土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
特集号: 土木学会論文集
80 巻, 14 号
特集号(複合構造)
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
特集号(複合構造)展望論文
  • 大垣 賀津雄
    2024 年 80 巻 14 号 論文ID: 23-14001
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     建設後50年を超える鋼構造や鋼・コンクリート複合構造物が増えており,その多くは腐食による劣化損傷を受けている.また,車両重量等の増加を踏まえて,1993年に設計荷重はB活荷重(TL-25)が規定化された.さらに,兵庫県南部地震を受け,1996年に耐震設計基準の見直しが行われた.このようなことから補修・補強のニーズが高まる中で,軽量,高強度,高弾性,および腐食しないなどの理由から,炭素繊維強化ポリマーを鋼部材に適用する研究が行われてきている.その技術開発の現状最前線と今後の展望について紹介するものである.

特集号(複合構造)論文
  • 安田 翼, 大垣 賀津雄, 秀熊 祐哉, 石田 学, 鈴木 永之, VINH PHAM NGOC
    2024 年 80 巻 14 号 論文ID: 23-14002
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     鋼床版の疲労損傷の中で,Uリブ溶接部を起点とする疲労き裂の進展が発生している.このような疲労損傷の対策として,SFRC舗装の施工が標準的な工法として行われているが,これらの工法は車線規制が必要となり渋滞発生の原因となる.したがって,重交通区間を想定した鋼床版下面からの補強工法として,Uリブ内に充填する軽量樹脂モルタルとUリブ間に貼付けるCFRP成形材を用いた補強工法を検討している.本研究は3本のUリブを有する鋼床版供試体に対して,Uリブ内への軽量樹脂モルタル充填と樹脂の2次注入,およびUリブ間内へのCFRP成形材貼付けを行い,それらによる補強効果の確認を行った.また,グースアスファルト舗装と同等の熱を与え,熱影響を受けた場合の性能の変化を確認した.

  • 関本 将貴, 林 厳, 山口 隆司, 土生川 季永, 久保 圭吾, 酒井 圭一
    2024 年 80 巻 14 号 論文ID: 23-14003
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     GFRPは,軽量,高耐食性という優れた性質を有するため,橋梁付属物への適用が進められている.本研究では,GFRP壁高欄基部の接合構造を対象として,接合面処理や,基部のスロット孔内のボルト配置が,接合部の剛性や基部のL型連結部材の応力性状に及ぼす影響を解析的に検討した.その結果,L型部材は,曲げを受けると,載荷位置に近い位置で高い応力が発生して切り欠き部分から降伏が発生することがわかった.また,初期剛性は,正側載荷より負側載荷の方が,基部のボルト配置は外側より内側の方が高くなることがわかった.さらに,引張接合部のボルト軸力は,L型部材の非対称性から載荷方向で中立軸位置が異なり,正側載荷では全ボルトが引張領域となるため,均等に増加する.一方,負側載荷では不均等に増加することがわかった.

  • 宇野 州彦, 池野 勝哉, 篠田 佳男, 藤倉 修一
    2024 年 80 巻 14 号 論文ID: 23-14004
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     著者らは,従来のRC構造に代わるものとして,ウェブにスタッドを配置したI形鋼を主鋼材としたコンクリート複合構造を提案している.本研究では,まず提案構造とコンクリートとの付着性能やポアソン効果による影響を明らかにするために引抜き実験を実施し,ウェブにスタッドを配置することによるずれ止め効果に加え,ポアソン効果によりフランジ内面とコンクリートに作用する摩擦力が大きくなることで,提案構造とコンクリートとの一体性が増すことを確認した.さらに,提案構造を主鋼材として用いる場合の定着長について把握するための実験を実施し,定着長がI形鋼のウェブ高さの6倍以上の長さであれば,鋼材が降伏に至るまでI形鋼が引き抜けることなく,定着が確保されていることを確認した.

