要 旨
本研究の目的は,癌看護に携わる看護者のケアリングに対する自己評価(ケアリング評価と略す)のレベルとそれを規定する要因を明らかにすることである.研究方法は大阪府内8総合病院の癌病棟に勤務する看護者500名を対象に自記式質問紙調査を行い,ケアリング評価尺度を従属変数,死に対する態度やケア不安および一般性セルフ・エフィカシー(自己効力感,GSESと略す)など17変数を独立変数として重回帰分析を行った.その結果は,
1.看護者のケアリング評価および自己効力感のレベルは低く,両者とも経験年数が増す程得点は高く,多重比較(Tukey)により年数間に有意差がみられた.
2.重回帰分析の結果は,17要因のうち4要因がケアリング評価に起因していた.ケア不安はケアリング評価に起因していなかったが,有意な負の相関(γ=-0.199,P<0.001)がみられた.4要因の関係の強い順は,年齢(β=0.256,P<0.001),GSES(β=0.255,P<0.001),癌看護目標に対するギャップ感(β=-0.187,P<0.001),「患者の死と向き合った時,仕事だから仕方なく,事務的に接した態度」(β=-0.113,P<0.01)であった.
3.年齢を除く3要因は,ケアリング評価とケア不安に対して,逆(正,負)の関連要因となっていた.
以上より癌看護に携わる看護者のケアリング評価を高める要因と要因間の関連性が明らかになったが,今後,経験を積んでいる者の実践的ケアリング能力やその活用方法などについての追跡研究の必要性が示唆された.
抄録全体を表示