日本がん看護学会誌
Online ISSN : 2189-7565
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34 巻
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原著
  • 高橋 朋子, 小松 浩子
    原稿種別: 原著
    2020 年 34 巻 論文ID: 34_takahashi_20200127
    発行日: 2020/01/27
    公開日: 2020/01/27
    ジャーナル フリー

    目的:がん患者の視点で看護ケアの質を評価する質問紙Oncology Patients’ Perceptions of the Quality of Nursing Care Scale Short Form(以下,OPPQNCS-SF)の日本語版を開発する.

    方法:2名の翻訳者(内1名は医療職)が,原版OPPQNCS-SFを日本語に翻訳した.日本語訳したものをプレテストとして身の回りのがん体験者に実施後,関東圏内にあるがん専門病院の消化器外科で入院治療を受ける患者93名に質問紙を配布した.信頼性は一貫性と再現性の観点から,妥当性は内容妥当性・収束妥当性・因子妥当性の観点から検証した.

    結果:89名より質問紙を回収した.Cronbach’s α係数は,日本語版OPPQNCS-SF全体で0.94であった.再現性は3項目を除いた14項目で,0.6以上の値をとった.また,日本語版OPPQNCS-SFは,入院患者の満足度を評価するHospital Patient Satisfaction Questionnaire-13(HPSQ-13)の下位尺度コミュニケーションとで0.7以上の高い相関がみられた.日本語版OPPQNCS-SFは,原版と違い1因子構造となった.

    結論:上記よりいくつかの研究の限界はあるが,日本語版OPPQNCS-SFの信頼性・妥当性は証明された.

  • 今井 洋子, 神田 清子
    原稿種別: 原著
    2020 年 34 巻 論文ID: 34_imai_20200325
    発行日: 2020/03/25
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,最後の標準治療を医師から伝えられた再発・進行がん患者の揺らぎから自己決定に至るプロセスを明らかにし,有効な看護支援について検討することである.

    外来化学療法を受けている患者14名に半構造化面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて質的記述的に分析した.その結果,最後の標準治療を伝えられた再発・進行がん患者の揺らぎから自己決定に至るプロセスは,〔医師からがんの進行を告げられ,治療変更の説明を受ける〕ことから始まり,【身体感覚と説明の違いによる混乱と葛藤】を体験する.〔今までの治療継続〕をしながら,『暗闇の迷路をさまよう』中でさまざまな思いを巡らせる.〈気持ちが行ったり来たりする〉ことを経て,〈治療過程への自己のかかわりを内省する〉ことが転換点となり〈感情が堰を切ってあふれ出す〉.これを機に,揺らぎから抜け出し【最後の治療という現実との対峙】から自己決定に至っていた.

    看護支援は,患者が揺らぐことは折り合いをつけていくための第一歩であると認識することから始まる.そして,看護師は患者の語りに耳を傾け,真摯に受けとめながら患者の内省を促し,十分な感情の表出ができるよう環境を整える必要がある.加えて,患者と家族などの重要他者の関係性を強めるための支援や,ピアサポーターなどによる社会的支援システムの構築が重要である.

  • 板東 孝枝, 雄西 智惠美, 今井 芳枝
    原稿種別: 原著
    2020 年 34 巻 論文ID: 34_bando_20200603
    発行日: 2020/06/03
    公開日: 2020/06/03
    ジャーナル フリー

    術後回復過程にある肺がん患者のHopeの体験が明らかになることは,初期治療段階における患者の心的エネルギーを維持・高める支援へとつながり,生命の質や長さにも影響する重要な援助の視点となることが期待できる.そこで本研究では,肺がん患者への対象理解を深め,身体的心理的回復に向けた支援の手がかりを得るために,術後回復過程にある肺がん患者のHopeの体験を記述することを目的とする.肺がん手術療法後の回復過程にある肺がん患者を対象とし,半構造化面接による質的記述的研究を行った.その結果,23名の研究参加者のHopeの体験として,【肺がんでも手術ができた】【手術をしてももとの生活ができる】【残された肺とともに生きる】【がんに負けず前向きに生きたい】【今ある症状はそのうち治る】【大切な存在に頑張りを示したい】【手放しで喜べない現実を生きる】の7つのカテゴリーが導き出された.肺がん患者にとって手術ができるということは,がんの治癒や自分の生への可能性が断たれることなく続いていくことと捉えられ,根治的治療としてのイメージが強い手術治療ができたという認識が,患者自身の生命の存続の可能性につながっていた.そして回復の実感と回復に向けた自助努力により患者のHopeに繋がっていることが示唆された.

