硫化鉄粉末を用い中性付近のpHで重金属含有廃水を処理するために, カドミウム含有廃水を用い硫化物沈殿を生成した。一般的に, 硫化物の溶解度積は他の塩のそれと比較し小さいので, 硫化物イオンを用い廃水から重金属を除去し, 硫化物として固定することは好ましい。硫化カドミウム生成の総括反応速度を, 硫化カドミウム生成過程のカドミウムの濃度変化から検討した。殊に, 反応速度に影響を及ぼす可能性のある共存硫酸イオンに注目した。
その結果, 溶液のpHが中性付近にあっても粉砕した硫化鉄から硫酸イオンが溶出し, それが, 硫化カドミウム沈殿の生成に妨害することが判明した。この反応系の総括反応速度は, 硫化カドミウム生成反応速度よりも, 硫酸カドミウムの溶解速度に支配されることも明らかとなった。
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