頭頸部癌
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41 巻, 1 号
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第38回日本頭頸部癌学会
シンポジウム1
早期頭頸部がんに対する治療選択
  • ―頸部外切開による咽頭喉頭部分切除術の役割―
    佐々木 徹, 川端 一嘉, 三谷 浩樹, 米川 博之, 福島 啓文, 新橋 渉, 瀬戸 陽, 小泉 雄, 神山 亮介, 蛯名 彩, 福岡 修 ...
    2015 年 41 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2015/04/25
    公開日: 2015/05/12
    ジャーナル フリー
    下咽頭癌の治療では,癌の根治と共に喉頭機能温存が極めて重要な事項である。従来咽喉頭癌に対し,放射線治療が喉頭機能温存治療の中心的役割を果たしてきた。当院で2005~2009年の5年間に機能温存治療を行った下咽頭癌1次例97例中62例(63.9%)で(C)RTが選択された。一方下咽頭癌に対する機能温存手術は,従来外切開による咽喉頭部分切除術が中心であったが,近年の内視鏡技術の向上や手術支援ロボットの開発により,海外ではTORS,本邦ではEMRやELPS,TOVSなどが盛んに行われるようになってきた。
    このように(C)RT,経口的切除が多く選択される中,外切開による咽喉頭部分切除術の役割は,経口的切除では機能温存が困難な症例に対し適切な再建術や嚥下機能改善手術を併施することで喉頭機能温存を可能とすることにある。
    より良い機能温存治療を提供するために,放射線・経口的切除・外切開部分切除のすべての得失を理解し,最適な治療を選択する必要がある。
シンポジウム5
頭頸部癌における機能再建
  • 石田 勝大, 清野 洋一, 内田 満, 加藤 孝邦
    2015 年 41 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2015/04/25
    公開日: 2015/05/12
    ジャーナル フリー
    舌半切除後の再建では概ね良好な機能が維持されるという報告が多い。しかし,客観的検査と主観的意見などの評価方法によって差が生じるため,必ずしも良好な結果と言えない場合もある。今回我々は,舌半切除症例の術後機能向上のために手術別による術後機能の違いを数種類の客観的検査を用いて評価した。対象は舌半切除症例54例で,再建ありが49例,再建なしが5例であった。移植皮弁は,腹直筋皮弁7例,深下腹壁穿通枝皮弁2例,前外側大腿皮弁32例,前腕皮弁5例,腓骨皮弁3例であった。切除範囲,皮弁の有無と種類,舌尖形成法,口腔底小三角弁の有無について術後機能を比較検討した。その結果,切除範囲において術後機能特に舌の可動性に有意差を認めた。皮弁の有無と種類,舌尖形成法,口腔底小三角弁の有無については有意差を認めなかった。切除範囲では舌根の切除範囲が広い程舌の可動域の縮小を認め,舌下面の拘縮予防目的で行っている小三角弁では術後機能の大きな改善を認めなかった。
シンポジウム6
頭頸部進行がんに対する治療戦略
  • 松浦 一登
    2015 年 41 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 2015/04/25
    公開日: 2015/05/12
    ジャーナル フリー
    治療ガイドラインにおいて,進行舌がんに対する第1の治療法は手術である。術後の構語・嚥下機能を維持するためには,適切な切除と容量ある皮弁の移植,術後の喉頭下垂を防止することが重要である。これにより舌亜全摘以上の切除であっても喉頭温存が可能である。再発リスクの高い症例には,CDDPを用いた術後化学放射線療法が標準治療であるが,治療時の脱落例を減らすためには,毒性が軽く,3-Weekly CDDP+RT治療と同等の治療効果を示す治療法の開発が求められる。こうした観点から,JCOG1008試験が行われており,今後その結果が期待される。
  • 喜井 正士, 藤井 隆, 鈴木 基之, 音在 信治, 貴田 紘太, 北村 公二, 須川 敏光, 吉野 邦俊, 栗田 智之, 手島 昭樹, 小 ...
