頭頸部癌
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36 巻, 3 号
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第34回日本頭頸部癌学会
ラウンドテーブルディスカッション
本邦における頭頸部癌化学療法の展望
  • 冨田 俊樹, 今西 順久, 小澤 宏之, 藤井 良一, 重冨 征爾, 羽生 昇, 大塚 邦憲, 小川 郁, 深田 淳一, 茂松 直之, 小柏 ...
    2010 年 36 巻 3 号 p. 273-277
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    化学放射線同時併用療法(Concurrent Chemoradiotherapy,CCRT)は,メタアナリシスにおいて有用性が示され,世界的に普及した。切除可能な頭頸部進行癌においてCCRTは外科的治療の代替であり,その目的は手術と同等の根治性を確保しつつ機能温存を図ることである。しかし,治療後の嚥下障害や,失敗例に対する救済手術の難しさなど,問題点も徐々に明らかとなってきた。
    近年では,導入化学療法が再び注目されている。導入化学療法をCCRTの効果予測に用いる試みや,導入化学療法によって上乗せ効果を図る試みがある。
    また,術後CCRT,根治治療後の補助化学療法,再発・転移頭頸部癌に対する化学療法など,さまざまな局面で化学療法は用いられている。
    本稿では多様化した頭頸部癌化学療法の現状を整理し,本邦における問題点を探る。
  • ―化学療法臨床研究の現状と対策―
    清田 尚臣
    2010 年 36 巻 3 号 p. 278-281
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    近年のがん薬物療法の進歩は目覚しく,頭頸部がんの領域でも海外では分子標的薬を中心とした治療開発が盛んである。このような中,本邦で頭頸部がん薬物療法の臨床研究を行う上での問題点が三つ挙げられる。一つ目は,日本の頭頸部がん薬物療法の領域においてEBM(Evidence Based Medicine)や臨床試験に対する理解が十分ではないこと,二つ目は頭頸部がん薬物療法の領域で標準治療が普及していないこと,三つ目は治療開発及び臨床研究の基盤整備である。
    今後,これらの問題点を1つずつ解決していくことで近年問題になっている海外と日本での新規薬剤承認の時差「Drug-lag」を解消することが可能になる。そのためには頭頸部がん薬物療法に関わる医療者すべてのレベルアップと早急な臨床研究基盤整備が必要である。特に本邦における頭頸部がん薬物療法の臨床研究基盤整備において日本頭頸部癌学会が担う役割は大きく,さらなる貢献を切に希望する。
  • ―Drug-Lagを縮めるために―
    岡野 晋, 田原 信
    2010 年 36 巻 3 号 p. 282-285
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    近年,頭頸部がん領域における分子標的治療薬への関心が高まりつつあるが,本邦の実臨床の現場で目にすることはまだない。欧米を中心に各種薬剤の開発・承認が進んでいるが,残念ながら本邦頭頸部がん領域は遅れていると言わざるを得ない。
    本ディスカッションではdrug-lagを縮めるための方策は何かについて言及した。欧米諸国に引きを取らないがん化学療法に精通した医師の育成,精度の高い臨床試験を行うことのできる施設の基盤整備,各施設間での方向性の統一など様々な問題が山積する。元々耳鼻咽喉科医であった自分が,頭頸部がん化学療法を学ぶため,2008年4月からの2年間,がん専門施設で消化管内科医として過ごした経験から,まず我々が解決すべきは,がん化学療法に精通した医師の育成と思われる。
    頭頸部がんの化学療法に精通した医師の増加が頭頸部がんのdrug lag解消につながることを期待したい。
  • 大上 研二, 酒井 昭博, 戎本 浩史, 杉本 良介, 槙 大輔, 飯田 政弘
    2010 年 36 巻 3 号 p. 286-289
