関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
選択された号の論文の314件中301~314を表示しています
口述
  • 松田直也 , 原島宏明 , 宮野佐年
    p. 171-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】 Functional Balance Scale(以下,FBS)は,歩行自立度を決定する際に用いられることが多く,各施設においてそのカットオフ値を見い出す報告は多い.Berg らはその基準値を45 点と報告している.しかし,実際の生活場面ではFBS45 点未満であっても杖(T 字杖,4点杖)を用いて歩行していることが少なくないと思われる.そこで本研究では,FBS45 点未満の患者が杖を使用し何程の安定性を成しているのかを検討することである.

    【説明と同意】後方視的研究であり,全て匿名化された既存のデータを使用し検証した.

    【方法】 対象は,平成27 年4 月1 日~平成28 年3 月31 日の間に当院回復期リハビリテーション病棟に入院した運動器疾患(大腿骨頚部骨折,脊椎圧迫骨折,TKA 術後)の患者52 名(男性6 名,女性46 名,平均年齢80.8 歳)で,歩行訓練導入時FBS が45 点未満の患者とした.なお,MMSE21/30 点以下(認知症の疑いが強い)の患者は対象外とした.関連因子に,病棟歩行導入後の転倒歴を設定した.統計解析は,FBS45 点未満の患者を杖使用にて歩行自立群,監視群,介助群に分け,カイ二乗検定を用い有意水準は0.05 とした.

    【結果】自立群17 名,監視群24 名,介助群11 名となり監視群が有意に多い結果となった.また,自立群の中で杖を使用し病棟歩行導入後に転倒した患者は1 名であり,5.8%の割合であった.点数では,自立群37~44 点,監視群33~

    43 点,介助群9~24 点であった.

    【考察】 今回の検討で,FBS45 点未満であっても杖を用いれば歩行の安定性が成されると考えていたが,結果は監視を要する場面が多いことが示唆された.今後は,どの場面で転倒することが多いのか,杖の使用方法や適正,導入時期の評価,その他の歩行補助具の選定など更なる検証が必要と思われる.

  • 湖東聡 , 関屋昇 , 加茂野有徳
    p. 172-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】歩行開始時の転倒が比較的高い頻度で高齢者に認められる。バランス不良の場合には立位のスタンス幅を拡大させることが多く、歩行開始のプロセスの中に転倒の一因があるかもしれない。本研究では基礎研究として、立位のスタンス幅と歩行開始プロセスの関係を、運動学的および運動力学的側面から明らかにすることを目的とした。

    【方法】本研究は昭和大学保健医療学部倫理委員会で承認された。対象は整形外科的及び神経学的疾患の既往のない健常成人男性6 名とし、十分な説明の後同意書への署名を得た。被験者は床反力計上で3 つのスタンス幅条件(閉足位、開脚15cm、開脚30 cm)で静止立位姿勢をとり、合図に従って前方に歩いた。計測にはVICON MX

    システムと床反力を用いた。統計解析にはFriedman 検定を用いた。

    【結果】遊脚開始前の床反力逆応答現象(遊脚側床反力が一度増大する現象)は立位スタンス幅が大きいほど大きくなった(p<0.05)が、後方へのシフトの大きさには立位スタンス幅の影響が認められなかった。重心移動については、1 歩目の遊脚が開始される前に重心は立脚側に側方移動しながら前方へ動くが、この時の最大側方重心移動量は、立位スタンス幅が大きいほど大きくなった(p<0.05)。支持脚股関節内転角度と外転トルクは立位スタンス幅が小さいほど大きくなった(p<0.05)。

    【結論】床反力逆応答現象と初期の立脚への重心側方移動量が、立位スタンス幅が大きいほど大きくなったことから、安定を求めて立位スタンス幅を広くしておくことは振り出し脚への初期負荷を増大させ、側方への運動を増大させることを示している。また、支持脚股関節内転角度と外転トルクが立位スタンス幅が小さいほど大きくなったことは、歩行開始時の立位スタンス幅が歩行開始プロセスに強く影響することを示しており、運動障害を持つ人の歩行開始を考える上で重要な情報となる可能性がある。

