水文・水資源学会研究発表会要旨集
第18回(2005年度)水文・水資源学会総会・研究発表会
選択された号の論文の165件中1~50を表示しています
特別講演
8月4日(木)16:00~17:00
口頭発表
8月3日(水)9:30~10:45【アジアモンスーンと水資源】
  • 中根 和郎, ポルサン パンヤ, 黄 文峰, 松浦 玲子, 松浦 知徳
    セッションID: 1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
  • 加藤 亮
    セッションID: 2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    近年,食糧生産能力向上に向けた農業開発がさかんに行われてきたために,過剰施肥や生活排水からの栄養塩類が原因で,インドネシアのチアンジュール流域の水質は悪化している.本流域からの汚濁負荷量を削減することは非常に重要であるが,政府や農業生産者は農業生産高を維持したいので,水質対策が生産高に与える影響を考慮することも大切である.そこで,流域水質管理計画を評価するために,チアンジュール流域において,システムダイナミクスモデルを構築した.2003年と2004年に現地調査を行い,全リン(TP)濃度調査した.平均TP濃度は0.25 mg/Lであった. SDMモデルは,農業・水資源・水質・人口・産業の5つのセクタからなる.現状維持,肥料削減,有リン洗剤削減のシナリオを評価した.その結果,リン流出負荷が削減されたが農業生産も減少した.
  • 清水 克之, 増本 隆夫, ファム タイン ハイ
    セッションID: 3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
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    モンスーンアジアにおける水利用は,農業用水利用が主体である,水田灌漑形態が様々である,明確な乾季と雨季が存在するなどの特徴を持っている。しかし,農業水利用に関するデータの不足のため,水循環がどのように形成されているのか,さらには,水循環変動が食料生産にどのように影響するのかについては十分に明らかにされていない。それらを解明するためには,まず,地域の多様な土地利用,灌漑形態・方式を例示する必要がある。そこで,分析結果に基づき,メコン河流域を対象に天水および灌漑農地の水利用形態を分類し,特に,灌漑農地における水利用形態をマップ化した。さらに,分類された農地水利用の分布型流出モデルへの組込みについて示した。
  • 砂田 憲吾, 大石 哲, 宮沢 直季, ペチ ソクヘム, 田中 大輔
    セッションID: 4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究はトンレサップ流域における氾濫地域の変化(水位と氾濫範囲)と漁獲量との関係を把握するために簡単な生態系モデルを使う.そのモデルはトンレサップ流域における漁獲量トレンドを再現する.漁獲量トレンドは洪水範囲や相対面積密度のような主要パラメーターの変化に反映される.モデルはトンレサップ流域のオポチュニスト種の卓越性を示す.また,トンレサップ流域における漁獲量の60%以上がメコン河の他の地域との行き来をする白い魚であることから,トンレサップ流域とメコン河流域との水文学的,生物学的連結の重要性が再確認される.これはセクター間,境界間の総合計画及び開発を必要とする問題である.
  • 金子 紫延, 近藤 昭彦
    セッションID: 5
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    中国華北では水資源不足が問題となっており,それは食糧生産への負の制限要素となっている.これまで,千葉大学が地下水循環について研究を行ってきた中国華北平原において,統計資料から得た食糧生産量や社会経済指標の情報を用い,県スケールで,地形・地下水資源利用条件・社会経済要因や政策の影響を受ける人間活動・食糧生産量の相互作用を検討してきた.その中で,!)地形により地下水流動系の階層構造が形成され,おのおのの流動系の流出域に蒸発により高TDS区域が形成され,食糧生産性は制限される!)という地形・地下水流動系・TDS・食糧生産量の一連の関連が浮き彫りになってきた.今回は,コムギ・トウモロコシの生育時期のΣNDVI分布から,その複雑な空間分布と地形・地下水条件との関連性を再考察し,そして華北平原の地形により形成される地下水流動系階層構造を考察するため,華北平原の地理情報を用い地下水シミュレーションを行う.
  • 甲山 治, 田中 賢治, 池淵 周一, 砂田 憲吾
    セッションID: 6
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究ではアラル海流域における水循環の把握に向けて,アムダリア上流域の気象観測データと河川流量データの長期解析を行った.河川流量データはウズベキスタンの水文流量年鑑から作成した日流量データ(1936-87年)を,気象データはCDIAC提供の長期観測データ(1936-90年)を用いた.55年間の気象データ解析を行ったところ,上流域の各地点において気温・降水ともにわずかに増加の傾向を示した.流量解析からは,1960年以降の営農期において流量が顕著に減少していることが示され,流量減少と灌漑農業の拡大に密接な関連性を見ることが出来た.
