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神谷 太雅, 仲 ゆかり, 中北 英一
セッションID: OP-10-01
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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梅雨豪雨により物的被害のみならず人的被害も多くなってきている昨今、梅雨豪雨の発生、発達メカニズムの更なる理解が必要になってきている。豪雨にとって、水蒸気は必要不可欠であり、その水蒸気自体がどこからどのようにして流れてくるかを知ることは、その理解に大いに役立つ。だが、地形に沿ってどのように入り込んでくるのかの研究は今まで詳細に研究されてきておらず、それを解明することは、メカニズムのより深い理解につながると考えている。そこで、本研究では、流体力学的に流れを及ぼすと考えられる大気の安定度が、どのように豪雨域への地形に沿った水蒸気の流れに影響を及ぼすのかを感度実験を用いて検証した。結果、大気が安定になるほど、紀伊水道での水蒸気フラックスの流れは、地形に沿った流れが強くなり、地形の内側への収束が強くなることで、より細く高くなることがわかった。
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仲 ゆかり, 中北 英一
セッションID: OP-10-02
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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2017年九州北部豪雨,2020年球磨川氾濫豪雨のように,梅雨前線による集中豪雨とそれに伴う甚大な災害が多発している.これら2つの豪雨事例では,積乱雲がシステム化して線状に連なり(線状対流系),猛烈な雨が数時間に渡って降り続くことで局所的に多量の雨(いわゆる線状降水帯)がもたらされた.こうした線状対流系は梅雨前線に伴う特徴的な集中豪雨として知られており,局所的かつ突発的に発生することから正確な予測が難しく,防災観点からも極めて重要な現象である.近年は日本各地で線状降水帯が頻発する中,小坂田らは,気象庁によって開発された5km解像度領域気候モデルNHRCM05の降雨出力を解析することで,将来は地球温暖化によってこうした線状降水帯の発生頻度と強度が増すことを示した.さらに,NHRCM05から得られた大量の線状降水帯事例を統計解析することで,同じ線状降水帯であっても,梅雨前線との位置関係によって複数のタイプが存在し,それぞれ異なる特徴を持つことを示した.大別して,梅雨前線の大規模な風収束によって発生するタイプ(前線付随型梅雨豪雨:2020年球磨川豪雨など)と,梅雨前線より南に離れた場所で発生するタイプ(孤立局所型梅雨豪雨:2017年九州北部豪雨など)である.そして,前線付随型梅雨豪雨は空間スケールが大きく長時間持続するという特徴を持つ一方,孤立局所型梅雨豪雨は前線付随型と比べて空間スケールと持続時間は短いものの,より多くの総雨量をもたらすという特徴を持つことが示されている.しかし,こうした特徴は,主に気候モデルによる降雨出力から解析されたものであり,過去に実際発生した線状降水帯事例を用いた検証はまだ十分には行われていない.また,それぞれの現象の特徴を考慮した将来変化予測とそのメカニズムも明らかになっていない.そこで本研究では,解析雨量を用いて線状降水帯事例を解析し,NHRCM05と同様に前線付随型梅雨豪雨と孤立局所型梅雨豪雨の違いが見られるかを検証した.加えて,NHRCM05のデータを用いてそれぞれのタイプの将来変化を解析した.その結果,これまでNHRCM05を用いて示されていた線状降水帯の特徴は,解析雨量で過去の事例を大量に解析しても同様の特徴が見られることが分かった.さらに,豪雨のタイプ別にその将来変化の傾向が異なる可能性も示された.
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田坂 彰英, 田中 賢治, 田中 茂信
セッションID: OP-10-03
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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気候変動の影響は水資源分野でも懸念されている.例えば,日本国政府がまとめた気候変動適応計画では,降雨の時空間分布が変化し無降水・少雨が続き渇水が予測されることなどを,重大性・緊急性・確信度の全てが高い問題として扱っている.そして,同計画では水資源分野の気候変動適応策の基本方針として,渇水リスクの評価と渇水時の対策等を定めた渇水対応タイムラインの作成を挙げている.
淀川水系は1960年代から積極的に琵琶湖およびダムによる水資源開発が行われており,琵琶湖は瀬田川洗堰を操作することで巨大なダムとして利水補給が可能である.この開発の結果,現在では近畿地方の1450万人が琵琶湖の水を利用している.そのため,琵琶湖の水位(Biwako Surface Level,以降BSL)は淀川水系の渇水状況を表す指標の1つとして活用されている.
そこで,本研究は将来気候下における淀川水系の渇水リスクを評価することを目的とし,まずBSLを解析できる陸域水循環モデルを構築して,その後に将来気候の予測データであるMRI-AGCM3.2Sの150年連続ランの気象条件下におけるBSLを解析し,淀川流域の将来の渇水状況を評価した.
その結果,BSLが取水制限の目安ラインを下回る頻度が増えるのは21世紀後半からで,その頻度は21世紀初頭が30年間のうち3年なのに対し,21世紀末では14年に増加することが明らかになった.
150年連続ランが予測する将来気候の淀川流域では,年降水量の減少は見られないが,蒸発散量が増加することと,少雨傾向の期間が長期に渡り続くことが,将来気候下のBSLを低下させる原因となっている.
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鈴木 啓明, 中津川 誠, 石山 信雄
セッションID: OP-10-04
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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気候変動に伴い,積雪寒冷地では冷水性魚類の生息適地の縮小など,水温上昇による河川生態系への影響が懸念される.影響の程度は地域特性に応じて異なり,地質の違いは重要な要素の一つと考えられる.そこで本研究では,積雪過程を考慮した水循環モデル及び水温推定モデルを用いて,地質条件の異なる積雪寒冷地の河川において,気候変動に伴う河川水温の将来予測を行った.その結果,火砕流堆積物分布域では年間の水温変動が比較的小さく,夏の水温は中生層分布域よりも低く保たれることが予測された.地質条件の違いに応じた河川水温の将来変化に関する知見は,冷水性魚類のために優先的に保全すべき河川の検討など,河川生態系に関する適応策検討に有用と考えられる.
