マルソウダは主に太平洋側で漁獲される魚種だが,富山県は日本海側としては例外的に漁獲量が多い.近年,富山県の漁獲量は減少傾向となっているが,日本海における本種の資源生態的情報は極めて乏しく,要因について検証を行うことが困難な状況となっている.そこで,本研究は日本海におけるマルソウダの生物学的特徴を整理するとともに,各府県の漁獲傾向からその回遊動向を推定することを目的とした.富山県では,夏季に尾叉長30–35 cm台の個体群が出現し,秋季に22 cm台をモードとした当歳魚がこれに加わる特徴があった.夏季に漁獲された個体群は成熟しており,富山県沿岸海域で産卵を行っていると考えられた.一方,各府県の漁獲傾向から,マルソウダは日本海で夏季の北上回遊と秋季の南下回遊を行っており,南下回遊時には,富山湾内へ移入してくる個体群と,湾外を能登半島から南西海域へ移動する個体群が存在することが示唆された.
伊勢湾では,近年,全窒素,全リン,クロロフィルa濃度の低下が著しく,水温も上昇傾向にある.一方,伊勢湾東部沿岸に位置するアサリの主要漁場である小鈴谷干潟域において,2014年春季に資源の急激な減耗が起こり,その後も資源低下が継続している.その両者の関係を明らかにするため,水温,植物プランクトン量を変数とする従来のアサリ成長モデルに生殖腺へのエネルギー配分項を追加し,成長や生理的死亡を判定できるモデルを構築した.2014年の時系列データをもとにアサリの成長を試算した結果,小鈴谷干潟域における資源の急激な減耗は,植物プランクトン量の低下による生理的死亡の可能性があると考えられた.さらに,過去の栄養状態を既存データから推測し,成長を試算した結果,2008年以前では生理的死亡は起こっていなかったと推測された.
重要な沿岸漁業資源であるマツカワVerasper moseri 仔稚魚を受精卵から飼育し,扁平石と礫石の微細構造の観察と,輪紋の形成日周性の確認を行った.両耳石とも,中央には特徴的な輪紋(チェック)が観察され,これは仔魚の開口と同じタイミングで形成され,発育初期の水温が低い方が仔魚の発育が遅く,輪紋形成開始も遅れることが確認された.チェックの外側には明瞭な輪紋が観察され,日齢と輪紋数の関係から,両耳石上に形成される輪紋は日周輪と判断された.眼球移動開始期仔魚の扁平石上に観察されはじめた二次原基は,仔稚魚期を通じて礫石上には観察されず,仔稚魚期を通じた日周輪解析に適していると判断された.北海道周辺でのマツカワ資源は人口種苗の大量放流開始後,増大し,最近では,天然再生産によって生み出された可能性が高い稚魚が採集され始めている.本研究はこういった天然稚魚の未詳の生態を明らかにするうえで重要な基礎を提供するものである.
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