8月3日(水)10:55~12:25 【降水】
  • 伊藤 洋太郎, 茂木 耕作, 相馬 一義, 萬 和明, 田中 賢治, 池淵 周一
    セッションID: 7
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、雲解像の非静力学数値気象モデルCReSSに都市や水田などの陸面状態を詳細に考慮できる陸面過程モデルSiBUCを導入したCReSiBUCを用いて、1999年7月21日に発生した練馬豪雨に対する都市の影響について調べた。土地利用分布に対する感度実験から、都市の存在が降水域の形成位置に影響を及ぼすことがわかった。さらに、人工排熱量に対する感度実験では、都市における人工排熱量の増大に伴って降水量が増加する傾向が見られた。
  • 田中 創
    セッションID: 8
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
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    日本気象協会では非静力学メソ気象予測モデルMM5(米国大気研究センターNCARとペンシルバニア州立大が開発)を予測モデルコアとする独自の総合数値予測システムSYNFOSを運用している。MM5は公開モデルで様々な計算オプションが用意されており、当協会では日本の気候に相応しいオプションの選択、物理過程の一部に改良を加える等の最適化を行い、気象庁数値予報格子点値を初期値に用いて運用モデルとしては国内で最も高分解能(5km格子)の予測計算を行っている。予測結果の一部は当協会の公開Webサイトで試験公開している他、独自数値予測として一般の天気予報の他、台風、集中豪雨、大雪等の顕著な現象への再現性の高さから関連分野への利用を進めている。本報告では、この独自予測システムSYNFOSの概要及びH16年のいくつかの豪雨事例への適用例を示す。
  • 小林 勝, 土屋 修一, 平野 廣和, 山田 正
    セッションID: 9
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    近年,関東平野では夏季の夕方に集中豪雨が頻発する.著者ら1)はこれらの集中豪雨発生要因の解明を目的とし,関東平野各地において大気観測を行い,海風が水蒸気及びエアロゾル輸送に与える影響を明らかにしてきた.本稿は,その一環として2005年4月26日に関東平野西部で発生した降雨域の移動と雨域内の風の場,及び上空の風との関係について解析したものである.以下に得られた知見を示す.1)降雨域の瞬間降雨強度が強くなると,その移動速度も増加した.2)VVP法を用いて算出した降雨域内の風の場は,降雨域の移動方向とほぼ同方向であった.3)降雨域の高度は4km程度であり,高度1.5km付近において瞬間降雨強度が強かった.4)降雨域の通過とともに水平風速が約8m/s程度増加し,その後風向が北に変化した.
  • 相馬 一義, 田中 賢治, 中北 英一, 池淵 周一
    セッションID: 10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,日本のような湿潤地域における短時間で局所的な降水に対して現実に起こりうる範囲の土壌水分量の変化が影響を与えうるかについて,非静力数値気象モデルを用いた数値実験によって検討した.具体的には,2001年8月15日に琵琶湖周辺で観測された対流性降水について,土壌水分量初期値を2001年8月に琵琶湖流域で観測された最も湿潤な状態と最も乾燥した状態に設定し,非静力学数値気象モデルを用いた数値実験を行った.その結果,現実に起こりうる範囲の土壌水分量の変化が湿潤な地域における短時間で局所的な対流性降水に影響を与えうることが示された.
  • 足立 真吾, 松田 誠祐
    セッションID: 11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
     最近世界の各地で洪水が頻発している。頻発する豪雨の原因について地球温暖化の影響があると言われているが,降水量に対しての長期的動向についてはまだ十分に解明されていない。本研究においては,著者らが提案している豪雨規模の指標(24時間降水量と1時間降水量の結合超過確率に対応する正規値と10日降水量の積)を用いて,その経年的な変化を調べるとともに,最近の各地で発生している豪雨の規模を比較した。その結果から次のことが示された。1)アメダス降水量から計算した日本における上位10位の指標の平均値は,経年的に増加している。2)最近の豪雨は,1976_から_1997年のアメダス降水量データから求めた都道府県別の指標の最大値を更新している。3)2004年の各台風の豪雨は過去の豪雨に比べても規模が大きく,台風10号における徳島県の豪雨規模はこれまでの最大値を示した。
  • 牛山 素行, 寶 馨
    セッションID: 12
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    降水量極値更新の情報は,豪雨時に,豪雨の激しさを伝える情報としてわかりやすく,有用な豪雨防災情報である.近年のデータ蓄積により,多くの観測地点について,極値更新情報が得られるようになったため,その基礎的な統計的性質を検討した.AMeDASデータ(観測所数1109,統計期間1979_から_2003)を用いた検討では,極値が更新されるまでの平均期間,すなわち平均記録保持年数は,各統計量とも経年的に線形で増加する傾向が認められた.おおむね統計期間が2年増えると,平均記録保持年数が1年長くなる.極値更新観測所出現率は,観測開始後10年で約10%,20年で約5%となった.SDPデータ(観測所数141,統計期間1961_から_2002)による検討結果もほぼ同様であった.
