土木学会論文集A2(応用力学)
Online ISSN : 2185-4661
ISSN-L : 2185-4661
77 巻, 2 号
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応用力学論文集Vol.24(特集)
  • 荻野 俊寛
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_3-I_11
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    ベンダーエレメント法による土の S 波速度測定の高精度化に必要なベンダーエレメントの振動特性の把握を目的として,セルフモニタリングベンダーエレメントの振動をレーザー変位計を用いて計測した.その振動特性は片持ち板の長さ方向の曲げ振動と幅方向の曲げ振動の重ね合わせとなり,複雑な挙動となった.

    実験結果をもとに,モード解析によってその振動特性を級数近似した.近似した振動は長さ方向・幅方向の曲げ振動を表す少なくとも 2 つの固有振動モードの重ね合わせで表現可能であることが示された.また,最小でこれら 2 つのモードによって近似することで,近似結果は計測値とよく一致することが明らかとなった.このことから,モーダルパラメータを推定することで,ベンダーエレメントの振動特性の定式化が可能となることが示された.

  • 井上 一哉, 川田 歩美, 鈴木 麻里子
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_13-I_24
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,19 種類のベンチマーク関数の最適化問題を通して,比較的新しい群知能であるカッコウ探索アルゴリズムとハイイロオオカミ最適化の探索性能を比較した.その結果,ハイイロオオカミ最適化は探索初期の収束速度の良さに特徴を有する点,カッコウ探索アルゴリズムは多くの短いステップとごく少数の長いステップによるレヴィフライトにより解空間を探索しつつ,局所解から脱却している点について確認できた.次に,群知能の実サイトへの適用として,喜界地下ダム流域を対象に透水係数の空間分布を推定した.実サイトの地質状況を基に,解析領域を 10 区画にゾーニングし,観測水位に適合するように逆推定した結果,カッコウ探索アルゴリズムの方がハイイロオオカミ最適化よりもやや優位な結果を得た.さらに,逆解析の同定結果を溶質輸送解析に連結し,施肥による地下ダムの硝酸汚染リスク算定に応用した.集水井の水質に影響する農地をリスクマップとして可視化する方法を提案し,冬季の施肥が硝酸性窒素の高濃度化を招くことを示唆した.

  • 和田 一範, 坂井 公俊
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_25-I_34
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    橋梁・高架橋の構造全体系の固有振動数は下部工の健全度判定に広く活用されているが,この指標には上部工や支承を介した隣接構造物の振動の影響が含まれており,隣接構造物の条件によっては,着目している下部工単体の特性が必ずしも明瞭に評価できない可能性がある.本研究は,振動計測から得られるデータを用いて下部工単体の固有振動数を同定する手法を開発した.具体的には,構造全体系の非減衰固有振動数と固有モードから理論的に下部工単体の固有振動数を同定可能であり,固有値解析により提案手法で下部工単体の固有振動数が同定可能であることを検証した.さらに,全体系の非減衰固有振動数に誤差が含まれた場合の同定精度に与える影響を評価したところ,特に高次モードの誤差が同定精度に与える影響が大きいことがわかった.

  • 出口 翔大, 柴田 洋佑, 浅井 光輝
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_35-I_45
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    地球温暖化の影響を受けた豪雨災害が各地で頻発しており,災害被害予測シミュレーションへの需要が高まってきている.自然災害を対象としたシミュレーションを実施する際,必要となる材料パラメータ等は経験的に定めることが多いが,適切に逆推定する必要がある.以上の目的から,新たな深層学習モデルである PINNs(Physics-Informed Neural Networks)を用い,観測データからパラメータを推定する逆問題に取り組んだ.PINNs は Neural Networks の学習に物理法則・初期条件・境界条件の情報を組み込む(Physics-Informed)ことで,物理的妥当性を保証するものである.本論文では,PINNs の特徴でもある損失関数の設定方法に着目し,Neural Networks の予測精度により定義される損失項と満たすべき支配方程式に関する損失項の影響を切り替える改良法を提案することで,特に観測データにノイズが含まれる逆問題への信頼性を向上させた.

  • 竹田 晴彦, 斎藤 隆泰, 廣瀬 壮一
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_47-I_57
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    本研究では, 2 次元面内粘弾性波動問題を対象とした線形化逆散乱解析を開発し, 粘弾性体中の領域型欠陥および境界型欠陥の位置や形状を再構成することを試みる. ここでは, 粘弾性波動問題に対する散乱波の積分方程式に対して, Born 近似および Kirchhoff 近似を用いることで, 粘弾性体中の領域型欠陥および境界型欠陥に対するそれぞれの欠陥形状再構成式を導出する. また, 逆散乱解析に必要となる散乱波の計算は, 時間領域の閉じた基本解が求まらない粘弾性波動問題に対しても, 高精度かつ安定に時間領域解析が可能である, 演算子積分時間領域境界要素法 (CQBEM: Convolution Quadrature Time-domain Boundary Element Method) を用いて行う. 以下では, 粘弾性体中の領域型および境界型欠陥に対する 2 次元線形化逆散乱解析の定式化を示し, いくつかの数値解析例を示すことで, 本手法の有効性を検討する.

  • 斉木 功, 田淵 航
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_59-I_68
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    均質な梁では Poisson 効果による軸直角方向の変位は拘束されないため,初等梁理論では一次元の弾性構成則を用いている.しかし,Poisson 比の異なる複数の材料からなる複合梁では,軸に垂直な方向の変位を複数の材料が互いに拘束することになる.軸方向の剛性や曲げ剛性は拘束の影響を受けるため,正確な剛性の評価には Poisson 効果を考慮することが必要となる.そこで本研究では,断面変形を含む梁理論を拡張し,Poisson 効果を考慮できる梁理論を定式化する.提案梁理論の解と連続体の解を比較することで提案梁理論の妥当性を確認する.

