉めるなど【被介護者の安全を守るための管理】が行われることが明らかになった.被介護者の安全と自立を守ることと,家族介護者自身の生活を守ることを両立できる家族全体のニーズに沿ったサポートを検討していく必要がある.

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