三河湾西部に位置する知多湾では,トリガイの大発生は2000年代以降2007年と2018年に見られたのみで,漁獲量は低迷している.そこで本種の資源量変動や大発生のメカニズムを明らかにすることを目的として2015年から2018年に知多湾において調査を行った.2018年はトリガイが大発生し,密度は高い地点で35,000–90,000個体・1,000 m−2,生物量で700–2,800 kg・1,000 m−2と非常に高い値を示した.成体は主に春期に知多湾で産卵し,その後稚貝は知多湾周辺の浅場へ着底しそこで殻長30 mm前後まで成長することが明らかとなった.さらに10月頃に漁場である水深10 m以深の深場へ移動して,そこで急速に成長して3月には70 mmに達すると考えられた.大発生は,夏季に強い貧酸素水塊が発達することで捕食者であるヒトデ綱が減少し捕食圧が低下することで引き起こされたと考えられた.
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