頭頸部癌
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44 巻, 4 号
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第42回 日本頭頸部癌学会
シンポジウム3
頭頸部癌に対する低侵襲・機能温存手術 今後の展望
  • 岸本 曜, 楯谷 一郎, 大森 孝一
    2018 年 44 巻 4 号 p. 331-335
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/29
    ジャーナル フリー
    マスタースレイブ型手術支援ロボットであるda Vinci® Surgical System (Intuitive Surgical Inc.)が頭頸部癌治療に導入されて以来,これまで10年以上が経過した。世界中に急速に広まると同時に,その適応は徐々に拡大しつつある。
    咽頭領域においては,当初は中咽頭癌への応用からはじまった経口的ロボット支援手術は現在では上・下咽頭癌の治療にも応用されている。前者に関しては,適応に関してさらなる検討が必要であるものの,展開性,操作性はいずれも良好である。また,後者に関しては展開性,操作性に課題が残るが,今後,機器の小型化により克服が期待される。
    本邦においては,先進医療での臨床試験の結果をふまえ,企業より適応拡大申請されていた頭頸部癌に対するロボット支援手術が,2018年8月に承認された。次の段階としては保険収載が期待されており,現在,ロボット支援手術の質と安全性を担保するため,関連学会が中心となり体制作りがすすめられている。
シンポジウム4
頭頸部がん薬物療法の新展開
  • 清田 尚臣
    2018 年 44 巻 4 号 p. 336-341
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/29
    ジャーナル フリー
    免疫チェックポイント阻害薬(Immune check point inhibitor:ICPi)は,悪性黒色腫や肺がんなど多くのがん種で有効性が証明されており,さらに開発も進んでいる。そのような中で,頭頸部がんにおいても有効性を示す報告が続いており,現在も新たな臨床試験も次々と行われている状況である。日本では2017年3月より抗PD-1(programmed cell death 1)抗体であるニボルマブが保険承認され実臨床で使用できるようになっている。一方で,免疫チェックポイント阻害薬は,頻度が低いものの時に厳重な内科的管理が必要となる免疫関連有害事象(immune related adverse event:irAE)を生じることが知られている。このため,腫瘍内科医がより積極的に頭頸部がん診療に関わり安全かつ有効な治療を提供できるサポート体制を充実させる必要がある。その取り組みとして,日本臨床腫瘍学会では頭頸部がん診療連携プログラムを立ち上げ,2018年3月より稼働させている。
シンポジウム6
頭頸部癌における画像診断の進歩と今後の展望
  • 久野 博文
    2018 年 44 巻 4 号 p. 342-346
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/29
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌の評価においてCT検査は最も広く使用され,適切な治療方針を決定するために重要な役割を果たしている。近年のCT技術の進歩により,通常のCT画像だけでなく,より詳細な追加画像情報が取得できるようになり,頭頸部癌に対する診断能向上に寄与している。Dual energy CTは,軟部組織とヨード造影剤を識別したヨード強調画像が作成可能で,喉頭癌・下咽頭癌による喉頭軟骨浸潤の評価に応用されている。320列面検出器CTでは,骨サブトラクションヨード強調画像が頭頸部癌による頭蓋底や下顎骨などの骨浸潤評価(特に骨髄浸潤の評価)に有用である。また,SEMARなどの金属アーチファクト低減アルゴリズムは,口腔内金属による画像劣化を低減することができる。
    今後の展望としては,CT画像を用いたテクスチャ解析やradiomics解析による予後・治療効果予測が個別化治療に向けて開発されている。
  • 関根 鉄朗, 今井 祥吾, 鳥井原 彰
    2018 年 44 巻 4 号 p. 347-352
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/29
    ジャーナル フリー
    本稿では,2018年度の頭頸部癌学会において開催されたシンポジウム“頭頸部癌における画像診断の進歩と今後の展望”内の“PET/CTの最近の知見とPET/MR”で講演した内容につき,①頭頸部癌化学放射線治療後の残存・再発腫瘍評価におけるFDG-PET/CT撮影の役割,②PET/CT定量指標とHarmonization,③腫瘍不均一性とTexture analysis,④PET/MRの頭頸部癌診療における役割の4点について,述べる。
一般投稿
口腔
  • —全地域集団検診と千葉市の個別検診について—
    森川 貴迪, 別所 央城, 藥師寺 孝, 岩本 昌士, 髙野 伸夫, 野村 武史, 片倉 朗, 柴原 孝彦
    2018 年 44 巻 4 号 p. 353-360
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/29
    ジャーナル フリー
    近年,わが国での口腔がん発生は増加している。東京歯科大学では地域と協力し,1992年より口腔がん検診を行ってきた。これまで行ってきた口腔がん集団検診および個別検診の実績について検討を行ったので報告する。
    集団検診は,各地域性に合わせ公募し行った。個別検診は,協力医の一般診療所で行った。