  • 斎藤 隆泰, 田代 匡彦, 木本 和志
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_69-I_79
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,トポロジー感度を欠陥検出指標に用いた 3 次元動弾性時間反転解析を行うことで,固体中の欠陥の個数,位置等を正しく決定する方法について検討する.時間反転法は,非破壊評価や地震学等の波動を扱う分野における逆解析手法として発展してきた.その時間反転法の問題点は,時間反転させた波動の集束位置をいかに定量的に評価するかという点にある.著者らは,これまでスカラー波動問題や 2 次元動弾性問題に対する時間反転法の計算に,トポロジー感度を取り入れ,欠陥形状を再構成する研究を行ってきた.本研究では,それらの成果を 3 次元動弾性問題へと拡張する.3 次元動弾性波動場の計算には,従来の時間領域境界要素法よりも安定で,工学の様々な問題への適用範囲も広い,演算子積分時間領域境界要素法 (CQBEM: Convolution Quadrature Boundary Element Method) を用いる.数値解析例として,いくつかの固体中の欠陥形状再構成結果を示し,提案手法の有効性について検討する.

  • 木本 和志, 岡野 蒼, 斎藤 隆泰
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_81-I_92
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    本研究は,花崗岩における縦波の局所的な伝播挙動を調べたものである.具体的には,造岩鉱物粒スケールでの位相速度を推定することを目的に,花崗岩供試体の板厚方向に透過する縦波をレーザードップラー振動計で計測した.位相速度の評価は別途取得した参照波形と透過波形の位相差に基づいて行い,得られた位相速度を造岩鉱物種毎に統計的に処理して頻度分布を求めた.その結果,カリ長石の位相速度は非対称かつ幅の広い分布に従う一方,石英の位相速度は対称かつより狭い分布に従うことが分かった.さらに,以上で得た頻度分布を用いて花崗岩の 2 次元数値解析モデルを作成して平面波伝播解析を行ったところ,ガウス分布によって摂動された位相速度分布を与えた解析モデルとは異なる,特異な散乱減衰の挙動が現れることが示された.

  • 才田 大聖, 西尾 真由子
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_93-I_104
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    不確定性を考慮する構造物の地震リスク解析ではモンテカルロ計算を行うが,地震動を入力とする非線形時刻歴応答解析で不確定パラメータが高次元となると計算負荷が増加する.そこで本研究では,計算負荷軽減のため,免震 RC 橋脚の地震応答解析を対象に,その入出力関係に対する関連度自動決定(ARD)カーネルを用いたガウス過程回帰での代替モデル構築を行った.地震動特性に依存する橋脚と免震支承での非線形挙動発現に対してガウス過程回帰で適切な代替モデルが構築できることを検証した結果,非線形挙動の有無に関わらず 200 程度の訓練データで,最大応答分布を適切に導出する代替モデルを構築できた.その上で,ARD によって最大変位応答に対する不確定パラメータの寄与度を,異なる非線形性の発現度に対して適切に自動抽出できることを確かめた.

  • 辻 勲平, 浅井 光輝, 笠間 清伸
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_105-I_116
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    2011 年東北地方太平洋沖地震に伴う巨大な津波により,多くの防波堤が被災した.本研究では防波堤の主な崩壊要因の一つである浸透崩壊に着目し,Lagrange 記述の解析手法である ISPH と個別要素法 DEM を用いた解析ツールを構築し,ケーソン式防波堤の捨石マウンド浸透崩壊解析を実施した.津波,捨石マウンド,ケーソンブロックを粒子で離散化し,各物体間での相互作用力を介して,ケーソンブロックの運動を含む浸透崩壊の形態の一部を定性的に再現した.また,DEM 粒子で解像できなかった小さな砕石は捨石マウンド表面から流出しやすくなる疑似的なモデル化により,浸透崩壊時の噴砂と後退侵食(Backward erosion)の挙動を表現した.従来の連続体ベースの解析手法では追跡できなかった局所的な破壊が,ケーソン式防波堤の崩壊に大きな影響を与える可能性の一端を数値解析例を通して示した.

  • 小松 喜治, 堀口 俊行, 香月 智
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_117-I_128
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    近年,異常気象の影響で大規模土石流が発生している.そのため,現行設計荷重を超えた外力を受け,砂防構造物の損壊が発生している.このような背景によって,現行基準より大きな荷重を想定した新たな設計法が求められている.そこで本研究は,構造安定計算の転倒安定性に着目し,転倒限界を確認できる実験装置を創作し,土石流荷重を動的荷重分布モデルとして提案したものである.また,提案した土石流荷重モデルに基づく FEM 解析を行い,転倒限界の再現シミュレーションを行った.その結果,提案手法の荷重モデルによる転倒限界は実験結果とほぼ一致した.さらに,堰堤モデルの最大浮き上がり量は抵抗モーメントに対する超過モーメント積に依拠することを明らかにした.

  • 九鬼 愛夢, 鳥生 大祐, 牛島 省
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_129-I_136
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,粘弾性流体と周囲のニュートン流体の境界面である自由表面を有する流れの計算を行うために,2 流体について相平均された基礎方程式をコロケート格子有限体積法に基づいて計算する手法を提案した. 粘弾性流体の構成式として,非線形粘弾性モデルである Giesekus モデルを用いた.最初に,ニュートン流体および粘弾性流体のそれぞれに対して平行平板間流れの数値計算を行い,定常状態における流下方向の流速分布や粘弾性応力について,本研究の計算結果と理論解がよく一致することを確認した.次に,ダイスウェル現象の数値実験として,平行平板間からニュートン流体中に粘弾性流体が射出される計算を行い,射出後における粘弾性流体の厚みの変化について既往の計算結果と同様の傾向が得られることを確認した.