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内海 信幸, 金 炯俊
セッションID: OP-10-05
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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温室効果ガス排出による気候変動は、熱帯低気圧による豪雨(以下、熱帯低気圧豪雨)の頻度、強度、地理的分布などに影響を与えることが予測されている。日本を含む北西太平洋では中国南東部沿岸域、台湾周辺、韓国などで熱帯低気圧豪雨の頻度が過去数十年間で増加したことが報告されている。しかし、こうした変化に人間活動による気候変動が影響しているかは明らかになっていなかった。これは自然変動と人為起源の気候変動の影響を分離することが難しいこと、また長期間の観測データが限られていることなどが理由である。
発表者らは既報(内海・金、2021、水文・水資源学会2021年度研究発表会)で、北西太平洋における1961年以降の熱帯低気圧豪雨の頻度変化を調べ、その変化傾向(東アジア沿岸域での頻度増加、より低緯度地域での頻度減少)が、気候モデルで示される気候変動の影響の地理的パターンと高い類似性があることを示した。本報告ではこの解析をさらに進め、観測された熱帯低気圧豪雨の頻度変化は人間活動による気候変動の影響無しには説明できないことを示す。
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高薮 出, 辻野 博之, 村田 昭彦, 川瀬 宏明, 仲江川 敏之, 山田 朋人, 山崎 剛, 石川 洋一, 坪木 和久
セッションID: OP-10-06
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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将来の水文・水資源の様相を評価するためには、将来気候変動の予測が必要不可欠である。気候変動予測シミュレーション技術の高度化等による将来予測の不確実性の低減や、気候変動メカニズムの解明に関する研究開発、気候予測データの高精度化等からその利活用までを想定した研究開発を一体的に推進することで、気候変動対策に活用される科学的根拠を創出・提供することを目的とした、文部科学省「気候変動予測先端研究プログラム」が開始された。このプログラムの下、日本域における気候変動予測の高度化を目指して(領域課題3:「日本域における気候変動の高度化」)、1:日本域気候変動の予測システム開発とメカニズム解明、2:極端現象のメカニズム解明による地域・流域に応じた適応策推進に資する気候変動予測情報の創出、3:海外の脆弱地域における高精度気候予測データセットの創出に、我々は取り組んでいる。また、水文・水資源分野を始めとして、多様なユーザーとの対話を通して、気候変動予測の共通認識の醸成を目指している。これらの研究目標の基盤となる研究を、すでに文部科学省「統合的気候モデル高度化研究プログラム」等で実施してきた。その成果の一例として、大気海洋相互作用を表現可能な日本域気候変動予測システム(Time Sequential Experiments with Coupled model; TSE-C)の開発や、近年洪水事例が多発している要因がこれまでの温暖化によるのか、それ以外の要因かを明らかにするイベントアトリビューション研究が挙げられる。気候変動予測の現在地点と今後の計画を紹介し、議論の端緒としたい。
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増岡 晃大, 庄 建治朗, 中塚 武, 李 貞
セッションID: OP-10-07
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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樹木年輪セルロース酸素同位体比は過去の気候変動をよく反映していることが確かめられている。近年では,年輪に含まれる酸素同位体比の測定手法の発達により,より純粋な気象因子との結びつきを検討できる可能性が期待されている.一方で樹木年輪の既往研究の多くは1年輪の測定により行われており,1年の時間分解能を持つデータが一般的である.そのため気候変動や海洋変動が日本陸域へ及ぼす季節ごとの影響を検討することが困難な場合がある.
本研究では1年輪を年層内分割し得られた酸素同位体比データを用いて,気象代替データの時間分解能向上と年輪から考えられる海洋変動による陸域での季節変動について検討する.奄美大島の樹齢200年のリュウキュウマツ3個体を対象として、年輪を形成するセルロースの抽出を行う。セルロース試料から測定サンプルを切り分ける際に、各年輪を成長方向へ分割する。測定データを用いて海洋変動が南西諸島陸域にもたらす影響を検討するために複数の海洋因子との相関分析を行う.
結果としてENSO、PDOとの強い関連は得られなかった。一部年層内の成長期の終わり(11月頃)に相当する部分の酸素同位体比とENSOの間で正相関が得られた。ラニーニャ発生時期に奄美周辺の11月頃の日照時間が低下することが、同位体比変動に現れたと考えられる。一方でNPGOに関しては、1年遅いNPGOと梅雨入りに相当する部分の酸素同位体比、4年先行したNPGOと年層内の成長期の始まり(4月頃)に相当する部分の酸素同位体比との正相関が得られた。先行研究で東北地方を対象とした年輪同位体比と初夏の報告があり、東北地方のみならず南西諸島にも関連した指標であると考えられる。以上のように年輪の年層内分割は季節性の代替データを提供するとともに、大規模な海洋変動が陸域へ及ぼす関係を検討するのに有効な手段になると考えられる。
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Trošelj Joško, 花崎 直太
セッションID: OP-10-08
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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地球上の水循環は、人間活動によって変化している。近年、人間の水利用・管理を明示的に表現した汎用的な全球水文モデルがいくつか開発されているが、その地域的な適用は困難である。本研究では、ISIMIP2bの強制データについて、長期的な過去のトレンドと自然変動に焦点を当てた。ここで、絶対値自然変動とは、特定のデータセットの年間データの平均からそのデータ自身の時系列トレンドを引いたものであり、相対値とは、モデル化されたデータの平均から同じ年の観測データの平均を引いたものである。ISIMIP2bモデルによる降水量の結果は、その自然変動が観測データと同程度の範囲にあることから、全球モデルの地域適用における入力境界条件として使用できる可能性があることを示した。しかし、どのモデルも札幌の降水傾向をうまく再現できていないことから、全球あるいは全国的なモデルへの適用には疑問が残る。
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高坂 凌, 沖 大幹, 徳田 大輔, 木口 雅司, 乃田 啓吾
セッションID: OP-11-01
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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中央新幹線事業は静岡県内の大井川の流量減少を通じて,主に大井川流域内地域や大井川の利水に関係する住民に影響があると懸念され,議論が起こっているインフラ整備事業である.そうした状況下で,2021年の第20回静岡県知事選挙において,県民の多くが中央新幹線事業を争点として捉え,投票が行なわれた.そのため,流域内外の住民であるかに関わらず,多くの県民が流域の水資源への影響が懸念されたインフラ整備事業に対し反応し,投票行動をとったと考えられる.そこで,本研究は水資源の減少という不便益を被るとされている地域の住民とそうでない地域の住民がそれぞれどのように反応し,投票行動をとったかについて分析を行った.
静岡県大井川流域内A市,流域外B市それぞれにおいて,自治会の協力を得て,主に,静岡工区における工事に対する賛否,候補者の中央新幹線事業に対する姿勢が投票行動に与えた影響度合い,2021年の県知事選挙の際の投票行動を尋ねた質問紙調査を行った.
その結果,中央新幹線事業問題を重要視する度合い,及び静岡工区に対しての賛否において同じ回答をした人々について,流域内外において投票行動に大きな違いが見られないことがわかった.ただし,流域内外において,中央新幹線事業問題を重要視する度合い,静岡工区に対しての賛否の割合が大きく異なることによって,マクロ的な投票先は流域内外で差が見られた.流域外地域においても一定数,中央新幹線事業を重視し,かつ反対である層が存在し,それらの層は川勝氏に投票する傾向が強いことがわかった.流域内に居住する住民は不便益を受けるという自覚のもと,自分ごととして問題を捉えており,生活への影響までを考え想像していた結果,賛否等を確定させていた.一方で,事業に直接の影響は受けないものの,不便益を受ける範囲の住民に共感し,静岡工区に対する賛否,また投票行動を決定させた層が流域外に一部おり,これは選挙が静岡県知事選挙となり,中央新幹線事業が全県的な争点となることで,静岡県民としての連帯感が生まれことによると考えられる.
