学習者用デジタル教科書が持つ「教科書の紙面の背景色・文字色を変更・反転する」等の機能による個の特性に応じたカスタマイズは,これまでの紙の教科書単体では不可能だったことであり,学習者用デジタル教科書を使う大きな意義と言って良いであろう。しかし,教師がデフォルトの設定を想定してペンやマーカーの色の指定を指示してしまうと,児童によっては画面をカスタマイズの具合次第でペンやマーカーの色が背景色とかぶってしまい,ほとんど見えなくなってしまうという事態が発生する。本発表では,こうした学習者用デジタル教科書活用で陥りやすい問題をインクルーシブ教育の視点から見直し,適切な活用方法を提案する。
本授業実践は、児童主体の授業づくりを通して、児童がもっと学びたいという授業への創造力・発信力の向上がねらいである。本授業では学習者用デジタル教科書やアプリケーションを併用し、児童自らが課題を発見・解決し表現・発信する授業が展開でき、ICT 活用が児童の豊かな創造力・発信力向上につながる有効な手段のひとつとなった。
小学4年生総合学習でおこなったプロジェクト学習(以下PBL)の実践でのICT活用を通じて、情報活用能力の育成を考察する。
新型コロナの影響により,今日の中学校教育現場におけるICT機器は生徒一人1台の環境が整備されたといっても良い.しかし,数学教育におけるICT利用はまだまだ少ない.本研究は,中学1年生における1次方程式の指導にICTを利用した指導を取り入れた.中学1年生に数式処理システムを利用した等式の性質の指導を行うことで,等式の性質に関する理解と方程式を解く計算能力が向上するのではないかという仮定の下で検証を行った.その結果,方程式を解く際の「移項」の概念を理解するのに,等式の性質が関わっていることきちんと理解できていることが確認できた.
本研究は、特別支援学校の学校防災を事例として、動画マニュアルにおける情報の送り手にアバターを設定し、アバター映像に対する好意度を評価した。対象校の保護者(N=30)の評価の結果、アバターに比較的好意的ではあったが、一部非好意的な回答もあった。これは、ビデオ講義における講義者映像の研究と同様の傾向であった。ここから、アバターは比較的好意的に受け入れられるが、実践上はアバターの有無を選択できる形式が望ましいと考えられる。
本稿では,教科書・教材がデジタイゼーションにより,デジタライゼーションに向け投影の無線接続などに取り組んだことで抱えた問題点を含む中等教育環境での運用実践報告である.具体的には,6〜8千人の生徒を抱える7校規模の中等教育機関(中学・高校・中等教育学校)で授業教室に導入した無線接続表示端末について,電子申請が行われてから起きた問題点の状況を報告する.デジタライゼーションへの一歩として記録方法の変更は,導入後3年半以上経過してから始められた.今回の数値は,実際に起きている問題の十分の一程度である.表示端末無線化は,利便度向上と反して,問題の判別,回避,追跡が困難である.しかしながら,日本の教育では,個別最適な学びへと進む中,より学習者へ寄り添うような環境整備が求められている.こうした問題点を明確にすることで,よりデジタル教科書・教材の開発の進展に努めたい.
本研究の目的は,パソコン操作に不慣れなデータサイエンス初学者が楽しく学べるデジタル教材の提案である.高等学校 教科「情報」での実践を想定する.昨年度,Google Chromeで起動するアプリケーションを開発し,それを用いて授業実践を実施した.本稿では,発展的な内容との接続性に着目しさらに改善した教材についてまとめ,それを用いた授業実践について述べる.