  • 丸山 泰蔵, 中畑 和之
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_137-I_143
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,閉口き裂による 3 次元散乱問題に対して調和バランス-境界要素法(HB-BEM)を拡張する.HB-BEM は閉口き裂による非線形散乱問題の定常解析を行う手法であり,これまで 2 次元問題に対して解析が行われてきた.しかしながら,現実の問題をモデル化する場合,3 次元的な影響を考慮する必要がある.HB-BEM の 3 次元問題への拡張のために必要となるき裂面の開閉,動摩擦をモデル化した境界条件の拡張を行う.基本的なき裂面の開閉,動摩擦現象が発生すると考えられる円形き裂による平面縦波,横波の散乱問題を解析する.数値解析結果を従来の時間領域解析結果と比較することで本手法の妥当性を示す.

  • Seiichiro TSUTSUMI, Ayang BUERLIHAN, Riccardo FINCATO
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_145-I_153
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    The purpose of this study is to investigate the effect of notches on fatigue strength of middle (i.e., SM490) and high (i.e., HT780) strength steels. The study is based on finite element analyses on two types of notched specimens referring to an experimental work found in the literature. A novel approach is proposed to characterize the fatigue performance of the samples based on elasto-plastic analyses carried out with an unconventional plasticity model, the Fatigue SS model, proposed by the authors. The fatigue life, expressed as the sum of crack initiation life and crack propagation life, was predicted under unidirectional cyclic loading conditions (R = 0). The main advantages of the novel methodology consist in considering the effect of irreversible deformations and the effect of the local geometry on the initiation and propagation of the crack. The numerical results were validated against experimental data proving the reliability of the new assessment method.

  • 唐澤 奈央子, 長谷部 寛
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_155-I_162
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    アイソジオメトリック解析の要素積分では広く数値積分が用いられているが,NURBS ソリッド要素のガウス積分に必要な積分点数は明確ではない.そこで本で研は究,様々な曲率を有する円弧ばりを対象に線弾形性解析を行い,それぞれのケースにおいて解が収束する積分点数を得た上で,積分点数に響影を及ぼすパラメータを検討した.その結果,収束する積分点数は基底関数の次数,要素数,コントロールポイントの重みにより変化することが分かった.これらの結果から,NURBS ソリッド要素に必要なガウス積分点数を決す定る指標案を提した.

  • 岩田 智行, 山田 貴博, 藤原 基英, 井畑 知明, 岡田 和也
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_163-I_170
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    ゴム材料などの超弾性材料の変形に対する応力の応答は,一般に複雑な非線形挙動を示す.既往の超弾性構成則では,変形が大きい範囲までの多軸の挙動を,標準的な2 軸材料試験の結果すべてを精度よく表現することが困難であることが知られている.また,実際の構造物の応力解析で現れる応力状態は,標準的な材料試験でデータを取得している範囲に留まっておらず,結果として応力解析が構造物の実験結果を精度良く表すことができないことも多く経験されている.そこで本研究では,応力解析で現れる変形状態分布を考慮して材料定数を同定するという重要度評価を取り入れた新しい材料定数の同定手法を提案し,数値計算によりこの手法の有効性を確認する.

  • 庄子 諒, 深澤 一志, 吉川 仁, 高橋 徹, 樫山 和男
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_171-I_182
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    本論文は,境界要素法を用いた時間域の 3 次元音場解析手法を用いて,遮音壁の形状および反射率の違いによる評価を VR 技術を用いた可聴化により行う方法について述べたものである.支配方程式として 3 次元非定常波動方程式を用い,インパルス応答解析を高速多重極境界要素法により行っている.騒音評価システムの構築には,没入型 VR 装置およびヘッドマウントディスプレイを用いた.本システムの妥当性と有効性を検証するため,VR 空間内において計算結果と測定結果との比較を行った.

  • 佐近 絵奈, 山栗 祐樹, 小林 俊一, 熊 曦
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_183-I_192
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    剛塑性有限要素法 (RPFEM) は,支持力問題を解くための数値解析法の 1 つである.これまで著者らは補強材強度を考慮した剛塑性有限要素法を提案しているが,補強材と地盤はすべりのない固着状態であると仮定していた.しかし,ジオテキスタイルのような面状補強材は補強材と地盤間のせん断方向の相互作用力が支持力に大きな影響を与えるため,これらの相互作用力を適切に考慮したモデル化を導入し解析法を改良することは重要である.そこで補強材と地盤の間の相対的なすべりを考慮できるよう,地盤拘束力に制約条件を付加した定式化を提案した.また,補強した粘性土地盤上の浅い基礎に対して平面ひずみ条件で 3 次元支持力解析を行い,提案手法の有効性を示した.

  • 山栗 祐樹, 小林 俊一, 西藤 潤
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_193-I_204
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    傾斜荷重を受ける浅い基礎の支持力特性を剛塑性有限要素法で解析するため,基礎の剛体運動を表す速度場の線形制約条件を導入し,剛で粗い基礎構造物と地盤の相互作用を地盤メッシュのみで表現できる解析手法を提案した.提案手法により傾斜荷重を受ける浅い矩形基礎の 3 次元支持力解析を実施し,基礎形状,傾斜荷重および水平面内での載荷方向が支持力特性に与える影響を調査した.その結果,荷重傾斜角が小さい時は支持力破壊モード,大きい時は滑動破壊モードが出現した.また矩形基礎で支持力破壊モードが出現するときには,水平面内での載荷方向の影響が見られた.