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乃田 啓吾, Okiria Emmanuel, Zaki Muhamad Khoiru
セッションID: OP-11-02
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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本研究では,水田における水利用効率に関する研究を系統的にレビューし,特に水利用効率と水田灌漑の提供する生態系サービス(食料生産を除く)の関係について整理した. Scopusデータベースにおいて水田の水利用効率を対象とした論文を検索し,得られた323報の文献から,本文の言語が英語であり,雑誌に収録された論文263報を対象としてレビューを行った.レビューの過程で,条件や情報が不十分な論文,作物モデルや水文モデルのようなモデル開発のみを目的とした論文を除いた230報を以降の分析対象とした. 水田の水利用効率に関する研究の内,1990年代までに出版されたものは12報のみであり,218報は2000年以降,特にSDGsの対象期間である2015年以降に出版された論文が136報と半数以上であった.研究対象の空間スケールでは,全体の86%に当たる197報が圃場スケールの研究であった.湛水灌漑の圃場単位の水収支では,浸透や表面流出(排水)分の水は直接作物の生長に寄与しないため水利用効率が低くなる.しかし,複数の水田からなるブロック内もしくはブロック間での反復利用を考慮すると,ある圃場では損失として流出した水の一部は別の圃場で利用されており,その効果は圃場スケールの分析では反映されない.したがって,原単位の積算で必要水量を求められる畑地とは異なり,水田の水利用効率は灌漑スキームもしくは流域といった単位での評価が必要となる.分析対象の多くは節水による水利用効率の向上を検討しており,節水の方法としては,慣行的な湛水灌漑に対して, AWDを適用していた.節水に分類した94報では,慣行的な連続湛水と比較し,AWDにより水利用効率は向上するが,これはAWDの節水効果が大きいためで,収量は同程度もしくは減少していた.節水+増収に分類した98報では,AWDによる減収の対策として無機/有機資材の投入を実施し,節水と増収の両者により,節水のみのカテゴリと比べて水利用効率は大幅に向上していた.対象とした230報のうち,水利用効率と食料生産以外の生態系サービスの関係を扱っていた論文は31報であった.31報のうち,27報はAWDが温室効果ガス(メタンおよび亜酸化窒素)放出量に与える影響を評価していた.その他の4報で対象とした生態系サービスは,野鳥の生息場の提供,エネルギ投入量の削減,栄養塩動態の調整,が含まれた.
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山崎 大, 北 裕樹, 木野 佳音, 坂内 匠, 野村 周平, 神戸 育人, 庄司 悟, 金子 凌, 芳村 圭
セッションID: OP-11-03
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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国際社会はパリ協定で気温上昇を産業革命前比2℃未満に抑えると合意し,近年は脱炭素をキーワードとし た目標が次々発表されている.脱炭素の実現は京都議定書に基づいたこれまでの気候変動対策に比べ遥かに野 心的で社会構造の大転換が求められるが,企業が組織する経済団体からも反発ではなく脱炭素に協働するとい う発表が相次いでいる.本研究は,気候科学の知見・各国の経済政策・企業と投資家の取り組み・NGO等の活 動に着目してこれまでの動向を調査し,どうして世界は脱炭素に向けて動き始めたのか?という背景を俯瞰的 視点から明らかにする.文献調査の結果,気候科学の発展が国際合意に影響をしたことに加えて,企業に気候 リスク情報の開示を求めるTCFDといった新たな気候変動対策ツールの整備が脱炭素の動きを後押しているこ とが確認できた.また,民間企業でも気候リスク低減と経済的利益がTCFD等を通して結びつき,「気候変動 対策はもはや社会貢献ではなく自己の存続のために必要」という当事者意識のパラダイムシフトが起きている ことが示唆された.これらの気候変動対策をサポートする社会情勢の変化を背景として,世界は脱炭素に向け て舵を切ったと考えられる.
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渡部 哲史, 内海 信幸, 丸谷 靖幸, 乃田 啓吾, 木村 匡臣, 五三 裕太, 武藤 裕花, 山田 真史
セッションID: OP-11-04
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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気候変化と人口減少は水文・水資源分野の諸問題にも大きな影響を及ぼすと考えられる.特に我が国の中山間地域等の少子高齢化が進む地域においては,地域の水関連インフラに関する維持管理の担い手の高齢化に伴う課題が顕著になりつつある.その最たる例の一つがため池の維持管理である.発表者らは愛媛県西条市丹原町を対象としてため池の維持管理の現状や課題について調査を進めてきた.その一環として小型ラジコンボートによる簡易ため池測深手法の開発にも取り組んできた.ため池の維持管理において重要な課題の一つが堆砂に関する問題である.土砂堆積状況の把握は水資源量の把握という点のみならず防災の観点からも重要な課題である.一部のため池では毎年もしくは数年に一度,配水施設の管理を主目的とする池干しが実施されており,その機会に土砂堆積状況の把握が行われている.しかしながら多くのため池では需要の低下や維持管理の担い手不足によりそのような積極的な管理は行われていない.気候変動による降雨パターンの変化および森林や農地の放棄が土砂動態ひいてはため池にどのような影響を及ぼすかという点は明らかではない.さらに当該地域ではため池に加えて河川への土砂堆積も問題となっている.土砂堆積の問題は以前から存在しているようであり,土砂堆積状況に応じて堆積した土砂の除去作業が行われていたようであるが,近年はその間隔が顕著に短くなっているとの意見がヒアリングにより得られた.実際に土砂除去作業が追い付かず,排水ゲートの一部が埋没するなどの影響が出ていることが確認できている. 以上の背景を踏まえ,本研究では土地利用や水利用形態や降雨パターンの変化とため池および河川への土砂堆積の関係を明らかにすることに挑戦する.本研究は人口減少および気候変化が進む下で農業関連の水インフラのあり方を検討する基礎的な知見の提供に資する意義を有している.
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佐藤 友徳, 中村 哲, 飯島 慈裕, 檜山 哲哉
セッションID: OP-P-01
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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再解析データを用いて駆動するタグ付き水蒸気輸送モデルを用いた解析により、北極海で蒸発した水蒸気の陸域への輸送を調べた。その結果、秋から冬にかけてシベリアへの水蒸気輸送量が増加傾向にあることが分かった。輸送量の増加は9月は西シベリアで、10~12月は東シベリアで有意だった。この水蒸気輸送には沿岸域の低気圧活動が関係していると考えられる。これらの結果は、温暖化が進行する北極海からの蒸発量が増加することによってシベリア北部の降雪が増加する可能性を示している。
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小谷 亜由美, 中井 太郎, 檜山 哲哉
セッションID: OP-P-02
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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高緯度陸域生態系とくに永久凍土上の落葉針葉樹林での森林CO2吸収量の変動への温度上昇などの気候変動の影響を明らかにすることを目的として,東シベリアのレナ川中流域のカラマツ林における,森林気象およびCO2フラックスの観測データを用いて,カラマツ展葉などの春季オンセット現象や森林-大気間のCO2フラックスの動態と冬季温度環境との関係を解析した.凍土表層の融解やカラマツの展葉など春のオンセット現象のタイミングには2週間程度の年々変動があり,必ずしも気温だけでなく前年凍結前の土壌水分やサイトごとの植生や活動層の水分状態に依存した.春季(5月)のCO2フラックスは成長期間総量に比べて1桁小さいがこれらの間には相関があり,その年々変動には4月の気温(正相関)と前年の夏―秋の気温(負相関)に加えて,冬季の地温との相関がみられた.冬季の積算寒度は5月のCO2吸収の光応答パラメータとの相関を示し,冬季の冷却が翌年春の植物活動の開始および成長期間のCO2フラックスに影響を及ぼすことが示唆された.春季のCO2フラックスの年変動に対して,気温よりも地温が重要とする結果が得られたが,冬季地温には土壌凍結を通して土壌水分の増減が影響を及ぼすことから,前年の暖候期の気候や植物・土壌プロセスの結果としての土壌水分のメモリー効果を考える必要がある.