  • 高崎 忠勝, 土屋 十圀
    セッションID: 13
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
     東京都においては1時間に50mmの雨量に対応する治水整備をすすめてきたが、近年しばしば発生している局地的集中豪雨においては1時間に50mmを越える雨量を記録しており、治水整備水準の見直しが課題となっている。 東京を代表する都市中小河川である神田川を対象に、1985年から2004年の10分間雨量データを用いて、地点雨量による確率雨量と流域雨量による確率降雨を計算し比較した。計算の結果、地点雨量による確率雨量は流域の上流側が小さく下流側が大きい分布をしていたが、流域面積と確率雨量の関係においては、流域面積の増大に伴い確率雨量は小さくなった。以上のことから、地点雨量から算出した確率雨量は中小河川流域への雨量を大きく評価することを確認した。
8月3日(水)13:40~15:10【PUB】
  • 佐山 敬洋, 立川 康人, 寶 馨
    セッションID: 14
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    流出計算を行うためには,どの程度正確に水文量の空間分布特性を反映させる必要があるのか,この問いに対する答えをいまだ得ていない.高棹 (1967)は降雨や流域特性を集中化する面積を基準面積と呼び,その面積の定量評価の重要性を早くから指摘している.椎葉 (1995)は流域を複数のユニットの集合と考え,このユニット内では水文量の確率分布情報が重要であり,流域規模の現象を考えるうえではこのユニットがどこにあるかが重要であると指摘する.このときユニット内の水文量は probability-distributed であり,流域内の水文量は geometrically-distributed であるという.そして,このp-dとg-dの境界をなすスケールを発見することが重要であると指摘する.本研究はこの基準面積の定量評価を目指す.とくに流域内の降雨分布の特性と基準面積の関係について検討する.
  • 江 申, 立川 康人, 宝 馨
    セッションID: 15
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    The prediction uncertainty of model simulations caused by hydrologic models comprises several sources of uncertainty. Briefly they are: (1) observed data, (2) data for model calibration and (3) model structure. To identify and recognise the effect which caused by the different sources of uncertainty is extreamly difficult. In this study, the prediction uncertainty which came from the four kinds of uncertainty sources mentioned previously is classified into four categories: (1) system uncertainty, (2) entire uncertainty, (3) inherent uncertainty, and (4) structure uncertainty. The definition and the procedure to recognize and quantify them are described.The methodology started from applying Monte Carlo simulation to add bias item in model input series (rainfall), then rainfall realizations, parameter space, and model outcomes (outflow discharge) under different input uncertainty level are acquired.Instead of sampling the parameter space directly like what Generalized Likelihood Uncertainty Estimation (GLUE) Methodology did, the study here generates the parameter set space by introducing noise item into input data with specified probability distribution. This reflects the truth that parameter uncertainty came from uncertainty of data to hand and the way the model structure responses it.Finally, by examining the interrelationship among model simulation outcomes, model outcomes during calibration and observed watershed response series (discharge), the different categorized uncertainty can be recognized and quantified by a predefined index with its corresponding input uncertainty level.Statistical second moment and an index which originated from Nash coefficient named Model Structure Indicating Index (MSII) is proposed to quantify model structure uncertainty which can be used as a tool for implementing model quantitative comparison (selection). In order to perform a quantitative comparison between hydrologic models, Storage Function Method (SFM) and TOPMODEL are used.The results show that MSII can well reflects the model structure, where a larger value of MSII indicating a poorer structure of hydrologic model. This can be a useful tool for water resources management, hydrological modeling and rainfall runoff simulation over ungauged basin.
