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溝口 敦子, 小野 貴裕
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15001
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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交互砂州の研究は古くから行われてきた.これまでの研究は定常流量に対する砂州の平衡状態に対する議論が多く,実河川で起こっている現象の数値解析的検討以外は非定常流量下での研究は少ない.本研究では,令和元年台風における千曲川の上田電鉄の落橋被害を踏まえ,流量時系列の変化が砂州の変化に及ぼす影響を明確にするため,水路実験を行った.
実験では,非定常流量で作成した砂州を初期形状として,四つの流量パターンを通水し,水位変化と砂州の移動を調べることによって,非定常流量の砂州移動と形状変化に関する定性的な知見を得た.具体的には,増水期および減水期の流量変化率を変化させ,その時の砂州の動きや最終的に形成される砂州地形の特徴の変化を示した.結果として増水期は砂州が進行しやすく,かつ流量変化率が高いと進行速度がより大きくなることや,流量ピークを越え減水期に移動停止限界に近い低流量が長く流れると側壁沿いに長く深掘れが発生しやすいことなどを示すことができた.
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伊東 和輝, 内田 龍彦
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15002
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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洪水時における水位,流量は洪水流を表す基本的な水理量であり,これらの観測は重要である.近年ではPIVなどの画像解析による水表面流速の推定手法が発達し実用化されているが,水表面流速からの内部流速分布の推定に加え,水位観測と比較して洪水時の河床高を計測することは極めて困難であることから,洪水時の河床高を含む内部三次元流況を推定することは未だ困難である.本研究では洪水時において画像解析により表面流況から内部流況を推定することを最終目標として,その第一歩として滑面直線水路において水面変動と水表面流速を点計測し,それより水表面流速と水深の推定を行った.また水面変動の点計測より推定された水表面流速と水深はPIVによる水表面流速と実水深と近い値を取り,水面変動から推定可能である結果が得られた.
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芳谷 和哉, 山田 貴博
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15003
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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Mindlin–Reissner板の動的問題に陽解法を適用する場合,その数値安定性は面外せん断変形に起因する最小固有周期で決定される.本研究では,面外せん断応力を独立変数とする混合型有限要素法を採用し,拘束条件付き問題に対する時間積分法を拡張して得られた分離型時間積分を適用する.これにより,支配的な変形である曲げ変形について陽解法,面外せん断変形について陰解法となる手法を提案し,時間刻みの制約を緩和する.また数値実験により評価し,従来の時間積分法に対して,提案手法が時間刻みおよび計算精度の観点で優れた数値特性を持つことを示した.
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小野 泰明, 上田 恭平, 渦岡 良介
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15004
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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浸透破壊は堤防や堰などにおいて古くから問題となっており,近年においては計算機性能の向上に伴い,解析的な研究が進められている.土粒子挙動の評価が可能な解析手法として離散要素法(DEM)を用いる場合,解析負荷低減のために実際の土粒子よりも大きな球形粒子によって地盤が表現される.しかし,解析粒子(DEM粒子)と実粒子との形状や寸法の差異が大きいほど,地盤の力学特性と水理特性の変化を同時に表現することは難しい.本研究では,比較的大きなDEM粒子を用いた場合でも力学特性と水理特性を共に表現することが期待できる多層球モデルを開発し,要素実験との比較により浸透破壊解析への適用性を確認した.
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石澤 修司, 野村 怜佳, 森口 周二, 寺田 賢二郎
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15006
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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本研究では,防潮林を通過する津波などの流れを2次元非線形浅水長波方程式によって解析する際,樹木抵抗力のモデル化に慣性力を考慮することが,減災効果の評価に与える影響を調査した.具体的には,Morison式に基づき抗力と慣性力の双方・抗力項のみを代入した場合の2つの運動方程式を設定し,それぞれによる解析結果を比較することで,水深の低減傾向や波の到達時刻にどのような違いが現れるかを調査した.この時,慣性力・抗力それぞれを特徴づける2つのパラメータについて,複雑な形状を有する樹木モデルに対する3次元数値流れ実験から評価した値を用い,抵抗力をより詳細に表現することも試みた.2次元浅水長波解析の結果から植栽密度が大きい場合,慣性力の有無が減災性能評価結果に影響を与える可能性を確認できた.
