要 旨
末期がん患者は病院という環境において入院から死をむかえるまでの経過の中でどのような経験をし,自分自身や周囲の状況をどのように解釈しているのかを明らかにする研究を行った.研究者が看護婦として入院中の末期癌患者と関わり,その関わりの中でとらえた患者の経験をデータとし,KJ法の手法を用いながら経験の意味を分析により導き出した.
KJ法の手法によって統合された8つの関心領域にそって経験の意味が理解された.その関心領域とは,a)苦しい病気に罹ってしまった,b)死にたくない,c)より良く生きたい,d)生きていける,e)自分の状態に関して確信が持てない,f)私を助けてくれる人が必要,g)周りのものが気になる,h)なるようにしかならない,であった.
末期がん患者に全人的看護を提供するためには,患者の生きる力を信じ,患者が死や病状の悪化を経験することを恐れず,あるがままの患者を理解しようと努めることが必要であることが示唆された.
要 旨
胃癌で手術療法を受ける患者の病名のうけとめと患者かたどる心理的プロセスを明らかにした.
対象は,手術療法を受けることを目的として入院した胃癌患者21名である.
研究方法は,面接法,参加観察法を中心にデータを収集し,補助資料としてカルテ記録を使用した.まず,患者の病名のうけとめを『がんである群』『あいまい群』『非がん群』の3群に分けた.
3群すべてにおいて,医師から発せられた言葉や言葉以外の医師の一挙一動は,患者の病名のうけとめに対して大きな意味を持っていた.
次に,各群ごとに得られたデータを整理し,心理的プロセスを比較検討した.
患者がたどる心理的プロセスは,『がんである群』『あいまい群』『非がん群』のそれぞれによって特徴がみられた.また,心理状態が大きく変化する時期は,概ね,身体状態の変化する時期と一致していた.
心理的プロセス上の同一時期に存在する心理状態にも3群間で相違点や類似した点が認められた.