頭頸部癌
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原著
  • —言語聴覚士の関わり—
    川越 直美, 内 龍太郎, 瓜生 英興, 中島 寅彦
    2023 年 49 巻 4 号 p. 283-287
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌の標準治療の一つである化学放射線療法(Chemoradiotherapy:CRT)は様々な有害事象を併発する。その中でも白金製剤(シスプラチン(CDDP)やカルボプラチンなど)による聴覚障害については古くから報告されている。当科で頭頸部癌と診断され化学放射線療法を実施した33例に対して,CDDP初回投与前,CDDP初回投与から3ヶ月後,6ヶ月後,1年後の計4回,純音聴力検査を実施した。結果として1年後に全体の76%で聴覚障害がみられた。また,CDDP総投与量や年齢,性別,喫煙歴と聴覚障害発症の関連を解析したが有意な結果は認められなかった。長期の経過で聴覚障害の発生率は低くない。頭頸部癌に対するCRT後は聴覚障害も含めた長期にわたる患者QOLの経過観察と支持療法が重要である。
  • 吉澤 宏一, 花井 信広, 寺田 星乃, 西川 大輔, 別府 慎太郎, 鈴木 秀典
    2023 年 49 巻 4 号 p. 288-292
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー
    2013年1月から2022年11月に当院で手術を行った上歯肉癌・硬口蓋癌82例について検討した。対側頸部リンパ節転移の検討では,原発巣の局在を,①側方型,②前方型,③正中を超える内側型,④正中を超えない内側型の4つに分類した。
    予防的頸部郭清術で判明した頸部リンパ節転移と後発リンパ節転移を合わせた潜在的頸部リンパ節転移率は14.3%であった。正中を超える内側型は対側頸部リンパ節転移割合が21.1%と有意に大きかった。病理学的Depth of Invasion(DOI)と頸部リンパ節転移に明らかな関連は認めなかったが,病理学的DOI 5mm以下の群は5mm超の群より無再発生存が有意に良好であった。
    原発巣の局在は対側の予防的頸部郭清術の適応を検討する際に参考になると思われた。本検討症例は骨の裏打ちを有する病変であり,DOIと頸部リンパ節転移に関連がなかったことに影響した可能性がある。
  • 結束 寿, 阿久津 泰伴, 水成 陽介, 志村 英二, 長岡 真人
    2023 年 49 巻 4 号 p. 293-298
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー
    下咽頭がんは本邦の頭頸部がんの中でも2番目に多いがん種であり,予後は不良である。頭頸部癌の予後に対しての炎症や栄養のパラメータについての研究が多くなされているが,その結果の臨床応用についての一致した見解は得られていない。本研究は,これらのパラメータの当院下咽頭がん集団における再現性と有用性を評価した。2015年から2020年までに当院で根治治療を施行した下咽頭がん83例について診療録から後方視的に調査を行った。5年全生存率は59.3%(95%信頼区間 46.8〜69.8%)であり,炎症や栄養のパラメータの予後予測因子としての再現性が確認できた。その中でもGeriatric nutritional risk indexやGlasgow prognostic scoreはカットオフ値が予め定義されているため,臨床応用の際に施設間格差の均一化という点で汎用性の高いパラメータであると考えられた。
  • 佐藤 文彦, 小野 剛治, 佐藤 公宣, 三橋 敏順, 千年 俊一, 梅野 博仁
    2023 年 49 巻 4 号 p. 299-304
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー
    拡大切除を必要とする耳下腺癌T4において顔面神経の取り扱いはQOLの観点から慎重になる必要がある。今回,当科で根治手術をした耳下腺癌pT4症例について検討した。症例は,8歳から81歳,男性17例,女性8例であり,観察期間の中央値は8.6年であった。高悪性度は16例であった。術前に顔面神経麻痺のない14例のうち高悪性度は6例あり,神経を温存可能であったのは2例であった。症例全体の5年局所領域制御率は74.4%,遠隔転移率は 45.4%,全生存率は59.5%であった。単変量解析では,高悪性度のみが局所領域制御率,遠隔転移率,全生存率のいずれにおいても予後不良であった。術前顔面神経麻痺のないT4症例では,神経合併切除は治療成績向上に寄与しないことが示唆されたが,高悪性度例では神経温存は困難である場合が多い。
  • 永松 将吾, 光嶋 勲, 小泉 浩一, 吉岡 幸男, 谷 亮治, 柳本 惣市, 築家 伸幸, 樽谷 貴之, 濱本 隆夫, 上田 勉
    2023 年 49 巻 4 号 p. 305-311
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー
    当科で下顎区域切除後に下顎再建プレート(mandibular reconstruction plate 以下MRP) と遊離筋皮弁を用いて再建を行った43例について検討した。MRPが口腔側,皮膚側に露出する合併症は9例に認め,中でも皮膚側に露出した4例はMRP自体の除去や置換などの対応を要した。それ以外の症例では手術や保存治療により,MRPの抜去には至らなかった。また,唾液に汚染される術野でMRPを取り扱う際の工夫として,以前著者らが提唱したno-touch technique(以下NTT法)に代わるplate detachment and disinfection method(以下PDD法) を考案し,その手術成績はNTT法に劣ることはなかった。MRPを用いた下顎再建は適応を吟味し,手術方法に工夫を加えることによって,今後も下顎区域切除に対する硬性再建の選択肢として有用であると考えた。
症例報告
  • 加藤 光彦, 栗山 将一, 安原 一夫
    2023 年 49 巻 4 号 p. 312-318
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー
    高齢者はポリファーマシーの状態にあることが多く,薬物有害事象をきたしやすい。放射線性の粘膜炎を背景に粘膜疹を伴う薬疹をきたし診断に苦慮した症例を経験したので報告する。75歳男性。維持透析中で近医より多数の内服薬を処方されポリファーマシーの状態にあった。p16陽性中咽頭癌cT3N0M0に対して放射線治療を完遂直後から発熱,粘膜疹の増悪,皮疹がみられた。鑑別としてStevens-Johnson症候群を念頭に皮膚生検を提出し,プレドニゾロンによる加療を開始した。速やかに症状は改善し,後日多形紅斑重症型と病理診断された。臨床経過からはアセトアミノフェンが被疑薬と考えられたが,薬剤リンパ球刺激試験は陰性であった。高齢者を診療する際にはポリファーマシーに付随する重症薬疹などの薬物有害事象のリスクを念頭に置き,特に放射線治療の際には放射線性の粘膜炎と粘膜疹を伴う重症薬疹との鑑別に注意を要する。
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