  • 稲垣 朱美
    原稿種別: 原著
    2020 年 34 巻 論文ID: 34_inagaki_20200612
    発行日: 2020/06/05
    公開日: 2020/06/12
    ジャーナル フリー

    目的:婦人科がんと診断され治療を受ける患者の情報支援における示唆を得るために,婦人科がん患者が必要とした情報の治療時期での違いと影響要因を明らかにする.

    方法:A婦人科がん患者会に所属する婦人科がん患者に,郵送無記名自記式質問紙調査を実施した.調査項目は先行研究から21項目とした.婦人科がん患者が必要とした情報の診断時,治療中,治療後の治療時期での違いと影響要因について統計学的に分析をした.

    結果・考察:調査票は209名に発送,回収数115件(55.0%),有効回答数111件(96.5%)であった.婦人科がん患者が必要とした情報21項目中,「精神面への支援」を除く20項目で治療時期での違いがあった.婦人科がん患者は,診断時は治療法や経済面に関する情報を,治療中は治療による合併症や副作用に関する情報を,治療後はセルフケアや再発に関する情報を必要としていた.「精神面への支援」は治療時期を通して9割が必要とし,診断時からの継続的な支援の必要があると考えられた.また,若年齢患者は,すべての治療時期でセクシュアリティに関する情報を必要とし,さらに挙児希望のあった若年齢患者では「診断時」に特に必要としていた.そのため,婦人科がん患者の年齢,挙児希望の有無を考慮した情報支援の必要がある.

    結論:1. 婦人科がん患者が必要とした情報は,治療時期で違いがあった.

    2. セクシュアリティに関する情報の必要度は,婦人科がん患者の診断時年齢で差がみられた.

  • 久保 知, 西脇 可織
    原稿種別: 原著
    2020 年 34 巻 論文ID: 34_kubo_20200617
    発行日: 2020/06/17
    公開日: 2020/06/17
    ジャーナル フリー

    目的:骨盤領域に放射線療法を受けた女性患者のセクシュアリティに関わる体験と対処行動を明らかにすることである.

    方法:子宮頸がん6名,肛門がん3名の9名の女性がん患者に対し,セクシュアリティに関わる生活上での体験と対処行動について,半構造化面接を行い,質的帰納的に分析した.

    結果:骨盤領域に放射線療法を受けた女性がん患者のセクシュアリティに関わる体験は【治療中から数年に渡り,膣,腸,膀胱の粘膜障害による苦痛がある】【下半身が治療によって変わってしまい治療後の裸は見られたくない】【治療後は膣の痛みや出血のため性交渉をしたいという気持ちにならない】【子供が産めない身体になったのだと自覚する】などの6カテゴリーが抽出された.この体験に対し,【治療中から治療後,照射部位のケア方法の指導を受けて放射線の影響を最小限にする】【陰毛の脱毛やお尻やお腹が黒くなるのは仕方がないと思うようにする】【役目を果たすために自分の身体より家族のことを優先する】などの5カテゴリーの対処行動が抽出された.

    考察:照射による有害事象が骨盤領域に放射線療法を受けた女性がん患者のボディイメージや周囲の人々との関係性に影響を与えていた.看護師は,外観からは分かりにくい患者の体験を理解し,有害事象の出現時期に応じた情報提供とセルフケアを支援する重要性が示唆された.

  • 本山 清美, 新開 由紀, 生山 笑, 遠藤 久美
    原稿種別: 原著
    2020 年 34 巻 論文ID: 34_motoyama_20200717
    発行日: 2020/07/17
    公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー

    研究目的は,外来の診断・治療方針決定時期にがん患者指導管理料2を算定し支援を開始した患者の不安の変化を明らかにすることである.

    対象は診断・治療方針決定時期に支援を開始し,支援開始時・支援中・支援終了時にSTAS-J(以下SJ)を評価した患者である.後方視的に,①患者属性データ②患者と家族の状況③SJの点数④SJの点数変化の影響要因を診療記録から取得した.

    分析はSJの全項目を単純集計し,「患者の不安」の支援開始時と終了時の点数変化に対して,Wilcoxonの符号順位和検定およびFisherのexact検定(有意水準5%)を用い検定を行った.また,SJの変化を視覚化し影響要因を質的に分析した.