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木下 果穂, 牛田 貴士, 野城 一栄, 細田 暁
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15007
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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シールドトンネルの実物大セグメントの継手曲げ試験は,継手部の挙動の把握とその適切な評価をする際に重要となるが,実物大試験はコストや時間の面で負担が大きいため,それを補完する数値解析の利用が期待される.そこで本研究では,実物大継手曲げ実験で把握した継手部の挙動に基づいて,三次元有限要素解析におけるセグメント継手部のモデル化法を提案した.さらに,鉄道シールドトンネルのモデルケースを設定し,有限要素解析による回転特性の設定から骨組解析を用いたシールドトンネルの構造解析までの一連の流れを示し,本研究の有用性を例示した.
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四井 陽貴, 松岡 弘大, 服部 紘司, 貝戸 清之
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15008
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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鉄道におけるまくらぎの浮きは代表的な変状の一種であるが,目視での検知が難しく各種評価手法の開発が進められている.一方,軌道部材の破損に至る事例が報告されているものの,橋りょう上のまくらぎの浮きの評価法は道床区間ほど検討されていない.本研究では,デジタル画像相関法による全視野画像計測手法を橋りょうの斜め下から撮影した動画に適用するとともに,ホモグラフィ変換を援用することで1橋りょう上に存在する複数のまくらぎの浮きを一度の撮影で一括して抽出する手法の構築を行った.実路線における橋りょう上のまくらぎ18本への適用の結果,まくらぎとその直下の橋りょうの変位波形の差から7本のまくらぎが浮き状態にあること,推定結果が現地での隙間量の調査結果と整合的であることを明らかにした.
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重枝 未玲, 山西 威毅
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15009
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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本研究は,水深方向の水平・鉛直方向流速分布を考慮し,非静水圧を取り扱える1次元水深積分モデルを新たに構築したものである.本モデルの基礎方程式には,流下方向流速と鉛直方向流速に3次関数の水深方向分布を,圧力分布に2次関数の水深方向分布として水深積分することで得られる水深平均の方程式と半水深を原点とした重み付き残差方程式を用いた.離散化には風上差分法と流束差分離法を用い,非静水圧項の収束計算にはNewton-Raphson法を用いた.本モデルを既存のダム破壊流れの実験結果に適用し,その再現精度を検証した.その結果,本モデルが浅水流方程式に基づく解析結果に比べ,ダム破壊流れの実験結果の再現性が向上することが確認された.一方で,解析法の見直しにより収束性の改善の必要性も確認された.
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鬼束 幸樹, 武村 優之介, 渡邊 杏咲
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15010
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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近年いくつもの河川にアイスハーバー式魚道が採用されている.同魚道の通水部は潜孔と切欠きで,両流量式はトリチェリの定理および越流式より導出される.両流量式に含まれる流量係数は,潜孔あるいは切欠きのみを有する流れで得られた値が代用されているが,両者を通過する流れは相互に影響を与えるため,上記の代用は必ずしも適切とはいえない.本研究ではアイスハーバー式魚道において幾何学条件および水理条件を変化させ,潜孔および切欠きの流量係数を求めた.その結果,両流量係数は越流水深と切欠き厚との比の影響を受けることが判明したため,同比から潜孔および切欠きの流量係数を導出できる経験式を提案した.
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石川 大智, 本田 利器
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15011
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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近年,維持管理の効率化や損傷診断の正確化を目的として,橋梁の維持管理における3次元モデルの活用が着目されている.図面や点群データをはじめとして,様々なデータ形式から3次元モデルを構築する研究が盛んになされているが,効率性の側面から膨大な既設橋梁に対して適用が難しいことや,モデル構築時の不確実性が明示されていないことが課題となっている.本研究では,橋梁部位の汎用的形状を記述するパラメトリックモデルを,点群データとしてサンプリングすることによりニューラルネットに学習させる方法論を構築した.その上で,学習されたニューラルネットを用いて入力された点群データにパラメトリックモデルとしての対応づけを与えることにより,橋梁点群データの解釈を通じた3次元モデル構築手法の提案および検証を行った.
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菅原 法城, 村田 誠, 長坂 陽介, 山田 雅行, 竹信 正寛, 福永 勇介, 小林 怜夏
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15013
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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スペクトルインバージョン(GIT)の結果を用いた疑似地震動の新たな生成法を提案する.具体的には,まず,GITで使用した中小地震記録から,GITで評価した震源特性と,GITで用いた伝播経路特性を取り除くことにより,サイト増幅特性(SAF)を抽出する.その結果,地震記録数分だけ,SAFが得られる.この複数のSAFを,それぞれ用いて疑似地震動を生成することにより,自然の地震動(中小地震記録)が持つフーリエ振幅スペクトルの周波数点間の自然な連続性を反映した地震動が,乱数に頼らずに生成できる.本稿では,K-NETの強震観測点であるKNG003を対象としたケーススタディーにより,提案法を用いて疑似地震動の生成を実際に行った.更に,その生成した疑似地震動を用いて,SAFの評価方法毎に設計震度,速度PSI値を算出し,そのばらつきを評価した.