  • 宮澤拓 , 国分貴徳 , 小平寛岳 , 瀧谷春奈 , 金村尚彦
    p. 173-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】立位姿勢の保持は無意識・無自覚下で行われるが、われわれ理学療法士は対象者に自己の姿勢に意識を向けるよう指示を与えることがある。しかしそれが制御系にどのような影響を及ぼすか明確でない。本研究では動揺を最小限にするように指示を与えた立位での足圧中心(COP)動揺を解析し、意識的に制御できるパラメータの有無を探り、治療介入の根拠を得ることを目的とした。

    【方法】健常成人10 名(21.1±0.7 歳)を対象とし、重心動揺計(ユニメック社)上にて30 秒間の立位保持を行い、COP 動揺を計測した。自然状態での立位保持を行った後、意識的に姿勢動揺を最小限に留めるよう指示を与えて立位保持し、各条件で開眼と閉眼各4 回行った。COP 動揺の評価指標として、外周面積・加速度の標準偏差(SD)・stabilogram diffusion analysis(SDA)によるハースト指数 (Hs,Hl)を算出した。統計解析は開閉眼×自然・意識下で二元配置分散を行った。

    【結果】いずれの評価指標においても動揺しないように意識した立位で有意な変化はみられなかった。視覚に関しては閉眼により外周面積は増加、Hs は増加、加速度SD には有意な変化はなかった。

    【結論】COP 解析から立位姿勢の制御特性を推測できる。加速度SD の低さは一定したCOP 制御、Hs,Hl はCOP の確率論的なふるまいを短・長時間領域での制御の安定性として解釈できる。身体の揺れを少なくするよう意識することではこれらの制御には変化が生じず、視覚の有無で変化がみられた。立位保持は多数のシステムの交互作用で無意識下にて行われるものである。動揺を小さくするように意識することでは制御の変化はみられなかったことから、無意識下でも姿勢を安定できるような身体環境を整える治療介入が望ましいと考えられる。

    【倫理的配慮、説明と同意】被験者に対し計測前に研究趣旨と内容を説明し同意を得た。本研究は埼玉県立大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(倫理審査番号26104)

  • 川崎翼 , 河野正志 , 兎澤良輔
    p. 174-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】 本研究の目的は、得た運動スキルの言語化 (話すこと) が運動学習を促進するかどうかを明らかにすることであった。

    【方法】参加者は大学生18 名であり、言語化群とコントロール群に割りつけられた。2 つの球を非利き手で回す課題を運動学習課題とした。言語化群が4 分間球回しを練習した後、1 分間の球回し回数と落下回数を計測した。その後、「どのようにして球を回したか」をビデオカメラに向かって話をさせた (最大2 分間)。その後は、直後、2 分後、1 日後の合計3 回、1 分間の球回し回数と落下回数を測定した。コントロール群は、4 分間の練習後の2 分間科学雑誌を音読した。言語化群が話をしている時間はビデオを見返すことで確認した。分析は、言語化群とコントロール群のパフォーマンス (介入後の改善回数および落下回数) に対して分散分析、球回し回数と話をした時間の相関分析を実施した。統計的有意水準はすべて5%とした。本研究は所属機関で倫理審査を通しており、ヘルシンキ宣言に則って実験内容に同意の得られたものに対して実施した。

    【結果】球回しの改善回数は、コントロールに比べて言語化群の方が有意に多かった。言語化群が話をしていた時間と鉄球回しの改善回数に有意な相関を認めた。

    【考察】練習によって得た運動スキルの言語化は、球回し回数に表される運動速度という側面の運動学習の向上に有効となることが示された。特にその効果は、より長く言語化できた対象者に高いということが分かった。これは、言語化するために自身の運動を振り返っている(運動イメージ想起)時間の長さが運動学習に影響することが示唆された。

    【まとめ】運動スキルを言語化することによって運動学習が促進された。これは、個別のリハビリテーションで得た動作を言語化するだけで、学習が強化されることが考えられ、リハビリテーション効果を高める介入になることが期待される。

  • 深田和浩 , 網本和 , 井上真秀 , 播本真美子 , 高橋洋介 , 角屋亜紀 , 藤野雄次 , 高石真二郎 , 牧田茂 , 高橋秀寿
    p. 175-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】姿勢定位に関わる認知的側面として、主観的視覚垂直(SVV)や主観的身体垂直(SPV)の重要性が論じられている。近年、加齢による矢状面上の主観的垂直認知の変容が報告されているが、前額面における加齢性変化については不明である。本研究の目的は、前額面上における主観的垂直認知の加齢による差異を明らかにすることとした。

