日本がん看護学会誌
Online ISSN : 2189-7565
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15 巻, 2 号
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原著
  • 蛭子 真澄
    2001 年 15 巻 2 号 p. 41-51
    発行日: 2001年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究は,胃がん術後患者に対する効果的な看護介入の示唆を得るための第一段階として,胃がん術後患者の治療後回復期早期の心理状態を明らかにすることを目的にした.対象は胃がん術後患者14名とし,面接法と参加観察法を用いてデータを収集し,質的に分析を行った.

    その結果,心理状態は,感情のカテゴリーとして,入院中・退院後ともに「転移・再発に対する不安」「食事に対する不安・苦痛」「社会生活に対する不安」「安心」の4つのカテゴリーに分類された.また,心理状態の対処のカテゴリーとして,入院中は「情報を収集する」「問題に取り組む」「気持ちを変える」「楽観的な見通しを持つ」「感情を表出する」「回避」「おまかせ」の7つのカテゴリーに分類され,退院後は,「情報を収集する」「感情を表出する」「おまかせ」を除く4つのカテゴリーに分類された.

    以上の結果より,胃がんで手術を受け,治療後回復期早期にある患者は「転移・再発に対する不安」等に対処しながら,日々の生活に取り組んでいることが明らかになった.看護者として,家族のサポート等も十分に活用しながら患者の心理状態を安定させること,患者が胃を手術した自分の状態を肯定的に受けとめ,積極的に対処できるように支援することの必要性が示唆される.

  • 神田 清子
    2001 年 15 巻 2 号 p. 52-61
    発行日: 2001年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,がん化学療法の経過に伴う患者の甘味,塩味,酸味,苦味閾値の変化とその要因を明らかにすることである.対象者は,これから化学療法を受ける入院中の血液・造血器腫瘍患者45名.味覚検査用試薬を用い滴下法により治療前・治療中・治療後の計3回,縦断的に味覚閾値を測定し,口腔内の状態を観察法により把握した.患者属性,使用薬剤などは診療録により収集を行った.味覚閾値を従属変数,口腔内の状態や使用薬剤など11要因を独立変数として重回帰分析を行い,以下の結果を得た.

    1.甘味・塩味・酸味・苦味のうち,がん化学療法の影響を受けていたのは塩味であった.塩味閾値の平均は治療前2.6,治療中2.4,治療後3.0であり,治療後は治療前,治療中に比べ有意に上昇し,鈍感になっていた.

    2.重回帰分析の結果,治療後の塩味鈍化をもたらす要因は年齢と抗がん抗生物質であった.加齢,抗がん抗生物質使用者では明らかに塩味に対する鈍化が認められた.

    以上より,味覚変化からくる食物嫌悪を予防するためには,化学療法後の食事は,塩味の鈍化に対応し,塩味を集中させる.一時的に少し多めに塩分を加える介入が必要である.特に,高齢者や抗がん抗生物質使用者では,治療後,塩味が鈍感になりやすく,綿密な観察とアセスメント,食事介入が不可欠であることが示唆された.

研究報告
  • ―5年未満の訪問看護婦の意思決定の特徴―
    松村 ちづか, 川越 博美
    2001 年 15 巻 2 号 p. 62-67
    発行日: 2001年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー
  • ―外来・短期入院に焦点をあてて―
    片桐 和子, 小松 浩子, 射場 典子, 外崎 明子, 南川 雅子, 酒井 禎子, 林 直子, 池谷 桂子, 高見沢 恵美子
    2001 年 15 巻 2 号 p. 68-74
    発行日: 2001年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究は,治療を継続しながら生活するがん患者の困難・要請と対処について探求することを目的として,外来通院あるいは短期入院中の16名を対象に,半構成的な面接法を用いてデータを収集し,内容分析を行ったものである.