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牛田 貴士, 倉上 由貴, 冨田 佳孝, 佐藤 武斗, 松丸 貴樹
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15014
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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都市部の掘削工事で用いられる掘削土留め工の設計では,土留め壁の変位や応力に加えて,盤ぶくれ等に対する掘削底盤の安定も重要な要素である.根入れ部摩擦の向上を目的として掘削底盤を全面改良する方法は一般的な盤ぶくれ対策工のひとつである.しかし,地盤改良した掘削底盤の挙動解明により,さらなる合理的な盤ぶくれ対策工の実用化を推進することが期待される.そこで本研究では,掘削過程を模擬した土-水連成FEMを用いたシミュレーション解析により,根入れ部摩擦の向上を期待する地盤改良は掘削底面付近に施すことが効果的であると示唆する結果を得た.また,格子状に改良した掘削底盤は改良部と非改良部で挙動が大きく異なり,改良部は全面改良に近く,非改良部は無対策地盤に近い挙動を示した.
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羽生 隼輝, 渡邊 英吾, 河地 陽太, 車谷 麻緒, 櫻井 英行
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15015
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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コンクリート構造物に対する数値解析のV&V(Verification and Validation;検証と妥当性確認)に関する基礎的研究として,せん断破壊型の鉄筋コンクリートはりの Validation 実験を実施した.本実験の特徴は,V&Vの妥当性確認において,数値解析と比較しやすくするために,実験に含まれる不確かさを可能なかぎり制御したことである.まず,コンクリートの特徴である材料特性のばらつきを極力低減させるために,すべての試験体を同一日に(同時に)作製した.さらに,実験方法や実験実施に伴う不確かさ(人的誤差)を極力低減させるために,実験者を習熟度の高い1名に固定して,同一の試験機により4点曲げ実験と材料試験を実施した.また,非線形有限要素解析により,得られた実験結果の再現性も確認した.
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松岡 弘大, 服部 紘司, 田中 博文
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15016
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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近年,地上から1橋りょうずつ計測されてきた鉄道橋の桁たわみを,車上計測された軌道変位から推定する方法論の開発が急速に進んでいるが,国内鉄道で多用される2台車検測方式で得られた軌道変位と桁たわみの理論的関係や推定法は十分検討されていない.本研究では2台車検測方式で得られる2組の軌道変位の差分(高低検測差)が桁たわみ最大値に比例することを理論的に導出し,高低検測差から変換係数により桁たわみを推定する手法を開発した.実路線での精度検証の結果,隣接桁のたわみの影響により単連の梁理論に基づく変換係数では推定精度が低いこと,同種の桁が連続する場合に適用可能な簡易な補正法により対象桁では誤差5%程度まで推定精度を改善できることを示した.
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栗田 哲史, 北爪 貴史, 酒井 直樹, 山野辺 慎一
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15017
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
ジャーナル
認証あり
地盤振動計測による土石流検知を目的として,著者等は土砂流動実験による地盤振動の性質について検討を行っている.土砂流動を検知するためには,急峻な渓流のごく近傍で大きい信号を捉えようとするのが一般的である.しかし,そのような好条件の場所に常に計測器を設置できるとは限らない.そこで,本研究では土砂流動の発生源からある程度距離が離れた地点で得られる地盤振動に基づいて,土砂流動発生の検知を試みる.土砂流動実験から得られた地盤振動記録を基に,周波数特性に着目した地盤振動モデルを構築した.土砂流動の検知方法としては,このモデルと計測記録との適合性によって判定する事を提案する.実験データを用いた検討により,地震動に対する誤検知回避も含め,提案手法の有効性が示された.
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津田 悠人, 吉田 郁政, 大竹 雄
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15018
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
ジャーナル
認証あり
地盤物性値の空間分布を把握するために地盤調査が行われるが,コストや工期の制約により限定された場所だけで実施され,十分ではない場合がある.そのため,注目する物性値と相関を有する間接データを有効に活用し,合理的に地盤物性値の空間分布を推定することが好ましい.本論文では,間接データとの相関性を考慮したガウス過程回帰による空間分布推定手法の提案を行った.直接データは標準貫入試験によるN値,間接データは杭施工時に得られるトルク値とした.提案手法を模擬データと実測データに適用した計算例を示し,その推定精度をcross validationにより検証した.間接データを活用することにより,正確な空間分布を推定できることを示した.