    【方法】対象は、健常な若年群15 名(平均年齢25.5 歳)と高齢群15 名(67.9 歳)とした。本研究は当院の倫理委員会の承認を得て実施し、対象者には研究の旨を説明し書面にて同意を得た。SVV の測定は、パソコンで測定可能なプログラムを用いた。検者は視覚指標を水平位から右あるいは左回りに5°/秒の速さで回転させ、対象者が垂直に判断した時点と鉛直位からの偏倚量を記録した。SPV の測定は、身体垂直測定機器(VB)を用いた。対象者はVB 上に閉眼(SPV)または開眼(SPV-EO)で座位となった。検者はVB を左右に15°あるいは20°傾けた位置から垂直方向へ1.5°/秒の速さで回転させ、対象者が垂直に判断した時点の座面の傾きを記録した。手順はABBABAAB 法を用いた。角度は鉛直位を0°とし、時計回りを+、反時計回りを-とした。データ処理は、8 回の平均値を傾斜方向性、標準偏差値を動揺性とし、統計解析には対応のないt 検定を用い2 群を比較した。

    【結果】若年群と高齢群の傾斜方向性はSVV 0.0°、-0.5°、SPV-EO -0.6°、0.4°、SPV 0.3°、-0.2°であり差はなかった。同順に、動揺性はSVV 0.7、1.3、SPV-EO 1.9、3.0、SPV 2.2、3.2 であり、全てのパラメータにおいて高齢群で有意に高値を示した(P<0.05)。

    【考察】高齢群の動揺性は、若年群よりも全てのパラメータで高値を示した。一般に加齢に伴い視覚や前庭、体性感覚機能が退行することが報告されている。本研究から高齢群では視覚や身体の垂直判断が不安定となり、加齢により前額面上の主観的垂直認知が変容することが示唆された。

  • 岡原隆之介 , 清水忍
    p. 176-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】運動イメージによる一次運動野(M1)興奮性増大に関する先行研究は利き手に関するものが多く,非利き手の運動イメージ時のM1興奮性の変化は明らかになっていない.清水ら(2014)は利き手での箸動作イメージ時には対側M1興奮性は増大したが,非利き手では対側M1興奮性の増大は認められなかったと報告した.今回,非利き手の箸動作の練習が運動イメージ時のM1興奮性に及ぼす影響を明らかにした.

    【方法】対象は右利き健常男性13 名とし,練習群7 名,コントロール群6 名の2 群に分けた.運動イメージ課題は左手で箸を用いて食材をつまむ動作とした.M1興奮性の指標には経頭蓋磁気刺激による運動誘発電位(MEP)を用い,左第一背側骨格筋から表面筋電図を記録した.両群とも最初に安静時MEP の測定を行った.次に,運動イメージ課題を動画で提示し,十分なイメージ練習を行った後に,練習前テストとして運動イメージ中のMEP を測定した.次に,練習群には運動イメージ課題と同様の箸動作を実際に左手で8 分間練習させ,コントロール群には読書を行わせた.その後,両群とも練習後テストとして運動イメージ中のMEP を測定した.MEP 振幅値は安静時比を算出して解析した.運動イメージの鮮明度はVisual Analog Scale(VAS)を用いて測定した.統計学的解析は条件群(練習群,コントロール群)と時間(練習前,練習後)の二つを要因とした分散分析を用いた.なお, 本研究は学部倫理委員会の承認を得て行った.

    【結果】MEP 振幅値は各群とも練習前後で有意な変化は認められなかった.一方,VAS は練習群では練習後に有意な増加(P<0.05)が認められたのに対し,コントロール群では有意な低下が認められた(P<0.05). 【考察】箸動作の練習によって,非利き手の箸動作の内部モデルが構築され鮮明なイメージが可能となったものの,筋疲労によって運動イメージ時のM1 興奮性に変化は認められなかったと考えられた.

  • 佐々木雄太 , 隈元庸夫 , 高柳清美
    p. 177-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】動的姿勢保持機能と筋活動の反応は前後方向ともに遠位から近位に起こるとされているが,前後方向共に活動する前脛骨筋と腓腹筋の反応順序性について検討はされていない.外乱負荷刺激に対する腓腹筋と前脛骨筋の筋活動の反応順序性を明確にすることを目的とする.

