関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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ポスター
  • 小嶋賢人 , 櫻井靖芳
    p. 285-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】側臥位での股関節外転運動において、脊柱・骨盤のアライメントに着目して2 種類の運動方法を考案し、腹斜筋群や中殿筋の筋出力(%MVC)を比較検討することで、効果的な中殿筋の運動方法の提案などについて新たな知見を提供する目的で本研究を実施した。

    【方法】対象は同意を得た健常男女18 名。DELSYS 社の筋電図計を外腹斜筋・内腹斜筋・大腿筋膜張筋・中臀筋に装着し、各筋に最大等尺性収縮を行わせ、MaxMVC を測定した。試技1 では通常の側臥位股関節外転運動を最大外転位において15 秒間の等尺性収縮で行った。試技2 では被検者の側腹部をRedCord 社のレッドーコードを用いて床面より7cm 拳上させ脊柱の側屈を是正した肢位にて、肢位1 と同様に計測を行った。

    【結果】試技1 に比べ試技2 では、外腹斜筋の%MVC が0.45%減少した(P 値=0.049)。中臀筋の%MVC は9.33%向上した(P 値=0.023)。内腹斜筋と大腿筋膜張筋については有意差が認められなかった。試技1 に比べ試技2 の方が側臥位の股関節外転運動において中臀筋の関与率を増幅させた運動であることが判明した。

    【考察】側臥位での股関節外転運動は股関節外転と骨盤挙上(脊柱側屈)を組み合わせた運動である。試技2 のように側腹部をレッドコードで拳上させることにより、外腹斜筋は起始と停止が離れ伸長位となり骨盤挙上が抑制される。

    また、試技2 の肢位は試技1 の肢位と比較して運動時の骨盤挙上を制限し骨盤の傾斜角度を中間位に近づけることで股関節外転要素を強調した運動となる。よって試技2 において外腹斜筋の%MVC が減少し、中臀筋の%MVC

    が向上したと考える。これらの結果から、側臥位での股関節外転運動を行う際に反対側の側腹部を挙上することで運動中の骨盤挙上(脊柱側屈)を制限し、また骨盤傾斜角度を正中化することで中臀筋の関与率を向上させることが可能であると判明した。

  • 小早川和也 , 小林主嗣 , 真間裕基 , 渡部祥輝
    p. 286-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】動作時の膝関節外反と下肢アライメントとの関係は多数報告されているが,一貫した見解が得られていない.本研究ではフォワードランジ(FL)動作時の膝関節外反と下肢の静的アライメントとの関係を検討することを目的とした.

    【方法】対象は,整形外科的疾患の既往のない女性43 名(年齢20.44±1.72)とした.本研究は,対象者に研究の説明を十分に行い,口頭及び書面にて同意を得て行った.課題動作はFL 動作とし,測定肢は右下肢とした.測定には三次元動作解析装置,デジタルカメラを用い,動作時膝関節外反角度,股関節外旋可動域,股関節内旋可動域,立位時膝関節外反角度および膝関節屈曲角度,Leg Heel Angle(LHA),Craig test での大腿骨前捻角(前捻角),Navicular Drop(ND)を算出した.統計解析には重回帰分析(ステップワイズ法)を用い,従属変数を動作時膝関節外反,独立変数を股関節外旋可動域,股関節内旋可動域,静止時膝関節外反,膝関節屈曲,前捻角,LHA,ND とした.有意水準は5%とした.

    【結果】重回帰分析の結果,股関節内旋可動域(β=-0.32)と股関節外旋可動域(β=0.26)が抽出された.調整済み決定係数は0.18 であり,算出した回帰モデルは統計学的に有意であった(p<0.01).

    【考察】動作時の膝関節外反は足関節のアライメントとの関係性が数多く報告されている.しかし,股関節を含めた静的下肢アライメントにおいては足関節よりも股関節内旋や外旋といった股関節の回旋可動域に影響を受ける可能性が示唆された.一方,重回帰分析における決定係数が低値であり,静的アライメントのみで動作時の膝関節外反を予測するのは困難であること言える.

    【まとめ】FL 動作時の膝関節外反には,股関節回旋可動域が強く影響することが考えられたが,筋活動など動的な要因を含めて検討する必要がある.