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丸山 收
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15019
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
ジャーナル
認証あり
道路資産のアセットマネジメントを実践していくためには,車両の走行安全性,乗り心地に影響を与える舗装状態を把握し,適切な補修サイクルを実施することが必要となる.本研究は,舗装状態を把握することを目的として,走行車両応答を観測データとして得たときに,車線軸に沿った進行方向の路面凹凸をオンラインで推定する手法を提案している.走行車両―路面凹凸系の入出力関係を,観測データに対応した1変量ARMA型差分式に表現して,カルマンフィルターの状態方程式および観測方程式に定式化している.ここでは,車両を1自由度系にモデル化して,数値シミュレーションデータにより提案手法の基礎的な検討を行っている.
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和田 涼太朗, 大野 徹士, 吉田 郁政, 関屋 英彦, 森近 翔伍, 安田 篤司, 吉浦 伸明
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15020
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
ジャーナル
認証あり
橋梁施工において橋面の高さ管理が必要であるが現状では人力によるレベル測量を用いており,労力を要している.近年のセンシング技術を活用することでこうした測量の負担軽減の可能性がある.本論文では,建設中における橋梁の鉛直変位を橋梁上の何点かで計測した傾斜角に基づいて推定する手法の提案を行った.提案手法では3次元有限要素法モデルの上床版に作用する仮想外力を逆問題の未知量とし,推定された仮想外力に基づいて変位推定を行う.提案手法を建設中の橋梁に適用し,コンクリート打設日,施工無し日,緊張日における計測結果から鉛直変位の推定を行った.レベル測量による変位と比較した結果3mm以下の誤差で推定されることを確認した.
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古川 陽, 吉野 一輝
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15021
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
ジャーナル
認証あり
本論文では,面外波動問題を対象に,基本解を用いて表現された波動場に基づいて,線形弾性体の境界条件を推定する逆解析手法の開発を行った.提案する境界条件推定手法は,構造部材の接着面における剥離部分の推定への応用を目標としており,観測情報に含まれる剥離部分の影響から,波動場の再構成を行う.その後,再構成された波動場から推定対象となる境界の物理量を計算し,境界条件を推定する.提案手法は,数値シミュレーションを援用する他の逆解析手法とは異なり,線形方程式のみで推定を実現することができる.数値解析例として,半無限領域および有限領域によって構成される解析モデルに対する結果を示し,提案手法の有効性について議論した.
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片山 創一朗, 北原 優, 長山 智則
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15022
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
ジャーナル
認証あり
供用環境下における振動計測から免震橋梁の残存耐震性能を評価することは,ライフサイクルマネジメントの観点から重要である.この際,経年変化したゴム支承の力学的特性に関する不確定性の定量化が求められるが,既存橋梁のパラメータは径間毎にもばらつきを有する.本研究では,5径間連続RC免震橋の2次元有限要素モデルを対象に地震応答シミュレーションを用いたベイズモデル更新の数値的検討を行った.その結果,径間毎に桁または橋脚天端の複数地点を観測することで,逐次モンテカルロ法の一種であるTMCMCにより求めた事後分布は経年変化したゴム支承のパラメータ不確定性を径間毎の変動性を含めて適切に評価可能であり,推定結果は計測ノイズに対しても比較的頑強であることを明らかにした.
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峯 好古, 別府 万寿博, 市野 宏嘉, 松澤 遼
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15023
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
ジャーナル
認証あり
近年,竜巻により巻き上げられた飛来物および火山噴火によって生じる火山噴石が人や構造物に衝突して生じる被害が報告されている.飛来物の形状には様々なものがあるため,飛来物の先端形状がRC版の破壊特性に与える影響を解明する必要がある.本研究は,先端形状の異なる飛来物がRC版に衝突した場合の衝撃応答について考察したものである.実験的検討では,先端形状を変化させてRC版に対する衝突実験を行い,衝撃応答およびひび割れ性状について調べた.次に,数値解析を行って実験の再現性の確認およびRC版の衝撃応答について考察した.その結果,衝突速度60m/sにおいて平坦型の場合のみに裏面剥離が生じ,RC版へ作用するせん断力は平坦型が最も大きいことがわかった.