    【方法】健常成人男性20 名(年齢25.0±4.5 歳)を対象とした.平衡機能評価機器EquiTest におけるMotor Control Test を外乱負荷刺激とし,刺激に対する筋活動の測定にはEquiTest と同期させた表面筋電計を用いた.前脛骨筋,腓腹筋内側頭を導出筋とし,双極導出法を用いた.アナログデータをサンプリング周波数1500Hz でA/D 変換し,解析用PC にデジタルデータとして取り込んだ.波形は筋電解析ソフトウェアにて10~500 Hz のバンドパスフィルターにより低・高周波数成分を除去,心電図ノイズ低減の後,全波整流化し解析した.解析は外乱負荷刺激前

    100ms 間の整流波形の最大値を確認し,刺激後にこの値を超えた時点の潜時(Pre Motor Time;PMT)を求めた.刺激として床面が後方と前方に動いた際の各筋のPMT について,統計学的処理を行い比較検討し有意水準は5%未満とした.

    【倫理】本研究は埼玉県立大学倫理委員会からの承認を受けて実施した(承認番号26515 号).対象者には研究の趣旨について十分な説明を行い,書面にて同意を得た上で研究を行った. 【結果】 前後方向ともに,前脛骨筋と腓腹筋のPMT に有意な差は見られなかった.

    【結論】 Horak らは,床面が前方に移動した際には下腿前面筋が,後方に移動した際には下腿後面筋が活動し,それによって安静立位すると報告している.今回の結果により,外乱負荷刺激に対する対応として,前脛骨筋と腓腹筋は協調して働き,足関節制御による立位保持を行っている可能性が示唆された.

  • 坂本禎典 , 井口正樹
    p. 178-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】立位での右上肢挙上は、先行随伴性姿勢調節(APAs)として頭上から見て時計回りの垂直トルク(Tz)が起こる。また、立位での認知課題は姿勢制御の自動性を高めバランスが向上する。この二重課題下で反応課題を行うと、主動作は遅れるがAPAs はさほど影響を受けないと言われるが、詳細は不明である。本研究の目的は、Tz を用いて、立位時の暗算課題がAPAs と主動作にどう影響するか検討することである。

    【方法】健常人11 名(26.2±4.8 歳)は、安静立位の対照条件(C)、音刺激を合図に右上肢挙上の反応課題を行う単一課題条件(S)、暗算課題中に反応課題を行う二重課題条件(D)の3条件下で立位を保持した。足圧中心(COP)とTz は床反力計で、上肢の運動は角速度センサーで計測した。反応課題前のCOP 分散と、反応課題に伴うTz 開始時間と最大Tz、それに至るまでのスロープ、上肢挙上開始時間とその最大角速度を、α=0.05 で条件間比較した。なお、本研究は倫理委員会の承認を得た上で、被験者に同意署名を得た。

    【結果】立位時のCOP 分散はl6.4mm<SUP>2</SUP>、13.3mm<SUP>2</SUP>、8.6mm<SUP>2</SUP>であり、CS と比較してD で減少した。Tz 開始と上肢開始はD でS より遅れたが、Tz 開始から上肢開始までの時間もD の方がS より長かった(上肢開始-Tz 開始=65.8msec と113.2msec)。最大Tz にSD 間で差はなかったが、Tz スロープはS よりD で減少した(24.5Nmm/msec と18.9Nmm/msec)。

    【考察】APAs はフィードフォーワード的制御でありながら、暗算課題で有意に遅れ、またTz スロープも減少した。暗算課題が、静的バランスは向上させるが、動的バランスには不利に働くことが示唆され、臨床の転倒予防訓練などへの応用が考えられる。

  • 小澤琢也 , 安藤健士 , 荻野桂子 , 高野恵
    p. 179-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】脛骨近位端骨折は手術後に荷重開始時期が遅いことや安静期間が長いためにROM 制限を生じることが多々ある。本症例でも骨癒合を優先的に考え、手術後膝関節の安静期間を長く設けたため関節拘縮が生じた。その結果、靴や靴下が履けないことや、しゃがみ動作が困難になるなどADL・QOL の低下が起きた。この問題を解決すべくリハビリとして手術後9 日目よりROMex を開始し骨癒合に合わせて基本動作練習も行った。ROMex を効果的に行うために抜糸後、超音波と徒手による介入を行った。加えてROM をさらに拡大するために医者による関節鏡視下授動術(以下授動術)を行った。本症例への取り組みが脛骨近位端骨折に対するアプローチの一助となることを目的として今回報告する。なお本症例はヘルシンキ宣言のもと行った。

