水産海洋研究
Online ISSN : 2435-2888
Print ISSN : 0916-1562
86 巻, 3 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
原著
  • 長谷川 拓也, 宮川 泰輝, 服部 宏勇, 松井 紀子, 二ノ方 圭介, 日比野 学
    2022 年86 巻3 号 p. 97-109
    発行日: 2022/08/25
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル フリー

    トリガイは漁獲量変動が大きいが,年級群豊度の変動要因は不明である.本研究はその資源変動の要因を解明するために,三河湾で2006–2018年のデータに基づき,親貝量と加入量(翌年漁獲量),幼生密度および夏季最大貧酸素水塊面積の関係を解析した.また,2017卓越年級群を含む2016–2018年級群については,幼生,稚貝および競合種・捕食者の分布と貧酸素水塊の消長との関係を調べた.その結果,親貝量が多いと幼生密度と加入量が低下した.また,夏季の最大貧酸素水塊面積が広いほど親貝量あたりの幼生密度が高かったが,幼生密度あたりの加入量は低下した.卓越年級群となった2017年級群は幼生密度が高く,貧酸素水塊面積は広かったが,貧酸素水塊が早期に解消した地点ほど底生生物群集中に占める稚貝の割合が高かった.以上から,稚貝密度は幼生密度と貧酸素水塊の消長に依存し,貧酸素解消後の空白ニッチの存在が重要な要素の一つと推定された.

  • 山田 智, 風間 崇宏, 小松 伸行, 橋口 晴穂, 鈴木 輝明
    2022 年86 巻3 号 p. 110-122
    発行日: 2022/08/25
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル フリー

    三河湾西部に位置する知多湾では,トリガイの大発生は2000年代以降2007年と2018年に見られたのみで,漁獲量は低迷している.そこで本種の資源量変動や大発生のメカニズムを明らかにすることを目的として2015年から2018年に知多湾において調査を行った.2018年はトリガイが大発生し,密度は高い地点で35,000–90,000個体・1,000 m−2,生物量で700–2,800 kg・1,000 m−2と非常に高い値を示した.成体は主に春期に知多湾で産卵し,その後稚貝は知多湾周辺の浅場へ着底しそこで殻長30 mm前後まで成長することが明らかとなった.さらに10月頃に漁場である水深10 m以深の深場へ移動して,そこで急速に成長して3月には70 mmに達すると考えられた.大発生は,夏季に強い貧酸素水塊が発達することで捕食者であるヒトデ綱が減少し捕食圧が低下することで引き起こされたと考えられた.

  • 渡邊 千夏子, 後藤 直登, 武田 崇史, 岡田 誠, 長谷川 淳
    2022 年86 巻3 号 p. 123-131
    発行日: 2022/08/25
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル フリー

    2011年から2014年に,太平洋側の宇和海,紀伊水道,熊野灘,相模湾および常磐・房総海域の5海域で採取されたマアジについて,耳石横断面観察による年齢査定を行った.海域別のvon Bertalanffy成長曲線から各年齢の尾叉長を推定し,海域間で成長を比較した.宇和海では,各年齢の尾叉長は他の海域に比べ大きく,常磐・房総海域では他の海域より小さく,紀伊水道,熊野灘および相模湾では両海域の中間と,成長に海域差が認められた.いずれの海域でも1–3歳魚の割合が高かった.宇和海では9歳以上の個体はみられなかった一方,相模湾および常磐・房総海域では15歳以上の高齢個体がみられた.水温が18°C以下となる期間が長い海域ほど成長は遅い傾向が認められた.

feedback
Top