大日本耳鼻咽喉科會會報

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前記ノ如ク吾人ノ經驗上ヨリ云ヘバ今迄デ本邦文献ニ余リ多ク見ラレス稀有トセラレシ「ムコーズス」中耳炎ハ決シテ考フルガ如ク稀ナルモノニアラズシテ而モ最多數ヲ占ムル「ストレブトコツケン」中耳炎ノ次ニ位スル程ナリ。
又「ムコーズス」中耳炎ハ文献ニ現ハレタルガ如ク他中耳炎トハ全ク異ナレル經過、病型ヲ採ルコト明ニシテ其經過ヲ二種ニ分ツヲ得ベシ。即チ一ハ本菌中耳炎ニ最モ特有ナル潜伏性ノ頗ル慢性ノ經過ヲトルモノト、一ハ普通ノ「ストレブトコツケン」中耳炎ニ見ル如キ比較的急激ノ經過ヲ取ルモノ是ナリ。但シ後者ハ比較的急激ナル經過ヲトルトハ雖モ決シテ「ストレプトコツケン」中耳炎ニ見ルガ如ク迅速激烈ナルモノニアラズシテ所謂亞急性ノ状態ニテ來ルナリ。久時ニ亘ル刺スガ如キ時々ノ耳痛中等度ノ耳鳴、患側特ニ後頭部、顱頂部ニ限局セル頭痛、頭重ノ感乳嘴突起尖端ニ於ケル壓痛特ニ此レニ加フルニ鼓膜後上部ノ膨隆アリテ而モ鼓膜肥厚セルガタメニ激烈ナルベキ發赤ヲ缺キ斯ノ如キ症状已ニ月餘ニ及ブモノハ「ムコーズス」中耳炎ト診定シテ大過ナシ。
實地醫ノ最モ簡便ナル本菌證明法ハグラム氏法ニ稀薄ナル石炭酸「フクシン」液ニテ復染色ヲ行フニアリ。尚簡便ニハチール氏石炭酸「フクシン」被膜染色法ヲ行フニアリ。「チオニン」染色ハ只時間ノ餘裕アリ、且熟達セル「テヒニツク」アル者ニ望ミ得ルノミ。
尚一朝本菌中耳炎タル確診ヲ得タル時ハ速ニ相當ノ處置ヲ行フヲ要ス。此レ恐ル可キ合併症特ニ頭蓋内合併症ヲ未然ニ防グ唯一ノ方法ナレバナリ。
本菌ト肺炎菌連鎖菌三者ノ相互ノ區別ハ吾入ノ行ヘル試驗ニテハ稍正確ニ鑑別シ得タリト信ズ。但シ免疫反應ハ暫ク措キ培養上、動物試驗上ノ吾人ノ成蹟ヲ總括スルニ近時米國ロツクフエラー研究所ヨリ主張セラルヽ如クシヨツトミユーレル氏ノ云ヘル Streptococcusmucosus ト云ハムヨリ寧ロ Pneumococcusmucosus ト稱シ、肺炎菌屬ノ一種ト做シ度シ。
最後ニ當リ吾人ハ中耳炎特ニ急性中耳炎ノ細菌學的檢索ヲ等閑ニ附セザラムコトヲ切望シテ歇マス。

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