本研究では,沖縄海域で漁獲されるドロクイ属2種(Nematalosa japonica and N. come)について,仔稚魚の出現様式,成長,骨格系の発達,食性を明らかにした.両種の孵化仔魚は,はじめ湾内の沖合に分布し,尾鰭による推進力の獲得に伴い孵化後10日,体長10 mmで波打ち際に接岸した.接岸場所としては,砂質干潟が選択され,主にカイアシ類を摂餌して成長し,変態期仔魚に相当する孵化後30日,15 mmで泥質干潟へ移動した.このとき,効率的な推進力や操縦性の向上など高い遊泳能力を有し,能動的に移動していると考えられた.移動後も,主にカイアシ類を摂餌し,22 mmからデトリタス食へ食性を変化させた.両種は,泥質干潟と近隣の浅海域で成長を続け,孵化後1年で約100 mmに達した.このように,両種にとって浅海域,特に干潟域が,ごく初期の成育場として極めて重要であり,近年の人為的な干潟域環境の消失は,両種の成育場を消失させることになると考えられた.両種の健全な個体群を維持していくために,沿岸浅海域の保全が不可欠である.