  • 佐藤充
    p. 287-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】本症例は、慢性リウマチや変形性膝関節症といった疼痛を伴う疾患に加えて、小脳出血を発症した症例である。協調運動機能の低下から入院期間中に左膝関節痛が悪化し、Activities of Daily Living(ADL)動作が全介助レベルに陥った。しかし、介入方法の見直しから疼痛が軽減し、ADL 動作の獲得に繋がったため、ここに報告する。なお、ヘルシンキ宣言に基づき同意を得た上での報告とする。

    【対象と経過】対象は80 代の女性であり、入院時から左膝関節にNumerical Rating Scale(NRS)で8/10 の痛みがあったが、入院1 ヶ月後には疼痛が消失し、NRS で0/10 となった。病棟での生活はPick up walker を使用して自立して行えていた。しかし、活動量が増加すると、徐々に疼痛が悪化し、安静時でもNRS が10/10 の状態となり、ADL 動作全介助レベルとなった。疼痛が最も悪化した入院3 ヶ月目から、申し送り・チームカンファレンスを利用して、介入スタッフが共通してプラスのフィードバックのみを行い、脳内の報酬系への働きかけを行った。また、膝痛が強い時には、失敗体験によるストレスがかからないように、上肢・体幹へのアプローチや簡単な課題から行うよう統一した。

    【結果】 介入方法を変更することで、痛みを訴える頻度が減少し、病棟では車いすを使用してADL 動作が可能となった。リハビリでは、Pick up walker を使用して5~10m 歩行可能となった。他患者とのコミュニケーションも増え、水などを配る様子も見られた。リハビリへの意欲も向上し、自ら「歩きましょう。」と、訴えることも増えた。

    【考察】 成功体験や褒賞・共感を与えることで報酬系領域の促進を図った。報酬系領域の活動は、下行性疼痛抑制系に作用し、痛みを抑えると考えられているため、ADL 動作獲得につながったと考えられる。また、報酬系のドーパミンの作用により、運動学習効果を高め、膝関節への負担の少ない動作学習が可能となったと考えられる。

  • 小村直之
    p. 288-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】在宅で生活している要介護高齢者の多くは低栄養の恐れがあり,筋量減少など様々な運動機能に影響を及ぼすフレイルサイクルに陥りやすい.介護予防はフレイルサイクルを絶つこと,運動と低栄養を防ぐことが重要である.そこで今回の目的として,筋力と筋量を定量的に評価し,定期的な運動がもたらす栄養状態と筋力,筋量の関係を調査した.

    【方法】対象は通所リハビリ利用者26 名(男性5 名,女性21 名,平均年齢83.2±8.4 歳).簡易栄養状態評価表

    (MNA-SF)の点数別に栄養良好群10 名,低栄養のリスクのあるリスク群12 名,低栄養群4 名の3 群に割り付け.筋力測定にはHHD(ANIMA 社製μTas F-1)を用い,膝伸展筋力をベルト固定法で測定.測定数値を体重で割った体重支持指数(以下WBI)を筋力の評価指標とした.筋量測定には体組成計(TANITA 社製RD-901)から算出される身体総蛋白質量(以下%MV)を評価指標とした.3 群共通の介入として,80%1RM で膝伸展運動を筋発揮張力維持スロー法で実施.週2 回の頻度で6 週間実施.介入前後のWBI と%MV を比較検証.繰り返しのある二元配置分散分析で検定.

    【倫理的配慮,説明と同意】対象者に研究の主旨,方法,個人情報の厳守について説明を行い,同意を得た.

    【結果】WBI は3 群全て介入後の数値が増加し,%MV は3 群全て介入後の数値が減少した.WBI のp 値は標本間

    因子0.73,標本内因子<0.01,交互作用0.91 となった.%MV のp 値は標本間因子0.02,標本内因子0.03,交互作用0.63 となった.

    【考察・まとめ】WBI の数値増加は栄養状態によって著明な差はなかった.WBI が増加し,%MV が減少してしまった原因としては体組成計の測定方法に不備があったと考えられた.筋量の評価は不十分だが,栄養状態に関わらず適切な負荷量で定期的な運動を行えば,筋力が向上する可能性が示唆された.今後は,筋量の評価指標として通所リハビリでも使用できる信頼性のある方法を検討する必要がある.

