土木学会論文集A2(応用力学)
Online ISSN : 2185-4661
ISSN-L : 2185-4661
72 巻, 2 号
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応用力学論文集Vol.19(特集)
  • 西 将吾, 大本 照憲
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_515-I_525
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    高濃度土砂流は浮遊状態で大量のシルトや粘土を含むことから非ニュートン流体特性を示すが,高濃度土砂が十分に発達した開水路粗面乱流に与える影響については十分明らかにされていない.本研究では,二次元角柱粗度を有する開水路流れにおいて高濃度土砂が流れの抵抗およびエネルギー収支に与える影響を実験的に検討した.実験結果から角柱粗度おいて土砂流は清水流に較べて体積土砂濃度がCV <8.5%では抵抗が小さく,逆にCV >8.5%では抵抗が大きくなる.その原因として体積土砂濃度がCV <8.5%では乱れエネルギーの生成項の減少,CV >8.5%では直接的粘性散逸の増大が挙げられた.なお,実験では高濃度土砂流と類似の粘性特性を有するポリアクリル酸ソーダ(PSA)溶液を用い,流速の計測に粒子画像流速計測法(PIV)を適用して,流れ場を清水流との比較を通して詳細に検討した.
  • Jagriti Mishra, Takuya Inoue, Yasuyuki Shimizu
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_527-I_536
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    The scarce knowledge of bedrock channel morphology has limited our understanding of landscape formation. Bedrock channel's morphology is controlled by various factors like sediment properties, climatic conditions, rock strength and local topography. In this study, laboratory scale experiments were conducted to understand the relationship between sediment feed rate and lateral erosion. We also implemented a numerical model and tested it for reproducing the experiments. The numerical model assumes that lateral erosion depends on an abrasion coefficient and transverse bedload transport rate per unit width. The numerical model could successfully trace lateral erosion in bedrock channels. Simulations were also performed to understand the effect of change in sediment supply on banks of bedrock channels. It can be seen from simulation results that sediment supply can be one of the dominating factors in determining the width of bedrock channels.
  • 猿渡 亜由未, 渡部 靖憲, 山田 朋人, 大塚 淳一, 馬場 康之, 水谷 英朗, 久保 輝広, 内山 雄介, 森 信人, 二宮 順一
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_537-I_547
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    海から発生する波飛沫は大気-海洋間の熱,湿度,運動量の輸送量を決定すると共に,海塩粒子となって大気エアロゾルを構成することから,海上気象場に影響を与える重要なファクターの一つとなっている一方,その発生量は様々な要因に影響を受けることから精度良い見積もりが困難である.本研究では波飛沫発生量と気象,海象条件との関係を明らかにすることを最終的な目的とし,和歌山県田辺湾上において大気エアロゾルの粒子数密度の海上現地観測を行った.測定対象の三粒径(0.3, 1.0, 5.0 μm)のうち最も小さい粒子の数密度は観測期間を通して100 km以上のスケールの大気環境に支配され,平常時は波飛沫由来の海塩粒子の影響を多く含まないことが分かった.しかし太平洋側からの強風が卓越する気象イベント時においては何れの粒径の観測結果でも風速に対する単調増加傾向を示すことが確認された.この傾向は白波砕波が発生し始めると言われる海上風速6 ms-1以上の条件で表れ始めていることから,波飛沫由来の海洋性エアロゾル濃度の増加を観測した結果であると考える.
  • 溝口 敦子, 土屋 幸宏, 森 勇輔
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_549-I_556
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    山地河道の階段状河床形状,Step-poolの定義は研究者によって異なり,形成過程等を踏まえた整理が必要と考える.通常のStep-poolは大礫がStepを形成し形状を決めるものであり,長谷川らは横断方向に列をなして礫が集積し落差が少ないTransverse ribsをStep-poolとは区別し定義している.著者らは状況によっては礫の集合体が瀬淵構造またはStep-poolになると考え,まずTransverse ribesに近い状況での礫の集合体形成過程の検討,砂の流出後の表層状態の確認を行う.特に,山地河道における礫の集積形成過程を明確にするため,実験で反砂堆と礫の集合体の形成について調べた.