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飯島 慈裕, 阿部 隆博, 齋藤 仁, 檜山 哲哉
セッションID: OP-P-03
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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東シベリア・レナ川中流域は、北方林の分布する地下に豊富な氷を有する永久凍土が広域に分布する。近年この地域では、永久凍土の融解が地表面から進み、地下氷の融解まで達することで氷の体積減少に応じて地形が不均質に陥没するサーモカルスト現象が進行している。この現象を時空間的にとらえるため、本研究では、人工衛星データ、ドローン空撮画像等を用いて近年の地形変位量や水域化の特徴を捉え、サーモカルストによる地形変化と、居住地周辺での土地利用変化との関係を考察した。
研究対象地はサハ共和国のチュラプチャ地域とした。この地域の居住地周辺には、かつての空港や耕作地など草地や開墾地が広がっており、人為的に改変されたところを中心にサーモカルストによるポリゴン地形が2000年代から顕著に形成されている。本研究では、だいち2号 (ALOS-2)の合成開口レーダ(PALSAR-2)の2015年~2020年にかけて取得した6シーンのストリップマップモードのデータを使用し、11ペアの差分干渉解析(InSAR)のスタッキングによって経年的な変位量を検出した。また、2016年、2017年の9月にドローンによる可視画像の撮影を行い、数値表面モデルとオルソ画像を作成し、ポリゴン地形の検出を行った。加えて、1945年と2009年時点の土地被覆分類図、高解像度衛星画像等から、現地の土地被覆変化を確認した。
InSARの結果から、5つの領域で、最大でマイナス2.4cm/yrの変位速度(沈下)が確認された。このうち、北部の2つは北方林を切り開いた耕作地跡であり、南部の1つは空港跡地、2つは草原上の耕作跡地となっており、いずれも人為的な土地利用の履歴を有する場所であった。なお、1945年から2009年にかけて、北方林は13%減少し、耕作地(放棄地を含む)と居住地は9.6%、水域は8.5%増加していた。ドローンのオルソ画像およびWorld View画像から、耕作地と居住地周辺ではサーモカルストのポリゴン地形発達が顕著であり、水域化する地表面も多く認められた。一方、調査地域の北東部にある耕作跡地では、北部森林内の耕作放棄地と同じ標高、土地利用履歴であったにも関わらず、沈下傾向は示さず、森林の稚樹が再生している個所であった。その理由は不明であるが、ポリゴンの発達密度が異なっており、地下氷の分布や厚さが異なる可能性が考えられた。
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藤岡 悠一郎, 高倉 浩樹, ボヤコバ サルダナ
セッションID: OP-P-04
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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気候変動や地球温暖化の影響により、シベリアなどの東部ロシア北極・環北極域では、永久凍土の融解や河川洪水の頻発などに代表される環境変化が急速に進行している。このような環境変化は、地域に暮らす人々の生活や経済活動を脅かす大きな要因となっていることが報告されており、環境変化への適応策の検討や地域社会のレジリエンスの向上がグローバル社会が直面する課題として認識されている。本発表では、サハ共和国の小規模コミュニティを対象に、環境変化に対する住民の認識と集団内の認識の差異について紹介する。そして、その結果を他地域における結果と比較を行い、社会的レジリエンスを向上するにあたり、ステークホルダー間の認識のギャップをどのように捉えていけばよいか考察する。 2018年に東シベリアに位置するレナ川流域の2地域(Khayakhsyt, Magaras)において予備調査を実施し、同地域の主要な民族であるサハ人の生活様式や環境認識を把握するための参与観察とインタビュー調査を実施した。そして、2020年および2021年にかけて、東シベリアに位置するレナ川流域の3地域(Namsky, Khangalassky, Ust-Aldansky)において、環境変化に関する認識や直面する課題などに関するアンケート調査を実施した。 アンケート調査の結果、レナ川流域の3地域の回答者は、河川水の流量変化や冬季の氷の発達度合、永久凍土の状態などについて、高い関心を有していた。河川の流量については、近年、流量が減り浅くなっているとする回答の割合が比較的高く、干ばつ頻度が増加しているという認識を示す回答者の割合が高い傾向が認められた。また、河川の凍結/融解時期が変化したと認識する回答者がいずれの地域でも半数近く認められた。他方、いくつかの質問項目については、同一の地域内においても回答傾向が分かれる結果となった。例えば、過去20-30年における洪水の発生頻度については、「増加した」と「減少した」という回答の両方が、いずれの地域でも比較的高い割合となった。また、河川の水量が極端に低い状態をみた頻度に関する質問では、Ust-Aldanskyで頻度が高い傾向が認められ、地域によって環境変化に対する認識が異なる結果も認められた。
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石川 守, Westermann Sebastian, 岡崎 翌見, Avirmed Dashtseren
セッションID: OP-P-05
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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寒冷乾燥気候下では地表水や森林といった生態資源の成立には、地下に潜む永久凍土が強く関わっているが、永久凍土の様態を明示したうえで生態資源の動態を取り扱った研究例は多くない。北東ユーラシア永久凍土帯の南限に位置するモンゴルでは、永久凍土の分布と森林や湧水の分布が一致し、これら地域生態系資源の成立に永久凍土が本質的な役割を果たしていることが考えられる。本研究では永久凍土の動態と地域住民にとっての重要な水資源である湧水に注目し、以下の2点を解析したうえで両者の対応を論じる。(1)モンゴル全土における過去数十年間にわたる永久凍土分布の変遷、(2)モンゴル中央部ハンガイ山脈に点在する湧水の過去数十年間にわたる枯渇状況。
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田代 悠人, 檜山 哲哉, 金森 大成, 近藤 雅征
セッションID: OP-P-06
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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世界でも有数の水産資源の豊かな海として知られるオホーツク海の一次生産は、アムール川が供給する溶存鉄(dissolved Fe: dFe)によって大きく支えられている。しかしアムール川流域内におけるdFe流出の理解は未だに乏しい。アムール川本流では、1995—1997年にかけて原因不明の大きなdFe濃度上昇が確認されている。これに対しShamov et al. (2014)は、1990年代は例年より気温が高い年が連続した期間であったことから、永久凍土の融解が原因であると仮説を提唱した。しかしながら、追加解析や仮説検証は行われておらず、この真偽は定かではない。そこで本研究では、(1) 大気再解析データを用いてアムール川流域における過去の気候要素の変動を調べ、dFe濃度変動との関係性を明らかにすること、および (2) アムール川で1995—1997年にかけて確認されたdFe濃度上昇の原因と、メカニズムに関する具体的な仮説を提示することを目的とした。
大気再解析データを解析した結果、アムール川流域では中国側、モンゴル側およびロシア側のいずれにおいても1988年から1990年にかけて年平均気温(Ta)が顕著に高かった。Taの経年変動とアムール川のdFe濃度変動の間には相関が確認されなかった。しかし興味深いことに、両者の間には7年および8年のラグで有意な正の相関があることがわかった。この結果は、アムール川流域(特にロシア側)が高温年となった7—8年後にdFe濃度が上昇していたことを意味する。 夏季後半の正味降水量(P-E)は1977年から1997年にかけてモンゴル側およびロシア側で高い正の値を示した。したがって1988年から1990年にかけては土壌が湿潤傾向にあり、高温年が連続した期間であったと解釈できる。永久凍土が広く分布するロシア側でTaとdFe濃度のラグ相関が最も高かったことを踏まえると、1995年から1997年にかけてのアムール川dFe濃度上昇は、次のプロセスによって引き起こされたと推測される:①1988年から1990年の高温年に永久凍土融解が進行し、生物利用可能となった鉄が湿潤的(嫌気的)環境下で還元されることで大量のdFeが生成された。② その後活動層深部に含まれるdFeが7—8年かけて河川へと移行・流出し、1995年から1997年にかけてアムール川のdFe濃度が上昇した。
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朴 昊澤, 鈴木 和良, 檜山 哲哉
セッションID: OP-P-07
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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地球温暖化の影響が強く現れている北極において河川流出量の増加が観測され、これに対して永久凍土中の地下氷融解水や地下水の影響が指摘されている。しかしながら、河川流量と永久凍土との関係を定量的に評価した研究は極めて少ない。また、河川流量に対する融雪水と暖候期降水(降雨)の影響も十分に定量評価されていない。そこで本研究では、同位体トレーサーを組み込むことで、河川水を融雪水、暖候期降水(降雨)、地下氷融解水(または地下水)に成分分離し、河川流量に対するそれらの寄与率を定量評価可能な河川流出モデルを開発した。そして開発したモデルを北極域の大河川の一つであるレナ川流域に適用し、蒸発散量と河川流量に対する各起源水の寄与を定量評価した。その結果、暖候期降水(降雨)が蒸発散、融雪水が河川水に対する主要な起源水であること、そして、地下水は秋に、不連続的永久凍土帯において河川水に対する寄与が大きくなることが明らかになった。これらの結果は、今後、永久凍土の温暖化によって河川水に対する地下水の寄与が増加することを示唆する。
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Dongkyun Kim, Christian Onof
セッションID: OP-I1-01
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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Wei Li, Jiayou Zhong
セッションID: OP-I1-02
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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Tasuku KATO, Daisuke KUNII, Shizuka HASHIMOTO, Natsuki YOSHIKAWA, Hiro ...