  • 川波真也 , 居村茂幸 , 神林薫
    p. 289-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】今回、症例と主介護者の妻が要介護4 であり、キーパーソンの長女、次女が在宅介護に不安を抱えている症例を担当した。キーパーソンの不安感に対し介護技術指導、相談支援を行い、在宅復帰を果たした例を以下に報告する。

    【倫理的配慮】報告の主旨を本人、家族に説明し同意を得た。

    【症例紹介】80 歳代男性、要介護4。転倒により腰椎圧迫骨折を受傷。リハ目的で当院に入院し、在宅復帰を目標に早期に理学療法開始。既往歴として60 歳代に脳梗塞を発症し、自宅内を伝い歩きで生活していた。退院時はT 字杖歩行見守りであったが、立位バランスが低下し床上動作、浴槽へのまたぎ動作に介助を要していた。

    【家族状況】主介護者の妻と2 人暮らし。妻はT 字杖歩行自立だが、脊柱管狭窄症の既往から立位が不安定な状態で夫の入浴介助を実施していた。訪問リハを含む介護保険サービスを利用していたが、2 人の娘は県外在住で老々介護に不安があり、長女自身も腰痛により不安を抱えていた。

    【対応】妻、長女、次女に対しZarit 介護負担尺度日本語版の短縮版にて介護負担感の評価を行ない、不安事項を聴取した。不安事項として、基本動作や床上動作の介護方法、妻の入浴介助に不安があること確認された。そのため、それらの技術指導を1回30 分間で週3 回の頻度で30 日間実施した。また退院時にサービス調整として訪問入浴を導入し、退院時に介護負担感を再評価した。

    【結果】介護負担感に変化はみられなかったが、在宅介護のリスクに理解が得られ、主介護者を中心に介護技術の向上がみられた。また、技術指導や訪問入浴の導入により在宅復帰への不安感の軽減が図れた。

    【考察】仲林らは脊椎圧迫骨折患者の入院長期化の要因として、在宅復帰に家族の不安があることを挙げ退院可能な時点で家族指導を行うことが重要としている。今回の症例も家族指導、サービス調整を行ったことで不安感が軽減し、在宅復帰へ繋がったと考える。

  • 小峰侑真 , 阿部夏織 , 石井大輔
    p. 290-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】大動脈解離で大動脈分岐に狭窄や閉塞が発生すると,約3 割に四肢や臓器に虚血が発生すると報告されている.今回急性大動脈解離術後に脊髄梗塞と脳梗塞を合併したが,地域包括ケア病棟でのチームアプローチにより自宅退院に至った症例を経験したので報告する.

    【症例紹介】75 歳男性、診断名:脊髄梗塞 主訴:早く家に帰りたい 現病歴:外出中に急性大動脈解離StanfordA 型を発症.他院にて人工血管置換術を施行.術後に脊髄梗塞と脳梗塞を発症.リハビリ目的で当院へ転院.

    【説明と同意】本症例には今回の発表の主旨を説明し、同意を得た.

    【経過】入院2 病日よりリハビリ開始.初診時所見は両下肢MMT2,BRS-T 左VI‐VI‐I,右下肢に軽度の表在感覚鈍麻,左下肢に重度の表在・深部感覚鈍麻. BI10 点,基本動作は全般的に中等度介助.基本動作訓練,ADL 訓練,筋力訓練を実施.併せて看護師への介助指導を実地.30 病日より家族指導を実施.50 病日には起居動作自立,座位保持,移乗見守りとなる.その後MSW とケアマネージャーとの連携により在宅生活に向けた環境設定を行い,70 病日自宅退院.退院時は車椅子駆動も自立.BI35 点BRS-T はVI‐VI‐V.

    【考察】本症例は脊髄梗塞に伴う対麻痺を呈していたが地域包括ケア病棟でのチームアプローチにより自宅退院に至ったと考える.その要因を1)毎日の家族参加により,意欲向上を図ると共に訓練量の増大と家族の介助技術向上が得られ,移乗,移動およびADL 能力がしたこと2)多職種との情報共有によるチームアプローチと地域との連携による在宅に向けての環境調整ができたこと3)看護師との協働によりリハビリ時間外も離床を促し活動性向上につなげられたことと考える.これらにより自宅退院が可能となったと考える.地域包括ケア病棟では急性期病棟と在宅サービスとの連携が必要であり,早期から在宅環境に合わせたADL 能力の回復を目指すことが大切であり,そのために多職種との協働と連携,家族指導が重要と考える.

  • 岡本慎太郎 , 中野雄一朗 , 竹内弘毅 , 早稲田明生
    p. 291-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】当院ではTKA のプロトコルを導入しており、21 病日目で自宅退院と設定している.また2015 年度、当院にてTKA を施行した症例は38 例41 膝で、うち34 例37 膝(90.2%)が自宅退院している.症例は、対側TKA 施行後、難渋した経緯がある.今回、右TKA 施行し、退院時には独歩自立レベルであったが、自宅退院を望まず、リハビリ病院へ転院した症例を経験したので以下に報告する.なお、ヘルシンキ条約に則り、症例に対し同意を得た.