デジタル教材の質向上のために,教員の教材開発参加に期待する。デジタル教材開発における技術的動向の解釈を通して,制作ツールとソーシャルメディアによりアマチュア開発者の教材開発が広がる可能性と,課題として技術の高度化に伴う教員コミュニティの重要性を示した。
日本と国際比較で「算数・数学の勉強は楽しい」「数学を使うことが含まれる職業につきたい」はどちらも10ポイント以上低く,日本の理数教育は課題が多いことがわかる.実践校では特に中学1年生より幾何分野について苦手意識を持つ生徒が多い.そこで,本研究では,中学1年の夏期講習の教材として,スピログラフを題材に簡易CADソフトを用いて,空間把握能力を育み,生徒自身がICT活用による拡張性を体験できるSTEAMを意識した授業開発・授業実践を行い,生徒の変容とその学習効果を検討した.
近年の教育において重要性の増している批判的思考について、データを題材に実施可能な授業モデル案を作成し、高校の生物と探究的活動、大学の情報基礎演習の3つの授業で実施した。様々な教科、題材に幅広く対応できる可能性が示唆されたと共に、生徒からはグラフの単なる読み取りを超える課題に、新鮮さや難しさを感じている事が共通して見られた。
2022年4月より施行された高等学校学習指導要領では,「教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと」として,他教科連携に努めることが掲げられている.本研究では,2022年度新カリキュラムにおける高校1年の歴史総合「現代的な諸課題の形成と展望」,数学I「データの分析」,SDC(ソーシャルデザインキャンプ)「社会課題発見・解決体験型学習」,総合探求「総合的な学習(探究)の時間」での学習を踏まえた情報I「コミュニケーションと情報デザイン」「情報通信ネットワークとデータの活用」の2分野を中心とした授業構築と教材開発・授業実践を行い,生徒の変容とその学習効果を検討した.
本稿では,問題項目への解答データを用いて,数学の問題に対する生徒の解き直しに着目した分析を行った.具体的には,関東にある私立の高等学校を対象に,生徒にデジタル書籍を活用させた実践について分析を行った.その結果,このデータ群の解き直し回数の中央値は3.00であった.著者らのサービスを用いることで,生徒の問題項目に対する解き直しの状況を把握することや,その改善状況を確認できることの可能性が示唆された.
近年利活用が進むAdaptive Learningシステム[1]において、有効活用には、教員への研修や学習の計画立てが重要である[2]と考えられている。本稿では、実際の利活用において、教員研修を行うことで、学習者に対してより良い補助活動ができるか研修の有無によるシステム提供者への問い合わせ状況から報告する。具体的には、サポートセンターへの問い合わせ内容を精査し、分類の推移と、教員への研修の進み具合による内容の変化をまとめた。定期的な研修の有無は、使い方を含む技術的な問い合わせだけでなく、運用方法に対する問い合わせや運用面の改善・システムの利便性向上を希望する問い合わせ等、利活用を進めたからこそ、発生する疑問や要望が増える傾向が伺えた。Adaptive Learningシステムの有効活用には、研修が必要であり、利活用を進める1つの構成要素である。
卒業論文のテーマに関する議論で進行する4年次生のゼミにGatherを取り入れてメタバース教室にして実践した結果とともに,学生のアンケートからオンラインの活用について展望する。
小規模へき地校の教育課題に対して、本校児童生徒の学びを保障するために「児童生徒の課題に合わせた遠隔授業を実践することで、児童生徒の学びをより充実することができるであろう」という仮説をもとに教育活動を行った。その結果、多様な意見に触れる場面や物事を多角的・多面的に考える経験、自分の考えを伝える機会が増え、授業の学びがこれまでより深まり、自己肯定感が高まった。
2020年度から、外国語教員養成課程の「ICT基礎」のクラスにおいて、スクラッチを使用したプログラミング体験を授業に取り入れ、プログラミング的思考の育成を目指している。2021年度は、継続研究としてスクラッチを用いた小学生向けの英語教材を作成してもらい、参加者のプログラミングへの理解度、また、教材にどのくらいプログラミング的思考が反映されるのかを調査することとした。そのプロセスと結果を報告する。
