日本がん看護学会誌
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37 巻
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原著
  • 西尾 聡子, 作田 裕美
    原稿種別: 原著
    2023 年 37 巻 論文ID: 37_1_nishio
    発行日: 2023/01/18
    公開日: 2023/01/18
    ジャーナル フリー

    【目的】若年性乳がんと診断され治療体験をもつ患者の診断後から治療期間におけるセクシュアリティに関する情報と支援ニーズを明らかにする.

    【方法】研究デザインは,質的記述的研究デザインとした.A都道府県内の乳腺専門医の登録のある乳がん手術実施病院のうち,研究協力の同意が得られた3施設の患者,9名に対してインタビューを実施して質的帰納的に分析した.

    【結果】診断後から治療期間における若年性乳がん患者のセクシュアリティに関する情報と支援ニーズは,告知の時期,治療開始までの時期,周手術の時期,化学療法の時期,ホルモン療法の時期,放射線治療の時期,治療終了時,すべての時期に認められた情報と支援のニーズの8つの時期に分類され,135のコードから40のサブカテゴリ―,19のカテゴリーで構成された.

    【考察】若年性乳がん患者が求めるセクシュアリティに関する情報と支援には,治療の影響を受け変化した身体的・心理的・社会的・スピリチュアルなニーズがある.そのため,医療者は患者の治療時期を考慮した情報提供や支援をする必要がある.

    【結語】診断後から治療期間における若年性乳がん患者が求めるセクシュアリティに関する情報と支援は,8つの時期に分類され,各治療の時期特有のニーズとすべての時期に認められたニーズが明らかになった.

  • 岡田 弘美, 富岡 晶子, 小濵 京子, 山内 栄子, 岩瀬 貴美子, 丸 光惠
    原稿種別: 原著
    2023 年 37 巻 論文ID: 37_25_okada
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は看護師が認識するAYA世代のがん患者の困難事例の年齢層別特徴と,困難事例に対する看護の質を向上させるために必要であったことを明らかにすることである.

    方法:小児がんを含む,がん診療連携拠点病院の看護師で,15〜39歳の患者の治療/継続観察を行っている部署に所属しており,調査時点において部署に所属してから1年以上経過している者を対象に質問紙調査を行った.

    結果:有効回答1,627名を分析対象とした。看護師が認識する困難事例の困難の内容は,15~19歳では,「予後不良の告知」「患者の意思決定」「教育の継続」,20~24歳では,「治療拒否・脱落」「就労支援」,25〜39歳では,「家族関係・家族の問題」が多かった.

    考察:本研究結果より,看護師は年齢層ごとに異なる困難をかかえている可能性が示唆された.特にターミナル期には,親の意向が優先される可能性が高く,思春期のがん患者が望むターミナル期を送れないケースがある.親の心理的問題が関連している可能性があり,AYA世代のターミナルケアの前提条件として,親への心理的支援を強化する必要がある.

  • 田原 裕希恵, 雨宮 歩, 加瀨 竜太郎, 北川 柚香, 小笠原 定久, 加藤 直也, 小宮山 政敏
    原稿種別: 原著
    2023 年 37 巻 論文ID: 37_35_tahara
    発行日: 2023/02/02
    公開日: 2023/02/02
    ジャーナル フリー

    切除不能な肝細胞がん治療に用いられるtyrosine kinase inhibitor(TKI)の副作用の1つにhand-foot skin reaction(HFSR)がある.本研究は手と足におけるHFSR発生率,HFSRの症状,発生時期を明らかにすることを目的とした.

    本研究はコホート研究で,切除不能な肝細胞がんに対してレンバチニブ,ソラフェニブ,レゴラフェニブによる治療を受ける患者を対象に,2カ月間の診察日に問診と手足の写真撮影を行った.写真はフットケアエキスパートナースを含む3名で皮膚症状を確認した.手足それぞれのHFSR発生日をカプラン-マイヤー曲線を用いて描出し,log-rank検定を実施した.本研究は千葉大学大学院看護学研究科倫理審査委員会の承認を得て実施された.

    研究に参加した58名のHFSR発生率は84%であり,最も多く観察された症状は角質剥離で,参加者の23%は手に,参加者の39%は足にみられた.HFSR発生日の中央値は,手が21日(95%信頼区間 17.6〜24.3日),足が7日(95%信頼区間 11.6〜14.3日)と,足のほうが早くHFSRが発生していた(log-rank検定, p<0.01).