  • 山本 隆広, 陸 旻皎
    セッションID: 16
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    降雨流出系の時間スケールよりも粗い時間分解能の水文データを用いてモデルパラメータを同定し実測流量を再現する場合に、同定されたパラメーターに降雨の時間分解能による不確定性が導入され、「真値」からずれる可能性がある。本研究では貯留関数法を対象とし、ランダムカスケードモデルにより発生させた様々な時間分解能の降雨データを用いて,(1)入力データの時間分解能の影響、(2)同定されるパラメーターと入力および検証データの時間分解能との関係を調べる。その結果、水文データの時間分解能が流出解析に大きな影響を及ぼすことが分かった。
  • 谷 誠, 小杉 賢一朗
    セッションID: 17
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    斜面流出過程において、土壌による雨水の一時貯留は斜面の雨水流出の遅れをもたらす。本研究では、飽和不飽和浸透流の2次元モデルを用い、定常降雨を条件として与えて、土壌や地形が雨水貯留量に及ぼす影響を検討した。降雨増加にともなう貯留量増大は土壌によって大きく異なり、1次元鉛直不飽和浸透の場合と同様、間隙径の小さい場合に貯留増加が小さい傾向があった。その基本傾向は飽和ダルシーのKinematic wave解と鉛直浸透の組み合わせによって容易に説明できた。また、飽和透水性がマクロポアーによって大きくなっても地下水面が低下するだけで、貯留量指標には大きな影響を与えないことも明らかになった。これにより、地形と土壌それぞれの流出特性への影響を独立に評価できることが指し示された。
  • Chavoshian Ali, 平林 由希子, 船田 晋, 石平 博, 竹内 邦良
    セッションID: 18
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    The main purpose of this study is the assessment of BTOPMC model for blind test simulation in ungauged basins with using the global data sets that are available in the public domains. For this at the first step, the Mae Chaem is selected for a blind test application of BTOPMC. The necessary data sets for running the model are extracted from global data sets that are available in public domain rather than available ground based observations. The soil properties of all catchments are obtained using the FAO (Food and Agriculture Organization) soil map and for Land Cover data IGBP (International Geosphere Biosphere Program) will be used. For precipitation data, four WMO stations are used and Potential Evapotranspiration is estimated by using NOAA satellite images. The DEM and river network is generated from the USGS 30 arc second GTOPO30 data set.
  • 手計 太一, 吉谷 純一
    セッションID: 19
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    国際水文科学会(IAHS)のPUB(水文データの乏しい流域の水文予測)Scientific Planはその目標を「予測の不確実性の幅を減らす(Reduction in predictive uncertainty)」としている.土木研究所は日本PUB研究コミュニティが発案する統一対象海外流域のPUB研究用データベースの公開準備を進めている.その際,予測や評価の元となる水文データの不確実性を把握することが重要である.1970年代から菅原タンクモデルが世界に広まった「水文モデルの擬似実時間相互比較についてのWMOプロジェクト(WMO Project on Simulated Real-Time Intercomparison of Hydrological Models)」に参加した菅原正巳は“悪い資料”に悩まされたことを記している.本稿では「観測値の質」について議論する.
8月3日(水)15:20~17:00 【流出解析・流出モデル】
  • 市川 温, シバパラン ムルゲス
    セッションID: 20
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、降雨の時空間変動, 流域特性, 流出応答の三者の関係を線形システム理論に基づいて調査した。本研究は大きく二つに分けられる。一つは、降雨の時間変動に着目し、もう一つは降雨の空間変動に着目している。両者とも、降雨の変動が流出応答に及ぼす影響と、流域特性がその影響の程度に対してどのように作用するか調べている。本研究では、降雨流出系を線形システムとしてモデル化しており、流出応答は降雨時系列と流域の地理的水文学的特性を反映した流域単位図とのたたみこみ積分で与えられる。
  • 稲葉 薫, 登坂 博行
    セッションID: 21
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    陸域における水循環に関しては様々なモデルが開発され、環境評価、水資源評価、災害評価などに利用されている。一般に水循環モデルでは水収支(物質収支)が扱われ、熱的現象は練成して解かれることは稀である。本研究では物質収支と熱収支を完全に連成したモデルの開発を試みている。この手法は、地圏の水循環メカニズムの解明や、環境評価などにも有用と考えられる。今後の実用化を目指し、結果の検証、実フィールドへの適用を図っていく予定である。
  • 山下 三男, 市川 新
    セッションID: 22
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    水を取り巻く様々な問題を解決するためには、一般市民を含めた利害関係者に様々な水文・水質情報を統合してわかりやすい形で提供しなければならない。河川シミュレーションモデルを軸として、小流域の情報を統合する分布型モデルは、そのための有力な手段である。管路及び開水路における水理計算に関してはサンブナン式を解く追跡モデルが欧米において開発市販されており、分布型モデルの次なる課題は、小流域からの流出をいかに記述するかにある。具体的には特定の小流域に最適なモデルを選択もしくは開発し、そのモデルのパラメータの同定法を確立することである。筆者らは河川の上流の森林流域を対象とし、雨水の浸透とその再流出を連続的に再現するモデルを開発したので、そのパラメータの感度分析を行った。観測流量の総量を勘案しながら、土壌における浸透能力を表すパラメータを行うことが有効であることが示された。
  • 松田 周吾, 前田 妙子, 中北 英一
    セッションID: 23
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
     本研究は,高分解能の情報であるという長所を持つ分布型降雨情報が,その長所によって有効なものとなる条件を流域の地形特性という視点から探るものである.このために流出モデルと連動して実流域の様々な流域地形量を算出できるようにした上で,それらの値と分布型情報の有効性の関係について論じた.分布型情報の有効性の検討は仮想降雨を用いた流出解析によって行った.対象流域としては4つの実流域と,地形量をパラメータとして設定可能な模擬流域を用いた.このために計量地形学における代表的な法則や統計則に基づいた模擬流域発生手法を構築した.実流域での検討結果として,流域界形状や河道網形状などを表現する流域地形パラメータが分布型情報の有効性に関係していることを示唆した.このうちの分岐比・河道長比については模擬流域を用いてさらに検証を行い,分布型情報の有効性との関係を確かめた.