    【方法】対象は70 台女性で、受傷起点は夫が庭で脚立に昇っており本人が下で脚立を支えていた。その後夫が脚立から足を滑らせ本人の膝関節上に落下し脛骨近位端骨折と外側側副靭帯断裂を生じた。既往歴は高血圧、高脂血症。受傷8 日目に観血的固定術施行。術後9 日目よりROMex 開始し、術後14 日目の抜糸後よりROMex 前に超音波療法を開始した。術後42 日目に授動術を施行。術後44 日目より荷重練習を開始しその後ROMex 中心にADL 向上を図った。

    【結果】術後14 日目の膝関節屈曲ROM は45°、伸展は0°であった。その後、超音波と徒手による介入で術後42

    日目で膝関節屈曲ROM は70°であった。授動術で膝蓋上膿、膝蓋下脂肪体の癒着をとり術中90°まで屈曲できた。術後81 日目にADL 動作自立し、自宅退院した。その後外来リハビリとなり術後150 日で膝関節屈曲ROM120° に到達しQOL 上も支障がなくなりリハビリ終了となった。

    【考察】超音波と徒手療法を組み合わせることでROM の拡大が図れたと考える。また授動術により、骨性の制限となるまでROM の拡大を図ることができた。結果としてADL・QOL 向上へつながったと考える。

  • 井波博
    p. 180-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】踵骨骨折は踵骨が複雑な関節面を有するという解剖学的特徴により治療の難しい骨折の一つとして認識されている.今回,交通事故により踵骨骨折の他に脛骨腓骨遠位端開放骨折と脛骨天蓋骨折を合併した症例の理学療法を実施する機会を得た.歩行時痛の治療に難渋したがテーピングと足底挿板を使用し即時的に歩行時痛が減弱した.ここに若干の考察を加えて報告する.尚,症例には本発表の意義と目的を書面にて説明し同意を得た. 【症例紹介】年齢:30 歳代.性別:男性.診断名:右脛骨腓骨遠位端開放骨折,脛骨天蓋骨折,踵骨骨折,左母指伸筋腱断裂.現病歴:2014 年3 月交通事故にて受傷.緊急手術施行.Debridement 実施.Gustilo の分類typeII.受傷後11 日目観血的整復内固定術施行.

    【初期理学療法評価】外側創部皮膚滑走性低下.ROM-t (右):背屈-20° 底屈45°MMT (右):GC2EHL2EDL2TP3 踵骨・足部回外位【最終理学療法評価】ROM‐t(右):背屈15°底屈40°MMT(右):GC2EHL4EDL4TP3 踵骨軽度回外位.背屈強制にて疼痛再現.歩行時痛:立脚中期に距腿関節前外側部から前方に発生NRS:足底挿板未使用8/10 使用3/10【考察】本症例は骨癒合完成後も疼痛があり歩行時痛の治療に難渋した.他動背屈で距腿関節前外側に疼痛が発生し,距骨後方誘導下での背屈時痛が減弱した.加えて踵骨は固定術施行後軽度回外位であり,立脚中期中も同様であることが観察された.疼痛再現評価より距腿関節前外側の疼痛の原因は距骨と脛骨との衝突と考えた.また足部前外側に発生する疼痛の原因は立脚中期に踵骨回外方向に皮切部が牽引され皮切下の腓腹神経が刺激を受け,疼痛を惹起させていたと考えた.距骨後方誘導目的のテーピングにて距骨が円滑に後方移動し距腿関節前外側の疼痛は減弱したと考える.また足底挿板装着により踵骨回外位が是正され円滑に足圧中心が移動可能となったため歩行時痛が即時的に減弱したと考える.

  • 加藤悟
    p. 181-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】 踵骨骨折術後において,その患者の約60%が荷重開始に伴い二次的な変形性足関節症(以下OA)を発症すると言われている.今回は,踵骨骨折術後の二次的な足関節OA 防止を目的に,免荷期間に実施した治療アプローチについて以下に報告する.尚,ヘルシンキ宣言に則り,説明を行い同意を得た.