    本研究結果から,HFSRの早期発見には手だけではなく足の観察も重要であると考えられた.看護師はTKI治療開始前から診察日ごとに患者の手足を観察することで軽微な変化も見逃さず,適切な治療につなげる役割が期待される.

  • 湯浅 幸代子
    原稿種別: 原著
    2023 年 37 巻 論文ID: 37_42_yuasa
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー

    目的:がんの再発不安は,治療後のサバイバーに共通してみられ,強い再発不安はQOLやwell-beingに影響することが明らかとなっているが,効果的な看護介入は明らかになっていない.本研究は,乳がんサバイバーが再発不安をマネジメントするための複合的看護介入プログラムを開発し,その効果について検討することを目的に実施した.

    方法:本研究は,単群による介入研究デザインを用いた.介入として,乳がんサバイバーのストレスマネジメント,症状マネジメント,健康行動を促進するために,3回のサポートグループと2回の個別相談から成る5週間のプログラムを提供し,primary outcomeをがんの再発不安,secondary outcomeをQOL,コーピングとし,介入前(T1),介入後(T2),3カ月後(T3)に評価した.

    結果:2施設から再発不安のある乳がんサバイバー22名が研究に参加した.再発不安のスコアはT1に比べT3で有意に改善し,QOLはT2およびT3で有意に改善した.コーピングのスコアには有意な変化はみられなかった.

    結論:本研究では,乳がんサバイバーの再発不安,QOLにおいて良好な結果が得られ,今回開発した複合的看護介入プログラムは乳がんサバイバーが再発不安をマネジメントするのに有用である可能性が示唆された.介入の有効性を検証するために,さらなる研究が必要である.

  • 岡本 恵, 今井 芳枝, 板東 孝枝, 高橋 亜希, 井上 勇太, 阪本 朋香
    原稿種別: 原著
    2023 年 37 巻 論文ID: 37_52_okamoto
    発行日: 2023/03/29
    公開日: 2023/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,がん遺伝子パネル検査を受けたがん患者が,検査の結果,新たな治療に至らず現行のがん治療を継続していくときのがん患者の折り合いを明らかにすることである.研究方法は質的記述的研究デザインで,研究対象は,がん遺伝子パネル検査を受け,新たな治療に至らなかったがん患者10名とし,半構造化面接法を実施した.結果,がん遺伝子パネル検査で新たな治療に至らず現行のがん治療を継続していくときのがん患者の折り合いとして,【遺伝子情報だからこそ,今後に期待できると前向きに受け取る】【新たな治療がなくても状態が安定しているので許容できる】【一筋の希望に縋らぬよう感情の振幅を自らコントロールする】【ここまで生き抜いてきた自分を信じる】【あとのない自分を理解してくれている存在がある】の5つのカテゴリーが抽出された.これらの結果から,狭まりながらもまだ少し先がある感覚や,今の自分を熟知している強みで心を統制していることが,がん遺伝子パネル検査で新たな治療に至らず現行のがん治療を継続していくときのがん患者の折り合いとして特徴づけられた.厳しい状況においても少し先が考えられる状況を見出すことが必要であり,がん患者の背景を理解しアプローチすることの重要性が示唆された.

  • 福井 里美, 広瀬 寛子, 米村 法子, 坂元 敦子, 新井 敏子, 三浦 里織
    原稿種別: 原著
    2023 年 37 巻 論文ID: 37_60_fukui
    発行日: 2023/04/05
    公開日: 2023/04/05
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的はがん終末期ケアに携わる看護師が経験するやりがい感の実態調査の過程で作成された尺度の信頼性と妥当性を検討することである.

    方法:先行研究および第1調査の実態調査データから5因子37項目の「がん終末期看護のやりがい感尺度(SMEEN)」を作成し,170施設のがん診療連携拠点病院の看護師1,304名の自記式質問紙調査のデータを用いて検討した.

    結果:因子分析により【ともに居るケアの意味と役割の実感】【さまざまな人生観に触れる学びと感動】【患者家族と医療チームの一体感】【苦痛軽減へ貢献した実感】【その人をより理解するケアの追求】の5因子構造が同定された.尺度全体のCronbach’s αは0.95であり,各下位領域も 0.80~0.92と十分な内的一貫性が示された.Multitrait Scaling分析の結果,構成概念妥当性が認められ,また終末期看護に携わる看護師の満足度尺度およびPOMS短縮版の活気との正相関が認められた.さらに既知集団では,緩和ケア病棟経験者および緩和ケアチームの経験者の得点が有意に高かった.