セッションID: OP-I1-03
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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There is great concern in ecosystem services in the agricultural sector, particularly in the EU. Ecosystem services are classified into supply services, regulatory services, and cultural services, and it has been shown that paddy fields also have those ecosystem services. On the other hand, effects such as trade-offs and synergies among the services are recognized, but the details of the ecosystem services in paddy fields are not clear. We introduced the accumulation and integration of environmental data for ecosystem service evaluation and aimed to develop an evaluation method for the Asuwa River watershed in Ikeda Town, Fukui Prefecture. As a result, it was confirmed that the water quality of EC is good and that the effects of paddy water management are effective.
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Julien Eric Stanislas Boulange, Yukiko Hirabayashi, Masahiro Tanoue, T ...
セッションID: OP-I2-01
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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In the future, economic damages caused by floods are anticipated to increase, driven by global warming and socio-economic development. To accurately evaluate flood risk and derive credible flood damage, existing flood protections, such as levees, need to be accounted for in global flood studies. Recently, the unavoidable increases in flood damage, hereinafter residual flood damage (RDF), arising in the future despite considering feasible adaptation strategies were quantified. The authors of this study disclosed key limitations associated with these results and reported on the sensitivity associated with some of their assumptions. Selecting alternative methods for deriving flood damage or the influence of important economic assumptions on RDF were however not explored, leaving a gap in our understanding. Here, we present residual flood damage under insensitive adaptation obtained using an updated global hydrodynamic model forced by runoff products from the latest Coupled Model Intercomparison Project (CMIP6). We furthermore thoughtfully compare future flood protections and RDF arising from using two distinct methodologies.
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Yang Hu, Xudong Zhou, Dai Yamazaki
セッションID: OP-I2-02
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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Flood impact assessment is very important and needed by society. The recently released nighttime light (NTL) product (VNP46A2), enhances the temporal and spatial resolution making it suitable for monitoring flood impact. However, the dataset suffers problem of two remaining errors (i.e., spatial observational coverage mismatch and angle effect), leading to daily data inconsistency which limit its application. This study proposed a Self-adjusting method with Filter and Angle effect Correction (SFAC) for excluding remained errors and furtherly explored the detectability of NTL on flood impact. Results show that daily light variation in most pixels (98.3%) has been decreased indicating the enhanced consistency of daily data. For the chosen flood event, decreases in the sum of light intensity for the affected area enlarged from 14% to 38% after applying SFAC and the detectable flood-affected area increases by 6 times which proved the NTL's detectability for flood impact has been improved after calibration.
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JIANG Zewen, SHI Xiaotao
セッションID: OP-I2-03
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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Ke Shi, Yoshiya Touge
セッションID: OP-I2-04
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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Fires are widespread disasters worldwide and are concurrently influenced by multiple global climatic drivers. The teleconnections between different regional fires and the underlying climatic cause mechanisms have not been fully explored. Determining a suite of global climatic drivers that explain most of the variations in different homogeneous fire regions will be of great significance for fire management, fire prediction, and global fire climatology. Therefore, this study first identified spatiotemporally homogeneous regions of burned area worldwide during 2001~2019 using a distinct empirical orthogonal function. Additionally, the cross wavelet transform and wavelet coherence were used to analyze the relationships between major patterns of fire burned area and various global climatic drivers. The three most significant global climatic drivers that strongly impacted each of the eight major fire patterns were identified. Then, the potential mechanisms of the global climatic drivers for specific regions were discussed. These results provide a reference for future exploration of the connection between fire and climate.