    【症例紹介】70代女性.150.3cm、69.0kg、BMI30.7.独居.術前ADL自立.20年前より両膝痛出現し、半年前に左TKA 施行、今回右TKA 施行した.術前の右膝関節可動域(以下ROM)は屈曲105°伸展-15°、筋力は徒手筋力検査法

    (以下MMT)で下肢3 体幹3 であった.疼痛は右膝関節内側部に運動時と荷重時に認め、腫脹と熱感は右膝関節全体に認められた.日本整形外科学会OA 膝治療成績判定基準(以下 JOA)は50 点、FTA186°であった.

    【経過】術後理学療法はTKA プロトコルに従い、手術当日より介入した.7 病日目に歩行器歩行自立、11 病日目にT 字杖歩行自立、14 病日目に階段昇降自立し、自宅退院可能なADL レベルとなったが、21 病日目に後療法継続目的で転院となった.最終評価の膝関節ROM は屈曲115°伸展0°.MMT は術前と同程度であった.炎症所見は消失していた.JOA は70 点、FTA175°であった.

    【考察】自宅退院に向け、リハビリ介入し身体機能の改善は図れたが、不安感が残り自宅退院へ至らなかった.不安感は患者個人の環境や同居者・介護者の調整等の社会的要因が関与していることが考えられる.本症例は前回の経緯もあり、患者および家族への社会的背景に対する介入が不十分だった事が考えられる.今後、上述した内容も重視する事で自宅退院に至るのではないかと考えられる.

    【まとめ】自宅退院には精神面や社会的環境へアプローチしていく事も大切であると考えられる.

  • 島田真衣 , 呂善玉 , 柴田恭輔 , 福田美幸
    p. 292-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】 今回、右内頚動脈梗塞により左片麻痺と左半側空間無視を呈し右上下肢の押し付けのため座位保持が困難な患者の理学療法を担当した。頸部に着目した介入と移乗時の動作統一によりトイレ時の座位(以下、トイレ座位)が遠位監視で可能となった症例を報告する。本報告において患者及び家族に同意を得た。

    【症例紹介】 症例は95 歳、女性。Br.stage 上下肢3、 Scale for Contraversive Pushing 6 点と最重症で、座位保持は困難。トイレ座位(第17 病日)では2 人重介助を要した。頸部は常に右回旋位で、紙面上の検査では重度の半側空間無視を呈したが、鏡をみれば頸部を正中位まで回旋可能で、持続は困難であるが左側への整容や追視が可能だった。

    【治療アプローチと経過】 第10 病日より当院回復期病棟にて理学療法を開始した。第19 病日より右側にパーテーションを置き、聴覚・視覚情報により自動運動を促し頸部左回旋運動を実施した。第41 病日には全方向へ注意を向けることが可能。また、軽介助で座位保持が可能となった。同時期より2 人介助でトイレ誘導を開始。車椅子から便座への移乗は麻痺側方向へ行うよう統一した。第55 病日には、トイレ座位が遠位監視で可能となった。

    【考察】 Kinsbourne らは、半側空間無視のメカニズムを双方の半球が相互に抑制しあっているが、大脳半球を損傷することで、片方のみ抑制がなくなるため、注意が偏ると述べている。本症例は、初期より一時的な左側の空間認知が可能でありながら、頸部の左回旋、左側への注意の持続が困難であった。そこで、頸部の回旋可動域制限により左側からの感覚入力低下が半側空間無視を助長し、座位保持が困難であると考えた。 頸部への介入により回旋可動域が増大したこと、また麻痺側方向への移乗動作の統一により左側への感覚入力が増え、それに伴い相互での抑制が可能となったと考える。結果、トイレ座位保持が遠位監視レベルで獲得された。

  • 渡邉郁海 , 青木拓也
    p. 293-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】足底挿板療法は、患者の身体運動を介入時間外も管理することが可能である。本症例は歩行時、麻痺を代償した跛行を呈していた。この歩容での歩行量増加は麻痺筋の促通には繋がらないと考え、代償を抑制した歩容で管理する為に足底挿板を挿入した。今回の発表では、足底挿板挿入前後の継時的な歩容変化について述べていく。