  • 林 厳, 関本 将貴, 山口 隆司, 久保 圭吾, 酒井 圭一, 青木 海
    2024 年 80 巻 14 号 論文ID: 23-14005
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     長期供用に伴う壁高欄等の橋梁付属物の劣化が問題視されている中,維持管理性や施工性の観点から,軽量かつ高耐食性を有するGFRPを用いた壁高欄が注目されている.GFRP壁高欄基部の構造は,溶融亜鉛めっき処理された鋼板を連結板として,高力ボルト摩擦接合と引張接合で構成されている.本研究では,高力ボルト摩擦接合部を対象に,作用面圧や表面処理の違いがGFRP壁高欄基部の摩擦挙動に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,実物大GFRP壁高欄を用いた曲げ載荷実験を行った.その結果,摩擦接合面のりん酸塩処理の有無,作用面圧によって,摩擦挙動は変わるものの,GFRP材料の強度によって終局耐力が決定するため,設定した継手パラメータが曲げ耐力に及ぼす影響は小さいことがわかった.

  • 佐藤 顕彦, 北根 安雄, 杉浦 邦征
    2024 年 80 巻 14 号 論文ID: 23-14006
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     GFRPの疲労照査では構造部材レベルの検討が望ましいが,材料疲労試験と比べて部材疲労試験は実施例が限られている.そこで本研究では,材料疲労試験から,GFRP部材の疲労損傷や部材剛性をFEM解析上で評価する手法を提案した.提案手法では,実験により疲労損傷を生じたGFRPの剛性低下に着目し,材料疲労試験から構築した剛性低下モデルをシェル要素に実装した.まず,実験と単要素モデルを用いたFEM解析の比較から,提案手法の妥当性を確認した.さらに,GFRP-コンクリート複合桁の曲げ疲労試験を解析上で再現した.その結果,設計荷重下では繰り返し載荷後も疲労損傷が発生しないことを確認した.また,載荷荷重や位置を変化させた解析を行い,GFRP中空部材では上フランジ下面の引張疲労損傷が先行することを明らかにした.

  • 櫻井 俊太, 大垣 賀津雄, 宮下 剛, 服部 雅史, 後藤 源太, 秀熊 佑哉, PHAM NGOC VINH
    2024 年 80 巻 14 号 論文ID: 23-14007
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     鋼トラス橋の耐荷性能に対する補強に,鋼材に比べて高強度,高弾性,軽量,腐食しないという利点を有した炭素繊維強化ポリマー(以下,CFRP)を用いた補強工法が提案されている.CFRPを用いた補強工法を適用できれば,一般的に用いられる鋼板当て板による補強よりも合理的な対策となると考えられる.本研究では主に耐震補強を想定し,鋼トラス橋のH形断面の斜材を模した長柱供試体にCFRPシートを接着する補強を行い,圧縮載荷実験により全体座屈と局部座屈の連成座屈に対する補強効果を調査した.その結果,連成座屈領域のH形部材に対するCFRPによる補強効果が確認され,すべての供試体の全体座屈に対する耐荷力は道路橋示方書および鋼・合成構造標準示方書の両方の曲線より安全側になることが確認された.

  • 中島 章典, 渡邊 忠朋, 京田 英宏, 坂口 淳一
    2024 年 80 巻 14 号 論文ID: 23-14008
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     本検討では,既設鋼桁のRC床版取替えに際して,桁端部にもプレキャスト床版を用いることを意図して,桁端部におけるスタッド配置パターンを幾つか仮定し,乾燥収縮や温度差などの作用により生じるスタッドのせん断力応答を求めた.スタッドのせん断力応答を求めるに際しては,弾性合成桁の解析に適した剛体ばねモデルによる数値解析を用いている.

     その結果,乾燥収縮および温度差の作用によるスタッドのせん断力は桁端部で非常に大きくなり,両者を重ね合わせた場合,使用性の限界状態を満足しないスタッド配置になっている.しかし,仮定した桁端部のスタッド配置パターンに対して,乾燥収縮と温度差の影響を連続的に考慮した場合には,スタッドに生じる最大せん断力は使用性の限界値を僅かに上回る程度となり,許容できる可能性があると考えられる.

特集号(複合構造)報告
  • 野口 颯馬, 中原 正人, 横山 秀喜, 筒井 康平
    2024 年 80 巻 14 号 論文ID: 23-14009
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     鉄道構造物の設計では,列車走行による動的な応答に対する増加分を衝撃係数として考慮している.また,鉄道橋においては地覆や高欄などの非構造部材が付帯しており,主桁等の主構造部材の剛性に少なからず影響を及ぼしている.これらを考慮しない場合には衝撃係数が大きくなり,活荷重が増加し,結果として合理的な設計とならない場合がある.本検討では,これまでに桁高低減を目的に試設計等が行われてきた路盤鉄筋コンクリート一体型SRC桁を対象に,非構造部材を考慮したFEM解析を実施し,実際の剛性と主構造部材のみの剛性の比から剛性補正係数を設定し,衝撃係数を算定した.その結果,設計課題の一つである衝撃係数を設計上の上限値の目安以下にできることを確認した.