    対象は62名(男11:女51)で,平均年齢は55.9歳(31-76)だった.SJが低下したものは85.5%で,支援開始時と終了時の点数に有意差があった(p値<0.001).患者の属性間で有意差はなかった.SJの変化には4つのパターンが観察され,点数が1度も上がらずに下がるパターンが64.5%にみられ,治療の意思決定ができることや治療の開始が点数の低下に多くつながっていた.

    診断・治療方針決定時期は,病状や治療に関する不安が多く,家族の不安もみられるため,患者と家族の不安に対する支援と治療の意思決定支援を確実に行う必要性が明らかになった.また,不安の状況を見極め,早期に専門職種の支援を調整する必要性が示唆された.

  • 沖田 翔平, 大桑 麻由美, 須釜 淳子
    原稿種別: 原著
    2020 年 34 巻 論文ID: 34_okita_20200721
    発行日: 2020/07/21
    公開日: 2020/07/21
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,頭頸部がんへの化学放射線療法中患者が誤嚥性肺炎発症に至るまでのプロセスを明らかにすることである.37名の診療録および看護記録から,治療,治療に関連した身体症状および看護ケアについてデータ収集を行った.それらを質的記述的に分析し,誤嚥性肺炎発症群と非発症群ごとにカテゴリー関連図を作成し誤嚥性肺炎発症に至るまでの特徴を見い出した.

    誤嚥性肺炎発症群,非発症群ともに〈軟口蓋部,舌辺縁部の口腔粘膜有害事象〉の進行から〈疼痛症状の進行による鎮痛剤の使用〉〈疼痛症状の進行による医療用麻薬の使用〉というプロセスがあった.発症群の特徴として〈疼痛緩和困難による医療用麻薬の重ねての増量〉から〈せん妄発症による意識レベルの低下への対処〉と〈筋弛緩作用薬の使用〉というプロセスがあった.

    以上より,医療用麻薬の使用へ移行する前段階での疼痛コントロールについて重点的に取り組んでいくことが,せん妄の発症予防となり,誤嚥性肺炎発症予防につながると示唆された.

  • 野川 道子, 西 光代, 髙木 由希, 伊藤 加奈子, 江口 恵子
    原稿種別: 原著
    2020 年 34 巻 論文ID: 34_nogawa_20200807
    発行日: 2020/08/07
    公開日: 2020/08/07
    ジャーナル フリー

    目的:初発乳がん患者が認知する不確かさと適応,QOLとの関係を共分散構造分析により明らかにすることを目的とした.

    方法:初発乳がん患者147名を対象に質問紙調査を実施した.不確かさは「療養の場を問わず使用できる病気の不確かさ尺度:UUIS」,適応はPOMS-TMD,QOLはQLI-CVで測定した.Mishelの不確かさ認知モデルを参考に,先行要因の影響を受けて認知された不確かさが,適応とQOLに影響を及ぼすことを示すモデルを作成し,共分散構造分析で検討した.

    結果:対象者は全員が女性,平均年齢は52.6(SD = 9.9)歳であった.選択されたモデルは,先行要因(痛み,医師・看護師に相談の程度,教育年数)の影響を受けて認知された不確かさが,適応とQOLに影響を及ぼすとともに,不確かさは適応を介してQOLに影響を及ぼすことを示していた(GFI = .967,AGFI = .924,CFI = .968,RMSEA = .066).

    看護実践への示唆:乳がんは再発,転移のリスクを否定できない疾患であることから,患者の不確かさは生涯続くと言われている.選択されたモデルは,不確かさが適応を妨げ,QOLを低下させるが,看護師の支援は不確かさを軽減させることを示している.

    乳がん患者が不確かさを管理し,QOLを維持するうえで,看護師の継続的支援が不可欠である.

  • 河村 奈緒, 楠 潤子, 増島 麻里子
    原稿種別: 原著
    2020 年 34 巻 論文ID: 34_115_kawamura
    発行日: 2020/08/21
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,外来でがん薬物療法を継続する終末期がん患者の家族の体験を明らかにし,がん患者とともに生活する家族を支援するために必要な看護への示唆を得ることである. 対象者8名に,半構造化面接調査を行い,得られたデータを質的帰納的に分析した.その結果,外来でがん薬物療法を継続する終末期がん患者の家族の体験として,1)がん薬物療法の効果に懸ける強い思い,2)終末期がん患者の心身に注意を払いながら,患者の病状の改善を目指す家族の取り組み,3)終末期がん患者の療養選択の不確かさとがんの進行の懸念,4)終末期がん患者の療養を支えるための生活の調整と負担,5)延命への期待と近い将来患者に死が訪れる現実との葛藤,6)終末期がん患者とその家族が互いに支え合いながら得た経験の肯定の6つのテーマが明示された. 結果より,外来がん薬物療法を継続する終末期がん患者の家族に対するおもな看護支援として,1.終末期がん患者にがん薬物療法を継続しながら少しでも長く生き続けて欲しい家族の思いを理解し,限りある時間のなかで家族ができることを患者に尽くしたと思えるように促す,2.外来でがん薬物療法中の家族の待ち時間を有効利用し,家族が容易に医療者に相談できる環境をつくる,3.家族の心身の健康の維持を促す,4.がん薬物療法を継続しながらも患者の死が現実味を帯びて葛藤する家族の思いを汲み取り心持ちを支えることが重要であると考えた.