    まず,礫の集合体形成には遡上反砂堆がかかわる実験例ともに,進行方向で礫の集積の仕方が異なることを示した.そのうえで,砂礫の比率を変えた河床を用いて遡上反砂堆の形成実験を土砂供給をしながら行うことにした.実験では特に各粒径の流送形態がどのように変化するなどを詳細に調べ,混合率によって砂が流出した後の礫の集合体の形成状況が異なることなどを明らかにした.
  • 川中 龍児, 米山 望, 石垣 泰輔
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_557-I_564
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震では津波によって多くの市街地で甚大な被害を受けた.特に沿岸の市街地では多くの車両が流され,構造物への損傷や火災の原因となった.それに加えて,災害の復興復旧の際には,漂流物が道路を塞ぐことで,物資輸送に影響を与えた.このことから,安全な避難場所,復旧復興時の輸送路などを検討する上で,浸水の予測に加えて車両などの漂流物を考慮した被害予測が重要となる.
    本研究では.水災害時の漂流物の挙動を予測するために,2次元平面上での漂流物シミュレーションモデルを開発した.本モデルと実験を比較した結果,漂流開始の流況,複数台の衝突やそれに伴う挙動を良好に再現することが可能である.
  • 井上 卓也, 岩崎 理樹, 音田 慎一郎
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_565-I_574
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    流れの抵抗に影響を及ぼす小規模河床波の発生・発達は,河川工学分野における重要テーマの一つである.本研究では,ブシネスク方程式と非平衡流砂モデルを組み合わせたモデルに対して線形安定解析を行った.また浅水流方程式や平衡流砂モデルを用いた場合の分析も行い,ブシネスク項や流砂の非平衡性が河床波の不安定性と波長へ与える影響を考察した.この結果,ブシネスク方程式のみ,もしくは非平衡流砂モデルのみでは,反砂堆の不安定性を表現できないが,2つを組み合わせることにより,既往の反砂堆実験結果と良好な整合性が得らることが確認された.
  • 大野 紘史, 猿渡 亜由未
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_575-I_582
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    波力発電の実用化に向けた研究が現在数多く行われているが,波力発電事業を本格化する為には環境影響評価が適切に行われる必要がある.環境評価は装置周辺域の波浪変化を予測する事で評価できるが,装置周辺の波浪変形を適切に予測するモデルは現在のところ提案されておらず評価が適切に行われない場合がある.従って,本研究では不規則波浪の変形予測モデルを構築する事を主たる目標としている.本稿では,二次元造波水槽を用いた水理実験によって装置に波が入射する際のエネルギーバランスについて調査し取り纏めた.対象とするのは台風通過等による暴波浪条件に耐性が高く,波エネルギーの高い沖合に設置可能な浮体式振動水柱型(OWC)の発電装置である.
  • 本間 翔希, 猿渡 亜由未, 宮武 誠
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_583-I_591
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    潮流海流発電の適地の一つとして期待されている津軽海峡において,夏秋期に発達する密度成層が流れ場に与える影響について検討するために,本研究では三次元数値流れモデルを用いた数値実験を行った.これによると密度成層の影響により,強風等の気象擾乱に起因する流れ場中の乱れた強化,延長する可能性について示した.また,本研究の対象期間中は密度成層の影響により内部波が発生しやすい条件が整っていたことが確認された.また内部波の振動数解析を行うことにより,流れ場中で発達し得る流れに対する変動周波数について検討した.
  • 河上 将尊, 渡邊 康玄
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_593-I_600
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    平成23年に音更川において発生した出水は,堤防を流失させる被害をもたらした.中規模な出水であったにも関わらず堤防が流失してしまった原因として,出水の継続時間が長かったことにより交互砂州が発達し,流れが横断方向へ偏倚したためと考えられた.そこで本研究では,交互砂州の発生・発達が河岸浸食に及ぼす影響を明確化することを目的とし水理模型実験を実施した.実験の結果,交互砂州の有無や移動の速さにより,河岸浸食の進行状況や浸食形状が変わることが確認され,河岸浸食現象と交互砂州は強い関係があることが分かった.
  • Taeun KANG, Ichiro KIMURA, Yasuyuki SHIMIZU
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_601-I_612
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    In this study, we simulated river flows and morphological changes on a sharp meandering channel, which consists of sand topography, to evaluate the secondary flow effects, the development of point-bar and braided channel with the vegetation effect using a two-dimensional numerical model, iRIC software. In the simulation results, meandering channel with vegetation showed diverse river bed deformations, such as braided channel, sub-meandering channel, mid-channel bars, and a point-bar. In particular, vegetation area is changed by flood events, and then vegetation changes the flow characteristics and river environment.