  • 近森 秀高, 永井 明博, 竹内 唯
    セッションID: 24
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    水文データの少ない流域における洪水流出解析手法として,数値標高地図(DEM)から求められる流域の幅関数を用いた流出解析手法の実用性について検討した。この手法では,流域への雨量は保留量曲線を用いて有効降雨と浸透とに分離され,有効降雨は,幅関数に基づいて得られた単位図によって直接流出に,浸透は,線形タンクモデルへ入力されて基底流出に変換され,これらの和が計算流量とされる。この手法を,高知県鏡ダム流域で得られた豪雨時の雨量・流量データに適用し,その実用性について検討した結果,ピーク流量がやや過大推定され,ピーク後の低減が実測値よりも速くなる傾向が見られた。この傾向は,流域を山腹斜面と河道とに区別し山腹斜面における雨水の平均流速を河道よりも小さくすることにより軽減されたが,逆にピーク流量が過小に計算される場合もあり,この手法を適用する際,河道と山腹斜面の区別が問題の一つであることが示された。
  • 多田 毅
    セッションID: 25
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
  • 伊藤 覚, 斉藤 泰久, 鈴木 章浩, 湯浅 岳史
    セッションID: 26
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    流域面積の8割が森林となっている狩野川大仁上流域において、ハイドログラフから見掛けの流域平均浸透能を求め流域の降雨流出特性を検討した。狩野川上流域の支流域において河川流量観測を行い、市流域毎に流域平均浸透能を求めたところ、流域内の土地改変状況と関係している可能性が明らかとなった。そこで、土地の改変を受けている範囲と受けていない範囲の森林斜面の浸透能を仮定して流域浸透能を推定したところ、100mm/h以上を示すミクロな森林土壌層の浸透能が大きく低下している可能性が把握できた。これらのことから、土地改変により森林斜面の飽和側方浸透流か影響を受け、速やかに地表流へ転換される状況が生じていることが、降雨流出を早めている可能性ではないかと推察した。また、見掛けの流域平均浸透能は、流域の浸透や保水機能を高める方策に活用できると考えられた。
  • 長谷部 正彦, 鈴木 善晴, 松本 秀和
    セッションID: 27
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
8月3日(水)17:00~18:15 【地下水流動】
  • 藪崎 志穂, 田瀬 則雄
    セッションID: 28
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    筑波大学構内において,月降水,イベント降水,および地下水を継続して採取し,それらの酸素・水素安定同位体比を測定した。降水の同位体比には季節変化が顕著には認められないが,d-excessには季節変化が明瞭にあらわれており,涵養時期の推定などにd-excessを利用することが可能であると考えられる。地下水の同位体比は年間を通じてほぼ一定しており,preferential flow(選択流)の影響は少ないと考えられる。降水の同位体比の加重平均値と地下水の同位体比の平均値を比較すると,地下水の同位体比の方が高い値を示している。この結果から本研究地域では蒸発の影響を受けた土壌水によって地下水が涵養されていることが示唆された。このように降水や地下水の同位体比を比較することにより,降水の降下浸透および地下水涵養のプロセスを推定することが可能であると考えられる。
  • 国分 邦紀
    セッションID: 29
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
     平成16年秋期は、度重なる台風や大雨により全国各地で水害が頻発した。東京地方でも記録的な累積降雨により枯渇した湧水や都市河川の流量復活、地下水位上昇などが話題となった。 本報告では、東京の西部、武蔵野台地のほぼ中央部に位置し、大雨時だけ復活するという「さいかち窪」湧水について、水文学的考察を行ったものである。
  • 辻村 真貴, 安部 豊, 田中 正, 嶋田 純, 樋口 覚, 上米良 秀行
    セッションID: 30
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    乾燥・半乾燥地域における内陸河川は,流下にともない水面からの蒸発と地下水への涵養により,徐々に流量を減じていくことが一般に言われている.従来こうした河川と地下水の交流関係は,流下に伴う河川流量の変化という見かけの傾向から指摘されることが多く,実証的な検討はなされてこなかった.本研究では,モンゴル東部ヘルレン川の上流部から中流部に至る本流とその流域を対象に,安定同位体トレーサーを用いた水・同位体収支解析に基づき,河川水と地下水との交流関係を検討した.その結果,上流,中流いずれの区間でも河川_-_地下水交流量は正値を示し,河川に対する地下水の流出が生じていることが示唆された.上流区間において1.0 m3/s(1.7 x 10-2 m3/s/km),中流区間において2.6 m3/s(1.1 x 10-2 m3/s/km)の地下水流入量は,水面蒸発量を上回り,また河川流量の10 %から20 %に相当し,無視し得ない量である.
