本稿の目的は, 平成7年6月の観光政策審議会の答申を受けて, 運輸省が平成8年4月に取纏めた「『ウエルカムプラン21』(訪日観光交流倍増計画)に関する提言」を, 今後約10年間にわたる我が国のインバウンド誘致政策の基本的枠組を構成する重要な提言であるとの認識に基づき, また国際観光は主としてサービスの輸出(取引)であるとの想定に基づき, 「提言」に盛られている内容を, 最近の国際経済学上の理論的成果に照らして分析検討し, その実現可能性の成否と実現のために必要とされる諸施策をデザインするうえで, 我々はどのような事柄に注意を払うべきかを明確にすることである。
特に, 本稿では, 国際観光の理論的決定因の分析という観点から, 要素賦存, 比較費用, 絶対および比較優位, 為替相場の諸理論, そして需要理論を「ウエルカムプラン21」の経済的側面の分析に適用し, 最後に, 我々は,「提言」の目的を達成するためには, 種々の観光資源は比較優位を考慮しながら系統的に利用すべきであること, また, アジア諸国における最近の急速な経済発展は当該地域での国際観光への経済的条件が満足されつつあることを考慮し, 「提言」に盛られているアジア地域へのマーケティング活動と宣伝を充実させることが重要な課題であると結論する。
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