漁業を巡る大きな問題のひとつに,漁獲物の産地価格低迷があり,近年では産地価格上昇のために地産地消の動きがある。確かに,漁協及び漁業者が自らの経営管理能力を高めて顧客志向の生産・販売活動を目指そうとする場合,市場・消費者情報入手の容易性および販売促進策の費用対効果からみて,多くの産地においては大消費地の市場を開拓する広域流通を漁業関係者が始めるよりも,地産地消の拡大を目指す地域流通改革から始めるほうが現実的であると思われる。本シンポジウムでは地域資源価値実現の成功条件という視点から「水産物の地産地消を支える地域流通」について検討を行う。
地域流通には,広域流通のシステムとは異なった,以下のような特性があるので地域資源の価値実現を達成するためにはそれらを活かしたシステムを構築することが必要である。
①漁獲から消費まで丸一日程度で流通が完了する可能性があり,高鮮度・高品質を活かした消費形態が可能である。
②地域独自の文化的特質のために水産物の消費形態が他地域とは異なり,それに対応した地域流通(加工)システムが構築される場合もある。
③地域特性を活かした流通システムによって独自の商品・サービスを消費できることは地元在住の者だけでなく観光客にとってもメリットがある。
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