水産海洋研究
Online ISSN : 2435-2888
Print ISSN : 0916-1562
86 巻, 2 号
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原著
  • 山口 篤, 濱尾 優介, 松野 孝平, 飯田 高大
    2022 年86 巻2 号 p. 41-49
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/11/02
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    2021年10月6–12日に,北海道太平洋沿岸の32点にて表面採水を行い,植物プランクトン群集を観察した.植物プランクトン群集は4つに分かれ,細胞数密度は38–9033 cells mL−1の範囲にあり,Karenia selliformisが卓越した群集で高かった.クロロフィルaK. selliformisの細胞数密度の間には有意な正の関係が観察され,その細胞内クロロフィル含有量は37 pg cell−1と見積もられた.環境要因(水温,塩分,栄養塩[NO3, NO2, NH4, PO4, SiO2])とK. selliformisの細胞数密度の関係を一般化線型モデルにより解析したところ,PO4濃度とのみ有意な正の関係が見られた.北海道太平洋沿岸における赤潮発生要因として,例年より1–3°C高い水温の水温躍層発達条件下で,表層の栄養塩が枯渇したことが示唆された.しかしK. selliformisは移動能力があるため,夜間に下層で栄養塩を取得する日周鉛直移動を行う.K. selliformisが昼間に表層で光合成を行うことにより優占した水塊に,その後密度躍層の崩壊が生じて鉛直混合によって栄養塩が供給され,大規模な有害赤潮が発生したことが考えられた.

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