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田中 智大, 平松 優佑, 北野 利一, 立川 康人
セッションID: PP-1-01
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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近年,平成30 年西日本豪雨や令和元年台風19 号など,1 つの豪雨事例で広範囲にわたって被害が発生する事例が発生している.これに対し,d4PDF の豪雨事例の降雨データを入力して河川流量に変換し,日本全国の計画規模の洪水流量の将来変化を分析する研究や同じ年に計画規模を超える水系数の将来変化を調べる研究が進んでいるが,推定結果の頑健性については議論できていない.本発表では,小林らによってd4PDF を基に計算された3000 年分の年最大河川流量データに対して二変量極値分布を適用し,2 地点の河川流量極値の同時超過確率をその将来変化を分析した.関東地方(利根川水系八斗島地点と荒川水系寄居地点),九州地方(緑川水系城南地点と球磨川水系人吉地点)および関東中部大都市圏(荒川水系寄居地点,庄内川水系枇杷島地点)の3組の2地点群に適用した結果,相関係数が高いところでは数百年程度の再現期間で計画規模を同時に超える可能性があり,流域を超えた広域での洪水災害による対策を議論することが重要である.一方,4度上昇実験のデータでは相関係数に大きな変化は見られず,4度上昇気候では現在と同程度の従属性を保って外力が大きくなるといえることから,個々の流域に対する治水対策の強化が気候変動下においても広域の洪水災害リスクの軽減にも大きく寄与することが示唆された.
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北口 慶一郎, 田中 智大, 立川 康人, 市川 温, Kim Summin, 萬 和明
セッションID: PP-1-02
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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近年頻発する洪水災害や気候変動による将来の豪雨の頻発化,強大化に対して,既設ダムの有効性や将来採るべき方策を議論するため,既設ダムが将来の気候下で発揮しうる効果やその地域傾向を評価することが重要である.田中らはd4PDF バイアス補正済み年最大雨量データを用いて現在および将来におけるダムの有無による洪水ピーク流量の変化を計算し,ダムが発揮する治水効果の将来変化や 地域傾向を分析した.ただし用いた流出モデルは全てのダムが一定量放流方式による放流を行うと仮定の元 で構築されており,一部のダムでは実際よりも運用が簡略化されている.本研究では,これらのダムが実際同 様の放流を行うようモデルを改めた上でピーク流量を計算し,ダムが発揮する治水効果やその将来変化の予測 に対してダムモデルの改良が与える影響を分析した.田中らは気候変動がダムの治水効果に与える影響を評価する指標として,1)基準地点においてダムあり モデルとダムなしモデルの,年最大洪水ピーク流量の比(以下,ピーク流量比)と2)ダム満水頻度を用いた. 本研究では,ダムモデルの改良がこれらの指標に与える影響を分析した.
この結果,一定量放流方式に比べ,現行操作の一定率一定量放流方式は,1. 基準地点のピーク流量低減 への寄与を維持し,2. 異常洪水時防災操作の頻度を低減する効果があることが示唆された.
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室井 航輔, 萬 和明, 立川 康人, 水田 亮
セッションID: PP-1-03
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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洪水災害の規模や頻度が今後どのように変化するかを適切に予測することを目的とし、本研究では大気大循環モデルの陸面スキームを、河川流量の推定においてより高い精度を示す陸面スキームであるSiBUCへ差し替えることで、算出される流出量や降水量に与える影響の分析を試みた。その結果、乾燥地帯において、降水量に対し流出量が増加することが分かった。また、地点を選び出し、降水量に占める流出量の割合の変化を月ごとに確認すると、流出量が増加する時期は場所により傾向が異なることが分かった。
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神棒 淳志, 萬 和明, 田中 智大, 立川 康人
セッションID: PP-1-04
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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気候変動予測に用いられる,大循環モデルの出力には様々な要因によってバイアスが発生するため,その補正が必要である.本研究では離散フーリエ変換を応用した手法を提案する.補正対象はMRI-AGCM3.2S の3 時間単位流出発生量から作成した日平均流出発生量である.その結果,本手法は現在気候に対するバイアス補正では,先行研究のQuantile-Quantile Mapping法による結果と同等かそれ以上の補正結果を示すことが明らかとなった.
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工藤 亮治, 近森 秀高
セッションID: PP-1-05
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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水文水資源分野における気候変動影響評価では洪水や渇水などの極端現象を対象とした影響評価が重要となるが,極端現象はそもそも自然変動(いわゆる年々変動)が大きく,少ないサンプルでは不確実性が大きいため信頼性の高い評価が困難である.本研究では,大規模アンサンブル気候シナリオd4PDFを用いることで,主に農業用水として重要となる渇水流量を中心に,自然変動に起因する不確実性について吟味した.
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張 叡哲, 立川 康人, 田中 智大
セッションID: PP-1-06
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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Precipitation patterns have changed under climate change and impact human beings through water-related disasters. Taiwan has suffered from floods for years, and the risks will undoubtedly increase in the future. Rainfall dominates water-related disasters; therefore, frequency analysis of extreme precipitation is crucial for future flood risk management. d4PDF, especially 20km downscaling data, has demonstrated its potential to utilize in water management in Japan, which may also apply in Taiwan basins; however, scientific research is necessary to clarify its applicability. This research used a statistical method to analyze the annual maximum value of N-hour (N=24, 48, and 72) accumulation rainfall of d4PDF historical and observation data connect the relationship between both data. Also, provide the bias correction method for data modification. Using the massive data provided by d4PDF, we re-estimated the heavy rainfall events in Taiwan. At last, we demonstrated the future precipitation change in Taiwan via +4K future climate data.
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川崎 公輝, 平林 由希子, Rimba Andi, Zhipin Ai, 花崎 直太
セッションID: PP-1-07
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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現在のエネルギー使用量が低く、今後の経済発展とエネルギー需要が増大する発展途上国では、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させることを目標としたSDG7.2の達成が難しいと考えられている。たとえばインドネシアでは、急速な経済成長による電力需要の増加に対して再生可能エネルギーの増加が追いついていないため、総発電量に占める再生可能エネルギーの割合が近年減少傾向にある。そこで本研究では、インドネシアを対象に水に関する再生可能エネルギー(水力発電およびバイオマス発電)の見通しについて調べ、それらが今後増加する総電力需要に占める割合の変化を調査した。具体的には、GDP予測と関連付けたインドネシアの総発電量を推計すると共に、政府による水力発電とバイオマス発電の2028年までの増加見込みが継続すると仮定したシナリオと、再生可能エネルギーの総発電量に対する比率を0.1%/年増加させる場合の2種類の再生可能エネルギーの将来シナリオに基づき算定を行った。ただし、水力発電は政府資料から得られた最大ポテンシャルである206TWh、バイオマス発電は既往研究から求めたインドネシアのバイオマス発電の最大ポテンシャル174TWhを上限とした。水力発電とバイオマス発電の合計値の総発電量に占める割合は2015年時点で6.35%であるが、2050年には現在の増加率を維持するシナリオでは7.36%、0.1%/年の増加シナリオでは13.35%となり、いずれも2100年には現在よりも総エネルギーに占める割合が増加する。大規模なバイオマス発電の増加が土地や水資源の制約から実現可能であるかどうかは不明であるが、0.1%/年のシナリオが2100年まで継続して現在のバイオマス発電の約380倍を達成したとしても、水力発電とあわせてその時点の総発電量の20%程度しか賄うことができない。したがって、地熱発電などの他の再生可能エネルギーの拡大や技術の発展による省エネルギー化も同時に進める必要がある。
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針生 拓実, 大楽 浩司
セッションID: PP-1-08
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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本研究では、水害のリスクを定量的に評価するFD法により、将来の気候シナリオと社会経済シナリオを用いて東京都を対象に、水害リスクカーブを作成し比較した。FD法により作成した水がリスクカーブと、罹災率を日降水頻度分布に置き換えたFD法によるものに差が見られたため、罹災率(降水頻度分布)と平均損傷率に着目して原因を探った。その結果、罹災率を日降水頻度分布に置き換える手順が原因であると推測された。FD法に基づく将来の水害リスクを評価するにあたり、罹災率をどう置き換えるかは重要であるため、早急な検討が必要である。
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仲江川 敏之, 石崎 紀子, 佐々木 秀孝, Reinhardt Pinzón
セッションID: PP-1-09
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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本研究では、地域気候モデルNHRCMを用いたパナマにおける月平均降水量気候値の再現性評価を行った。2kmと5km格子間隔のNRHCMを用いて、現在気候再現実験を行った。格子サイズが細かくなるにつれて、NHRCMの降水量バイアスが小さくなることが明らかとなった。 NHRCM02はパナマ全域で年降水量バイアスが小さく、パナマ全域での面積平均は最小である。空間水平解像度はバイアスやRMSE、空間相関を向上させる点で、非常に効果が高いことが示された
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樋口 篤志, 本橋 優登, 小林 文明, 諸富 和臣, 嶋村 重治, 大矢 浩代, 鷹野 敏明, 高村 民雄, 岩下 久人, 本吉 弘岐, ...