    【症例紹介】 76 歳,女性.自宅内で転倒し右踵骨骨折を受傷.他院にてスタイマンピン固定施行.術後4W で抜釘し,当院に転入院.術後5W まで免荷,6W で1/3,7W で1/2,8W で2/3,9W で全荷重に移行.術後10W で自宅退院. 【評価】 右踵骨部,足関節の疼痛(NRS)は,安静時,関節運動時,荷重時ともに「0」.MMT は後脛骨筋,長腓骨筋,長母趾屈筋が「3」.ROM は背屈10°,内外反10°.アライメントでは,足関節底屈時の腓骨可動不良,背屈時の距骨の入り込み不良,歩行時の右膝関節外側スラストが見られた.

    【治療・結果】 二次的OA 防止を目的に,後脛骨筋,長腓骨筋,長母指屈筋の滑走,収縮運動,内外反ROMex を集中的に実施した.その結果,最終評価時(全荷重移行後)には,ROM は背屈15°,内反30°,外反20°に改善.腓骨の可動性,距骨入り込み機構にも改善が見られ,NRS は初期同様,全て「0」と二次的な疼痛発生を防止することができた. 【考察】 後脛骨筋,長腓骨筋,長母趾屈筋は,荷重時にその張力により腓骨を引き下げ,遠位脛腓関節が締め付けられることで足関節の固定性に寄与している.また,足関節背屈時の距骨入り込み不良は,荷重時の関節応力を高め,OA や滑膜炎を引き起こすが,これは距骨の後方組織(長母指屈筋腱,後脛骨筋)の滑走性低下により起こる.足関節内外反ROM の低下もまた,距骨下関節の適合不良を招き,慢性的な足関節炎につながる.免荷期間中に,これら3 つのポイントに集中的介入したことが,二次的OA の発症防止につながったと考える.一方,右膝外側スラストには改善が見られず,下行性運動連鎖により足関節アライメントに影響するため,本症例の今後の課題となった.

  • 飯田祥吾 , 黒部恭史 , 牛山直子 , 百瀬公人
    p. 182-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】下肢術後患者の立位条件の患側最大荷重率と使用している歩行補助具の種類は関係することが報告されている。しかし、立位条件の患側荷重率では歩行補助具を決定するには十分な尤度比が得られていない。歩行補助具を決定するための指標としては、立位よりも歩行のような動的条件で測定された指標が有用と考えられる。近年、歩行に近い状態である足踏み時の荷重率や、荷重時間のような動的指標を測定できる機器が普及してきている。しかし大腿骨近位部骨折術後患者の動的指標が術後歩行練習期間中にどう変化するかについての報告はない。そこで、歩行補助具が変化した症例(症例1)と歩行補助具が変化しなかった症例(症例2)の足踏み時の動的指標が得られたので報告する。

    【症例】大腿骨近位部骨折を受傷し、骨接合術を施行した患者2 名。症例1 は60 歳代の男性であった。症例2 は

    80 歳代の女性であった。

    【方法】測定は重心動揺計上で10 歩の足踏みを行い、平均荷重率と2 歩時間の変動係数(CV)を求めた。測定開始日は、四点歩行器歩行開始時からとし、測定は毎日実施した。測定は理学療法中に使用している歩行補助具を使用した。歩行補助具を変更する際には、使用している歩行補助具と次に練習を開始する歩行補助具で測定した。

    本研究は当院倫理審査委員会の承認を得ている。

    【結果】症例1 の平均荷重率は日毎に増加した。キャスター付き四点歩行器で60%、T 字杖で80%以上、独歩で

    100%前後という特徴があった。CV は減少傾向であった。症例2 の平均荷重率はほとんど60%以下で推移し、歩行補助具は変化しなかった。CV の変化に傾向は見られなかった。

    【考察】症例1 では、平均荷重率の増大とCV の減少があった。一方、症例2 は2 つの指標に一定の傾向が見られなかった。このことから、2 つの指標は歩行補助具を決定する指標と考えられる。今回は2 症例のみであるため、今後対象者を増やして検討する必要がある。

