水産海洋研究
Online ISSN : 2435-2888
Print ISSN : 0916-1562
80 巻, 2 号
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原著論文
  • 長谷川 雅俊, 北門 利英, 岩田 繁英, 田中 栄次
    2016 年80 巻2 号 p. 115-123
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2022/03/17
    ジャーナル フリー

    カタクチイワシ資源等の卵稚仔量の迅速な評価は,ある地域のシラス漁業の漁況予測のために必要な情報の一つである.迅速な評価のために卵稚仔サンプルの測定時間を短縮し,かつ平均密度の推定値の偏りを小さくする方法として最確数法と直接計数を結合させた逐次結合法を開発した.この方法は密度が低いときは最確数法だが,測定が進むにつれ,高密度が明らかになったなら,偏りのない直接計数を採用し推定する方法である.この方法を駿河湾のカタクチイワシの調査データを使いシミュレーションで評価した.その結果,平均値の推定値は真値とよく一致し,推定時間も短くなることがわかった.この方法の利活用について議論した.

  • 藤川 裕司, 今井 千文
    2016 年80 巻2 号 p. 124-128
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2022/03/17
    ジャーナル フリー

    宍道湖のワカサギは1994年以来不漁が続いており,宍道湖漁業協同組合は産卵親魚の保護策として,主な産卵場である斐伊川の河口域を,産卵期に刺網操業禁止域としている.しかし,資源はいまだに回復しておらず今後,さらなる対策を検討する必要がある.その基礎資料とするため,資源量推定を実施した.ワカサギは砂礫に付着卵を生みつけるため,産卵数を調べることによって親魚の資源量を推定することが可能である.そこで,本研究では,卵数法を用いて資源量の推定を行った.2004年の産卵期に斐伊川内の主要産卵場の面積は242,987 m2,底質の深さ6 cmまでの単位面積(0.05 m2)当たりの卵数の平均値は88.4粒であり,深さ6 cmまでの産卵量は429,601,016粒と推定された.これより,産卵雌親魚資源尾数は39,247尾,雌雄の資源量は861 kgと算出された.しかし,底質を層別に調べた結果,ワカサギの卵は底質の深さ15 cmまで存在し,深さ6 cmまでの2.25倍であった.この値で補正すると産卵親魚資源量は1,937 kgと推定された.

  • 益井 敏光, 冨山 毅, 橋本 博明
    2016 年80 巻2 号 p. 129-135
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2022/03/17
    ジャーナル フリー

    瀬戸内海において2003–2005年にヒラIlisha elongataを採集し,成長や成熟を調べた.採集された389個体の標準体長範囲は,幼魚では52–85 mm,未成魚・成魚では250–556 mmで,430 mm以上は97%が雌であった.成熟体長は雄が約300 mm,雌が約360 mmであった.GSIの変化と既報の卵の出現状況から,産卵期は6–8月と推定された.耳石縁辺部のチェックマークは年に1回,4–10月に出現し,耳石が年齢形質として有効であることが確認された.最高年齢は雌雄ともに10歳であったが,8歳以上は85%が雌であった.年齢と体サイズの関係は,von Bertalanffyの成長式により,雄:SLt=422.6(1-e-0.542 (t+0.166)),雌:SLt=497.1(1-e-0.414 (t+0.225))と表された(SLtはt歳時の標準体長mm).雌雄の成長式には有意差が認められ(p<0.01),雌の方が雄よりも大型化することが明らかとなった.

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