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌は他領域の癌に比して1施設で扱う症例数が少なく,多施設共同研究によらなければエビデンスレベルの高いまとまった成績を発表することは困難である。本邦から質の高い臨床研究を発信していくために,今後必要な多施設共同研究のあり方について述べた。医師主導の大規模な臨床試験を遂行するための臨床試験グループの構築には各施設間の臨床技能,知識,診断能力,評価能力の均一化が最も重要な課題である。特に症例選択の統一性,病期,切除可能性や病理学的CR,臨床的CRの判断などは成績にも影響する大きな要因である。また介入の結果あらわれる有害事象への対応についても高いレベルでの共通認識が必要である。実際に臨床研究をおこなうにあたって臨床試験支援組織との連携や施設内の臨床試験支援体制の整備も重要な問題である。東海大学医学部における臨床試験支援や人材育成の実際について紹介し,必要な組織のあり方について考察した。
一般投稿
上顎(鼻・副鼻腔)
  • 岡本 伊作, 伊藤 博之, 吉田 知之, 清水 顕, 中村 一博, 塚原 清彰, 清水 重敬, 鈴木 衞
    2010 年 36 巻 3 号 p. 290-296
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    1998年より2008年まで当科に入院し放射線同時併用超選択的動注化学療法を施行した上顎洞扁平上皮癌14例に対して一次治療効果,有害事象について検討を行った。対象は年齢が43歳から79歳(中央値61歳),男性10例,女性4例であった。
    Seldinger法により超選択的動注化学療法を施行し,CDDPを総計200mg/m2動注した。day 2からday 5まで5-FU 800mg/m2の全身投与を併用した。また,放射線治療はday 2より同時併用とした。予定された超選択的動注化学療法併用放射線療法が終了した4週間後に肉眼所見,画像所見,病理組織検査所見を参考に判定を行った。一次治療効果はCR 57.1%(8例),PR 42.9%(6例),奏功率は 100%であった。有害事象ではgrade 4の脳梗塞が1例出現した。しかし,それ以外は全て可逆性で重篤な有害事象はみられなかった。安全性に関して許容範囲内であると考えられた。今後は症例と経過を重ねることで治療成績を検討していく予定である。
口腔
  • 小林 恒, 鄭 明源, 榊 宏剛, 佐藤 寿, 中川 祥, 久保田 耕世, 木村 博人
    2010 年 36 巻 3 号 p. 297-302
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    近年進行口腔癌に対して超選択的動注化学放射線治療が広くおこなわれるようになってきた。私たちは2003年より2009年の間に20例の進行口腔癌に対して66Gyの放射線治療と同時にdocetaxel(40mg/m2)とnedaplatin(80mg/m2)の超選択的動注化学療法を行った。その結果20例注17例にCRがえられた。5年生存率は74.1%であった。重篤な副作用は白血球減少と粘膜炎であった。術後5例に遠隔転移が生じていた。本治療法は進行口腔癌に対しても有効であるが副作用も強く遠隔転移率が高く解決すべき問題もあると思われた。
  • 安藤 瑞生, 浅井 昌大, 吉田 昌史, 蝦原 康宏, 中尾 一成, 朝蔭 孝宏, 山岨 達也
    2010 年 36 巻 3 号 p. 303-308
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    われわれは,舌癌において制御困難な再発をきたし得る部位として「舌骨傍領域」に注目している。同領域は舌癌における原発巣と頸部の継ぎ目に位置し,口腔からのアプローチは困難で,かつ通常の頸部郭清術の郭清範囲外である。病巣は舌下神経の深部で舌動脈を巻き込むように出現し,やがて副咽頭間隙に広く進展して根治困難となりうる。このような再発は,舌動脈に沿って出現する小リンパ節への転移によるものであろうと考えている。臨床的に明らかな再発病巣として発見される時点では既に周囲へ浸潤していることが多く,治癒切除を施行するためには遊離皮弁が必要となる場合がある。病巣は可能な限り早期に発見されるべきだが,舌骨傍領域の画像診断には限界があるため,頸部郭清術を施行する際には必ず同領域の組織を摘出するようにしている。治療後の機能温存が強く求められる部位であるので,合併症のより少ない治療を選択すべきである。
  • ―第2報 妥当性と有用性の検証―
    橋川 和信, 杉山 大典, 横尾 聡, 兵藤 伊久夫, 元村 尚嗣, 久保 盾貴, 栗田 智之, 吉本 世一, 多久嶋 亮彦, 山下 徹郎, ...