  • Muhammad Naveed AKRAM, Mahendra Kumar PAL, Lalith MADDEGEDARA, Yosuke ...
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_205-I_215
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    This article presents the formulation and implementation of thermal-shrinkage-induced-cracking to study a possible use of a LASER for demolishing RC structures. Convective and radiative cooling, coupled with deformation and cracking, are rigorously treated, and related modules are implemented into a higher-order particle-discretization finite element method (HO-PDS-FEM). Developed modules are verified comparing with analytical solutions, and validated by comparing with observations from a quenching experiment. Cutting of an RC block using a LASER beam is analyzed. The pattern of thermal-induced-cracking is compared with experimental observation. It is concluded that the pattern can be predicted satisfactorily, which suggests the developed numerical model can be used study cracking induced by thermal shocks.

  • 山田 貴博
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_217-I_225
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    ゴム材料などの微圧縮材料の過渡応答解析に対して,波動伝播現象に適した陽的時間積分法を適用する場合,剛性の高い体積変形成分の波動伝播速度に基づき小さい時間刻みを定める必要がある.本研究は,この制約を緩和するものとして,拘束条件付き問題に対する Rattle 法を拡張し,圧力に関する連立1次方程式の求解に帰着させることで,等容変形成分を陽的に,体積変形成分を陰的に取り扱うことが可能な分離型時間積分法を提案するものである.

  • 羽場 一基, 篠原 魁, 渡辺 和明
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_227-I_238
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    実務における重要構造物周辺の地盤安定性評価では,有限要素法を用いた 2 次元等価線形解析により地盤の応力を評価し,事前に設定したすべり線上の安全率を算出する.しかし,複雑な地盤モデルにおいて,安全率が最小となる臨界すべり線を事前に設定することは困難である.そこで,本論文では,すべり線をアイソパラメトリック 2 次要素により離散化し,粒子群最適化法を用いて臨界すべり線を探索する手法を提案する.アイソパラメトリック 2 次要素を用いることで,要素内のすべり線が内部座標の 2 次関数で補間されるため,少ない節点で複雑なすべり線形状を表現することが可能になる.さらに,複数の地盤モデルに対する臨界すべり線探索を実施し,提案手法を用いることで,すべり線を折れ線で表現する既往研究に比べ,より効率良く安定的に臨界すべり線を探索できることを示す.

  • 紅露 一寛, 河野 昭子, 阿部 和久
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_239-I_249
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    レール継目部に井桁状まくらぎを敷設した軌道系の振動応答の評価を目的として,車輪・軌道系の振動解析法の構築を試みた.本研究では直線軌道にレール継目が存在する場合を対象に,既存のはり・ばね・質点系の車輪・軌道系連成解析手法に,井桁状まくらぎとその支持部の振動応答モデルを構築・実装した.井桁状まくらぎの振動モデルには,変断面はりモデルと 3 次元動弾性モデルの 2 種類を考え,その振動モデルの選択が軌道各部の動的応答,特に車輪・レール接触力,レール・まくらぎ間作用力,まくらぎ上面鉛直加速度の解析結果に及ぼす影響を検討した.その結果,継目下手側レールと車輪との接触力は,最大荷重発生のタイミング,および最大荷重の大きさにはさほど大きな違いが認められないが,最大荷重発生後の接触力は 3 次元モデルの方が長周期で変動し,振幅の減衰も緩やかである.また,井桁状まくらぎを支持するバラスト道床の動的応答を考慮するにあたり,弾性床支持モデルと 2 次元動弾性モデルの 2 種類の選択が振動解析結果に及ぼす影響についても検討した.その結果,車輪・レール接触力,レール・まくらぎ間作用力,まくらぎ加速度のいずれについても,井桁状まくらぎの支持部のモデル化の影響はほとんど認められないことがわかった.

  • 渡辺 力, 佐野 凌希
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_251-I_262
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    複合材料で補強された鋼やコンクリート構造に ZIG-ZAG 理論を適用するために,改良 ZIG-ZAG 理論と Layer-wise 理論を融合した Region-wise ZIG-ZAG 理論の開発を進めている.この理論では,剥離解析に必要な剥離変位の導入や複合材料と等方性材料からなる構造への適用が容易で,未知自由度数は Layer-wise 理論に比べかなり少なくなる.本論文では,理論の適用性の問題を改善し,効率性をさらに高めるために,Region-wise ZIG-ZAG 理論による異方性積層構造の厚板解析に仮想ラミナを用いる方法を適用する.異方性積層板と等方性平板の曲げ解析により,この手法の精度と適用性が検証されている.

  • 河井 克之, 有西 海飛, 中島 晃司
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_263-I_273
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    陸上の土工で用いられる「締固め」は,荷重の与え方や締固めスケールへの依存性が強く,室内試験結果を現場施工に反映させるのが困難である.特に,施工によく用いられる転圧が地盤内の締固め度に与える影響についての研究は少ない.本研究では,まず不飽和土の力学体系の中で「締固め」を表現するために,土/水/空気連成解析によって締固めを模擬した.その結果,締固め曲線を表現するとともに,内部に生じる不均一性について明らかにした.また,転圧模型試験を行い,得られた模型土槽の X 線等価画像から,転圧進行方向に圧縮領域が形成され,不均一な締固め度分布が生じることが分かった.同時に,転圧シミュレーションを実施し,転圧による締固め度の不均一性は主応力方向による影響を受けていることが明らかになるとともに,初期転圧方向に弾塑性変位が卓越することが分かった.そのため,転圧荷重を往復しても地盤内に左右非対称の締固め度分布が生じる結果となった.また,転圧面にもその影響が現れ,荷重が大きく,最適含水比に近いより圧縮する条件で,転圧面の不整が顕著となった.