  • 瀧澤 理穂, 牧野 智恵
    原稿種別: 原著
    2020 年 34 巻 論文ID: 34_126_takizawa
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/09/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,子どもに自分の病名を伝えることに悩む乳がん患者と研者が,M.Newman理論に基づいたパートナーとなり対話を行ったならば,患者がどのような方向性を見出していくのかその体験を明らかとすることである.研究参加者は子育て中の乳がん患者7名であり,研究者は解釈学的弁証法的アプローチに基づいた対話を行った.その結果,参加者は自分のパターンを認識し,新しい方向性を見出していく5つの局面を辿ることが明らかになった.参加者は,まず【乳がん罹患に伴い生じた子どもへの伝え方の悩みの表出】【自己のパターンの認識】【ともに悩んでくれる存在の知覚と新たな対処方法の模索】をしながら,【子どもの立場から伝えることの是非を自問し,意思を表明】し,そして【がんサバイバーとしての生き方の認識の変容】へと意識の拡張がみられた.対話を通して,子どもに自分の病名を伝えることに悩む患者は,子どもに病名を伝えることに関する悩みを自らの力で乗り越え,さらにはがんサバイバーとしての生き方そのものの意味を見出していくことが明らかとなった.

  • 松井 利江, 片岡 純, 布谷 麻耶
    原稿種別: 原著
    2020 年 34 巻 論文ID: 34_136_matsui
    発行日: 2020/09/24
    公開日: 2020/09/24
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,繰り返し化学療法を受ける婦人科がん患者の配偶者が体験する対処のプロセスを明らかにすることである.2クール以上の化学療法を受けている子宮がん,卵巣がん患者の配偶者10名を対象に半構成的面接を行い,得られたデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの手法を用いて分析した.

    その結果,24の概念が生成され,6つのカテゴリーに集約された.配偶者は,妻の気持ちに添いたくても異性である自分には難しく,【妻の苦しみを前に自分の気持ちを抑え込む】ようにしながら,妻を支え続けていた.ファーストラインの化学療法時は【先を見通す術を探す】ことをしながら,【自分ひとりで妻を守る】ように尽力するが,次第に【共倒れしない術を模索する】ようになっていた.セカンドラインの化学療法時には【妻の治療継続を支える】一方で,治療が不可能になる日が近いことも認識し,【治療の限界を意識しながら夫婦で生きていく】ことが明らかになった.

    看護師は,治療の時期や男性ゆえに生じる困難を理解し,ともに解決する姿勢を示すとともに,配偶者の努力を承認するといった情緒的支援の重要性が示唆された.

  • 岩本 真紀, 萱原 沙織, 渡邉 美奈, 藤田 佐和
    原稿種別: 原著
    2020 年 34 巻 論文ID: 34_145_iwamoto
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,再発・転移を経験したがんサバイバーがストレングスを発揮して生きるプロセスを明らかにすることである.再発や転移を告げられ,治療を受けているがんサバイバー14名を対象に,半構成的面接を実施し修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.

    再発・転移を経験したがんサバイバーがストレングスを発揮して生きるプロセスは,『不確かさに伴う苦悩を断ち切る』とともに『限りある自分の人生を大切に生きる』プロセスであった.

    がんに伴う苦悩】のなか,がんサバイバーは【生を信じる気持ち】を拠り所に,【生き抜くための努力】をすることによって,〈ベストを尽くしているという自負〉を抱いていた.この自負と【がん脅威に対する抵抗力】【前に向かう強み】を発揮することにより,意識的に〈がんにとらわれない心がけ〉をし,『不確かさに伴う苦悩を断ち切る』ように努めていた.さらに,【がんに伴う苦悩】のなかでも,がんサバイバーは〈残された人生の推測〉により,今を大切に生きる〈後悔のない生き方志向〉になっていた.〈後悔のない生き方志向〉と【自分の生活を守る力】を発揮することで〈現在できることの見定め〉をし,〈叶えられる望みの創出〉により【再認識した自分らしさ】を感じていた.この自分らしさに支えられ,〈これでよいと思える生活〉を送るようになり,『限りある自分の人生を大切に生きる』ことに至っていた.