    2010 年 36 巻 3 号 p. 309-315
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    CAT分類は,C点:下顎頭,A点:下顎角,T点:オトガイ結節,の有無で下顎骨区域欠損を分類する方法である。その妥当性と有用性を多施設の症例データをもとに検証した結果について報告する。
    計259例の下顎骨即時再建症例データを研究の対象とした。1)各症例をCAT分類で分類し,C,A,Tの各基準点の有無と手術結果の関係をJonckheereの傾向性検定で検討した。2)各症例をCAT,HCL,Urkenの各方法で分類し,分類法ごとにWard法による分類型のクラスタリングを行った。
    検討の結果,1)切除されたCAT分類基準点の個数が増えるほど有意に手術結果が不良となる傾向性が認められた(P=0.002)。また,2)各分類法のうち,クラスター間に手術結果に関して有意差があり,かつ各クラスターの臨床的意味づけが可能であったのはCAT分類のみであった。
    CAT分類は統計学的に妥当であり,他の下顎骨区域欠損分類法と比較して有用性が高い。
  • 藤岡 真左子, 管野 貴浩, 助川 信太郎, 古木 良彦
    2010 年 36 巻 3 号 p. 316-321
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    下顎骨原発の線維肉腫はまれな疾患であり,小児における報告は少ない。今回,われわれは小児にみられた下顎骨中心性線維肉腫の1例を経験したのでその概要を報告した。症例は8歳男児.右側下顎臼歯部歯肉の圧痛を主訴とした。口腔内所見は,右側下顎第二乳臼歯頬側歯肉に骨様硬の膨隆,圧痛を認めた。パノラマX線写真にて,右側下顎第二乳臼歯根尖相当部に辺縁比較的明瞭な円形のX線透過像を認め,右側下顎第二小臼歯歯胚は下方に圧排されていた。歯原性良性腫瘍または嚢胞を疑い,静脈内鎮静併用局所麻酔下にて,右側下顎第二乳臼歯抜歯および右側下顎骨内病変の摘除生検を施行した。 術中所見として,内部に白色充実性腫瘤を認め,可及的に腫瘤を一塊として摘出し,開放創とした。術後病理組織診断の結果,線維肉腫との診断を得た。全身検査を行うも,全身転移は認めなかった。全身麻酔下にて,右側下顎骨区域切除術と顎下部郭清術を行い,再建プレートによる暫間架橋を行った。術後化学療法として,VAC療法を1クール行った。現在,術後2年を経過し,創部経過良好,再発,転移なく経過観察を継続している。
喉頭
  • 宮野 一樹, 安藤 瑞生, 吉田 昌史, 蝦原 康宏, 寺原 敦朗, 朝蔭 孝宏
    2010 年 36 巻 3 号 p. 322-326
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    1998年~2004年の間に当科にて治療を施行した声門癌一次根治症例179例について検討した。当科において施行した治療法は,T1症例は放射線単独療法,T2症例は放射線単独療法或いは少量cisplatin(CDDP)併用放射線療法,T3,T4症例は喉頭全摘術であった。
    5年死因特異的累積生存率は95.1%,病期別では,Stage I:96.5%,Stage II:96.6%,Stage III:92.9%,Stage IV:68.6%であった。早期声門癌放射線治療群におけるT分類別局所制御率は,T1a:83.1%,T1b:60.7%,T2:62.5%であり,T2症例群の照射単独群と少量CDDP併用群においてはそれぞれ49.2%,83.6%であった。T2症例において少量CDDPの併用が,局所制御率の向上に影響すると考えられた。
  • 今井 隆之, 松浦 一登, 嵯峨井 俊, 片桐 克則, 石田 栄一, 角田 梨紗子, 西條 茂
    2010 年 36 巻 3 号 p. 327-333
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    喉頭における悪性腫瘍は扁平上皮癌が大部分を占め,非扁平上皮癌の発生頻度は5%以下である。その中で喉頭粘膜下の小唾液腺由来と考える喉頭腺系悪性腫瘍は,喉頭悪性腫瘍の0.7%程度の頻度であるとされ非常に稀な疾患である。今回我々は声門下より発生した腺様嚢胞癌の1例,腺癌の1例を経験したため文献的考察をふまえて報告する。症例1は67歳男性で声門下腺様嚢胞癌の症例で,輪状軟骨を破壊するT4aN0M0例であった。本人の喉頭温存の強い希望により喉頭部分切除術を施行した。再発のため再手術を施行する必要があったが喉頭温存可能であった。症例2は76歳の女性で声門下腺癌T1N0M0の症例であった。他院にて生検を兼ねた喉頭再開による腫瘍切除術により腫瘍体積が減量されていた。喉頭全摘出術を拒否し,放射線治療70Gyを施行した。現在16ヶ月無病生存中である。