    2015 年 41 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2015/04/25
    公開日: 2015/05/12
    ジャーナル フリー
    進行中咽頭がんに対する治療は,亜部位,年齢,局所と頸部病変の進行度,他の頭頸部がんへの治療歴や合併症などを考慮して決定するが,機能温存や喉頭温存を目指して化学放射線療法(CRT)や大量シスプラチンの超選択的動注併用放射線療法(RADPLAT)を一次治療として行い,制御不能の場合に救済手術を行う方向にある。2001年から2010年の10年間に当院で一次根治治療を行った切除可能進行中咽頭側壁がん96例・前壁がん54例における5年粗生存率はそれぞれ67%・43%,前壁がんT3・T4a症例の治療法別5年喉頭温存生存率は手術治療群19%・CRT群50%(うちRADPLAT群も50%)であった。生命予後と機能温存の両面から治療法を決定することが重要である。
第5回教育セミナー
一般投稿
上顎(鼻副鼻腔)
  • 大庭 晋, 大野 恒久, 佐藤 進一
    2015 年 41 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 2015/04/25
    公開日: 2015/05/12
    ジャーナル フリー
    鼻副鼻腔未分化癌(SNUC)は比較的稀な疾患である。現在未だ確立された治療はなく,診断された時点で進行癌の場合が多く予後不良である。今回我々は,SNUCに対してetoposide,cisplatin療法(EP療法)を施行し,完全寛解を得られた症例を経験したので報告する。
    症例は35歳男性。2013年5月から頭重感が出現し,同年6月に当科を紹介受診,精査の結果,SNUC(T4bN0M0)と診断された。導入化学療法としてEP療法施行したところ,1コース施行後に完全寛解が得られた。その後追加で1コース,合計2コースEP療法施行後,他院にて炭素イオン線治療が行われ,現在寛解継続中である。SNUCに対しては,現在確立された治療法は存在しないが,今後EP療法が治療の選択枝となる可能性が示唆された。
口腔
  • 鈴木 基之, 藤井 隆, 栗田 智之, 喜井 正士, 音在 信治, 貴田 紘太, 北村 公二, 須川 敏光, 高原 厚子, 金村 亮, 小池 ...
    2015 年 41 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 2015/04/25
    公開日: 2015/05/12
    ジャーナル フリー
    広範切除を行った舌癌術後の長期的な体重減少のリスク因子を解析する目的で,当科で原発巣切除と遊離皮弁を用いた再建手術を行った98例を対象として後ろ向きに研究を行った。体重減少のリスク因子と考えられる年齢,BMI(Body Mass Index),T病期,舌切除範囲(半切除,亜全摘,全摘),頸部郭清術の範囲,術後放射線療法(PORT)に関し,術後1年の体重減少率10%以上となる高度体重減少との相関を比較検討した。単変量解析では舌切除範囲(p=0.01),両側頸部郭清術(p=0.03),PORT(p=0.0008)において有意な相関を認めた。多変量解析ではPORT(p=0.003)が有意なリスク因子であった。舌癌に対する広範切除術後は舌切除範囲やPORTといったリスク因子と体重推移に留意し,高度の体重減少を生じる前に積極的な栄養介入を行う必要がある。
  • 鈴木 真輔, 本田 耕平, 南條 博, 川村 学, 石川 和夫
    2015 年 41 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2015/04/25
    公開日: 2015/05/12
    ジャーナル フリー
    Stage I, II舌扁平上皮癌における頸部リンパ節転移は予後を規定する因子であり様々な方法で潜在的転移の予測が試みられてきた。今回の研究ではStage I, II舌扁平上皮癌におけるCD147(EMMPRIN)と頸部リンパ節転移の関係について検討を行った。対象は2007年から2012年までに当科で手術加療が行われたStage I, II舌癌32例である。これらの症例において,腫瘍の分化度,リンパ管浸潤,静脈浸潤,神経周囲浸潤,浸潤の深さ,および浸潤最深部の癌胞巣におけるCD147の発現と頸部リンパ節転移について検討を行った。頸部リンパ節転移は,CD147が浸潤最深部の癌胞巣全体にびまん性に発現する症例の50%(4/8)にあった一方,CD147の発現が弱いか無い症例では12.5%(3/24)に認められたのみであり,CD147の発現と頸部リンパ節転移は有意な関連性を示した(p=0.046)。またCD147の発現は今回検討した他のパラメーターとは有意な関連性を示さず,CD147はStage I, II舌癌において潜在的頸部リンパ節転移を予想する独立した因子となる可能性が示唆された。