    その結果,がん患者の困難・要請は,【病気と将来の見通しに関すること】【治療への取り組みに関すること】【生活上の制限に関すること】【自己存在に関すること】【治療環境に関すること】【心の支えに関すること】の6つの項目に分類された.また,困難・要請の対処としては,【自分で何とかしようとする】と【他者の力を借りて対処する】に分類された.

    そして,項目やそれに含まれる内容を分析した結果,外来通院あるいは短期入院により,継続的にがん治療を続けている患者は,病気や将来への不安を抱えつつも,現状を受け入れながら短期的な見通しを立て,生活の調整を試みていることが明らかになった.今後は,患者個々が気持ちを表出してサポートが得られるよう外来環境を整え, その人らしく生活できる援助の必要性が示唆された.

  • ―外来・短期入院を中心としたがん医療に携わる看護婦の困難と対処―
    酒井 禎子, 小松 浩子, 林 直子, 射場 典子, 外崎 明子, 南川 雅子, 片桐 和子, 池谷 桂子, 高見沢 恵美子
    2001 年 15 巻 2 号 p. 75-81
    発行日: 2001年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,「がんデイケアモデル」を考案し,それを臨床適用して,モデルの妥当性,実用性を検証するための第一段階として,①外来通院あるいは短期入院を中心としたがん治療に携わっている看護婦が,がん患者への援助を行う中でどのような困難を感じているか,②また,それらの困難に対してどのような対処を行っているかを明らかにすることである.全国5ヵ所のがん専門病院で外来・デイケアあるいは病棟に勤務し,外来・短期入院を中心とした化学療法や放射線療法を行う患者のケアに直接関わっている看護婦20名に半構成的なインタビューガイドを用いて面接調査を行った.

    外来・短期入院を中心とした治療を受けるがん患者へのケアを行う上での困難は,【患者ケアの質を高める上での困難】【ケア提供者間の協働における困難】【看護ケア提供システム上の困難】【患者ケアに携わる上での心理的負担】の4つの項目に分類された.また,これらの困難に対して行われている対処は,【可能な限りの工夫・努力】【知識を深める】【患者を把握し,コミュニケーションを図る】【患者・家族のセルフケアを高める】【情報を共有し,他職種・他部門との連携を図る】【個人の認知的とりくみ】の6つの項目に分類された.

    看護婦は,治療を受けながら生活するがん患者のQOLの向上に向けた援助の重要性を認識しながらも,ベッドの数や人的資源といった物理的制約と精神的にも余裕のない状況の中で,各々がさまざまな工夫をしながら業務をこなさざるをえない現状が明らかになった.今後は,患者が相談しやすい窓口の明確化と患者とのコミュニケーションを維持する工夫,かつより効率的に情報を共有できるようなシステムづくりや,他の医療職とそれぞれの専門性を活かした連携を行えるよう,話し合いの場や記録の共有などのシステムを確立することが課題として示唆された.

資料
  • 新藤 悦子
    2001 年 15 巻 2 号 p. 82-91
    発行日: 2001年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究は,緩和ケア病棟に勤務する看護婦を対象に,看護場面においてスピリチュアルな問題に対してどのようなケアが用いられているのか調査し,そのケアの様相を明らかにする目的で行われた.データ収集法は半構成的面接法とし,質的帰納的分析法を用いて分析した.その結果,9名の看護婦によって18名の患者の事例が語られた.語られた患者のスピリチュアルペイン6つに対して行われた看護婦による対応をスピリチュアルケアとして捉え分類した結果,〈スピリチュアルな問題を認識する〉〈苦痛を緩和する〉〈そばにいる〉〈患者自身の力を支える〉〈患者と家族の架け橋になる〉〈自分自身を使う〉〈チームで関わる〉がみられた.看護婦は,患者が体験しているスピリチュアルな問いを読み取り,それに対して従来の看護のスキルを用いてケアを実践していた.さらに特定の既成宗教を信仰していない患者に対して特定の宗教を持たない看護婦による〈超越的な存在を認める〉〈死後の世界に希望を託す〉ケアが抽出された.

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