水産海洋研究
Online ISSN : 2435-2888
Print ISSN : 0916-1562
84 巻, 3 号
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原著論文
  • 金元 保之, 高澤 拓哉, 宮原 寿恵, 道根 淳, 沖野 晃, 寺門 弘悦, 村山 達朗, 金岩 稔
    2020 年84 巻3 号 p. 149-160
    発行日: 2020/08/25
    公開日: 2022/03/17
    ジャーナル フリー

    島根県機船底曳網漁業連合会所属の沖合底曳網漁船では2012年以降,漁業情報を活用した機動的禁漁区を導入し,アカムツ小型魚の資源管理を行っている.一方で,海域全体のアカムツ小型魚の分布状況を事前に把握し,それらの情報を基により効果的な禁漁区の場所と範囲を設定する必要性が高まってきている.そこで,本報告では2011–2018年の3–5月の沖合底曳網漁業船の操業情報と底水温,底塩分及び底流速の海洋環境情報からランダムフォレストを用いて,日本海南西海域におけるアカムツ小型魚の分布を推定及び予測するモデルを開発した.out of bag(OOB)データに対する予測誤差は,操業年に基づくモデルでは14.5%,漁期前半の一曳網当たり漁獲量に基づくモデルでは14.6%であった.さらに,漁業試験船を用いた試験操業により,漁獲の有無の予測精度を評価した結果,正答率は94%であった.これらの結果に基づき,アカムツ小型魚の時空間分布特性と分布に影響を与える要因の特徴について議論した.

  • 河野 時廣
    2020 年84 巻3 号 p. 161-177
    発行日: 2020/08/25
    公開日: 2022/03/17
    ジャーナル フリー

    サケOncorhynchus keta が回帰するときの沿岸環境は漁獲や再生産に影響するため温暖化の影響が懸念される.2017年9月と10月における石狩川河口の南西1.9–14.1 kmの距離にある4ヶ統のサケ定置網の日別漁獲尾数とその中の2ヶ統で観測された水温連続記録を解析した.10月4–6日と16–18日の各期間にすべての定置網の漁獲尾数が極大を示し,ほぼ同時に水温の極小と下向き水温鉛直傾度の極大がみられた.河口水位の極大に6–7日遅れてこれら水温極小と漁獲量極大がみられ,石狩川河川水プルームの拡大とサケの誘引が考えられた.河川水量を推定し熱・体積保存モデルに適用すると,プルームの半径は37 kmに増加して漁場を含む湾奥部を覆う結果を示し衛星画像および水温観測結果と対応した.プルーム拡大にともなう河川水希釈率は11.3%でサケ科魚類が探知可能な濃度閾値より1–2桁高く,漁場沖のサケはプルームに誘引されて漁獲された.河口から遠い定置網の方が早く漁獲尾数が増加しており,サケの分布は河口の南西側に偏っていたのかもしれない.北海道西岸域における海況の季節変化のサケ回帰に対する重要性についても議論した.

  • 山本 昌幸, 棚田 教生, 元谷 剛, 小林 靖尚, 片山 知史
    2020 年84 巻3 号 p. 178-186
    発行日: 2020/08/25
    公開日: 2022/03/17
    ジャーナル フリー

    瀬戸内海東部のアイゴの資源生態を明らかにするため,2013年4–12月に岡山県,香川県,徳島県で漁獲された本種の年齢・成長と産卵期について調べた.標準体長は117–310 mmであった.生殖腺重量指数(GSI)は雌が0.04–40.36,雄が0.01–30.16となった.組織切片観察から,雌雄それぞれGSIが3.57と4.79以上の個体が成熟し,7月下旬に退行期の雌が観察された.GSIが3.57以上の雌と4.79以上の雄は,それぞれ6–8月と6–7月に出現した.さらに雌雄ともにGSIは6月中旬から7月に高くなった.耳石のチェックマークは6–8月に年1回形成された.最高年齢は雄と雌でそれぞれ4歳と8歳であった.雌雄の有意な成長差は認められなかった.成長式は,SLt=255 (1−e−0.56(t+0.95)), (SL:標準体長mm, t:年齢)となった.

  • 井上 誠章, 桑原 久実, 南部 亮元, 石丸 聡, 橋本 研吾, 桑本 淳二, 増渕 隆仁, 金岩 稔
    2020 年84 巻3 号 p. 187-199
    発行日: 2020/08/25
    公開日: 2022/03/17
    ジャーナル フリー

    魚礁効果に関する多くの研究は漁業に依存しない調査データによるものであり,商業漁業によって得られた漁業依存データを用いた研究は少ない.漁獲量および漁獲量を努力量で除して計算されたCPUE(Catch per unit effort)は魚礁効果のほか,操業海域や漁船能力,資源の年および季節変動の影響を受ける.そのためCPUEをそのまま用いた解析からは資源密度にあたえる魚礁効果を偏りなく評価できない.本研究ではメダイ,ヒラマサおよびイサキについて,上記の問題を避けるためCPUE標準化の手法を応用して効果範囲を定量評価した.メダイ資源密度は,魚礁海域では天然海域の約7.0倍であり,効果範囲は魚礁中心から約350 mと推定された.ヒラマサの効果範囲は約100 m,イサキでは魚礁の近接海域に限定されると推定された.

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