    【説明と同意】ヘルシンキ宣言に則り、書面と口頭にて説明を行い、同意を得た。

    【症例紹介】52 歳 女性疾患名:ラクナ梗塞(左放線冠) 病棟内ADL:1 本杖歩行見守り【理学療法評価】Br.stage

    (右側)III-III-V 筋緊張(歩行時):低下 麻痺側大殿筋 MMT:麻痺側股関節伸展4/5【歩行分析、治療】麻痺側立脚前期に歩隔の拡大、股関節屈曲角度の減少が生じていた。それに伴い骨盤が早期に前方へ推進、外側変位量の減少が生じており、麻痺側立脚後期が短縮していた。その為非麻痺側下肢への重心移動量が減少し非麻痺側立脚後期の短縮が生じていた。上記の現象に対し即時的な治療効果を図るため、麻痺側立脚前期の骨盤後方停滞に伴う股関節屈曲角度の増加を得ることを目的に足底挿板を挿入した。

    【結果】麻痺側立脚前期に骨盤後方停滞し股関節屈曲角度の増加が生じた。歩容の改善に伴い麻痺側大殿筋の収縮も得られた。

    【考察】麻痺側立脚前期に股関節屈曲角度を減少させることで外的な股関節屈曲モーメントを軽減させ、大殿筋の筋出力低下を代償していたと考えた。足底挿板挿入により麻痺側立脚前期に骨盤の後方停滞が生じることで外的な股関節屈曲モーメントが増加し、大殿筋の収縮が得られたと考えた。本症例は足底挿板挿入後、1 か月で麻痺側大殿筋の筋出力が向上し、屋外歩行、階段昇降が自立した。足底挿板を用いた事で病棟内歩行が無意識下での機能訓練となり、より効率的に機能向上に繋がったのではないかと考えられた。

  • 大崎幸子
    p. 294-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】バランス能力低下は転倒を及ぼす1 つの要因として考えられている.2009 年にHorak らによりBESTest というバランスの評価法が開発され,近年転倒との関連性について報告がなされている.今回,延髄外側・小脳梗塞によりバランス能力低下を呈した症例に対しBESTest を用い,入院時と1 か月後にて変化を認めたため報告する.尚,本報告は本人に十分な説明を行い同意を得た.

    【方法】症例は延髄外側・小脳梗塞により,発症48 日後に当回復期リハ病院に入院した60 代女性.入院時は交代性感覚障害による温痛覚鈍麻,表在・深部感覚鈍麻,右上下肢の軽度失調がみられた.ADLは起居動作が完全自立,移乗が修正自立,移動がwalker 使用し自立であった.BRS は全てVI レベル,筋力はMMT にて体幹3,両下肢2-3 であ

    った.バランスの評価としてBESTest を実施し,初期評価を入院3-4 日後,再評価を入院30-31 日後に行った.

    【結果】BESTest の初期評価時の合計点は46 点,各セクション(以下Sec)はSec1:7 点,Sec2:12 点,Sec3:8 点,Sec4:4 点,Sec5:7 点,Sec6:8 点であり,特にSec4 の姿勢反応とSec6 の歩行安定性の低下がみられた.そのため,荷重感覚訓練や立位での動作訓練,歩行訓練を中心に介入したところ,1 か月後の合計点は66 点,各Sec はSec1:8 点,Sec2:18

    点,Sec3:8 点,Sec4:8 点,Sec5:10 点,Sec6:14 点となった.他の身体機能の変化点として,感覚障害(表在)軽減,体幹・両下肢の筋力増強を認め,失調は上下肢ともにほぼ消失.ADL は移乗が完全自立,移動がノルディック杖を使用し自立,Tcane 使用し監視となった.

    【考察】本症例にて1 か月後にADL・移動動作が向上している理由には,BESTest の結果より,支持基底面内での重心移動や新たな支持基底面を作るバランスの戦略が可能となってきたこと,歩行中の様々な課題に対して対応出来るようになったことが考えられる.今回,BESTest を行ったことで本症例のバランス能力の傾向の推察や介入方法の検討に具体性を生むことができた.

  • 入倉伸太郎 , 石川自然 , 木島隆
    p. 295-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】片麻痺患者に麻痺側肢について問うと、動かない・言うことを聞かないと耳にすることが多い。今回、麻痺側上下肢への認識の変化がトイレ動作能力向上に至った症例を経験したため報告する。

    【症例紹介】70 代女性。H27.11.4 に右内頚・右後大脳動脈狭窄と診断される。H27.12.7 当院に転院、翌日よりリハビリテーション開始。入院翌日の評価は、BRSIII-III-III、ある程度の随意運動を認めた。FIM59 点で、排泄はトイレ動作・移乗に介助を要した。症例は左上下肢を「ダメで動かない左の手足」と、立位時の荷重感覚は「右脚8:左脚2 の割合」と語った。又、関節リウマチを合併している(stage4,class4)。