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森 広毅, 別府 万寿博, 市野 宏嘉, 原田 耕司, 松澤 遼
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15024
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
ジャーナル
認証あり
飛来物の単一衝突を受けるRC版の裏面剥離に関する検討は行われてきたが,繰返し衝突を受けるRC版の応答特性や裏面剥離に関する検討は著者らの知る限り行われていない.本研究は,飛来物の繰返し衝突を受けるRC版の応答特性および裏面剥離に関して実験および数値解析的な検討を行ったものである.実験では,飛翔体および試験体の版厚および配筋を変化させて,繰返し衝突におけるRC版の裏面剥離および裏面加速度等の特徴を調べた.数値解析的な検討では,既往のコンクリートモデルを用いた場合の繰返し衝突を受けるRC版の裏面剥離の再現性について検討した.
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小川 太希, Luo Pengjun , 堤 成一郎
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15025
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
ジャーナル
認証あり
溶接継手に生じる応力集中は疲労性能に大きな影響を与えることが知られている.著者らは溶接継手の2次元断面形状データに対して,母材及び余盛部を含む全ての形状パラメータを統一的かつ高精度に捕捉し,応力集中係数までを自動算出可能な手法を提案している.本研究では,溶接継手の多断面形状分析に基づく疲労性能支配因子評価技術の確立を目的として,まず多断面の形状および応力集中係数を高効率に評価できるように従来手法を拡張した.次に,疲労試験結果との照査により,応力集中係数の中央値が疲労破壊の起点となる溶接始端部位置と高い相関があることを確認した.最後に,各種修正応力による疲労性能評価から,本研究で対象として突合せ継手に関しては,角変形・目違いおよび局所形状が特に重要な疲労性能の支配因子であることを示した.
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齋藤 和樹, 堀口 俊行
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15026
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
ジャーナル
認証あり
石礫型土石流は大きな衝撃力を持ち,砂防堰堤の損傷や住宅地等への深刻な被害を引き起こしている.砂防堰堤の被災状況を分析した結果,河床形態や既に捕捉されている土砂によって堰堤に作用する荷重が局所的に異なることが確認され,土石流荷重の詳細な解析が必要とされている.そこで本研究では,個別要素法を用いて,移動床および先行堆積礫が存在する条件下での土石流荷重の解析を行った.その結果,先行堆積礫が堰堤全体にかかる最大荷重に影響を与え,特に土石流先端が各段高さに衝突する箇所で大きな荷重が発生することが明らかとなった.また,流下から衝突に至る過程における接触力図および速度ベクトル図を用いて,先行堆積礫の存在が土石流荷重を減少させるメカニズムを分析した.
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Chien TRINH MINH , 別府 万寿博, 市野 宏嘉, 松澤 遼
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15027
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
ジャーナル
認証あり
本研究は,箱型構造物の前壁が構造物周囲の爆風圧特性に及ぼす影響を調べるため,実験および数値解析を行ったものである.まず,米国の防護施設基準の中で示されている構造物に作用する爆風圧特性の評価方法について基礎的な考察を行った.次に,Composition C-4爆薬を用いた爆発実験を行い,箱型構造物前壁の寸法形状の変化が構造物の各面に作用する爆風圧特性に及ぼす影響について調べた.また,実験に対する数値解析を行って実験結果の再現性を確認した上で,数値解析を用いて箱型構造物前壁の寸法形状の変化が構造物周囲の爆風圧特性に及ぼす影響について考察した.
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柴田 誉, 桐生 泰輔, 佐藤 啓介, フィンカト リカルド , 堤 成一郎
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15028
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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認証あり
著者らは近年,繰返し硬軟化挙動を高精度に再現可能な材料モデルを開発するとともに,疲労亀裂先端の弾塑性応答に着目した疲労亀裂進展寿命評価手法を提案し,CT,SENT試験片,十字継手に対する高い適用性を確認している.ただし,これまでの検討では,応力比𝑅が正の検討に留まっていた他,亀裂進展に伴う弾塑性変形履歴や累積損傷の考慮が充分に為されておらず,それらの考慮が予測精度に及ぼす影響に関しても明らかにされていなかった.本研究では,従来手法を拡張し,亀裂発生から破断までの全過程における弾塑性変形履歴および線形累積損傷を考慮可能とする手法提案を行い,正負2種類の応力比𝑅,また異なる2種類の最大荷重下で取得された疲労試験結果に対する検証を行った.その結果,4種の条件下で取得された実験結果を高精度に再現可能であることが確認され,提案手法の妥当性が示された.