    考察:SMEEN37項目版が十分な信頼性と妥当性を有することが確認された.本尺度の活用により,終末期看護経験における肯定的側面に着目した実態把握や教育支援の評価が可能と考えられた.

  • 山崎 淑恵, 大山 末美, 大石 ふみ子
    原稿種別: 原著
    2023 年 37 巻 論文ID: 37_88_yamasaki
    発行日: 2023/07/12
    公開日: 2023/07/12
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,内分泌療法を受ける閉経前乳がん患者の困難と対処,内分泌療法中の支えを明らかにすることである.外来通院をする内分泌療法を受ける閉経前乳がん患者14名を対象に半構造化面接を実施し,その内容を質的帰納的に分析した.

    内分泌療法を受ける閉経前乳がん患者の困難として【内分泌療法による多様な苦痛をもたらす身体症状】【自身をコントロールできない苦しみ】【妻・娘・母の役割を遂行できずやるせない】など6カテゴリが導き出された.困難への対処として【自分の状況を前向きに意味づけ受け入れようと考える】【喪失・変化・つらさに耐えようとする】など4カテゴリが導き出された.内分泌療法中の支えとして【自分に関心を寄せてくれる人の存在を感じる】【内分泌療法によって生き抜きたいという思い】【内分泌療法を継続できるという確信】の3カテゴリが導き出された.支えてくれる存在,生き抜きたい思い,および治療継続できる確信を支えに,困難が生じるたびごとに工夫をこらし対処し続けることが,閉経前乳がん患者の治療継続を支えていた.10年という長期間にわたる乳がん内分泌療法継続を支えるために,短時間で患者の状況を的確にアセスメントし,患者の治療継続できるという自己効力感を高め,患者が表出しづらい困難に積極的に関わる看護援助が必要である.

  • 本田 晶子, 矢ヶ崎 香
    原稿種別: 原著
    2023 年 37 巻 論文ID: 37_104_honda
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル フリー

    目的:在宅で経口がん薬物療法を受ける高齢がん患者に対して,訪問看護師がどのように服薬自己管理に関するケアを行っているかを明らかにする.

    方法:在宅で経口がん薬物療法を受ける高齢がん患者への看護の経験がある訪問看護師14名を対象に,半構造化面接とテーマ分析による質的記述的研究を行った.

    結果:在宅で経口がん薬物療法を受ける高齢がん患者に対するケアとして【二義的な目的としての服薬支援】【患者にとっての治療の意味を探求】【限界のなかでの最善】という3つのテーマが導かれた.

    結論:訪問看護師は,高齢がん患者との関係構築を最優先し,患者の自律の尊重や自宅での生活が成り立つことを重視し,服薬管理は二義的なことととらえて支援していた.また,訪問看護師は,高齢がん患者の治療適用に葛藤を抱きながらも,患者の根底にある意向を模索し,治療の意味を探求する姿勢を保っていた.患者の生活に服薬を織り込み,リスクに備えたネットワークを築きながらも,患者を擁護するために自ら行動を起こすことで,限界のなかでも最善を尽くそうとしていた.

  • 森 裕香, 今井 芳枝, 板東 孝枝, 高橋 亜希, 井上 勇太, 阪本 朋香
    原稿種別: 原著
    2023 年 37 巻 論文ID: 37_147_mori
    発行日: 2023/09/27
    公開日: 2023/09/27
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,がん自壊創を有する患者に関わる看護師の困難感の要素について明らかにすることである.

    がん自壊創のケア経験のある看護師14名に面接前に,自壊創を有する患者のケア場面を想起してインタビューに臨めるように調査用紙に記述を依頼後,インタビューガイドを用いて半構造化面接を実施し内容を質的帰納的に分析した.結果,がん自壊創を有する患者に関わる看護師の困難感の要素に関する内容は,41コード,15サブカテゴリー,6カテゴリーを抽出した.そして【可視化したがんが人体を破壊していく姿に脅威を受ける】【どうにもならない自壊創の悪臭緩和への限界をつきつけられる】【患者の自尊心を傷つける可能性に恐れをもつ】【自分には到底考えもできない自壊創がもたらす辛さを思うと胸が締め付けられる】【自壊創から逃れようとする患者の心理状況に踏み込めない】【精神的苦痛に直結する創処置ゆえに失敗できないという重圧感がともなう】という6つのカテゴリーを抽出した.