    【治療方法】症例の左上下肢に対する認識の変化により、自己の随意性に気付き、日常生活動作に左上下肢を参加できないかと考えた。方法は、左上下肢に対し関節可動域運動を閉眼・他動にて行い、運動の方向・感覚を確認してもらう。理解が得られた段階で自動介助運動に変更し、筋収縮を伴いながら行った。この方法を臥位、座位、立位の順で行った。尚、治療方法は患者及び家族に説明し書面にて同意を得た。

    【結果】トイレ動作時に左手で上衣を捲る様子、トイレットペーパーを掴む様子が見られた。FIM66 点とトイレ動作項目で点数の向上が認められた。下衣操作時は下肢と協調しながら下衣を下す、パットを修正しようとする様子が見られた。立位時荷重感覚は「右脚5:左脚5」となった。症例は、左上下肢について「今は少しずつ動くようになった。でも、細かいことはできない」と、内省に変化を認めた。

    【考察】FIM で、移乗・トイレ動作項目に点数が向上したことから、麻痺側上下肢への認識を変化はADL の向上に寄与したと考えられる。しかし、「細かいことはできない」との言葉や、リハビリパンツ内パットの修正までは至っていない。関節リウマチの影響を踏まえ、生活動作の実用性をどのようにするか検討の必要がある。

  • 染谷めぐみ , 荒川武士 , 森岡亜紀 , 石田茂靖 , 松本直人
    p. 296-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】脳卒中片麻痺者に対し足関節底屈筋群の筋活動を促し、歩行能力に及ぼす影響を検証した。

    【対象】40 歳代男性、左視床出血、右片麻痺、介入開始時点で発症後3 週間を経過していた。随意性はStroke Impairment Assessment Set(以下SIAS)にて下肢遠位テスト2 点であった。感覚は深部・表在感覚ともに軽度鈍麻で、筋緊張は弛緩性であった。歩行はT-cane を使用して近位監視にて可能であったが、右立脚終期から遊脚初期にかけて足関節周囲筋群の活動が低下していた。なお、事前に研究内容を十分に説明し、同意を得た後に実施した。

    【方法】介入デザインはAB 型デザイン(A 期;非介入期、B 期;介入期)を使用し、各期は5 日間とした。通常の運動療法を40 分施行後に、介入期では足関節底屈筋群の活動を促した。方法は、座位での足関節底屈運動と立位での踵上げ運動を、電気刺激装置を用いながら各10 回×3 セット施行した。電気刺激装置は帝人ファーマ株式会社製のWalk Aide を使用した。電極パッドは腓骨小頭下方と長腓骨筋の筋腹に貼った。非介入期は足関節背屈運動を座位と立位にて介入期と同様に電気刺激装置を使用して同じ回数施行した。電極パッドは腓骨小頭下方と前脛骨筋に貼った。AB 期とも介入後毎に至適速度での10m 歩行を実施して歩行速度を算出した。解析は中央分割法を用い、非介入期からceleration line を求め,延長したceleration line と比較した上位数を視覚的に確認した。

    【結果】 A 期では平均0.81±0.03m/s、B 期では0.88±0.08m/s であった。A のceleration line と比較して、B の介入期全てで増加した。SIAS 下肢遠位テストは5 点に改善した。

    【考察】 歩行速度の上昇は麻痺側足関節底屈筋群の筋活動を促したためと推測された。今後は症例数を増やし順序効果の影響も検討していきたい。

  • 一本柳千春 , 富田駿 , 加藤宗規
    p. 297-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】Pusher 症状,認知症及び半側空間無視を呈した重度片麻痺患者に対する段階的難易度調整を用いた座位保持練習の効果を検討した.

    【方法】70 歳代男性,右視床出血.Brunnstrom recovery stage(以下,BRS)は左側上下肢,手指全てII,感覚は重度鈍麻であり,Contraversive Pushing 臨床評価スケールにて最重度の6 点であった重度片麻痺患者を対象とした.脳血管性認知症の合併によりHDS-R は4 点であった. 7 病日の座位保持練習では,座面に右側上肢の手掌支持で常に介助を要している状態であった.そこで24 病日より座位保持練習を6 段階に分け,段階的な難易度調整を行った(1:右側視覚遮断,左側臀部へのクッションの挿入,右側前腕支持,足底を浮かせる 2:右視覚遮断,左側臀部へのクッションの挿入,右側前腕支持 3:右視覚遮断,右側前腕支持 4:右側視覚遮断,右側手掌支持 5:右側手掌支持,6:上肢の支持なし).座位保持時間を3 分間とし,その中での介助数及び口頭指示数を記録し,ともに0 回であった場合,次の段階に引き上げた.座位保持中にバランスを崩した場合は口頭指示により体を元に戻すように促し,それでも修正できなかった場合は介助により座位を整えた.本研究はヘルシンキ宣言に則り,当院生命倫理審査委員会の承認を得て行い,症例と家族からも承諾を得た.