上・中・下咽頭(頸部食道癌を含む)
  • 松尾 美央子, 力丸 文秀, 檜垣 雄一郎, 冨田 吉信
    2010 年 36 巻 3 号 p. 334-338
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    当科で一次治療を行った上咽頭癌38例の治療成績を検討し予後因子の解析を行った。上咽頭癌全体の治療成績は,疾患特異的3年生存率(以下3生率)が50%,3年局所・所属リンパ節制御率が58%と不良であった。年齢別の検討では高齢になるに従い生存率は低下傾向にあったが有意差はなかった。原発巣(以下T)別でみても生存率に有意差はなくTが進行するに従い局所・所属リンパ節制御率が低下する傾向も認めなかった。頸部リンパ節(以下N)別ではNが進行するに従い生存率・制御率ともに低下傾向にあったが有意差はなかった。病期別でも生存率に有意差はなかった。一方組織別でみるとWHO type 1はtype 2・3にくらべ有意差はないものの生存率が低い傾向にあり,局所・所属リンパ節制御率はtype 1が有意に低かった。以上の解析から,年齢・T・N・病期・組織型の中に予後不良因子はなかったが,組織型WHO type 1の局所・所属リンパ節制御率は有意に不良であるという結果となった。
  • 加藤 久幸, 油井 健宏, 岡田 達佳, 櫻井 一生, 山本 直樹
    2010 年 36 巻 3 号 p. 339-343
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    前壁・側壁型中咽頭扁平上皮癌30症例を対象に,ハイリスクタイプHPVの検出,p16とp53発現の検討を行い,HPV検出法およびHPV感染の有無と臨床像,予後,分子生物学的特徴について解析を行った。HPV陽性例は16例(16型15例,58型1例)であった。HPV陽性例では喫煙・飲酒量が陰性例に比べ有意に少なく,p16高発現例が88%と多く,HPV陰性例にはp53高発現例が75%と多くみられた。3年粗生存率の比較では,HPV陰性群48%,HPV陽性群86%(P = 0.029),p16陰性群31%,p16陽性群100%(P < 0.001)であり,HPVおよびp16陽性群は有意に予後良好であった。一方,p53陽性群の3年粗生存率は42%で,p53陰性群の83%に比べ有意に予後不良であった(P = 0.004)。今後,HPV関連バイオマーカーを用いた病期分類や治療方針決定への応用が必要と思われた。
頸部・甲状腺
  • 嶋根 俊和, 江川 峻哉, 森 智昭, 小野 智裕, 池田 賢一郎, 小林 斉, 三邉 武幸, 洲崎 春海
    2010 年 36 巻 3 号 p. 344-348
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    頸部リンパ節転移を有する頭頸部扁平上皮癌に対し,Concurrent chemoradiotherapy(以下CCRT)を行い,頸部リンパ節転移に対する効果について検討したので報告する。
    対象は2005年1月から2009年12月までの5年間に原発巣と同時に頸部リンパ節転移に対してもCCRTを行った32例である。
    結果として71.9%がCRとなり,頸部郭清術の摘出標本からviableな癌細胞の残存を認めなかった症例を含めると87.5%がCRとなっていた。原発部位,N分類と頸部リンパ節の治療効果との関係は認められなかったが,T分類が進行していくと頸部リンパ節転移の実際のCR率が低下していく傾向が認められた。Planned Neck Dissection(以下PND)を行わなくても良好な結果が得られ,また再発例が少ないこと,CCRT後の頸部郭清術で重篤な合併症が認められないことから,必ずしもPNDは必要ないと考えられた。しかし,CCRT後の頸部リンパ節の評価は困難であり,今後頸部リンパ節転移の残存の有無を確実に判定する検査法,検査の組み合わせの検討が望まれる。
  • 林 信, 山下 徹郎, 上田 倫弘, 浅香 雄一郎, 中嶋 頼俊, 栃原 義之, 石山 司, 細川 周一, 箭原 元基, 久保 雄二, 村上 ...
