大日本耳鼻咽喉科會會報

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上述ノ十三人中男子ハ十二人デ女子ハ僅ニ一人ニ止ル即チ男子デ先天性耳瘻管ヲ有スル者ハ男子總數千人ノ一•二%ニ相當シ女子デ之ヲ有スルモノハ女子總數七百二十人ノ〇•一三%ヲ占メテヰル、而テ七例ハ左側ニ三例ハ右側ニ殘餘ノ三例ハ兩側ニ存在シ數ハ常ニ片側ニ一個デアル、茲ニ余ノ成績ヲウルヴァンチッチュノモノト比較スルト氏ハ約二千人ニツキ十二人ニ先天性耳瘻管ヲ認メタノデアルガ其八例ハ男子デ他ノ四例ハ女子デアル又片側ニアルモノハ九例デ兩側ニアルモノハ三例デアルト記載シテヰル。氏ハ氏ノ成績カラ耳瘻管ガ男子ニ多ク發生シ且片側ニ來ルコトガ多イト云ツテヰルガ此點ハ余ノ成績ト大體一致シテヰル、次ニ余ノ症例ノ中ニ乳白色粘稠性又ハ黄白色膿性ノ分泌物ヲ排出シ或ハ瀦溜セルモノヽアツタノハ既ニ述ベタ所デアルガ此ノ點ニ就テハ先人ガ夙ニ報告シテヰルノデアル而テシュミット及ビプリューゲル等ハ斯ノ如キ耳瘻管ヨリ分泌物ノ生ズル原因ヲ耳瘻管ガ中耳腔(病的變化アル)ト連交シヲヰルタメデアルト説明セントシタノデアル。更ニプリューゲハ耳瘻管内ニ水ヲ注入シテ中耳腔トノ交通ヲ實證セントシタガ不成功ニ終ハツタガ余ノ例ニ於テモ上述ノ如ク中耳腔ト連通セルモノハ一例モナイ。ウルヴァンチッチュモ余ト同樣兩者ノ連通ヲ否定シテヰルヤウデアル。
先天性耳瘻管ニハ二次的變化トシテ瀦溜、嚢腫又ハ膿瘍ヲ形成シ又ハ外口周圍ノ皮膚ニ瘢痕ノ形成ヲ來スコトガアルト云ハレテヰルガ余ノ例ニ於テモ第一例ハ膿瘍ヲ形成シ第三例ハ外口ヲ圍繞セル瘢痕状變化ヲ認ムルトガデキタ。此外、耳瘻管ハ時トシテ他ノ腮裂又ハ膿弓ノ發育障碍ト見ルベキ兎唇、懸壅垂ノ分裂、頸部正中瘻管ト共ニ認メラレルコトガアルト先人ガ記載シテヰルガ余ハ自己ノ例ニ之ヲ詳檢シタガ遂ニ認メルコトガデキナカツタ。
扠テ先天性耳瘻管ニハ遺傳的關係ガアルカトイフニ余ノ例デハ前記ノ如ク一例モ之ヲ證明スルコトヲ得ナカツタガツッケルカンドル、レビンスタイン、恩師星野博士等ハ遺傳的又ハ家族的ニ耳瘻管ノ發生シタ例ヲ有シテヰル。
先天性耳瘻管ノ位置形状走向及ビ長サニ關シテハ余ノ例ニ於ケルガ如キモノガ最モ普通デアルコトハ諸學者ノ報告ニ照シテ明カデアル。然シ時トシテハ耳珠、對耳珠、又ハ耳垂等ニ發生シ又長サモ單ニ痘痕状ノ一小窩ニ過ギザルモノモアルシ或ハウィルヒョウノ見タ後鼻孔ノ邊ニ迄達スル例モアルコトガ報告サレテヰル。
組織的構造ニ就テノ既ニグルネルトガ報告シテヰルガ其管壁ノ所見トシテハ重暦扁平上皮定型的マルピギー氏網、眞皮層毛髪脂肪及ビ皮下結締織ヲ認メタ、コレヲ余ノ所見ニ比較スルト毛髪以外ニハ大差ハナイノデアル、唯余ノ第四例ニ瘻管ノ分岐ヲ證明シタコトガ特記スベキ點デアル、コノ瘻管ノ分岐ニ關シテハ余ノ檢セル範圍内ニ於テ文獻上ニソノ報告例ヲ見ナイノデアル、而テ若シコノ分岐ガ果シテ余ガ余ノ症例カラ考ヘサセラレシ如ク先天的ノモノトスルナラ胎生學的説明ニ俟ツベキデアラウト考ヘルカラ記シテ後ノ資料ニ供セントスルノデアル。

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