    【結果】介入初日で段階2,翌日には段階5 を達成,5 日目には段階6 の端座位保持に成功した.その後のフォローアップ期で口頭指示・介助を要したのは3 日9 回中1 回であり,成功率は89%であった.なお,BRS 及びHDS-R などの著明な変化はみられなかった.

    【考察】今回の段階的難易度調整を用いた介入は短期間での座位保持の獲得に成功しており有効であったと考えら

    れる.

  • 山口貴弘 , 永石宗利
    p. 298-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】Honda 歩行アシスト(以下歩行アシスト)は股関節屈曲・伸展を補助する装着型ロボットである。発症後10

    年経過し、生活期リハビリを継続している左片麻痺患者に対して歩行アシストを使用した歩行訓練で歩容改善と歩行速度上昇を認めた症例を報告する。

    【対象】脳梗塞発症より10 年、左片麻痺を呈した80 代女性。当院通所リハビリを週2 回利用。歩行アシスト介入時理学療法評価はBrunnstrom Stage 上下肢V、足関節背屈可動域(右/左)15°/15°ADL 屋外歩行含めて自立。

    【方法】週1 回20 分間、合計16 回の歩行アシストを実施し、通常リハビリプログラムも継続した。また4 週間通所リハビリ休止後歩行アシスト効果持続を検証した。10m歩行テストは訓練実施前に計測した。1 回目、16 回目を初回、最終とし4 週間の休止期間を設け再評価した。なお症例に対し研究の趣旨を説明し同意を得た。

    【結果】歩行アシスト介入後身体機能に変化はなかった。歩数、歩幅及び時間、歩行速度は、初回23 歩44cm 14.9

    秒40m/min 最終21 歩47cm 11.3 秒53 m/min,再評価20 歩49cm 11.4 秒53 m/min であった。歩行時股関節平均関節角度は屈曲で初回(右/左)35°/24°最終30°/19°再評価30°/20°伸展で初回6°/5°最終

    7°/9°再評価12°/10°であった。

    【考察】歩行中麻痺側股関節伸展角度の拡大が(5°→9°)歩行アシスト効果と考える。ロッカーファンクションを活かした歩行獲得が努力性の少ない下肢の振り出しに繋がりtoe clearance 改善や10m 歩行速度が上昇したと考える。(14.9 秒→11.3 秒40m/min→53 m/min)歩行アシスト介入により歩容が改善したことで、外出機会の増加や歩行距離延長など在宅生活に影響を与えたことが歩行速度、歩容の維持に繋がったと考える。

    【まとめ】今回の症例では、発症後10 年間リハビリを継続してきた片麻痺患者に対して歩行支援ロボットが有効であったと考える。今後は休止期間を延長し歩容変化を検証していきたい。

  • 荻村公尊 , 青山敏之 , 真庭弘樹
    p. 299-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】本症例は軽度麻痺であったが,歩行時の麻痺側腕振りは乏しく立脚時間の非対称性を呈していた.そこで麻痺側腕振りを他動的に促した際,非対称性の改善が図れたため,腕振りが下肢運動の対称性に影響を与える可能性が考えられた.そこで麻痺側腕振り獲得のための介入とその影響を判定するために,歩行対称性の指標であるAsymmetry Ratio(以下,AR)を単脚支持時間(以下,SST)を用いて検証した.

    【方法】本症例は20 代男性,右放線冠,基底核に脳梗塞を発症した左片麻痺患者.歩行はGait Solution にて自立.Brunnstrom recovery stage∨Ι-Ι∨-∨Ι,徒手筋力検査(以下,MMT)股関節屈曲,膝関節伸展,足関節背屈 5

    /4,足関節底屈 5/2+,肩甲帯挙上 5/2,アシュワース尺度(以下,MAS)左肘関節伸展1,10m歩行8.82秒(16歩),歩行動画からSST 0.7 秒/0.59 秒,AR 0.18 であった.麻痺側腕振りのための上肢機能改善を含めた介入を35 日間実施し,その前後で各項目の測定を実施した.