  • 松本 高志, 浜山 千佳, 近藤 健太
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_275-I_283
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    既往研究の全方向全厚のらせん積層に対して,らせん積層を部分方向または部分厚で成した限定らせん積層 CFRP の四点曲げ変形・耐荷挙動を実験的に検討した.部分方向らせん積層は,最大荷重後に脆性的な挙動を示したが,その後荷重増加と降下を経て最大荷重の半分弱にまで緩やかに回復した.回復中の小さな荷重降下時にはらせん積層の階段状ひび割れが発生した.部分厚らせん積層は,2 つの荷重ピークを示して荷重も半分以下に降下したが,らせん積層部分から広範囲に損傷が始まり,直交積層部分の脆性的な破壊挙動が抑制される損傷・破壊挙動が観察された.

  • 内山 大智, 竹川 遊大, 肥後 陽介
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_285-I_296
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    Material Point Method (MPM) は粒子法の一種であり,格子法に見られるメッシュの絡み合いを起こさないことから大変形解析に有利な解析手法である.多相系地盤解析においては,透水性の高い地盤の大変形時など固液相間の相対運動の大きな場合,相間の移流を考慮する必要がある.そこで本研究では固・液・気三相 2-PointMPM の定式化及びその離散化を新たに提案した.本手法を用いることで移流項を発生させず,固液相間の移流を考慮することができる.本定式化は u-U 定式化でありまた,固液二相のラグランジュ粒子に離散化することにより固液相間の移流項は発生しないといった特徴を持つ.次に数値解析を通して一相系及び二相系に対して微小変形・有限変形の検証を行った.最後に固・液・気三相における動的盛土液状化解析を行うことで固液相対運動の大きな現象に対する本手法の適用性を確認した.

  • Xiaoyu JIANG, Takashi MATSUSHIMA
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_297-I_305
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    This is an extension work based on our previous one [J. Xiaoyu and T. Matsushima, J. Appl. Mech., JSCE, 2018]1) in which we mainly discussed the influence of intergranular friction and particle size distributions on granular shear flow of circular particles by comparing discrete element simulation with 𝜇(I)-rheology model. In this paper, we focus on the simple shear flow of elliptical particles under various inertial numbers I and investigated the influence of particle aspect ratio 𝛼 on the flow rheology and microstructural characteristics. It was found that (1) the 𝜇(I)-rheology model is well applicable for the flows of the elliptical particles of different aspect ratio 𝛼; (2) the deviation of macroscopic friction 𝜇(I) and solid fraction 𝜙(I) from the quasi-static state, i.e., 𝜇−𝜇0 and 𝜙0−𝜙, are linearly correlated, and it is independent of 𝛼; (3) the logarithm of particle orientation distribution log 𝑃(𝜃) is well described by a trigonometric function with a particle orientation anisotropy 𝑎ρ; (4) the linear relation in (2) is explained by the microscopic observation in which 𝜇−𝜇0 and 𝜙0−𝜙 are uniquely related to 𝑎ρ, respectively, showing that increasing randomness of particle orientation causes both increasing 𝜇 and decreasing 𝜙.

  • 柴田 誉, 佐藤 啓介, 堀川 秀信, 浜崎 幸平, 李 博, 堤 成一郎
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_307-I_317
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    溶接継手の疲労性能評価手法として,有効切り欠き応力法(ENS 法)が知られているが,過度に安全側の評価となる可能性がある上,角変形に関する明確な記述はない.一方,近年提案された有効応力集中係数は,引張側の応力範囲に基づいて定義され,一部の継手形式に対して疲労性能との相関の高さが示されている.本研究では,裏当て金付突合せ溶接継手を対象として疲労試験を実施するとともに,有効応力集中係数を考慮した修正 ENS 法の提案を行う.まず,疲労寿命評価に用いる応力範囲においては,角変形を考慮した有効応力集中係数に基づく評価結果の予測精度が最も高いことを確認した.次に,有効応力集中係数の算出式を用いて修正 S-N 線図を提案した.提案手法により 4 種の継手に対して統一的に高精度な寿命評価が可能であることを示した.

  • 太田 将裕, 渡邉 拓也, 松島 亘志
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_319-I_328
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    将来の月面開発における ISRU(In-situ resource utilization)の実現を目指し,本研究では月面模擬砂 FJS-1 を用いた均一加熱および表面加熱実験を行い,温度履歴や模擬砂の粒度分布,堆積状態等の実験条件が,生成される焼成固化材の力学特性に及ぼす影響に関する基礎検討を行った.その結果,(1)完全溶融以前では,加熱時の最高温度が高いほど,最高温度保持時間が長いほど,また粒径が小さいほど,一軸圧縮強度が増加する,(2)融点以上の 1200℃ で加熱すれば,生成される焼成材は高強度コンクリート並の圧縮強度を有する,(3)一軸圧縮強度は加熱後の焼成材密度と一意的な関係がある,(4)焼成材のビッカース硬度と一軸圧縮強度は,おおむね比例関係にある,(5)表面加熱実験においては,一方向熱拡散の影響により,深さ方向に物性の異なる焼成材が生成される,(6)融解した部分に周りの砂が巻き込まれる現象が熱拡散速度に大きく影響を及ぼす,等の重要な知見が得られた.