  • 丹下 和久, 中島 克仁, 脇田 壮, 北島 正一朗, 福田 幸太
    2015 年 41 巻 1 号 p. 40-50
    発行日: 2015/04/25
    公開日: 2015/05/12
    ジャーナル フリー
    当科では口腔癌に対して血流改変術を併用した超選択的動注化学放射線療法を施行しており,この方法は原発腫瘍のみならず転移リンパ節に対しても効果がある。また造影CTのrim enhancementの存在は偽陽性のない診断とされている。今回われわれはこの治療法を用いた口腔癌患者でなかで,造影CTでrim enhancementを伴った頸部転移リンパ節のある患者の,CT画像によるリンパ節の経時的変化の検討をおこなった。対象は治療終了後に1年以上の経過観察期間のある27症例であった。治療終了後1ヶ月では,16症例でリンパ節のrim enhancementが消失していた。11症例では残存がみられた。しかしrim enhancementが残存していた11症例中で,リンパ節に腫瘍が残存していたのは3例のみであった。また腫瘍の消失したリンパ節は治療後3ヶ月以降では,徐々に内部が均一化して,正常リンパ節と同様の所見を呈するものが多かったが,一部で石灰化するものもみられた。通常造影CTでrim enhancementがあるリンパ節は,腫瘍の転移がほぼ確実にあると判断されているが,われわれの治療後ではrim enhancementが残存していても,半分以上は腫瘍消失しており,造影CTのみでは腫瘍の残存を診断することはできなかった。
喉頭
  • 正道 隆介, 松山 洋, 山崎 洋大, 富樫 孝文, 植木 雄志, 岡部 隆一, 山本 裕, 髙橋 姿
    2015 年 41 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2015/04/25
    公開日: 2015/05/12
    ジャーナル フリー
    類基底細胞扁平上皮癌は,類基底細胞成分と扁平上皮癌成分が混在する稀な組織型である。症例は61歳男性,嗄声と咽頭痛を主訴に当科を受診した。喉頭内視鏡では喉頭前庭左側から両声帯に至る腫瘍性病変と左声帯麻痺があり,生検で扁平上皮癌を認めた。画像所見と併せて,喉頭癌(声門上型扁平上皮癌,T3N2bM0,stage IV A)と診断した。術前化学療法後に喉頭全摘術,両頸部郭清術を施行した。手術標本の病理所見より類基底細胞扁平上皮癌の診断となり,転移リンパ節に節外浸潤を認めたため術後放射線照射を施行したが,早期に多発肺転移を生じた。CDDP,5-FU,Cetuximab投与により肺転移巣は一時的に縮小したが,その後急激に増大した。類基底細胞扁平上皮癌は遠隔転移が多く予後不良な組織型とされており,強力な化学療法を含む集学的治療の必要性が示唆された。
上・中・下咽頭(頸部食道癌を含む)
  • 久場 潔実, 蝦原 康宏, 井上 準, 林 崇弘, 松村 聡子, 高城 文彦, 盛田 恵, 中平 光彦, 菅澤 正
    2015 年 41 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2015/04/25
    公開日: 2015/05/12
    ジャーナル フリー
    中咽頭扁平上皮癌根治例64例につき,p16免疫染色を中心に治療成績を検討した。疾患特異的3年生存率は71%であった。手術群ではp16陽性例・陰性例の3年生存率はそれぞれ90%,68%で有意差は認めなかった(p=0.35)。一方照射群では,3年生存率はそれぞれ91%,45%で,p16陰性例は陽性例に比べて有意に予後不良であった(p=0.04)。初回治療後の局所再発はp16陰性照射例で有意に高率であった。p16陰性の進行癌では切除可能例であれば根治照射よりも手術が予後を改善させる可能性があると考えられた。
    多変量解析では,p16免疫染色,T因子が有意な予後因子であった。喫煙歴・飲酒歴は統計学的有意差を認めなかったが,p16陽性でも喫煙・飲酒歴のある場合には予後が低下する傾向がみられた。p16免疫染色結果ならびに喫煙・飲酒歴をもとに治療方針を決定していくことが予後の改善に繋がると考えられた。
  • 清原 英之, 力丸 文秀, 松尾 美央子, 麻生 丈一朗, 檜垣 雄一郎, 益田 宗幸
    2015 年 41 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2015/04/25
    公開日: 2015/05/12
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌において,18F-FDG-PET/CTによる評価で予後予測が可能との報告がある。今回われわれは,chemoradioselection戦略で治療をおこなった下咽頭癌39症例に対して,治療前のSUV(max)値が,3年生存率,3年喉頭温存率の予測因子となりうるか検討することとした。多変量解析の結果,粗生存率の予後予測因子にはならなかったが,SUV(max)が高値であれば喉頭温存が不良となる結果であった。また,SUV(max)は化学放射線療法40Gy時点における反応良好,不良を予測する独立因子である結果となった。
