日本がん看護学会誌
Online ISSN : 2189-7565
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14 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • ―診断を受けてから退院して家庭生活を始める過程に焦点をあてて―
    諸田 直実, 遠藤 恵美子
    2000 年 14 巻 2 号 p. 28-41
    発行日: 2000年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,がんと診断されてから生ある限りがんとともに生きるというサバイバーシップの観点に立った乳がん患者リハビリテーション看護の概念を明らかにすることである. Walker & Avantによるconcept analysisの手法を参考に看護実践的な側面を明確にするような研究デザインを選んだ.乳がん体験者とがん看護に携わる看護者を対象に,参加観察および面接によりデータを収集し分析した.乳がん患者リハビリテーション看護の概念特性として1.直面することをサポートする,2.参画することをサポートする,3.再構築することをサポートする,4.意味を見いだすことをサポートする,の4つが見いだされた.「意味を見いだすことをサポートする」という概念特性は,他の3つの概念特性の核となることが示唆された.また,乳がん患者の体験は,それまでの自分のライフスタイルや生き方を捨て,新しくそれらを創りあげていく移行(transition)の過程であるということができる.

    これらを踏まえて乳がん患者リハビリテーション看護の概念を記述すると,患者ががんの体験に直面し,参画し,再構築し,その中に意味を見いだす過程をサポートすることを通して患者の移行(transition)体験の質を高め,がんの体験を得て新しい局面に患者が成長していくことを援助することであるといえる.その看護実践の内容を4つの概念特性を踏まえ具体的に表現した.

  • ―癌看護のケアリングに影響する要因調査―
    犬童 幹子
    2000 年 14 巻 2 号 p. 42-54
    発行日: 2000年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,癌看護に携わる看護者のケアリングに対する自己評価(ケアリング評価と略す)のレベルとそれを規定する要因を明らかにすることである.研究方法は大阪府内8総合病院の癌病棟に勤務する看護者500名を対象に自記式質問紙調査を行い,ケアリング評価尺度を従属変数,死に対する態度やケア不安および一般性セルフ・エフィカシー(自己効力感,GSESと略す)など17変数を独立変数として重回帰分析を行った.その結果は,

    1.看護者のケアリング評価および自己効力感のレベルは低く,両者とも経験年数が増す程得点は高く,多重比較(Tukey)により年数間に有意差がみられた.

    2.重回帰分析の結果は,17要因のうち4要因がケアリング評価に起因していた.ケア不安はケアリング評価に起因していなかったが,有意な負の相関(γ=-0.199,P<0.001)がみられた.4要因の関係の強い順は,年齢(β=0.256,P<0.001),GSES(β=0.255,P<0.001),癌看護目標に対するギャップ感(β=-0.187,P<0.001),「患者の死と向き合った時,仕事だから仕方なく,事務的に接した態度」(β=-0.113,P<0.01)であった.

    3.年齢を除く3要因は,ケアリング評価とケア不安に対して,逆(正,負)の関連要因となっていた.

    以上より癌看護に携わる看護者のケアリング評価を高める要因と要因間の関連性が明らかになったが,今後,経験を積んでいる者の実践的ケアリング能力やその活用方法などについての追跡研究の必要性が示唆された.

  • 久保 五月, 遠藤 恵美子
    2000 年 14 巻 2 号 p. 55-65
    発行日: 2000年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,痛み体験をもつがん患者に対してエキスパートナースが行っている看護実践を分析し,そこに内在する実践知を,Carperの4つの知のパターンとの関係で明らかにすることである.6名のエキスパートナースが行った疼痛緩和ケアの参加観察と面接を行い,その実践内容を分析した.エキスパートの疼痛緩和ケアの実践から抽出された15の実践知のパターンは,Carperの4つの知,すなわち経験知,審美知,自己知,倫理知に分類されると同時に,重なりあい,実践の中に統合されていることが明らかとなった.

    本研究の結果から,がん患者の疼痛緩和ケアにおけるエキスパートの実践の卓越性には,直感,エキスパート自身への気づきや倫理的側面への感受性など,Carperの言う審美知,自己知,倫理知のパターンが深く関わっていることが見出された.優れた看護実践のためには,経験知だけでなく,それ以外の知のパターンも重要であり,4つの知のパターンすべてが磨かれることの必要性が示唆された.

  • 射場 典子
    2000 年 14 巻 2 号 p. 66-77
    発行日: 2000年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究は,ターミナルステージにあるがん患者の希望とそれに関連する要因について探求することを目的として,ホスピスに入院中またはホスピス外来通院中の12名を対象に,参加観察法と非構成的な面接法を用いてデータを収集し,質的に分析を行ったものである.

    その結果,ターミナルステージにある人の希望として【生きること】,【自分らしさの表現】,【死を超越すること】という3つのカテゴリーが見出された.【生きること】には[回復]と[生き長らえること]が,【自分らしさの表現】には[自由性][自立性][今ある生の実感][人生の完成]が,【死を超越すること】には[自己の生きた証を残す][死後の世界への希望][他者の幸福を願う]がそれぞれサブカテゴリーとして含まれていた.また,希望に関連する要因として《希望を維持する内的活力》《死の認識》《希望が育まれる場》が見出された.

    これらの希望の様相として見出されたカテゴリーを基に希望の意味を考察すると,ターミナルステージにあるがん患者にとって希望は自己の存在のあり方を表していると考察された.

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