    これらの困難感の要素の特徴として,人体を破壊する自壊創への脅威は,看護師にとって衝撃的で脅威になるという困難感の要素を示していた.そして,看護師はこのような自壊創から必死に逃れ生きたいと願う患者を自分の言動で傷つけてしまう恐れをもち,自壊創に囚われた患者の日常を救い出したいと思うが専門性が求められ対応できない苦悩が困難感の要素として示唆された.

  • 水流添 秀行, 小野 智子, 増島 麻里子
    原稿種別: 原著
    2023 年 37 巻 論文ID: 37_166_tsuruzoe
    発行日: 2023/10/11
    公開日: 2023/10/11
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,永久的消化管ストーマを造設するがん患者の就労に関わる体験をストーマ造設前から就労再開後までの時期ごとに明らかにし,それぞれの時期に適した就労に関わる看護支援方法を検討することである.

    対象者からのインタビューを質的記述的に分析し,ストーマ造設前,就労再開前,就労再開後の各時期のコード,サブカテゴリ―,カテゴリーを抽出した.

    永久的消化管ストーマを造設するがん患者の就労に関わる体験について,ストーマ造設前は【がんやストーマへのイメージや価値観で就労継続を判断する】など5カテゴリー,就労再開前は,【現状から就労再開を判断する】,【がん治療やストーマが就労に及ぼす影響を想像できず不安になる】など7カテゴリー,就労再開後は【便漏れや便臭への懸念で就労中常に不安や緊張感がある】など7カテゴリーが得られた.また,全期間で仕事関係者へ迷惑をかけないよう配慮しながらがん治療を行う体験,その時々で仕事関係者へ自身のがんやストーマについて伝える体験,仕事関係者などから就労再開に関して支援を受ける体験が得られた.

    このことから永久的消化管ストーマを造設する就労中のがん患者に対し,就労再開前はがん治療やストーマが就労に及ぼす影響をイメージできるような情報提供支援,就労再開前は就労中のがん治療の副作用やストーマ管理のセルフケア確立の支援,就労再開後は就労中の便漏れや便臭に対する不安や緊張感を軽減する支援などが必要と考える.

  • 三堀 いずみ, 林 ゑり子, 菅野 雄介, 玉井 奈緒, 渡邉 眞理, 赤瀬 智子
    原稿種別: 原著
    2023 年 37 巻 論文ID: 37_177_mitsuhori
    発行日: 2023/10/12
    公開日: 2023/10/12
    ジャーナル フリー

    目的:がん相談支援センターのがん看護専門看護師が行う,治療中止と同時に療養の場を選択する進行がん患者とその家族への相談支援の実際を明らかにすることである.

    方法:専門看護師経験年数が5年以上,かつ,相談支援経験年数が1年以上のがん看護専門看護師10名を対象とした半構造化面接を行い,データを質的に分析した.

    結果:がん看護専門看護師による相談支援の実際は,【がん治療中止に対する患者と家族の複雑な思いや本心を推察する】【病態やADLから今後起こりうる症状と残り時間を予測する】【患者・家族に合わせて現状への理解を助ける】【患者を取り巻く関係者の相違を埋める】【思いを受けとめ,情報提供よりも心理的安寧を優先させる】【患者の生き方や力を尊重し,これからの過ごし方について意向を確認する】【患者・家族への相談支援の効果とチーム医療の最大限の機能の発揮を常に考慮して,方略を立てる】【がん看護専門看護師としての信念や倫理的価値観を基盤とし,患者・家族への支援につなげる】であった.

    考察および結論:がん看護専門看護師は,がん患者が予後に直面することを助け,残り時間を予測しつつ,今後の過ごし方への意思決定支援を行っていた.患者と家族の最善なQOLを根幹とし,患者の納得感とともに残りの人生を歩む支援として,患者の意思決定を尊重した最終的な療養支援体制の調整が示唆された.

  • 小田 真理子, 国府 浩子
    原稿種別: 原著
    2023 年 37 巻 論文ID: 37_194_oda
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2023/10/24
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,死を意識した終末期がん患者へのがん看護専門看護師の意図的な関わりの内容を明らかにすることである.