  • 今川 雄亮, 大山 理, Wojciech LORENC
    2024 年 80 巻 14 号 論文ID: 23-14010
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     2000年代初頭,ドイツにおいて小スパン橋への適用を目的として,H形鋼のウェブを波型状に切断した鋼T桁を用いたプレキャスト合成桁(VFT-WIB工法)が開発され,2004年に初めて実橋に適用された.その後,切断形状を改良したクロソイド型ジベルが開発され,近年,ポーランドを中心にこれを用いたプレキャスト複合橋の適用例が増加している.本文では,ヨーロッパで開発されたクロソイド型ジベルの幾何学的条件と設計せん断耐力を示すとともに,そのせん断耐力について種々の条件下で数値計算を実施した結果について述べる.最後に,ポーランドでクロソイド型ジベルが適用された最近の施工事例の特徴を示し,わが国へのクロソイド型ジベルの導入と展望について述べる.

  • 梶原 淳生, 中村 一史, 小林 拳祐, 花村 光一, 新倉 利之
    2024 年 80 巻 14 号 論文ID: 23-14011
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     RC床版の鋼製アンダーデッキパネル工法における重量の増加に伴う課題に対し,軽量で施工性に優れるFRP桁を床版下面に配置する補強工法の開発を行っている.FRP桁には,引抜成形された,炭素,ガラス繊維からなるI形断面ハイブリッドFRP桁,ガラス繊維からなるダブルウェブ形式のI形断面GFRP桁の適用を計画している.本研究では,補強工法の実用化に向け,実物大のFRP桁を対象に,3,4点曲げの載荷試験を行い,曲げ特性を実験的に検討した.検討の結果,対象としたFRP桁は設計荷重に対して十分な安全性を有することが確かめられた.また,FRP桁の異方性の材料物性値を等方性に換算し,等方性材料に基づいたシェル要素によるFEM解析およびはり理論を用いて鉛直変位を算定した.その結果,実験値を精度よく評価できることが確かめられた.

  • 小野寺 諒, 中村 一史, 小林 拳祐, 花村 光一, 新倉 利之
    2024 年 80 巻 14 号 論文ID: 23-14012
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     ボルトを用いたFRP部材のせん断支圧接合は,FRP部材の材料強度に依存し,それらは鋼部材の強度に比べて小さいことが課題となる.著者らは,GFRP板と鋼板の接合部の耐力を向上させる方法として,鋼板接着で補強されたGFRP板の鋼添接板による高力ボルト摩擦接合を提案した.本研究は,ハイブリッドFRP桁と鋼桁の接合部に,提案した接合方法を適用した試験体を作製し,桁接合部の耐荷性能・疲労耐久性を実験的に検討したものである.その結果,静的試験からは,桁接合部の破壊はすべりまたははく離が先行すること,ボルト軸力の導入率が小さいほどすべり破壊が先行することなどがわかった.疲労試験からは,小さい荷重範囲において接着接合部に初期はく離が生じるものの,初期はく離は桁接合部の疲労耐久性に影響はないことが確かめられた.

  • 高橋 京祐, 中村 一史, タイ ウィサル , 松井 孝洋, 堀井 久一
    2024 年 80 巻 14 号 論文ID: 23-14013
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     補修方法における当て板接着工法では,繰返し荷重を受ける際のはく離の疲労強度に関するデータは少なく,疲労設計法が確立されていない.本研究では,真空含浸工法(VaRTM)を応用して,鋼板またはCFRPを鋼板に接着した試験体を作製し,それらの試験体に繰返し曲げ荷重を加え,はく離とその進展を計測した.その結果,静的試験時のはく離時の主応力に対する疲労試験時の主応力範囲の比で整理することで,S-N線図を作成し,それらから曲げ疲労特性を精度よく評価できることを示した.また,過去に実施された曲げ載荷および引張載荷による実験と比較を行った結果,類似の傾向が見られたことから,接着剤,作用力および接着方法によらない評価ができる可能性が示唆された.

