水産海洋研究
Online ISSN : 2435-2888
Print ISSN : 0916-1562
82 巻, 1 号
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論文
  • 川内 陽平, 田中 寛繁, 船本 鉄一郎, 伊藤 正木, 服部 努, 梨田 一也, 養松 郁子
    2018 年 82 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/05/28
    ジャーナル フリー

    歴史的な漁業データから我が国全体の漁業や資源の動向を把握することは,漁業全体に対する具体的な管理方針を検討するために重要である.本研究では,漁獲量が多い沖合底びき網漁業と以西底びき網漁業を対象として,漁獲成績報告書(漁績)から得られる漁業情報をデータベース化し,全操業海域の漁獲量・努力量(網数)・網数当たり漁獲量(CPUE,kg/網)を基準化した値の時系列変化および網数の地理的分布を調べた.また,社会的状況等による影響を考察し,全体的な漁業・資源の動向を評価するための課題点を示した.1972年以後,多くの海域で国際協定や経営悪化等により漁獲量・網数は減少し,漁場は縮小したが,一部では資源量変動と同期的な傾向が明瞭にみられた.一方,CPUEは安定的に推移し,これは操業形態の変化等と同調していることが示唆された.今後は努力量の標準化等を進めることで,漁績データから漁業全体の操業状況や資源動向を評価できると考える.

  • 向(竹垣) 草世香, 黒田 啓行
    2018 年 82 巻 1 号 p. 14-25
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/05/28
    ジャーナル フリー

    資源量変動の推定に「年」の定義が与える影響を検討するために,マサバ対馬暖流系群において,従来の暦年集計と漁期年集計にもとづく資源評価結果を比較した.東シナ海・日本海および韓国近海のマサバ漁獲量は集計方法間で大きな差はなかったが,暦年集計では0歳魚と1歳魚が主体であったのに対し,漁期年集計では0歳魚が全体の8割以上を占めていた.資源量指標値によるチューニングVPAで推定された資源量と親魚量は,年トレンドに大きな違いはなかったが,漁期年集計の方が常に少なかった.一方,推定加入量にはほとんど差がなかった.レトロスペクティブパターンから,暦年集計と漁期年集計ともに資源量の過大推定が継続的に見られた.漁期年集計の修正の程度は多くの年で小さかったが,修正の度合いが大きい年があり,その年代ではABCも過大に算定された.最後に,漁期年集計にもとづく資源評価結果の特徴と今後の課題を整理した.

  • 原田 和弘, 阿保 勝之, 川崎 周作, 竹迫 史裕, 宮原 一隆
    2018 年 82 巻 1 号 p. 26-35
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/05/28
    ジャーナル フリー

    播磨灘北東部沿岸(兵庫県明石市から加古郡播磨町沖)のノリ漁場周辺における溶存態無機窒素(DIN)の動態とノリの品質を調査した.当海域の表層DIN濃度は,港湾内や下水処理水放流口周辺で高い傾向にあった.また,表層DIN濃度の水平分布は海岸線に沿った岸寄りの東西方向に比較的高い濃度域が広がり,沖合域は低かった.塩分やアンモニア態窒素濃度の観測結果から,調査海域東部沿岸に位置するノリ漁場周辺では,下げ潮時(当海域では東流)に港湾からの流出水および下水処理水からの栄養塩供給を受けている可能性が示唆された.また,数値シミュレーション結果でも,放流された下水処理水は下げ潮時に東の方向に流れ,ノリ漁場に到達すると判断された.さらに,同漁場のノリの色調は,港湾流出水や下水処理水等の影響を受けやすい沿岸側で良好であることが判明した.

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