日本近海のカツオ未成魚について,秋季と翌春季の漁況の関連性を検討するための基礎として,既往文献により提唱された「冬季と夏季発生群」(体長群)と各体長群における冬季を中心とする体成長について再検討を行った.用いた資料は,日齢・尾叉長関係と標識放流・再捕データの統合的解析に基づくvon Bertalanffy成長式および1978–1993年(上記既往文献による)と2000–2001年に得られた冬季を中心とする主に未成魚の標識・再捕データである.その結果,1992年秋季に標識放流され翌年に再捕された複数個体の未成魚の冬季を中心とする体成長は過少推定されている可能性が高いことが示された.また,冬季をまたぐ体長群の連続性と日本に来遊するカツオの主発生時期の数について妥当と考えられる推定結果を提示した.今後,各体長群の体成長の季節変動や,それらの発生時期などについても再検討が必要である.
常磐南部~房総海域で漁獲されたマアジについて,生殖腺重量指数(GSI)による産卵期の推定,耳石横断切片による輪紋形成期の推定と年齢査定を行った.GSIの結果からは,成熟個体は6–8月にのみ出現していたため,この期間が本海域の産卵期であることがわかった.1歳での成熟個体は確認されず,本海域では2歳で成熟することが明らかになった.一方,耳石の縁辺成長率の推移から,本海域のマアジの輪紋形成期は5–9月と推定され,GSIから推定された産卵期とほぼ一致した.これらの結果に基づいて,7月を年齢起算月として漁獲時点での年齢と尾叉長からvon Bertalanffyの成長式にあてはめたところ,Lt=29.4(1-e-0.38(t+1.08))(0.33≤t≤19.67)となった.本海域のマアジは熊野灘以西の海域と比較して成長が遅く,高齢魚が多い傾向にあった.本海域はマアジの適生息水温を下回る期間が長いことから,低水温環境が低成長,高寿命と関連している可能性が示唆される
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