地域漁業研究
Online ISSN : 2435-712X
Print ISSN : 1342-7857
48 巻, 3 号
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論文
  • 佐久間 美明
    2008 年 48 巻 3 号 p. 1-11
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2020/12/04
    ジャーナル オープンアクセス

    漁業を巡る大きな問題のひとつに,漁獲物の産地価格低迷があり,近年では産地価格上昇のために地産地消の動きがある。確かに,漁協及び漁業者が自らの経営管理能力を高めて顧客志向の生産・販売活動を目指そうとする場合,市場・消費者情報入手の容易性および販売促進策の費用対効果からみて,多くの産地においては大消費地の市場を開拓する広域流通を漁業関係者が始めるよりも,地産地消の拡大を目指す地域流通改革から始めるほうが現実的であると思われる。本シンポジウムでは地域資源価値実現の成功条件という視点から「水産物の地産地消を支える地域流通」について検討を行う。

    地域流通には,広域流通のシステムとは異なった,以下のような特性があるので地域資源の価値実現を達成するためにはそれらを活かしたシステムを構築することが必要である。

    ①漁獲から消費まで丸一日程度で流通が完了する可能性があり,高鮮度・高品質を活かした消費形態が可能である。

    ②地域独自の文化的特質のために水産物の消費形態が他地域とは異なり,それに対応した地域流通(加工)システムが構築される場合もある。

    ③地域特性を活かした流通システムによって独自の商品・サービスを消費できることは地元在住の者だけでなく観光客にとってもメリットがある。

  • 冷凍スリ身原料不足への対応としての地産魚活用の課題
    辻 雅司
    2008 年 48 巻 3 号 p. 13-30
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2020/12/04
    ジャーナル オープンアクセス

    水産ねり製品は,地域の伝統食品として古くから,地産の魚介類を原料に蒲鉾などの水産ねり製品を製造,販売し,ブランドを継承している。

    しかしながら,高度経済成長期における水産ねり製品業は,地産の原料の減少などから,地産の魚介類の原料使用は大きく減少し,これに代わって輸入の冷凍魚や冷凍スリ身に依存した生産となっている。

    人口問題や各国での経済発展に伴う水産物需要に高まりから,食料の自給を高める地産地消型の食料供給が見直されている。こうした中で地産原料の実際はどうようになっているかを代表的な水産ねり製品の産地を取り上げ,明らかにすることを課題とした。

  • 愛知県豊浜町の「魚ひろば」と一色町の「さかな村」を事例として
    常 清秀
    2008 年 48 巻 3 号 p. 31-50
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2020/12/04
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,地域の活性化に繋がると思われる地域流通が重要視されつつある。しかし,地域の水産物流通の担い手である鮮魚小売店は,70年代以降のスーパー進出によって,店舗の数が大きく減少した。しかし,他方では,さまざまな経営の対応によって鮮魚小売業が存在している場合もある。こうして生き残った鮮魚小売店は,厳しい競争環境の中で,どのような対応を行ってきたのか。また,経営,業態がどのように変化してきたのかなどに関して,不明な点が多い。自給率の低さ,魚食文化の喪失などが大きな社会問題として注目される今日において,地域食文化の伝承,魚食に関する知識,技能の伝達の担い手としての役割,また,地域流通の担い手としての新たな位置づけにある鮮魚小売店の実態把握が重要な課題となっている。換言すれば,今日,盛んに言われている「地産地消」の新たな視点での地域の鮮魚小売店の見直しである。

    本研究は,地域流通の担い手である鮮魚小売店の展開と,その地域のおかれた社会的・経済的条件,環境に焦点をあて,鮮魚小売店の経営活動の実態把握を通じて,彼らを支える地域的条件,および「地産地消」との関連性について明らかにすることを課題とする。そのため,「地産地消」の実現性が高く,また,地域特性がより顕著に現れる可能性が高いと思われる愛知県南知多町の「魚ひろば」と一色町の「さかな村」を研究対象とする。

  • 中村 周作
    2008 年 48 巻 3 号 p. 51-67
    発行日: 2008/06/01
    公開日: 2020/12/04
    ジャーナル オープンアクセス

    この研究の目的は,宮崎県域にみられる伝統的な魚介類料理の展開と,それらの立地要因を解明すること,合わせて,そういった魚介類料理の今日的利用について考察することである。研究の結果は,以下のようにまとめることができる。

    宮崎県域には,合計9タイプの魚介類料理分布パターンがみられた。それは,A:ほぼ県の全域で食べられる料理,B:沿岸の広い地域で食べられる料理,C:沿岸と山間の両方の広い地域で食べられる料理,D:山間の広い地域で食べられる料理,E:その他の広い地域で食べられる料理,F:沿岸の一部地域で食べられる料理,G:沿岸と山間両方の一部の地域で食べられる料理,H:山間の一部地域で食べられる料理,I:その他の狭い地域で食べられる料理であった。

    地域振興のために伝統的な食文化を利用するには,伝統色を見直して今風にアレンジし,外に向かってアピールすることが重要である。

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