  • 瓦井 智貴, 小室 雅人, 岸 徳光, 林 茂樹, 竹内 観月
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_329-I_337
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    本研究では落石防護擁壁上に設置された貫通型落石防護柵支柱を対象に,支柱に直接重錘による衝撃荷重が作用した場合における動的応答性状を適切に評価可能な解析手法の確立を目的として三次元弾塑性衝撃応答解析を実施した.ここでは,特に支柱の曲げ変形が卓越する場合に着目することとし,重錘の落下高さ H を変化させた 4 ケースの衝撃荷重載荷実験を実施した.また,実験結果と解析結果を比較することによって解析手法の妥当性を検討した.その結果,本解析手法を適用することで,衝撃荷重や重錘衝突後の支柱のひずみ分布性状などの耐衝撃挙動をほぼ適切に再現可能であることが明らかとなった.

  • 河野 昭子, 松島 亘志
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_339-I_348
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    鉄道線路に敷設された単粒度砕石層の微視的構造に着目した解析的検討に用いる DEM コードにおいて,計算負荷の高い接触判定のループを OpenMP で並列化した.加えて鉄道総研所有の大型計算機「究 2」を用いることで,計算速度が従来の約 10 倍に向上した.またバラスト砕石のモデル化において,角張度を実形状に近づけるために Asperity 要素を導入した.改良した解析コードと解析モデルを用いて,道床更換直後の軌道支持剛性および道床沈下をシミュレーションで再現し,実線における実測結果と比較した.シミュレーション結果は実測結果の平均値±σ(標準偏差)の範囲に収まり,定量的精度も向上した.これより,DEM が従来の定性的評価に留まらず,保守作業や軌道構造の最適化に向けた定量的評価等に活用可能であることを示した.

  • 麓 隆行, 高木 雅斗
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_349-I_358
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    コンクリート材料の乾燥による体積変化には,モルタルの特徴や体積率だけでなく,粗骨材の品質がモルタルに影響を及ぼす場合もある.資源の有効利用のために多様な副産物の利用が望まれるが,コンクリ ートに及ぼす影響は,従来の粗骨材の品質評価試験で十分に評価できない場合も考えられる.その際には,コンクリート内部のモルタルの挙動からその影響の検討が必要となる.そこで本研究では,その基礎段階として X 線 CT 画像を用いた輝度変化や 3 次元画像相関法により計測した各種ひずみを用いて,乾燥によるモルタル円柱供試体内部の挙動を検討した.その結果,輝度減少率と質量減少率との相関性や課題を明らかにし,その輝度減少率と水平断面内の体積ひずみとの相関が高いことを示した.また,円柱供試体の水平面では,垂直ひずみに差は見られないが,面積ひずみは表面に近いほど大きい傾向があった.

  • 濵田 匠李, 別府 万寿博, 堤 成一郎, 市野 宏嘉
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_359-I_370
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    本研究は,質量 6kg,直径 50mm の平坦状の先端を有する飛翔体を,速度約 40m/s―100m/s で板厚 6mm, 9mm および 12mm の SS400 鋼板に対して衝突させる実験を行い,鋼板の貫通挙動について検討を行ったものである.実験では飛翔体の挙動を明らかにするとともに,鋼板の変形および貫通破壊挙動を考察した.また,数値解析により検討した鋼板の変形および貫通破壊メカニズムを基に,エネルギーを基準とした設計法の概念を検討した.完全塑性衝突による運動エネルギーの散逸を考慮し,鋼板の吸収エネルギーを塑性ヒンジ形成と板の面内方向の吸収エネルギーの和であると仮定したモデルを提案した.

  • 水谷 壮志, 石川 敏之
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_371-I_380
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    社会基盤構造物に対して,優れた特性を有する FRP を用いた補強・補修に関する研究が盛んに行われている.さらに,近年では,損傷した FRP を FRP で補修する検討も行われている.FRP 同士の接着接合では,接合端部において主部材となる FRP の表面近くの繊維が破断する場合があることが報告されている.また,接着剤のはく離も問題となる.しかし,これまでに FRP 同士の接着接合の破壊に関する理論的な研究は見られない.本研究では,FRP 同士の接着接合において破壊の要因となる繊維破断と接着剤のはく離に着目し,理論的な応力解析手法からその力学特性を明らかにした.結果として,FRP を FRP 接着で補強することで,被補強部材表面の強化繊維に無補強時よりも大きなひずみが作用することが明らかとなった.

  • 嶋川 理, 堀口 俊行, 別府 万寿博, 香月 智
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_381-I_392
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    近年の異常気象によって大規模な土石流が発生し,鋼製透過型砂防堰堤が破損する事例が報告されている.この主因は設計荷重を上回る石礫型土石流が衝突したことが原因とされている.今後,大規模な土石流に耐えうる構造設計を目指すには,この破壊メカニズムに関する解析的検討が望まれている.そこで本研究は,被災事例の調査結果で整理された破壊シナリオの推定について,その可能性を検討するために事前模型実験を行ったうえで,力学的分析を個別要素法によって検討したものである.その結果,前面を支える下流側の斜材の先行破壊に加えて,鋼管継手部の強度が中空鋼管に比して低いことが重要な因子であることが明らかになった.