  • 長久 栄子
    原稿種別: 原著
    2020 年 34 巻 論文ID: 34_155_nagahisa
    発行日: 2020/11/19
    公開日: 2020/11/19
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,せん妄患者とのコミュニケーションを阻害する要因を明らかにすることにより,看護の力によるせん妄ケアを探求することにある.せん妄患者への応対場面の看護記録を看護師と患者の体験の記述として,記述現象学による分析を行い,その体験の意味を明らかにした.せん妄ケアに難渋した看護師の意識は安全管理責任に媒介され,せん妄症状とその対処に意識が向けられ,その結果,せん妄患者が“もの”として現れていた.せん妄症状に対処しようとすることは,患者その“人”ではなく,症状や言動を管理しようとすることであり,これらがせん妄患者とのコミュニケーションを阻害する要因であった.一方,看護師がせん妄患者の苦しみに意識を向け,その語りを促すというケアを実践することにより患者は落ち着き,その結果,薬を使わずに眠ることができた.せん妄患者の体験は,時間や場所,他者も自己の存在も不明になるという苦しみの体験であり,看護師が患者の苦しみに意識を向け,その語りを促し聴くことが,せん妄状態にある患者にとって安心と落ち着きを取り戻すケアとなった.がん医療の現場において,予測や予防,薬剤投与や身体抑制ではない「看護の力」によるせん妄ケアが示唆された.

  • 今方 裕子, 牧野 智恵, 北山 幸枝, 我妻 孝則
    原稿種別: 原著
    2020 年 34 巻 論文ID: 34_165_imakata
    発行日: 2020/11/20
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,抗EGFR抗体薬であるセツキシマブによる化学療法を投与中の患者に看護師によるスキンケア指導を行うことで,皮膚障害の程度,角質水分量,QOL,セルフケア状況にはどのような影響があるのかを明らかにすることである.

    対象者は外来化学療法に通院中で抗EGFR抗体薬を使用している大腸がんまたは頭頸部がんの患者10名(通常のケアを提供するグループ4名,スキンケア指導を行うグループ6名).患者選定は疾患,性別が偏らないよう受付順に「通常のケアを提供するグループ」「スキンケア指導を行うグループ」となるように振り分けた.「スキンケア指導を行うグループ」には研究者が作成したスキンケア日誌をもとにスキンケア指導を行い,EQ-5D,モイスチャーチェッカー,CTCAEでの評価に加えて,セルフケア行動の特徴と遂行上の思いについて半構成的面接を行った.

    結果,角質水分量上昇,ステロイド使用者の皮膚症状(CTCAE)の改善がみられ,面接内容からもセルフケア意欲の向上がみられた.抗EGFR抗体薬投与中患者への看護指導は,角質水分量と皮膚症状の改善,セルフケア意欲の向上に影響していることが示唆された.

  • 小澤 全子, 有田 広美
    原稿種別: 原著
    2020 年 34 巻 論文ID: 34_180_ozawa
    発行日: 2020/11/27
    公開日: 2020/11/27
    ジャーナル フリー

    外来で化学療法を受けているがん患者の副作用の苦痛などに関する報告がされている中,患者は試行錯誤し治療前の生活に戻そうと努力している. 本研究の目的は,外来化学療法中のPerformance Status 0~1の患者が,次回の治療までの間にどのような行動調整をしたのか,またそれにともなう思いを明らかにすることである.再発・転移がなく,治療回数が 2コース 以上で治療開始半年以内の患者11名を対象に半構成的面接を行い,質的帰納的分析を行った.その結果,行動調整として【副作用がくる・抜けた・動けるという独自の身体感覚をもつ】【副作用の苦痛を緩和するための方略を探る】【過去の治療経験から見通しを立てる】【体調を整えることを優先して判断する】【家族を心配させないように生活を制限する】のカテゴリーが抽出された.また,行動調整にともなう思いとして【副作用の対処方法が分からない】【家族に家事を代行させる申し訳なさを感じる】【今は生きるために治療を完遂させる】【家族・友人・職場に支えられている】【健康時より縮小された生活でも満足している】【再発の不安がつきまとう】のカテゴリーが抽出された.

総説
研修報告
資料
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