  • 廣畑 幹人
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_613-I_621
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    鋼橋の腐食減厚や疲労き裂の補修方法として高力ボルトによる当て板接合が適用される場合があるが,溶接が用いられる事例は少ないのが現状である.本研究では,当て板補修に溶接を適用することを念頭に,当て板溶接で生じる残留応力を明らかにするとともに,残留応力に及ぼす継手寸法および拘束の影響について検討した.重ね継手溶接割れ試験を行い,熱弾塑性解析により実験をシミュレーションした結果,下板の長さを変化させても残留応力は変わらなかったが,下板の幅および厚さに応じて残留応力が高くなった.下板の変位を拘束した状態で溶接を行うと,拘束なしの場合よりも引張残留応力が高くなった.重ね継手に対し溶接部の拘束の度合いを表す「拘束度」の概念を適用し,これより溶接で生じる残留応力が簡便に予測できる可能性を示した.
  • 全 邦釘, 蔵本 直弥, 熊岡 幸司
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_623-I_631
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    構造物の安全な供用や,的確な維持管理戦略の策定のためには損傷を適切に評価する必要がある.そこで本研究では,振動時の加速度計測結果を教師あり機械学習の一種であるRandom Forestによる枠組みで解釈することで,損傷を自動判定する仕組みを提案する.振動をもとに損傷度を調べるような取り組みは多くあるが,必ずしもその精度は十分ではなく,実用化に至っているとは言い難い.そこで本研究では固有振動数以外にも対数減衰率や応答加速度の最大値,標準偏差にも着目し,情報量を増やして精度を上げることを試みた.また計測点についても7点と,綿密に構造物の異常を計測できるような多点計測とした.Random Forestはそのような情報の増加にも耐えうる手法であり,実際に交差検証や供試体の振動試験結果をもとに精度を検証した結果,高い精度であることを確認した.
  • 松本 理佐, 石川 敏之, 河野 広隆
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_633-I_641
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    疲労き裂の簡易な応急処置法として,当て板接着補修が注目されている.当て板接着補修による疲労寿命延命効果は応力拡大係数によって評価されてきたが,応力拡大係数を用いたき裂進展解析結果と実験結果で,補修直後のき裂の進展挙動が大幅に異なる.本研究では,従来の手法で補修直後のき裂進展挙動を再現できない原因として,当て板接着前の残留応力を考慮していない点に着目し,接着前の残留応力を考慮したき裂進展解析を実施した.その結果,無負荷で接着剤を養生した場合,接着前の残留応力を考慮することで,初期のき裂進展の遅延を再現することができた.一方,繰り返し荷重下で接着剤を養生した場合,接着前の残留応力を予測することが困難なため,従来のき裂進展解析手法を用いることで,き裂進展挙動を安全側に評価できることがわかった.
  • 松田 浩, 小金丸 暁, 草野 壱俊, 伊藤 幸広, 森田 千尋
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_643-I_652
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    近年,道路橋の鋼製橋脚や鋼床版等の部材に疲労き裂の発生する事例が増加している.疲労き裂の発生部位によっては,進展すると脆性破壊を引き起こし,橋梁の安全性に重大な影響を及ばす恐れがある.したがって,それらを早い時期で発見し,適切な補修を行うことが重要である.本論文は熱源を用いてき裂を開閉させ,それを光学的全視野計測法の一つであるデジタル画像相関法(以下,DICMと表記)で計測することにより,塗膜除去を必要としないき裂発生を可視化させる新しい鋼部材のき裂欠陥検知法の開発を目的としたものである.
  • 坂本 貴大, 石川 敏之
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_653-I_662
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    近年,当て板補修の新たな工法として,損傷部に炭素繊維樹脂成形板や,鋼板を接着する工法が提案され,実構造物へ適用されはじめている.しかし,この工法では,接着端部に応力集中が生じるため,はく離破壊が懸念されている.一般的に接着剤の品質管理にはシングルラップ接着接合試験片による引張せん断接着強さが用いられるが,はく離破壊の評価に利用されていないのが現状である.そこで,本研究では様々な断面力を受けるシングルラップ接着接合に対して,接着剤に生じる応力を理論解析により導出し,それらがはく離破壊の評価の一つであるエネルギー解放率の算出に利用できることを示す.