  • 粟津 和弘, 小野寺 諒, 中村 一史, 小林 拳祐, 新倉 利之
    2024 年 80 巻 14 号 論文ID: 23-14014
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     本研究は,GFRP板と鋼板との高力ボルト摩擦接合の実構造物への適用性を目指して,実験的な検討を行った.接合面の静止摩擦力に及ぼす表面処理の影響を簡便に評価するためのスクリーニング法(以下,すべり傾向試験という)を考案した.表面処理の組み合わせをすべり傾向試験により検討して,施工性を考慮した3パターンを絞り込んだ後,摩擦接合継手試験を行い,すべり係数を取得した.その結果,GFRP板側と鋼板側には,硬度が同種となる無機ジンクリッチペイントを施工して,摩擦接合面を形成するケースが最も高いすべり係数を得ることができた.

     FRP材料の接合時にボルト軸力の低下の要因となるFRP板のクリープ現象については,本締め時の設計ボルト軸力以上の軸力を予備締めの工程で導入することで,ボルト軸力の低下の抑制が示唆された.

  • 久保 圭吾, 神野 夢希, 永見 研二, 浅野 貴弘, 飯田 浩貴, 上岡 一成
    2024 年 80 巻 14 号 論文ID: 23-14015
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     近年,跨道橋や跨線橋では,点検及び維持管理の効率化のため,GFRP常設足場を設置する事例が増加しつつある.常設足場は,点検者の荷重だけでなく,作業時に点検者や工具等が落下した際の荷重に対する安全性も確保する必要がある.また,床版の損傷が顕在化している既設桁に取り付ける場合,床版下面コンクリート片が落下した際の,路下の第三者被害を防止する性能も求められている.本研究では,GFRP常設足場の設置方法毎に,点検者や鉄筋,はく落を想定したコンクリート板などを落下させることで,衝撃荷重に対する安全性の確認を行った.この結果,GFRP常設足場は,パネルの変形により,ある程度衝撃荷重を吸収できることから,貫通などは生じないが,パネル継手部にコンクリート板が落下した場合は,損傷の恐れがあることが確認できた.

特集号(複合構造)委員会報告
  • H108 複合構造委員会・土木構造物の300年暴露プロジェクト小委員会
    2024 年 80 巻 14 号 論文ID: 23-14016
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     近年,我が国では社会インフラの老朽化が問題視され,高度経済成長期に建設された構造物の更新が本格化している.このような中,2030年に向けて持続可能社会の実現を目指すSDGsの17の目標や,土木学会の提言「22世紀の国づくり」など,建設業界としても将来を見据えた課題の解決に取り組んできている.本研究は,これらの取り組みの延長線上にあり,将来的な気候変動や人口減少社会に対応する土木構造物の超長期的な持続性に関するプロジェクトの第一実施段階である.平成24年度に実施した研究成果を元に,構造の観点から検討を加えて,複数の建設材料・部材について300年間の超長期の暴露試験を開始した.将来,成果を広く周知し,超長期設計耐用期間を有する構造物の実現に向けて土木学会全体での議論と取り組みに発展することを期待している.

  • 複合構造委員会・FRP複合構造の設計・維持管理に関する調査研究小委員会
    2024 年 80 巻 14 号 論文ID: 23-14017
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー

     FRPは軽量・高強度・腐食しないなど卓越した性能の活用が期待され,鋼コンクリートに限定しない複合構造を構築する素材の代表例として,2014年制定複合構造示方書で初めて記載されたが,実際にFRP構造物を設計,施工,維持管理するには,解決すべき課題が残されていた.これら課題のうち実務的側面も含め,多方面から多くの関係者を募り集中的な研究を行うのが望ましいと考えられた技術的事項(1. 部材の力学性能の評価方法と基礎データの検証,2. FRP複合構造の設計技術の調査研究,3. FRP構造物の維持管理方法,など)について調査研究を行うことを目的とし,FRP複合構造の設計・維持管理に関する調査研究小委員会(H218)が複合構造委員会内に2017年7月に設立され,5年余りにわたる活動を行った.本報告ではこれらの活動の主たる成果をまとめた.

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