  • ナスヒ シーナ, 小尻 利治, 浜口 俊雄
    セッションID: 31
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    A generalized piston-flow approach was formulated for more realistic initial and boundary conditions met in estimation of inflow for conjunctive use applications. Each formulation was validated and examined for assumed soil and moisture conditions. Thus a more flexible piston flow formulation was developed as the joint mechanism between a kinematic wave routing and water table recharge boundary of a 2D groundwater model, through lage-scale cell modeling(PHC) as needed for estimation of long-term inflow and re-newable storage of the system.
  • 町田 功, 板寺 一洋
    セッションID: 32
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目標は、火山温泉地域の500_から_1000m深程度の地下水流動に関する概要を把握することにある。深部の地下水流動を研究する場合、一般に水文学的情報は大きく不足しており、その解析は困難を要する。しかしながら、本論の研究地域である箱根強羅地区では、多数のデータが蓄積されており、深部地下水流動をおこなうためには全国的にも最適なフィールドの1つである。本研究の最終的な目的は、熱もしくは物質輸送を踏まえた地下水流動シミュレーションをおこなうことにあるが、それに先立ち、本論では主に、地下水流動に関する概念モデル、および泉質形成モデルの構築をおこなった。そのために、まず既存の温泉水の水質データをデータセット化し、特に時間変化に関する特性を調べた。その後、吟味されたデータを用いて地下水面図や水質分布図などを描き、従来のモデル(大木・平野モデル,1968)を検討・修正した。
  • 川久保 愛太, 浜口 俊雄, 中北 英一
    セッションID: 33
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では乾燥地帯における広域の表面流および地下水流の挙動を解明することを目的とした.まず乾燥地帯における広域地下水解析において,大型要素を用いて計算した場合の表面流の発現範囲を算出し,表面流出による影響を検討した.次に広域を対象とした飽和不飽和浸透流解析において不飽和流の簡便化モデルにDBモデルを用い,Richardsモデルとの涵養量の比較検討を行なった.数値実験の結果,DBモデルの方が早くから地下水面への涵養が始まることが分かった.DBモデルの透水係数の値を、Richardsモデルによる涵養とほぼ量的時間的に等価になるようにすることが出来た.最後にDBモデルによって解析された涵養量を用いて広域地下水解析を行なった.今回の解析では下流端からの流出変動が小さいものであった.今後は計算期間を長くすることで,DBモデルが既存のモデルに等価に置き換わっていることを示す計算が必要であると分かった.
8月5日(金)9:20~10:25 【地表面フラックス】
  • 齊藤 誠, 浅沼 順, 宮田 明
    セッションID: 34
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
  • 小谷 亜由美, 杉田 倫明
    セッションID: 35
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    大気境界層における温度や湿度などスカラー量の変動測定から地表面フラックスを推定する分散法を,大気境界層(混合層)データに適用した.モンゴルの半乾燥草原で実施された航空機観測にて境界層内の3から4層の高度別測定を行い,温度分散のプロファイルを得た.混合層内の分散と地表面フラックスの関係式として,自由対流条件とTop-down Buttom-upモデルを用いた.これらのモデルから算出した地表面顕熱フラックスは,地上での渦相関法測定値とのRMS誤差が50_-_100Wm-2となったが,モデルの経験的係数を誤差が最小になるように最適化すると,誤差は40Wm-2になった.さらに,モデルのパラメータとして,水平移流や傾圧性を加えることで,誤差は30Wm-2と改善し,混合層内の分散プロファイルの形成へのより大スケール大気場の影響が示唆された.
  • 中村 麗奈, Mahrt Larry
    セッションID: 36
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    The stable nocturnal boundary layer (SNBL) is commonly viewed or modelled as a balance between the temperature tendency (cooling) and vertical heat flux divergence although the radiative flux divergence is also included. This perspective has dictated the design of field experiments for investigating SNBLs. Tower-based micrometeorological data are analyzed to evaluate the sensible heat budget for nocturnal stable conditions. Our analysis indicates frequent occurrence of large imbalance between the temperature tendency and vertical heat flux divergence. The values of the radiative flux divergence are generally too small and sometimes of the wrong sign to explain the residual, suggesting the importance of advection or possibly the divergence of mesoscale fluxes. The implied role of advection is consistent with circumstantial evidence. Even weak surface heterogeneity can create significant horizontal gradients in SNBLs.