本研究の目的は,反転学習を取り入れた第3学年理科「化学変化とイオン」の授業を実践し, 生徒の授業に対する意識,学習内容の定着度の観点から学習デザインの有用性を確認すること である。調査の結果,動画を視聴することで次の授業の学習内容に興味をもつことにつながる ことや,授業が分かりやすくなることが明らかとなった。また,実践後のテストでは通過率に 他分野との差がなかったことから,学習デザインの有用性が示された。
本研究では,小学校の総合的な学習の時間において,探究的な学習の過程にプログラミングを位置づけ,地域の課題解決のアイディアを具現化する授業を開発,実践した。その結果,児童の地域社会に参画する意欲や,地域社会をより良くすることへの効力感の高まりが確認された。以上のことから,開発した学習プログラムは小学生の地域参画意識を育むことが示唆された。
特別支援学校(聴覚障害)用教科書のデジタル教科書を試作し、特別支援学校教諭35名にデジタル機能を評価してもらい、評価理由の記述データを分析した。結果、特別支援学校教諭はデジタル教科書を「分かりやすさ」「児童・生徒の実態との一致」「言語指導」「専門性の継承」などの視点で評価していたことが明らかとなった。
大学生149名が、横書きおよび縦書きの日本語文書について、好みに関連する印象を13項目の尺度で評定した。全体として、横書きの方が肯定的に評価された。「美しい」という1項目だけが、横書きよりも縦書きで肯定的に評価された。因子分析の結果、横書きと縦書きのいずれにおいても、「審美性」と「可読性」の2因子が抽出された。
主体的で対話的で深い学びと叫ばれる昨今。「主体性」を考えた場合、障がいがある児童生徒、特に重度の障がいがある児童生徒は、主体性は低く、周りからの支援があって初めて「できる」と思われがちである。しかしながら、そうではないと私は考える。主体性がないわけではなく、ただ単に主体性を発揮できていないだけなのである。では、その主体性を発揮できるためにはどのようなことが必要なのか。美術の授業での実践を中心に考察していく。
本研究は大学生を対象とした,視聴覚教材としてショートフィルム,そしてディスカッションでは対面ではなくオンライン(Zoom)を活用した道徳教育プログラムの開発を行うことを目的とした。検討の結果,ショートフィルムおよびZoomを用いたオンラインでの道徳教育プログラム実践の有用性が示唆された。
A大学において、キャリア教育の視点と協働的な学びの視点を持った教育実践活動を行った。インタビュー活動を中心とし、インタビューで得た学びについてグループで協働して動画を作成し、他グループと学びを共有するものである。この活動の背景に、DX(デジタルトランスフォーメーション)が挙げられる。DXは就職活動でも行われており、就活DXにも対応できる学生の育成がキャリア教育に求められている。本実践では、3つの目標を達成するために、学生をグループに分けて課題を与えた。各グループに1人の教員を置き、全グループ共通の講座デザインで指導や支援を行った。全体の指導を行った後、グループごとの指導を3回実施し、その後、本インタビューを実施した。本インタビュー後にフォローアップの指導を実施後、各グループで動画作成を行った。動画については学生同士で意見交換をし、教員によるルーブリック評価も行った。その結果、満点に近い点数となったグループなど高評価を得たグループが多かった。以上の結果から、本実践はキャリア教育の視点・協働的な学びの視点を持った教材として効果的であることが推察される。
過去、我々はデジタル教科書の可能性やその成果などに関する様々な報告を重ねてきた。特に、デジタル書籍リーダーを操作プラットフォームとしてクイズなどのコンテンツを利用できることにメリットを感じていた[1]。本発表では、実際にタブレット端末とデジタル教科書およびVR(仮想現実)やAR(拡張現実)などのXR(クロスリアリティ)コンテンツを利用した体験型学習(小学校)を通じ、学習効果やデジタル教科書コンテンツとしてのユーザインターフェース設計について報告する。
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