    がん看護専門看護師10名へ半構造化面接を実施し,得られたデータを質的帰納的に分析した.その結果,死を意識した終末期がん患者へのがん看護専門看護師の意図的な関わりとして,【患者のなかに身を投じる】【常にぶれない覚悟で対峙する】【意識を研ぎ澄まして患者のメッセージを感受する】【患者の終焉までの道のりを伴走する】【患者の大切なものを守り抜く】【患者が自らの力で踏み出していけるように導く】【患者を支える人と力を強固にする】【基盤となるケアを提供する】が導き出された.

    がん看護専門看護師の関わりの特徴は,①死を意識した患者のなかに身を投じつつも常にぶれない姿勢と覚悟,②終焉までの道のりの伴走者としての役割の自覚,③その人らしい人生の完成へと導くサポート,④基盤となるケアの上に築かれる関わりであるととらえられた.

    また,最期まで患者に関わり続けることができる看護師を育成するためには,がん看護専門看護師による教育を受ける機会や周囲のサポート体制の整備と強化が必要であることが示唆された.

  • 森下 純子, 井上 智子
    原稿種別: 原著
    2023 年 37 巻 論文ID: 37_213_morishita
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,根治的治療の適応外となりがん薬物療法を受ける進行性肝胆膵がん患者の治療・療養過程における体験を明らかにし,看護支援の示唆を得ることである.首都圏大学病院の腫瘍内科に通院する原発性肝胆膵がん患者で,根治的治療の適応外と診断されがん薬物療法を受けている18名を対象に面接調査を実施し,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.

    分析の結果,31カテゴリから5コアカテゴリのただならぬ事態に巻き込まれる,病名のみに留まらない多重告知を受ける,傷つきながら治療の場を探す,化学療法という足元の小さな光を頼りに歩き続ける,生死の境に在ることを痛感するが生成され,患者が苛酷ながん告知を受けることや,確定診断や納得のできる治療法を探すなかで医療者の支援を求めないこと,治療効果の起伏が出現した際に深い苦悩をいだくことが示された.また,治療・療養過程は,時間の経過にともない‘がんが発覚するまでの時期’‘診断・告知が行われる時期’‘治療法を模索する時期’‘受療する時期’‘治療に変化が生じる時期’に分けられ,それぞれ5コアカテゴリと対応していた.

    看護支援として,患者が的確な診断を受け,速やかに治療に移行できる体制づくりが必要である.また,微細な変化を含む良くない兆候が出現し始めた際に,患者の思いを傾聴し治療継続のための支援を行うとともに,突然の治療終了とならないよう積極的な関与が求められる.

  • 渡部 香名映, 石井 智美, 藤田 友有子, 小嶌 愛璃
    原稿種別: 原著
    2023 年 37 巻 論文ID: 37_236_watanabe
    発行日: 2023/12/05
    公開日: 2023/12/05
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,乳がんを罹患し,乳房切除となった女性が乳輪乳頭再建を行った体験の過程を明らかにすることである.乳輪乳頭再建を受けた7名に半構成的面接を行い,質的記述的に分析した.乳がんを罹患し乳房切除となった女性が乳輪乳頭再建を行った体験の過程について【乳輪乳頭再建によって再構成される乳がん女性のアイデンティティ】というコアカテゴリーが抽出された.乳輪乳頭再建を行った者は,乳がんを罹患し,《病期が初期にもかかわらず乳房切除となることに落胆》するが《再発,転移を防ぐために乳房全摘を決断》していた.しかし《あるものがない喪失感と違和感》があり,銭湯や趣味の場で《胸を見せられない》と〈今の自分ではやっていけない〉感覚となっていた.そして〈自己の模索と方向づけ〉を行っていた.乳輪乳頭再建を行った者は,《乳輪乳頭があっての胸》という価値観があり,《乳がん治療の身体的,精神的,経済的負担感の少なさによる後押し》もあり《習慣,社会生活の継続によって自己を維持する》ために,また《女としての自己を修復する》ために乳輪乳頭再建を行っていた.乳輪乳頭再建後は,《乳房全摘のきずあとが気にならず》,《遠目で見ると自然な胸》で,《日常生活行動に支障がなかった》.それにより《他人の目を意識しない》,《胸を失ったことを意識しない》,また《がんに罹患したことを意識しない》で日常生活を過ごすことができていた.

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資料
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