  • 升井 尋斗, 車谷 麻緒
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_393-I_402
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    本論文では,セメント系材料の圧縮破壊に対して,修正von-Mises 基準に基づいて定式化された損傷モデル,およびそれを用いた有限要素解析の適用性を検討する.はじめに,円孔を有するモルタル平板の圧縮破壊実験を参照し,同条件で実施したシミュレーション結果と比較することで,圧縮破壊に対する修正 von-Mises 損傷モデルの適用性を検討する.次に,同様の実験を独自に行い,荷重-変位応答とひび割れ進展挙動を計測した結果と同条件のシミュレーション結果を比較することで,実験と同様の結果を定量的に再現できることを示す.最後に,メッシュサイズの異なる有限要素モデルに対して,修正 von-Mises 損傷モデルを用いた有限要素解析による圧縮破壊挙動の再現性について検討する.

  • 車谷 麻緒, 坂 敏秀, 山本 佳士, 上田 尚史, 龍頭 正幸, 小林 樹人
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_403-I_412
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    本論文では,コンクリート構造物の非線形解析に対する V&V のうち,特に Validation に関する基礎的研究として,荷重-変位曲線を低コストで出力可能な代替モデルを作成し,非線形有限要素解析の代わりに代替モデルを用いることで,不確かさを定量化するためのモンテカルロシミュレーションが行えることを示す.本論文の検討対象を鉄筋コンクリートはりとし,はじめに,挙動のばらつきを調べた実験結果を示す.次に,本論文で用いるシミュレーションの再現性能を検証した後,材料パラメータに関する感度解析について示す.実験および感度解析の結果から,非線形有限要素解析の代替モデルを作成し,その妥当性確認を実施した後,代替モデルを用いてモンテカルロシミュレーションが低コストで行えることを示す.

  • 伊波 友生, 久加 朋子, 山口 里実, 吉川 泰弘
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_413-I_423
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    下流端水位が異なる場における小規模河床波の発達状況とその影響で生じる水位縦断形状の把握を目的に,水理実験を実施した.ならびに,ブルーレーザを用いて非接触で水面形と水面下の河床計測を試み,移動床実験におけるその有用性も議論した.実験の結果,せき上げのケースでは水路全区間で河床波が発達し維持され,それに伴い水位が上昇した.一方,低下背水のケースではある区間において急速な河床波の発達が見られたことから,流れが加速する状況下において河床波の発達が促進される条件が存在する可能性が示された.

  • 安田 陽一, 村野 哲太
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_425-I_432
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,雨水幹線に接続する急勾配の雨水管とマンホールに流入する雨水管の排水能力を向上するためにはマンホール内に形成される局所流の形成を工夫するによって排水能力が向上することを実験的に見出した.横引管の接続角度を 90°,120°,150°,180°とした場合を対象に, マンホール下流の横引き管の勾配を変化させ,マンホール上部を開放した場合と閉塞した場合を比較すると,接続角度が 180°を除き,マンホール上部を閉塞させたことによって,マンホール内のらせん状の回転流の回転力が増し,マンホール流出口でも回転しながら排出するため,流出口の剥離が軽減され,排水機能が向上することを示した.特に接続角度が 120°の場合,マンホールに接続する横引管流入部で評価した流量係数が 0.7 から最大 1.2 まで向上する場合があることを示した.

  • 赤堀 良介, 岡田 拓巳, 久志本 陸
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_433-I_440
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    本研究では水遊び時の水難事故が多発する箇所を対象として数値解析を実施することで,流れの特徴的な構造やその周期性について検討を行った.流れの検討を実施する際には,ラジコンボートによる測深やポール式のカメラによる高所撮影などを実施し,詳細な河道の形状を取得した.平面 2 次元および 3 次元乱流モデルによる流れの数値解析を実施した結果,瀬から淵にかけての下降流,狭窄部下流の縮流,および狭窄部下流の循環流の存在が,水難事故発生個所の特徴として推測された.数値解析結果に対してスペクトル解析を実施し,それら特徴的な流れについて周期性を検討した結果,概ね局所的な地形の空間スケ ールと平均流速に規定された周期を有することが推測された.

  • 吉広 健太, 冨永 晃宏
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_441-I_449
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    浮遊ゴミを捕捉する為に,単純長方形断面水路において片側側岸に斜め桟粗度を設置し,二次流の生成を行った.斜め桟粗度の設置間隔,設置角度による二次流の強さへの影響を検討し,表面付近の横断流速が最も大きくなる配置を得た.しかし,斜め桟粗度を片側に設置した場合,二次流による横断流速の有効な範囲に限界があることが示唆された.浮遊物捕捉実験では,二次流を利用して浮遊物モデルを片側に移動させ,フィルターを使用することで高い捕捉率を得ることができた.

  • 泉 典洋, 高津 教彰, 川村 里実
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_451-I_456
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    洪水時,側岸侵食による河川堤防の決壊が流量のピーク時ではなくピークから減少する過程で発生するケースがいくつか確認されている.本研究では,側岸侵食の原因が砂州の発達による流れの偏奇にあると考え,流量の変化を考慮した砂州の安定解析を行った.流量の変化する速度が砂州の波高が発達する速度に比べて十分にゆっくりであると仮定し,河床変化の時間 𝑡 と流量変化の時間 𝑇 の二つの時間を導入する.それら二つの時間スケールによる多重尺度展開を用いた線形安定解析を行うことで擾乱の発達速度を 𝑇 の関数として求めた.解析の結果,擾乱に対する河床の不安定性が最大になるのは流量がピークよりも小さい時であることが明らかとなった.

  • 佐藤 柳言, 高橋 正行, 大津 岩夫
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_457-I_466
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    長方形断面水平水路の自由跳水の長さとエネルギー損失との関係をエネルギー方程式に基づき説明した.与えられた跳水始端のフルード数とレイノルズ数に対して,流入射流の乱流境界層が未発達の場合(UD) と十分に発達した場合(FD) を対象に,跳水の流速と乱れ強さを測定し,乱れの対流項と検査面に作用するレイノルズ応力による仕事を求めた.平均流のエネルギー方程式と変動流のエネルギー方程式より,跳水長の物理的意味は,跳水によるエネルギー損失が達成される長さであることが確認された.