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宮原 邑太, 堀口 俊行, 鈴木 奨之, 國領 ひろし, 石川 信隆
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15029
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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認証あり
近年, 計画規模を上回る土石流が発生し,鋼製透過型砂防堰堤(以下,鋼製堰堤)が破損する事例が報告されている.このため,災害に対する持続可能性の観点からリダンダンシーやロバストネスといった鋼製堰堤の耐荷性能の評価法に関して検討がなされてきた.しかし,継手部の影響を考慮した研究はあまり行われて来なかった.そこで本研究は,土石流流体力を受ける鋼製堰堤を対象として,その継手部が耐荷性能に与える影響について解析的に検討するものである.まず,断面分割法を用いて継手部をはり要素としてモデル化し,3次元弾塑性解析を用いて3種類の異なる形状の鋼製堰堤の継手部が耐荷性能に与える影響について検討した.その結果,変形性能の小さいトラス型の鋼製堰堤では,継手部が耐荷性能に大きな影響を与えることが明らかとなった.
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大畑 空輝, 西岡 英俊, 佐川 貴要, 山本 英史
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15031
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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既設杭基礎の周囲に鋼管矢板やシートパイルのような壁状部材(補強矢板)を打設し,既設杭に発生する断面力を低減させる耐震補強工法の開発が進められている.既設杭への補強効果は補強矢板・既設杭間の群杭効果によって生じるものであるが,両者の剛性や長さが異なるため,従来の群杭効果の評価法が適用できない.そこで本研究では,アルミ棒積層地盤での2次元模型および乾燥豊浦砂での3次元模型を用いた水平載荷実験を実施し,既設杭の断面力低減効果は,既設杭の受働くさび領域の圧縮ひずみが,補強矢板によって低減・遮断され,地盤反力が低減されることで生じることを確認した.またその結果を踏まえ,群杭効果によって生じる既設杭の断面力低減効果を剛性差も考慮して定量的に評価する手法を提案した.
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手嶋 良祐, 別府 万寿博, 市野 宏嘉
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15032
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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落石防護柵の性能照査においては実規模実験が求められるため,落石防護柵の応答を模型実験により把握することができれば有用である.著者らはこれまでに,落石防護柵の阻止面に使用されるひし形金網の静的模型実験に対してレプリカ相似則を適用可能であることを示した.しかし,低速衝突を受けるひし形金網に対するレプリカ相似則の適用性は確認していなかった.本研究は実規模および模型のひし形金網単体に対して重力加速度の有無を考慮した面外方向の鋼球衝突解析を行い,ひし形金網単体の力学的相似性について検討した.次に,阻止面および支柱をそれぞれひし形金網および鋼棒で構成した落石防護柵に対しても重力加速度の有無の影響を調べる面外方向の鋼球衝突解析を行い,力学的相似性について検討した.
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金田 一広, 須藤 友輔, 花咲 魁人
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15033
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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建築学会基礎構造設計指針では,直接基礎の極限鉛直支持力の算定式が提案されている.特に,砂地盤における寸法効果は高拘束圧によるせん断抵抗角の減少や進行性破壊による影響と考えられている.一般的に均質で一様な地盤は少なく砂・粘土などの多層地盤であることが多い.既往の研究では強度が異なる二層粘土層の検討はされているが,寸法効果を考慮した粘土層,砂層の互層地盤についてはまだ検討されていない.そこで本研究では砂・粘土の二層地盤に対して剛塑性有限要素解析を用いて検討を行った.寸法効果は土の構成モデルとして高次関数を用いる.上部砂層,下部粘土層,さらに上部粘土層,下部砂層のそれぞれに対して簡易式を示し,簡易式の適用性について検討した.
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福田 和純, 山本 健太郎, Daniel W. WILSON , Andrei V. LYAMIN
2025 年 81 巻 15 号 論文ID: 24-15034
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/01
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地表面上において載荷重を受けた粘着力を有する摩擦性地盤における複数の円形・正方形空洞の安定性を厳密に求めることを目的に,数値極限解析を適用した.一連の土被り厚,地盤強度パラメータ,地盤の単位体積重量,空洞間の中心距離を変化させた.正解値は下界値と上界値で精度良く挟み撃ちにされ,解析結果を設計チャートの形で取りまとめた.単一空洞の場合と異なり,複数の空洞間に相互作用が生じている場合には破壊モードが大きく,安定係数が小さくなり,相互作用がなくなると単一空洞の破壊モードが得られ,安定係数は大きくなる傾向を示した.
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