  • 濵本 朋久, 浦志 涼介, 山尾 敏孝
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_663-I_674
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    現行の道路橋示方書を用いた新設橋梁の耐震設計では,橋桁端部の衝突が起きないように十分な桁遊間量を確保することを推奨している.しかし,既存の中小規模橋梁の桁遊間は小さく,想定外の大規模地震時には橋桁端部で衝突の発生が懸念される.そこで,本研究では,一般的な桁形式の橋梁の地震応答低減策の一つとして抗土圧構造物である橋台と桁端部の衝突に着目した.特に,数値解析モデルの中にパラペット・竪壁・ウィングを含めた3次元有限要素で橋台モデルを構築し,レベル2地震動が作用する場合において桁遊間と桁端衝突の関連性を明確にし,パラペットや堅壁の損傷評価を基に地震応答低減の可能性を検討した.併せて,橋脚基部に着目して既設の支承条件を変更せずに地震応答を低減する方策として,免震ゴムにより橋梁全体系の固有周期を長周期化する免震橋脚を提案し,桁端衝突と免震ゴムを含めた地震応答のハイブリッドな低減手法を検討した.
  • 澤田 昌孝, 羽場 一基, 堀 宗朗
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_675-I_685
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    断層深部での最初のずれのエネルギーが断層面の摩擦による仕事に変換されるという,エネルギー保存の観点からみた断層変位の基本メカニズムに基づき,本研究では,断層変位の数値解析のために,ジョイント要素を厳密に導出し,時間積分としてエネルギー保存を満たすシンプレクティック積分を適用した.具体的な成果として,断層面のラグランジアンの変分から3次元ジョイント要素を定式化し,従来用いられるジョイント要素と数値実験による比較を行うことでその有効性を示した.また,数値実験によってシンプレクティック積分の有効性を示した.
  • 小西 拓洋, 小屋 裕太郎, 梶原 仁
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_687-I_697
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    疲労き裂点検の効率化を目標に,塗膜割れ画像から疲労き裂の可能性を判定するシステムの開発を行った.判定は,まず塗膜除去前の画像より塗膜割れを抽出し,これをパターン化する.同様の手法で,過去の疲労き裂をパターン化した疲労き裂データベースを準備し,塗膜割れのパターンと,データベースのパターンとのマッチングを行うことで,両者の一致度の高さで判定を行うものである.塗膜割れ抽出には,画素強度値による輪郭抽出に加え,塗膜割れ特有の色の違いを利用した色フィルタを適用した.またパターン化には,標準的な溶接ビードを模したテンプレートへの画像投影を利用した.パターンマッチング解析を行うことで,実用レベルの検出精度が達成できた.
  • 髙橋 佑莉沙, 西 宏治郎, 佐伯 昌之
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_699-I_706
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    著者等は,無線センサネットワークのセンサとして安価な1周波GPSを採用した変位モニタリングシステムの開発を進めてきた.1点あたりのコストが低減するため,多点高密度な変位モニタリングが実現できると考えている.本研究では,まず,実現場と同等な環境下で準静的変位モニタリング実験を行い,カルマンフィルタ適用後の推定値で約1cmの精度が得られることを確認した.また,急激な変位が発生した場合の測位性能の改善を試みた.急激な変位が発生する問題は,通常のGPS測位解析と同様に整数値バイアスを決定する必要があるが,SN比を用いたフィルタや重みづけによりFix率の改善を試みた.さらに,決定しづらい整数値バイアスが存在する場合には,その整数値バイアスを決定しない再探索アルゴリズムを導入することで,Fix率が改善することを示した.