    集団検診は1992年から2017年までで,総受診者数は18,590名で,男女比は1:3であった。口腔がん発見率は0.13%であった。個別検診は2006年から2017年までの11年間で千葉市個別検診における総受診者数は4,369名で,男女比は1:2.1であった。口腔がん発見率は0.14%であった。また,口腔潜在的悪性疾患も多数発見された。
    口腔がんナビシステムや蛍光光学機器の開発も行っており,今後もさらなる口腔がんの早期発見・早期治療のために,啓発活動に努めていく予定である。
上・中・下咽頭(頸部食道癌を含む)
  • 杉山 智宣, 別府 武, 得丸 貴夫, 山田 雅人, 小出 暢章, 谷 美有紀, 金子 昌行
    2018 年 44 巻 4 号 p. 361-364
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/29
    ジャーナル フリー
    下咽頭癌は早期にリンパ節転移を来すこともあり,明らかなリンパ節転移を認めない場合でも予防的に両側の頸部リンパ節郭清術を行うことが多い。術前検査にて健側頸部リンパ節に明らかな転移を認めていない下咽頭梨状陥凹癌において原発巣が正中を超えない症例と,梨状陥凹癌ながら正中を超えて進展する症例の2群,および原発巣が梨状陥凹に限局する症例と,限局せずに他部位へ進展する症例の2群に分け,健側頸部リンパ節転移の頻度を比較,検討した。下咽頭梨状陥凹癌において,腫瘍が健側に進展していない症例,もしくは腫瘍が梨状陥凹に限局する症例においては健側外側頸部郭清術を省略できる可能性があると考えられた。一方,腫瘍が正中を超えて進展する場合,もしくは腫瘍が梨状陥凹に限局せずに他部位へ進展する場合は両側の外側頸部郭清術,気管傍郭清術が必要と考えられた。
  • 小村 豪, 安藤 瑞生, 小林 謙也, 福岡 修, 明石 健, 齊藤 祐毅, 吉田 昌史, 山岨 達也
    2018 年 44 巻 4 号 p. 365-369
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/29
    ジャーナル フリー
    下咽頭癌手術例の2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の遺伝子多型を検索し,生命予後と臨床病理学的因子との関連を明らかにすることを目的に検討を行った。
    東京大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科で2008〜2015年に初回治療を行った63例を対象とし,後向きに検討した。ALDH2多型はSanger法により検索し,飲酒量はSake-Indexに換算した。
    ALDH2多型の内訳は*1/*1=27例(43%),*1/*2=36例(57%),*2/*2=0例であった。Sake-Indexは*1/*1=114.0±14.5,*1/*2=75.6±9.2と後者は有意に少ない飲酒量で下咽頭癌を発症していた(P=0.03)。術後5年疾患特異的生存率は*1/*1=58%,*1/*2=62%で有意差は認めなかった。
    本検討より,日本人の下咽頭癌発症に飲酒とALDH2多型が深く関与していることが再認識された。
  • 黒沢 是之, 後藤 孝浩, 浅田 行紀, 今井 隆之, 館 正弘, 松浦 一登
    2018 年 44 巻 4 号 p. 370-375
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/29
    ジャーナル フリー
    喉頭温存・下咽頭部分切除術に対して遊離皮弁(空腸含む)移植による再建を行った34例を対象に,年齢・切除範囲・皮弁の種類・再建後の喉頭周辺の形態と術後嚥下機能障害との関係を検討した。年齢と誤嚥性肺炎の有無との間に統計学的有意差は認めなかったが,長期フォロー例で加齢に伴い誤嚥性肺炎を発症する例があった。切除範囲と誤嚥性肺炎の有無との間にも統計学的有意差を認めなかったが,披裂軟骨まで切除された症例の45%で誤嚥性肺炎を発症していた。皮弁の種類と誤嚥性肺炎の有無の間に統計学的有意差は認めず,披裂喉頭蓋ヒダを空腸で再建しても誤嚥性肺炎の発症率は他の皮弁と変わらなかった。再建後の喉頭周辺の形態に関しては,披裂喉頭蓋ヒダから梨状陥凹にかけての凹凸が喉頭侵入を防ぐのに有用であることが再確認された。また誤嚥性肺炎を防ぐには,喉頭蓋基部から咽頭側壁までのスペースを広く確保することの有用性が示唆された。
頸部・甲状腺
シンポジウム7
Quality of Survivalを考慮した頭頸部癌支持療法
  • 秦 浩信, 吉川 和人, 今待 賢治, 村井 知佳, 上田 倫弘, 永橋 立望, 西山 典明, 安田 耕一, 本間 明宏, 北川 善政
    2018 年 44 巻 4 号 p. 380-386
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/29
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌治療では様々な機能障害や,有害事象により患者のQOLが著しく低下する。多くの場合,治療後緩やかに改善するが,様々な不具合を受容しながら生活している。長期生存者の口腔管理の継続は重要な課題である。2012年度から開始された全国共通がん医科歯科連携講習会により,全国で14,000名以上がん診療連携歯科医が登録され,連携の受け入れ体制が整った。北海道大学病院で2011年に行った,2007年から2010年までの4年間の実態調査では,退院後に院内外で口腔管理を継続できたのは34.3%で,地域歯科医院に依頼したものは7.5%に過ぎなかった。今回行った2011年から2016年までの6年間の調査では,退院後口腔管理を継続できたのは70.5%であり,地域歯科医院に依頼したものは40.4%と著明に増加した。頭頸部癌患者のQOLに寄与するため,適切な口腔管理を地域歯科医院と共に継続することが肝要である。
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