  • 山中 勤, 綱川 明芳, Smith Ronald
    セッションID: 37
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    温帯草原上の大気水蒸気の同位体測定を2003年の植生成長期を通じて実施した。また、蒸発散フラックスの同位体signatureをKeeling Plotアプローチによって同定し、蒸散と土壌面蒸発の量的割合の評価に利用した。観測結果から、蒸発散フラックスのδ値は土壌水のそれよりも低く、同位体分別の影響が小さくないことが明らかとなった。また、大気水蒸気のδ値はさらに低く、高度が高いほど低くなる傾向を示した。つまり、上空の同位体的に軽い水蒸気と蒸発散による重い水蒸気とが鉛直方向に混合して地上付近の水蒸気同位体組成が決定されていることが示唆された。蒸発散に占める蒸散成分の割合は、有効放射エネルギーに占める潜熱フラックスの割合と同様、植物の成長とともに増加する傾向が認められた。またLAIとそれらの関係は累乗関数で良好に近似できた。以上の結果は、同位体トレーサー手法の有効性を実証している。
  • 辻本 久美子, 増本 隆夫, 三野 徹
    セッションID: 38
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    熱帯モンスーン気候帯に属するカンボジアで約5年間にわたる現地気象観測を行い,雨季と乾季の水文・気象環境,とりわけ,日射量に着目してその特徴について考察した.その結果,雨季と乾季で日射量は大きく変わらず,降雨日の日日射量が無降雨日の約88%に及んでいることが分かった.またその原因としては,当地における降雨イベントの大半が夕方から夜間にかけて集中しており正午前後には非常に少ないこと,また,1時間程度の短時間降雨イベントが多いことが示された.ここで得られた結果は,カンボジアのみならず,熱帯モンスーン気候の特徴として広くこの地域に当てはまるものと考える.なお,雨季には,日射量が大きく減少しない結果,湿潤な環境の下で多くの蒸発散が生じていると考えられる.本地域の蒸発散量算定には,日射と降雨時刻に関するこのような特徴を十分に考慮する必要があろう.
8月5日(金)10:25~11:05 【リモートセンシング】
  • 児島 利治, 笠井 尚徳
    セッションID: 39
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    樹冠による降雨の遮断効果は,樹冠の疎密度,葉の形状,樹種等に影響されると考えられ,流域内の植生マップは,降雨流出過程を考える上で重要な情報の一つである.リモートセンシングデータを用いた樹種分類は植生マップの作成に有効と考えられている.しかし,リモートセンシングデータの撮影時期,撮影角度,地形による反射特性の違い等による誤差や, Landsat等の1観測バンドの波長域が大きい従来の衛星リモートセンサでは,樹種ごとの分光反射特性の違いを判別することが困難等の理由により,詳細な植生マップの作成は極めて難しい.本研究では,急峻な山岳地形において,ハイパースペクトラル画像を用いた樹種分類に関する検討を行う.Minnart法による放射量補正と主成分分析によるノイズ除去を行った結果,特に第5主成分に観測角度の影響が生じている事が分かった.第5主成分等のノイズと思われるレイヤーを除いて分類を行った結果,分類精度が向上した.
  • 長谷川 宏一, 松山 洋, 都築 勇人, 末田 達彦
    セッションID: 40
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    近年,太陽,センサと,対象がなす角度によって,取得される分光反射特性が異なる性質(BRDF)が,衛星データに及ぼす影響が懸念されている.そこで本研究では,カナダ北西部の山火事後の遷移段階にある植生を対象に,植生のBRDFが植生指標NDVIの値に与える影響を調べた.さらに,複数の植生指標(GEMI,バンド和で正規化した近赤外の反射率:nNIR)のBRDFに対する変動を変動係数を用いて比較した.観測角度の変化がNDVIに与える変動は,IKONOSが標準画像として販売する真下±15°の観測角度の違いで,0.1_から_0.2程度あった.また,各植生指標のBRDFに対する変動を比較すると,NDVIは特に地表面が露出する植生でBRDFに伴う反射率の変動の影響が表れることが分かった.さらに,焼け跡ではGEMIが,植生の侵入が始まった後の地点ではnNIRが,それぞれ最もこの変化に対する変動が小さくなった.