  • 大竹 省吾, 中村 一史, 長船 寿一, 岩吹 啓史, 鳥部 智之, 平栗 昌明
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_707-I_718
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    高架道路からの交通振動による苦情の中でも低周波音の苦情は,橋梁の上部構造の鉛直振動との相関が強いことから,対策工法の検討では,橋梁の路面上を車両が走行する際の動的相互作用を考慮する車両走行解析が用いられる.ただし,この解析方法には,専用プログラムの使用,路面凹凸や車両モデルの適切な設定が必要であり,高度な専門知識と煩雑な解析を要する.そこで,筆者らは,車両振動の実測値を用いて,苦情原因となる周波数帯の外力の作用を概ね再現し,解析プログラムには,汎用プログラムが利用できる比較的取り扱いが容易な解析方法を提案した.鋼鈑桁橋の従来の構造と合理化構造の橋梁に対して,両解析手法を適用して比較した結果,提案した解析方法では,振動特性を精度良く再現でき,対策効果の推定において実用性が高いことが確認された.
  • 吉田 秀典, 大本 修平
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_719-I_730
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    コンクリート構造物の老朽化や公共事業の縮減に伴い,既存のコンクリート構造物を長期的に運用していく必要がある.その際に,構造物の維持管理上から,早期にコンクリート内の鉄筋腐食状態等を非破壊モニタリングする技術が望まれている.そのような中,コンクリート中の鉄筋の腐食速度の推定と腐食の定量評価が可能である分極抵抗法が注目されている.しかしながら,研究に関しては基礎的なレベルの事案が多く,不動態皮膜の劣化やコンクリートの乾湿が電気伝導特性に及ぼす影響について論ぜられていないのが実態である.そこで本研究では,有限要素解析を行い,不動態皮膜の劣化やコンクリートの乾湿が電気伝導特性に及ぼす影響について検討した.その結果,両因子が電気伝導特性に影響を及ぼすこと,特に,コンクリートの乾湿は大きな影響を及ぼすことが判明した.
  • 鈴木 啓悟, 吉田 翔太, 佐々木 栄一, 竹谷 晃一, 前田 健児, 近藤 泰光
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_731-I_737
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    橋梁の腐食損傷は主として水分と塩化物の存在に影響を受ける.これらの腐食因子は風向,風速,気温,湿度,降雨,波浪などの気象外乱の複合作用により橋梁に来着する.本研究は,ACM センサで計測される腐食応答電流値を主とした1年間のモニタリングデータを基に,まず外乱となる気象データから重回帰式を求めた.次に重回帰式から過去5年分の気象データをもとにしたACM電流応答の推定値を算出し,その季節変動に伴う応答傾向の再現性を検証したうえで,最後に重回帰式の各係数のt値を評価することで,腐食応答に及ぼす原因について検証した.検証の結果,本研究の事例においては降雨と風の相互作用により,腐食応答が促進される可能性が示唆された.
  • 大塚 悠一, 堀 宗朗, 秋葉 博, JAYASINGHE J. A. S. C., Riaz M. R., 澤田 昌孝
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_739-I_750
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    地盤-構造物相互作用を考慮した地震応答解析を行うため,従来,構造物と地盤に質点系モデルと地盤ばねモデルが使われていた.本研究は,メタモデリング理論を基に,従来のモデルの解釈を試みる.連続体力学理論に基づく構造物地盤の地震応答を,物理的な仮定を設けず,数理的な近似のみで解くという解釈である.この解釈に基づき,質点系モデルはもとより地盤ばねモデルのばね定数等のパラメータを合理的に決定できることを示す.これは,従来のモデルを使う地震応答解析が有限要素法モデルを使う地震応答解析を近似しうることを意味する.簡単な構造物と地盤の地震応答解析に対して数値実験を行い,本論文で考える従来モデルの解釈の妥当性を検証した.
  • 五井 良直, 金 哲佑, 區 兆駒
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_751-I_762
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/29
    ジャーナル フリー
    長大斜張橋の常時微動から同定された振動モードについてその性質が計測時の風速に依存して急激に変化する事例が報告されており,実践的な振動ヘルスモニタリング技術の開発に向けて振動モード同定結果の環境依存性に関する更なる検討が望まれている.本研究では先行研究で検討された斜張橋についてベイズ推定による周波数領域の振動モード同定を行い,これらの同定結果を著者らの既往研究において別途検討した時間領域の振動モード同定の結果と比較した.ベイズ推定により得られた変動係数及びS/N比の結果から既往研究において指摘された同定振動特性の不確かさが直接的に評価されることが示された.このことは本論文で検討されたベイズ推定による振動特性の推定手法が,推定結果の質について解釈するうえで有効な手段となりうることを示唆している.
撤回
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