セッションID: PP-1-10
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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都市部での豪雨災害がクローズアップされ,都市型洪水に対する対策や短時間豪雨予測ナウキャストへの取り組みがなされている.通常の集中豪雨は組織化された積乱雲群によってもたらされ,激しい雨が数時間にわたって降り続くことにより,ごく狭い地域で数百ミリの雨量がもたらされ,防災上の観点から豪雨をもたらす積乱雲を出来る限り早く検知することは極めて大事である.気象学の観点からも対流雲の初期段階の挙動を様々な観測手段で捉えることは重要であることから,防衛大小林文明教授を中心とした研究チームによる総合観測がこれまでなされてきた(房総対流雲観測研究).本発表では,房総対流雲観測研究チームによるこれまでの観測成果を俯瞰し,今後の展望について述べる.
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Hokson Jose Angelo, 鼎 信次郎
セッションID: PP-1-11
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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Current numerical weather prediction (NWP) models produce relatively large errors in forecasting TC-induced precipitation. Because of that, lots of alternative methods are being developed nowadays. An analog forecasting method has been proposed by Bagtasa (2021) for the Philippines, a country that receives around twenty typhoons yearly. While the methodology produces good results, it still has its limitations due to the techniques and datasets used. This study aims to improve the aforementioned methodology by limiting the area of study to Luzon Island and introducing dynamical adjustments and uncertainties in computing precipitation. Currently, the study is in its early stages. Initial results show promising values that are on par with a previous study. Further implementation of proposed improvements is needed to properly check whether the modified methodology addresses the issues of the original methodology. Ultimately, we believe that this study will further advance the field of forecasting TC-induced precipitation in the region.
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諸泉 利嗣, 宗村 広昭
セッションID: PP-1-12
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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本研究では,日単位における確率可能蒸発量を推定する方法について検討するとともに,連続干天日数の経年変化という観点からその必要性について考察した.その結果,提案した蒸発強度式は,何れの式も十分な精度で蒸発強度式として利用できることが分かった.また,かんがい期最大連続干天日数が経年的に増加していることから,確率可能蒸発量を推定することの重要性が示された.
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岩上 翔, 久保田 多余子, 野口 正二
セッションID: PP-1-13
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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近年,花崗岩からなる流域を中心に岩盤内のプロセスが斜面の降雨流出過程において重要な役割を果たしていることが明らかにされてきている.花崗岩流域では雨水の 3 割程度が深部浸透することが報告されており,岩盤内の水移動を考慮に入れずには山地流域の水収支,比流量の空間分布は十分に説明できないことが指摘されている.一方で花崗岩以外を基岩とする流域においては調査例が少なく,変成岩からなる流域の報告例は見られない.本研究では変成岩からなる森林小流域において岩盤内の地下水の存在の有無をはじめ,地下水が存在している深度や変動,深部への浸透といった地下水の存在状態の実態を把握することを目的として観測井における調査を行った.地下水位の連続観測に加え,先行降雨指数(API: Antecedent Precipitation Index)を用いた簡単な解析を行った.その結果,斜面下部の観測井では地下水位の変動のタイミングがAPIの変動とよく一致しており,また30日程度貯留されても比較的速やかに排出されていることが示唆された.地下水位の応答とAPIの応答が一致しない観測井も見受けられ,梅雨の時期から台風の時期にかけて浸透した雨水が斜面に地下水として蓄えられ湿潤な状態にある状態を示すと考えられた.また斜面上部では浅い地下水にみられる鋭いピークが深部へと伝播する間に遅れ,鈍化したピークとなって深い地下水の水位変動に表れている様子が明らかとなった.浅い地下水と深い地下水において,水位差と遅れ時間の関係から透水係数の算出を試みたところ,得られた係数は10-2~10-1 (cm/s)のオーダーであったため飽和透水係数と考えるには大き過ぎるもので,圧力伝播の速度を表す係数であると考えられた.
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開發 一郎, Nissen Henrik, Mordrup Per, 会田 健太郎, 浅沼 順
セッションID: PP-1-14
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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地表面土壌薄層(0-5㎝深度)の土壌水分変化の把握は、土壌-大気連続系の水分交換、雨滴浸食や土壌劣化などの地表面変化および黄砂の発生のみならず小土壌動物や植生変化等の研究において基本的で重要である。さらに、AMSR2(Advanced Microwave Scanning Radiometer 2)などの地球観測衛星による土壌水分測定の検証に大きな役割を果たす。いずれも特に深度0-3㎝土壌の水分測定が期待されているが、現実に野外で地表面土壌薄層の土壌水分を深度3cmより以浅で1㎝刻みの原位置非破壊高精度で長期に測定することは不可能に近かった。Nissenら(1998)は、土壌水分移動を室内実験で微細に捉えるために、マイクロスケール(直径:4.5 mm 、センサー長さ:15 mm)の高精度の棒状型のTDRコイルプローブ(CP)を開発した。これによって深度1㎝スケールでの土壌水分測定が行えるようになった。本研究は、Nissenら(1998)のCPを野外測定用に適用するために、センサー長を長くした(土壌水分測定の代表性を高めるため)CPを作製し、センサー長の異なるCPの土壌水分測定の精度と有効性を複数の実験土を用いて室内で校正実験を行った。既知誘電率試料による実験から、CPは誘電率を絶対的に正確に測定できることが分かり、センサー長が15mmのCPは2RTDRと較べると低水分量域では感度が劣る(土壌水分測定の代表性が低いためと推測)が、センサー長30mm以上のCPは2RTDRと同程度で野外測定に使用できる可能性が高く、野外試験用にはCP40が適切であると示唆された。
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萬 和明, 立川 康人, 市川 温
セッションID: PP-1-15
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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陸面過程モデルSiBUCと河道流追跡モデル1K-FRMからなる統合型水循環モデルを九州地方に適用した先行研究では,概ね良好な再現性を有するが,低水部では精度向上の余地があることがことが確認された.そこで本稿では,統合型水循環モデルによる河川流量の再現性向上について検討した.具体的には,SiBUCの土壌層厚の設定を変えた実験を行った.大淀川流域では,土壌層厚を25m厚く設定すると再現性が向上した.筑後川流域では,土壌層厚全体を15m厚くしつつ第2層を1/3に薄く設定すると再現性が向上した.本稿で設定した土壌層厚は,妥当と考えられる土壌層厚よりも厚い設定である.これは,統合型水循環モデルが地下水を考慮していないために,便宜上,地下水の効果を表現するための設定だと考察している.