    2010 年 36 巻 3 号 p. 349-353
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    今回われわれは組織の弾性を客観的に表示できる組織弾性イメージングReal-time Tissue Elastographyを用いて頸部リンパ節転移の診断を行い検討した。2007年10月から2008年12月までの1年2ヶ月間に当科で頸部郭清術を施行した頭頸部扁平上皮癌は37例であった。このうち,術前のElastography画像とリンパ節の病理組織学的検査結果が対比可能であったリンパ節253個を対象とした。Elastography検査結果は古川の分類に従い4パターンに分類し,術後の病理組織学的検査結果と比較検討した。病理組織学的転移陽性リンパ節の多くはElastographyパターン3・4であった。パターン3・4をElastography検査陽性と判断した場合,感度81.0%,特異度90.8%,正診率88.5%,陽性反応的中率72.3%,陰性反応的中率 94.1%で,Elastography単独では従来の超音波検査に優る結果は得られなかった。しかし,超音波検査と併せて診断することにより,陽性反応的中率97.6%,陰性反応的中率96.9%と良好な結果が得られた。Elastographyと超音波検査との併用によりリンパ節診断の精度向上が期待された。
  • 花井 信広, 長谷川 泰久, 寺田 聡広, 小澤 泰次郎, 平川 仁, 川北 大介, 丸尾 貴志, 三上 慎司
    2010 年 36 巻 3 号 p. 354-358
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    近年,頭頸部癌治療において,臓器温存を目的とした化学放射線療法の役割は増加している。しかし化学放射線療後の頸部リンパ節転移の制御法については意見が分かれる。計画的頸部郭清の効果と適応を明らかにするために,当科での過去の中・下咽頭癌に対するCRT施行の119例についてレトロスペクティブな検討を行った。
    頸部郭清例で頸部制御率,および生存率が非郭清例を上回っていた。そして画像診断上CRが達成されていない場合には,PNDが有意に頸部制御を改善した。この場合,経過を観察するよりも,すみやかにPNDをおこなうべきと考えた。
    また画像診断上でCRであれば仮に再発しても救済率が高く,PNDを省略できる可能性があるが,慎重な経過観察が必要である。
    更に病理学的転移の有無が予後因子となることが示された。画像診断では,PET-CTが最も正診率に優れ,有力な手段であることが判った。
その他臨床
  • 嶋根 俊和, 江川 峻哉, 森 智昭, 小野 智裕, 池田 賢一郎, 小林 斉, 三邉 武幸, 洲崎 春海
    2010 年 36 巻 3 号 p. 359-362
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    2006年4月から2008年3月までの2年間に当科を受診し,加療を行った75歳以上の頭頸部悪性腫瘍患者46例を対象とし,年齢・性別,原発部位,病理組織学的分類,病期分類,合併症,Performance status(以下PS),経過観察期間,治療,転帰,累積生存率,疾患特異的生存率を検討した。
    結果は,合併症をもった症例は全体の35例(76.1%)に認められ,治療の縮小・無治療の症例は15例(32.6%)であった。高齢者の治療に関しては,合併症,患者の予備能力,PS,余命,家族環境などさまざまな要因を考慮した上で治療を選択しなければならないと考えられた。
    また,症例数は少ないが,姑息的治療を行っても半数以上は治療を契機に生命予後を悪化させていると考えられ,姑息的治療の場合には十分な検討,インフォームドコンセントが必要であると考えられた。
  • 平 栄, 甲能 直幸
    2010 年 36 巻 3 号 p. 363-368
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    目的:この研究の目的は局所進行頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)患者におけるS-1の隔日投与による同時化学放射線療法の有用性と毒性を評価することである。
    対象と方法:2008年1月から2010年2月にかけて10例のSCCHN患者を対象に,隔日でS-1の80mg/日の経口投与と三次元原体照射(three-dimensional conformal radiation therapy:3DCRT)による同時化学放射線療法を行った。放射線治療は内視鏡所見やCT,PET-CT所見にもとづく病巣部照射で,矩形照射野での回転照射と固定多門照射を複合させた3DCRTで行った。総線量の中央値は69Gy(66~74Gy)であった。
    結果:Grade 2の粘膜炎を2例で認めたが,その他のgrade 2以上の急性期・晩期有害事象を認めた症例はなく,予定された放射線治療も中断なく施行可能であった。一次治療後,9例(82%)で臨床的に完全奏効となり,それらの症例では現在のところ再発は認めていない。
    結論:局所進行頭頸部扁平上皮癌患者において,原体性を高めた3DCRTと隔日投与のS-1による同時放射線化学療法の有効性が示された。今後,症例数を重ねて遠隔成績を検討する必要がある。
  • 小野田 聡, 大槻 祐喜, 長谷川 健二郎, 難波 祐三郎, 木股 敬裕, 杉山 成史, 小野田 友男, 江口 元治, 水川 展吉
    2010 年 36 巻 3 号 p. 369-372
    発行日: 2010/10/25
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
    頭頸部再建手術の目的は,癌治療の一環の外科的療法として,術後の良好な機能,整容的結果を得ることなどであり,それと同時に手術侵襲を可及的に少なくすることを考慮する必要がある。
    一方,頭頸部癌切除後の再建を要する患者群は,生命予後の厳しい患者群であることが多い為,最も大切なことは,術後の局所合併症を減らし,早期に退院できることを目指した手術を行うことである。
    再建術後の局所合併症による創部の治癒遷延は術後の後治療を遅らせるだけではなく,摂食,会話等の機能回復においても不利益となる。
    この為,我々は臨床所見,画像所見を総合的に判断し,必要な際には積極的に創部を開放し合併症の早期発見に努めている。これにより,多くのケースで局所の合併症が皮弁の全壊死など重大な合併症を引き起こす前に発見でき,頸部の感染症状,汚染を最小限に食い止めることが出来たと考えられる。今回我々は,局所合併症の予防,対処法について検討してみた。
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