  • 徳永 宗正, 池田 学
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_467-I_476
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    本論文では,複線PRC桁の非線形等価縮約モデルと鉄道運行情報ビッグデータを活用した動的解析手法を組み合わせた解析手法を開発し,実橋りょうで観測されている現象の再現を試みた.初めに,コンクリートのひび割れ発生後の履歴特性を考慮した非線形等価縮約モデルを構築し,実測と3次元有限要素モデルとの比較により妥当性を確認した.本モデルにより,列車すれ違い時の複線載荷を繰り返し経験することでPRC部材の再載荷時剛性が徐々に低下し,共振現象が発生するメカニズムを明らかにした.列車運行解析に基づき動的応答の経年変化を評価した結果,大規模なダイヤ改正後の複数回の複線載荷により剛性が急激に低下し,共振速度が運行速度と近くなることで変位が急増することを示し,実際の観測現象および変位等の実測値との整合性を示した.

  • 中村 朋佳, 吉田 郁政, 珠玖 隆行
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_477-I_484
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    本研究では圧密沈下の予測問題を対象とし,時系列の観測量に基づくデータ同化手法と信頼性解析を組み合わせて限界状態確率の更新を行う方法について報告した.沈下予測解析では土/水連成有限要素法を用い,データ同化手法としては Particle Filter を用いることで予測沈下量の観測更新及びその不確定性の推定を行った.土/水連成有限要素法による順解析に基づき大きさが異なる 3 つの沈下量の時系列を観測量として設定した.観測量が存在する地点と存在しない任意の地点を予測対象とし,時間方向の観測量の個数増加に応じた限界状態確率の更新を行う例を示した.観測量の個数増加とともに予測の修正が行われるとともに予測の不確定性の減少を定量的に算定することができ,より合理的な意思決定を行うことができる.

  • 富澤 幸久, 吉田 郁政, 大竹 雄
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_485-I_494
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    地盤物性値の空間分布はトレンド成分とランダム成分に分けてモデル化されることが多い.ランダム成分は空間分布の局所的なデータのばらつきの特性を把握する上で重要である.複数の確率場を重ね合わせたガウス過程回帰を用いて,コーン貫入試験で測定された 2 種類の試験データを対象に 1 次元と 3 次元空間のデータに対してトレンド成分とランダム成分の分離を行い,ランダム成分を対象に自己相関関数の検討を行った.Gaussian, Markovian, Binary noise, Whittle-Matérn, Gaussian-Markovian 相加平均モデルなどの様々な自己相関関数について情報量基準 AIC や BIC を用いた比較を行った.モデル選択の結果,Whittle-Matérn や Gaussian-Markovian 相加平均モデルがランダム成分の自己相関関数として選択された.選択されたモデルを用いて任意の位置でのトレンド成分,ランダム成分を推定する例を示した.

  • 中村 勝哉, 小林 義和, 小田 憲一, 池端 宏太
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_495-I_506
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    Acoustic Emission(以下「AE」と称する.)を非破壊検査に用いる試みが行われており,その試みの一端としてAE到達時刻を入力値とするAE位置標定法や,AEトモグラフィ法等により材料内部の破壊または物性を可視化した例が報告されている.これらの手法ではAEの正確な到達時間が必要となるが,AEの測定データが膨大になるため,到達時刻を目視で判読することは容易ではなく自動的に検出することが望ましい.本論文では,AE時刻歴波形ノイズ部の実行電圧を判定基準とした到達時刻を自動的に検出する手法を提案する.また,提案法の妥当性を模型試験より検証し,既存の手法であるAR-AICと比較した結果,提案法は低S/N比かつ,せん断波等が混在したAE波形に対して既存の手法と比較してより正確なAE到達時刻を検出した.

  • 島本 由麻, 鈴木 哲也
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_507-I_514
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    本論では,損傷が進行したコンクリートを対象に,X 線 CT により空隙量および空隙形状を評価した.加えて,AE 法を導入した圧縮強度試験を実施し,AE エネルギと空隙分布との関係を考察した.検討の結果,空隙分布によって AE エネルギ発生挙動が異なることが明らかになった.空隙表面積が小さい供試体では複数の AE エネルギのピーク値が確認され,段階的に破壊が進行した.一方,空隙表面積が大きい供試体では線形的に AE エネルギが増加し,急激に破壊が進行した.ひずみが 100×10-6 までの AE エネルギと空隙体積および空隙表面積には正の相関があることが明らかになった.以上より,圧縮応力場における載荷初期の AE エネルギに着目することで,空隙分布を評価できる可能性があると考えられる.

  • 谷口 望, 柴崎 和哉, 平野 雄大, 小林 寿子
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_515-I_523
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    鋼構造物のメンテナンスは重要な研究課題であり,そのなかでも,鋼構造物において古くから使用されてきたリベット接合の耐荷力挙動を把握する必要性は高い状況にある.そこで本研究では,リベット接合を用いた供試体を製作し,載荷試験を行った.さらに,これらの試験を弾塑性 3 次元解析を用いて,リベ ット接合付近の挙動を検討した.本検討の結果,リベットを有する供試体の荷重-ひずみ関係の初期勾配は,リベットを使用していない供試体のそれよりも小さいことがわかった.また,解析結果との比較から,リベット締結時に残留応力が発生していることが想定できる結果となった.

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