  • 手塚拓也 , 神林薫 , 居村茂幸
    p. 183-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに、目的】下肢の骨折後に、受傷側への不安感から荷重不良やバランス能力の低下、受傷側以外への身体的な症状が現れる事を臨床の場で経験することがある。今回、荷重不良に対し改善が認められたとの報告のあるバーチャルリアリティ環境(以下VR 環境)を作り出すWii Fit を利用して、荷重に伴う不安感の変化有無を検討したので以下に報告する。

    【対象】対象者は、当院外来リハを週2回受けている60 代の男性である。X 年に右脛骨骨幹部骨折を受傷、X+1 年から創外固定となっており、現在も受傷側に対し不安感が残存している。対象者には研究の趣旨と目的を説明し同意を得た。

    【方法】 X+2 年11 月から1 カ月の期間でWii Fit を使用したVR 環境リハ介入を実施した。実施内容は、「コロコロ玉入れ」、「バランスMii」を約20 分程度である。効果度の判定には左右の荷重量を、受傷側の不安感に対しては転倒不安感尺度を応用したものとNRS の点数で変化を測定した。

    【結果】導入開始から1 か月後、介入前の荷重量が左側への偏位10Kg から0.5Kg となり、NRS では5 点から2 点、不安感尺度においては28/40 から20/40 と改善が見られた。

    【考察】VR 環境を作り出すWii Fit を使用した先行研究では、静止立位で片脚に偏位していた重心位置がWii Fit 実施により偏位が減少し中心点に近づいたと報告している。また、Wii Fit 後の脳活動状態について前頭前野の活動量が増加する事も報告されている。今回、VR 環境の中での前後左右への荷重課題を取り入れた結果、課題に対して集中が高まり受傷側への荷重が無意識的に行えるようになった事で受傷側への不安感が軽減したと考えられた。

    【まとめ】今回の結果ではVR 環境を作り出すWii Fit を使用したリハは荷重不良に対し有効である可能性が高いものとなった。しかし1 症例である為、今後症例数を増やし、より細かなデータ分析等を実施する事で、更なるVR 環境リハ機器の可能性を検討していきたい。

  • 澤田圭祐 , 橋立博幸 , 長沼大 , 甲田智洋 , 柴田未里 , 志茂志織 , 笹本憲男
    p. 184-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】本報告では、腰椎圧迫骨折後の疼痛により生活機能が低下し、1 年間の訪問リハを実施して生活機能が改善した在宅高齢者の事例をとおして、訪問リハの介入効果を検討することを目的とした。なお、本研究は、施設内倫理審査委員会にて承認され、対象者と家族に本研究の主旨を説明し同意を得て実施した。

    【症例】 91 歳、女性、平成26 年12 月に腰椎圧迫骨折を受傷し、入院加療後、平成27 年1 月末に自宅退院となり、要介護1 にて同年2 月から生活機能改善のために訪問リハ開始 (週3 回) となった。訪問リハ開始時は、腰部・下肢の安静時痛および動作時痛はnumerical rating scale 10 / 10 と極めて強度で、連続座位保持時間10 分、動作能力はbedside mobility scale (BMS) 23 / 40 点、functional independence measure 運動項目 (FIM) 56 / 91 点 (ベッド移乗6 点、歩行2 点)、10 点を最も良好とした各FIM 項目遂行の自信の合計 (FIM 自信) 20 / 130 点で動作の自立度と自信が低く、屋内生活空間home-based life-space assessment (Hb-LSA) 40.5 / 120 点、屋外生活空間lifespace assessment (LSA) 15 / 120 点で離床時間が短かった。健康関連QOL (最も良好10 点) は健康観2 点、生活満足度2 点、生きがい2 点、人間関係2 点であった。

    【経過】訪問リハ (関節可動域運動、筋力増強運動、起立・立位・歩行練習) を1 年間実施した結果、平成28 年2 月では安静時痛0、動作時痛3 へと改善し、基本動作が自立した (BMS 40 点)。また、FIM80 点、FIM 自信103 点へと改善するとともに、連続座位保持時間4-6 時間、Hb-LSA 78.5 点、LSA36 点へと活動量が増加し、健康関連QOL はいずれも10 点へ改善した。

    【考察】超高齢で強度の疼痛にて生活機能が低下していた本症例では、訪問リハによる介入を長期的に実施することによって、疼痛軽減とともに動作能力とその自信が長期的に改善し、屋内外の生活空間での活動増加とQOL 向上を促進できた可能性があると推察された。

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