日本がん看護学会誌
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8 巻, 1 号
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研究
  • 真田 弘美, 土本 千春, 永川 宅和, 山本 浩子, 早苗 智子, 山上 和美
    1994 年 8 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 1994年
    公開日: 2017/04/26
    ジャーナル フリー

    要 旨

    近年,膵臓がんは増加傾向にあり,その根治術として膵頭十二指腸切除(以下PD術)が施行されているが,生存率は低く術後の生活管理が難しいといわれている.そこで,患者の価値・満足度からみたQOLと客観的なQOLの関係と,それに影響を及ぼす要因を知るために,フィランス・パワーズの生活満足度指標,Performance Statusの2種類の既存のスケールと,私達が作成した術後生活調査質問用紙を用いて,訪問による面接調査を行った.その結果,QOLは術式間で有意差はなく,患者自身の主観的な評価と医療者側の客観的な評価は一致しなかった.また,QOLに影響を及ぼす要因として,下痢の有無・外出の可否・年齢・食事作りの負担・配偶者の有無・がんの認識の順であげられた.

    今回の研究より,PD術後患者は機能障害を残したとしても主観的なQOLは高く,それを左右する要因は家族のサポートに起因するものが多かった.

  • 岡本 直幸, 矢野 久美子, 長場 直子, 稲本 ゆかり, 渡邉 真理, 小野寺 綾子
    1994 年 8 巻 1 号 p. 42-50
    発行日: 1994年
    公開日: 2017/04/26
    ジャーナル フリー

    要 旨

    神奈川県立がんセンターにおいて,ターミナル期のがん患者に対する「在宅ケア」導入の可能性と問題点を把握する目的のために,退院時に継続看護依頼がなされたがん患者57人の資料を解析した.継続看護が依頼された患者は性,年齢階級,腫瘍部位に関して,全退院患者と大きな相違はなかった.結果は以下のようであった.

    1.ADLに関して,排泄,入浴,更衣,移動において全面介助か必要であった患者は30~50%であった.

    2.食事に関しては,全面介助が必要と判断された患者は約10%と低かった.

    3.患者のうち,17.5%は独居者であった.

    4.継続看護の依頼内容では,介護者不在や風呂,階段,トイレなどの構造上の問題による依頼がもっとも多かった (89.5%).

    5.医療援助としては,バルン・ストマ・IVH・在宅酸素の管理がそれぞれ5~10%であった.

    6.Coxの比例ハザードモデルにより予後因子として抽出された項目は,高血圧歴なし,転移あり,手術歴なし,疼痛コントロールあり,IVH管理あり,在宅酸素管理あり,高年齢がいずれも死亡との関連性が強かった

    以上の結果から,がん患者の「在宅ケア」には介護者の確保や自宅構造の改善の必要性とともに,臨床の医師や看護婦の参加の必要性が考えられた.とくに,がん医療の専門施設としては,臨床の医師・看護婦の訪問が不可欠であると思われる.今後は,がん患者に対する「在宅ケア」の有効性を評価するための指標やがん患者,介護者のQOL評価の指標の開発が必要であり,がんの部位別に「在宅ケア」の手法を開発する必要があろう.

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