唾液腺
  • 藤井 信行, 田窪 千子, 領家 和男
    2015 年 41 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2015/04/25
    公開日: 2015/05/12
    ジャーナル フリー
    唾液腺原発のリンパ上皮癌は全唾液腺腫瘍の1%未満を占めるまれな腫瘍であるが,副耳下腺での報告はない。今回われわれは全身多発転移をきたした副耳下腺由来リンパ上皮癌の1例を経験した。
    症例は76歳,男性。2007年7月,右頬部の腫脹を主訴に紹介され受診した。生検によりリンパ上皮癌の診断を得たが,患者は手術を含む一切の治療を拒否した。1年後,治療希望にて再受診した。両側頸部,腋窩リンパ節,右上腕骨,第4腰椎に多発転移を認め,S-1,CBDCA,Docetaxelによる全身化学療法,右上腕骨に放射線照射を行った。全身多発転移症例は一般に予後不良であるが,治療により原発および転移部腫瘍は一定期間制御され,緩徐な進行を辿りながら3年の生存期間を得た。唾液腺原発のリンパ上皮癌に対する化学療法の有用性が示された。
頸部・甲状腺
  • 宮崎 拓也, 佐藤 進一, 玉木 久信
    2015 年 41 巻 1 号 p. 74-77
    発行日: 2015/04/25
    公開日: 2015/05/12
    ジャーナル フリー
    【背景】甲状腺濾胞癌は遠隔転移を生じる頻度が高い。濾胞癌において遠隔転移の存在は予後不良とされる。今回の検討では遠隔転移を生じる危険因子を明らかにすることを目的とした。
    【対象】濾胞癌24例を対象にretrospectiveに検討した。
    【結果】浸潤様式(p=0.01),脈管侵襲の有無(p=0.04)で統計学的な有意差を認めた。5年,10年疾患特異的生存率はそれぞれ95.2%,87.9%であった。初診時に3例(13%),初回術後を含めると6例(25%)に遠隔転移を認め,転移部位は肺3例,肺と骨と脳1例,肺と骨1例,骨1例であった。原病死したのは2例で,いずれも遠隔転移による死亡であった。
    【結論】広汎浸潤型,脈管侵襲の有無が遠隔転移の危険因子と考えられ,これら臨床所見をもつ症例については,遠隔転移が生じる可能性を念頭においた経過観察が重要である。
その他臨床
  • 中島 世市郎, 河田 了, 上田 晃一, 塗 隆志, 植野 高章
    2015 年 41 巻 1 号 p. 78-82
    発行日: 2015/04/25
    公開日: 2015/05/12
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,3次元立体モデル(3Dモデル)を用いて歯科技工技術を応用し,新たな手術工夫を行い良好な結果を得たのでその概要を報告する。対象は,下顎歯肉癌にて下顎区域切除,頸部郭清後に遊離血管柄肩甲骨皮弁再建術を施行した2例である。術前にドナーとなる肩甲骨と下顎骨の3Dモデルを用いて下顎骨再建後の形態を再現し,それを元に再建用プレートの屈曲と,顎位の再現を容易にするsurgical guide plateを作成した。本法により,術中の再建操作は円滑に行われ術者の負担軽減が得られた。また術後の下顎正中の偏位はわずかであり,術前と同様に通常の食事摂取が可能でQOLの維持が得られた。
    結論:下顎骨と移植骨の3Dモデルを,歯科技工を応用することでスムーズな手術操作と,術前と変化のない摂食状態の維持と顔貌について満足度の高い再現性が得られた。
  • 福原 隆宏, 藤原 和典, 三宅 成智, 片岡 英幸, 北野 博也
    2015 年 41 巻 1 号 p. 83-89
    発行日: 2015/04/25
    公開日: 2015/05/12
    ジャーナル フリー
    無喉頭患者の代替音声の一つであるボイスプロステーゼの挿入は,二期的挿入は合併症の危険が大きいとされ,一期的挿入が推奨されている。しかし,二期的挿入が必要な患者も多く,簡易な二期的挿入法の開発が求められていた。われわれが報告した局所麻酔下での新しいボイスプロステーゼ挿入法(Fukuhara Method;福原法)は,これまでの二期的挿入法の欠点を克服し,誤穿刺の危険を排除した。本手法により2011年から35名の患者に施行した。35名中34名で挿入でき,手術時間の中央値は10分であった。皮弁による再建の有無,放射線治療の既往の有無で手術時間に差はなかった。手術による合併症は認めず,挿入直後からの経口摂取と発声が可能であった。局所麻酔下での新しいボイスプロステーゼ挿入法(福原法)は,二期的ボイスプロステーゼ挿入方法として広く勧められる。
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