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普神 素良, 市川 温, 萬 和明, 田中 智大, Kim Sunmin, 立川 康人
セッションID: PP-1-16
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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降雨流出モデルの一つであるキネマティックウェーブモデルは,山地斜面内の雨水流を斜面傾斜方向の流れのみで表現しており,斜面垂直方向の雨水流動を陽に表現していない.また,降雨流出過程を適切に再現するためにはモデルパラメータの調整を必要とする.一方で,リチャーズ式に基づく詳細な雨水流動モデルは計算量が多く,流域規模の計算には向いていない.本研究では,鉛直一次元リチャーズ式により斜面垂直方向の雨水流動を考慮し,斜面傾斜方向の動水勾配を斜面勾配で近似した,山地斜面地中流の鉛直準二次元的モデリングについての検討をおこなった.準二次元モデルでは,地中流について詳細なモデルの結果をよく再現でき,計算時間は詳細なモデルの半分以下に短縮された.
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戸崎 裕貴, 森川 徳敏, 塚本 斉, 佐藤 努, 高橋 浩, 高橋 正明, 稲村 明彦
セッションID: PP-1-17
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
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放射性廃棄物の中深度処分では,廃棄物埋設地を含む広域地下水流動の評価が必要とされる.著者らはこれまで,青森県東部の上北平野をモデル地域として,既設井戸を利用した地下水調査に基づく広域地下水流動評価を行ってきた.一方,水源井等の既設井戸は,揚水量を確保するために長い(あるいは複数区間の)スクリーンを有していることが一般的であり,得られるデータはスクリーン区間での平均的な情報に限られる.そこで2019年度からは,既設井戸調査に基づく地下水流動概念モデルの検証を目的として,上北平野北部においてボーリング調査を実施している.本発表では,広域地下水流動系の流出域に近いと想定される小川原湖東側地域において,2021年度に実施した深度170 mのボーリング調査から明らかとなった地下水流動系の特徴について報告する.
揚水試料・間隙水試料のCl濃度・酸素同位体比から,小川原湖東側地域では,湖水を導水した灌漑用水によって涵養された地下水(滞留時間:数年程度)が深度85 m程度まで分布することが明らかとなった.粘土混じりシルト層付近を境界として,深度170 mまでには1万年程度(14C年代)の滞留時間を持つ地下水が分布する.その酸素同位体比は,小川原湖南~東側の河川水と同等の値であることから,小川原湖南側周辺の台地部を涵養域とした局地的な流動系を反映しているものと考えられる.今回対象とした深度170 mの範囲においては,小川原湖西側からの広域地下水流動を反映した地下水は存在せず,小川原湖東側が主たる流出域とはなっていない可能性が考えられる.
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王 崑陽, 小野寺 真一, 齋藤 光代, 石田 卓也
セッションID: PP-1-18
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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食糧需要の増加に伴い、リンの使用は農業においてかけがえのないものになりました。 しかし、その過度の使用は、資源の浪費と大量のリンの蓄積につながり、環境汚染のリスクを高めます。 多くのアジア諸国の農業土壌は、世界平均と比較してはるかに高い土壌リン含有量を持っています。 この研究では、Soil and Water Assessment Toolを使用して、1940年から2010年までの80年間の大和川流域におけるリンの負荷と収支を推定しました。 そしてその結果は、1970年代の総リン負荷量と農学的土壌リン収支がそれぞれ895トン/年と36.6kg/haでピークに達したことを示しています。 流域規模での長期的なリン負荷の決定は、主に人的要因の影響を受けました。 人口増加は食糧需要を増加させ、その結果肥料の使用量が増加し、それによって土壌のリン余剰が増加し、リンの吸収効率が低下しました。
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青木 一眞, 山田 朋人
セッションID: PP-1-19
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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湖の水温は水面の熱収支の問題であり、季節や、それぞれのダム湖が位置する気候によって湖中の水温構造は変化する。水温構造の変化や、それに伴う水質の変化は、湖の生態系や、農業、工業、生活用水などの利水に影響を及ぼす。本研究では全国の湖やダム湖における水温構造、水質変化、全層循環の発生の有無の詳細な検討や、それらの将来における変化を示すことを目標とし、本稿ではその第一段階として十勝ダムにおける東大雪湖について鉛直1次元の水温解析モデルを適用した結果を示す。
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松浦 拓哉, 手計 太一
セッションID: PP-1-20
発行日: 2022年
公開日: 2022/12/20
会議録・要旨集
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本研究の目的は,気候変動による降水形態の変化が黒部川から富山湾へ流出するNO3-Nに与える影響を明らかにすることである.富山湾は全国屈指の好魚場であるが,近年,富山湾の栄養塩が減少傾向である.その要因は気温上昇による降雨形態の変化によって,積雪が減少し,河川に直接流下することにより,地質由来の栄養塩が減少したことが挙げられる.富山県域の積雪深は統計的有意に減少傾向であることがわかっており,将来,河川から富山湾へ流出する栄養塩が減少することが推測される.以上を鑑み,本研究では降水形態の変化が黒部川から富山湾へ流出するNO3-Nに与える影響を検討した. 本研究で使用した降水量,気温,日射量はCMIP6をベースにしたCDFDM手法による日本域バイアス補正気候シナリオデータである5).このデータでは,5つのGCM (MIROC6,MRI-ESM2-0,ACCESS-CM2,IPSL-CM6A-LR,MPI-ESM1-2-HR)について,Historical (1900~2014年),RCP2.6,RCP4.5,RCP8.5シナリオ (2015~2100年)のデータが提供されている.空間分解能は1 km,時間分解能は1日である. 本研究では分布型水循環モデルにNO3-N原単位モデルを結合させることで,数値実験をした.その結果,気候変動により,積雪水量が50 % (223 mm)減少し,消雪日が30日早期化することがわかった.降雪が降雨に変化し,降雨が直接河川に流出することで,冬季の表面流出量は増加し,その結果,NO3-Nが 0.7mg/L低下すると算出された.また,5~6月の融雪時期は表面流出量のピークが15日早期化し,この時期のNO3-Nは1.5 mg/L増加することがわかった.
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