  • 金子 大二郎
    セッションID: 41
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    中国を中心としたアジアの穀物生産と水資源のために,国内データを用いた穀物生産指標を開発してきた.日本をはじめとするアジアの穀物生産量を早期にかつ正確に監視する必要から,従来の方法の日射と植生指標NDVIに加えて,温度障害を取り入れてきた.本研究では,これまでの低温不稔を考慮した光合成型の穀物生産指標のモデルに,水稲と小麦を念頭にした水ストレスを取り入れようとしている.制御温室において水稲に水ストレスを加え,葉面からの反射率スペクトルを測定した.すでに提案されているSRWI(Simple Ratio Water Index)とNDWI(Normalized Difference Water Index)の水分指標について,MODISによる広域測定とASTERによる検証を想定し,両衛星の短波長赤外帯を用いた水ストレス指標の適用性を検討した.
8月5日(金)11:10~12:40 【生態系と水循環】
  • 岩屋 隆夫
    セッションID: 42
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    屋上緑化にはヒートアイランド対策という主目的がある一方で,屋上緑化の土壌層には降雨を貯留する機能がある.土壌層厚80mmの屋上緑化ユニットの実験では,累計37.6mm(時間換算93mm/hr)の93%が屋上緑化に貯留され,貯留の多くは初期雨量の段階で開始されている.降雨の降り出しに敏感に反応して洪水ピークが立ち上がるような都市河川の治水問題を考える場合,強雨の降り出しの段階で降雨貯留を開始するという屋上緑化の流出抑制は,過小評価すべきではなく,むしろ灌水頻度を少なくすることによって機能向上を図ることができると考えている.
  • 井上 君夫, 木村 富士男, 黒川 知恵, 藤井 崇
    セッションID: 43
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
  • 村上 茂樹
    セッションID: 44
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    ヒノキ幼齢林において樹冠遮断の測定を行った。降雨イベント毎の樹冠遮断強度(1時間毎の樹冠遮断量)と降雨強度(1時間毎の雨量)とは比例関係にあった。この現象は、雨滴が樹冠に衝突して多数の小水滴(飛沫)ができ、それらが蒸発するとする仮説を導入することで説明できる。いま、相対湿度を95%で一定と仮定する。この値は降雨中の実測値と同等である。半径25ミクロンの小水滴が終端速度で落下する場合、蒸発によりわずか2-3mの落下で小水滴は消滅してしまうことが計算結果から示された。しかし、半径100ミクロンでは8mの落下でもほとんど蒸発しない。この結果は上記の仮説が妥当であり、飛沫蒸発が樹冠遮断の主要なメカニズムであることを支持するものである。
  • 恩田 裕一, 伊藤 茜, 福山 泰治郎, 森脇 寛
    セッションID: 45
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    わが国の人工林の約8 割が徐伐・間伐などの手入れを必要とする45 年生以下の森林である。手入れが適切に行われないヒノキ林地では,下層植生の減少や落葉の消失により,林床が裸地化することが知られている。また,このような林内では,雨滴の衝撃によって土壌の表面にクラストが形成され,最終浸透能が低下することが知られている。しかしながら,実際に林内において,雨滴径および雨滴エネルギー,また浸透能との関係について実測データを基に議論した研究はない。そこで本研究では,大型降雨実験施設内にヒノキを植栽し,林内の雨滴衝撃や雨滴径,雨量分布を測定した。さらに,プロットからの流出水量を測定することにより,浸透能を算出した。雨滴のエネルギーが大きいほど最終浸透能は低くなる傾向が見られた。雨滴衝撃および雨滴径は11 m ヒノキ林で大きかったことから,林床が裸地化したヒノキ林において,雨滴衝撃の増大が林床の浸透能の低下を引き起こすことが明らかになった。この事実は,裸地以上に手入れの悪いヒノキ林において,表面流が発生しやすいことを意味する。
  • 角張 順一, 田中 正, 飯田 真一, 濱田 洋平
    セッションID: 46
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,樹種の違いが地下水涵養プロセスに及ぼす影響を明らかにするため,筑波大学陸域環境研究センターに隣接するアカマツ林内においてアカマツとシラカシの樹木周辺および樹木間の土壌水の圧力水頭を連続測定し,土壌水の挙動について解析した.
    その結果,樹木間および樹木周辺の圧力水頭分布の変化に大きな違いがあることが分かった.まず,深度70cmの圧力水頭値の変動に明確な差異が見られた。次に、降雨イベント中のアカマツ,シラカシの樹幹直下での圧力水頭値は、表層付近ではほとんど差が見られないのに対し,深度100cm以深では,アカマツ側よりシラカシ側の方が高くなっていた.さらに,シラカシ直下では,湿った部分がマウンド状に盛り上がっている.この両樹幹直下の圧力水頭分布の差異には,地下水涵養においてポイントソースとして機能し,樹種によって大きく量が異なる樹幹流が寄与しているものと推察される.
  • 河合 真由美, 土屋 十圀
    セッションID: 47
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
  • 板垣 泰生
    セッションID: 48
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
8月5日(金)13:30~14:45 【河川環境】
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