    【説明と同意】今回の報告はヘルシンキ宣言に基づき,本症例に対し口頭で説明した上で同意を得た. 【結果】MMT 左肩甲帯挙上4,MAS 左肘関節伸展0,10m 歩行7.34 秒(13 歩)SST 0.56 秒/0.55 秒,AR 0.02 と減少し,歩行中の麻痺側腕振りが出現した.その他項目は変化なし.

    【考察】本症例は麻痺側上肢機能改善に伴い,歩行時の麻痺側腕振りが出現した.一方,麻痺側下肢筋力には変化がないにも関わらずAR の減少,すなわち麻痺側,非麻痺側SST の対称化が認められた.これらのことから,麻痺側腕振りは歩行時の左右立脚時間の対称化に貢献する可能性があると考える.今後,腕振りの定量化,さらには腕振りが立脚時間のみならず下肢関節運動の対象化に与える影響も検討する必要があると考える.

  • 鈴木公二 , 井田真人 , 富田博之 , 市川久恵
    p. 300-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】今回右中大脳動脈・右後大脳動脈の広範囲な梗塞により、左半側空間無視(以下、USN)を呈す症例を経験した。トップダウンアプローチを行い、日常生活活動(以下、ADL)の介助量軽減が図れたため報告する。

    【症例】年齢:80 歳代 性別:女性 利き手:右利き【診断名】右脳梗塞【障害名】左半身麻痺、左同名半盲【初期評価】入院当初は、基本動作時から左側への関心が乏しい状態であり右側を向いている事が多かった。特に歩行時は左側への注意が向きにくかった。感覚検査:表在・深部感覚 感覚鈍麻あり。Barthel Index(以下、B.I):25/100 点、Functional Independence Measure(以下、FIM):66/126 点、Behavioural Inattention Test(以下、BIT)通常88/146

    点 行動29/81 点、Catherine Bergego Scale(以下、CBS)観察評価:合計11 点 自己評価:合計5 点。

    【説明と同意】発表にあたりヘルシンキ宣言に則り、紙面上・口頭にてご本人に同意を得た。

    【治療内容】右側から左側への体幹回旋と視覚走査を取り入れた運動を行い、本人の自発的な運動から左側への注意を促した。ADL への汎化を狙い自宅内を想定した基本動作練習を実施した。

    【最終評価】退院時には起居・移乗動作は支持物を使用し自立となり、見守りでの伝い歩きや手引き歩行も可能となった。B.I:55/100 点、FIM:80/126 点、BIT:通常134/146 点 行動74/81 点、CBS 観察評価:合計8 点 自己評価:合計8 点。

    【考察】本症例のUSN は、感覚性・方向性注意障害説や方向性注意のネットワーク障害が当てはまると思われた。今回、体幹回旋運動などのトップダウンアプローチを行った事で体幹筋の促通による腹内側系の賦活、半球間抑制による損傷側の脳の機能低下を防いだ事がUSN の改善やADL の介助量軽減につながったと考える。

    【まとめ】今回の症例を担当し、USN がどの動作遂行の過程で著明となり問題になるのかを把握する事の重要性を学ばせて頂いた。

  • 池田智子 , 川嵜康太 , 呂善玉
    p. 301-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】生活期において,金属支柱付短下肢装具(以下SLB)使用により疼痛が出現し歩行耐久性が低下した脳卒中片麻痺患者に対し外来リハビリを実施した.装具の再検討を行いRemodeled Adjustable Posterior Strut AFO(以下RAPS)を用い歩行訓練を中心に実施した.屋外歩行自立に至った.なお,本人に十分な説明を行い発表の同意を得た.

    【症例紹介】60 歳代女性.診断名:右視床出血.現病歴:平成25 年X 月発症.第28 病日当院へ転院.第205 病日自宅退院.外来リハビリを開始.既往歴:高血圧症,分娩性麻痺(左上肢単麻痺).HOPE:歩行自立,通院自立.

    【初期評価】Br‐stage:左3‐3‐3.感覚検査(左上下肢):中等度鈍麻.ROM-T(右/左):股関節伸展10°/0°,足関節背屈10°/0°.MMT:右上下肢5・体幹3 レベル.歩行速度:SLB 装着時5.1m/分.基本動作:自立.日常生活動作:FIM;111/126 点.歩行:SLB 装着しT 字杖で右腋窩軽介助,約10m 可能.左Mst~Tst に左下腿とカフの接触面に疼痛が出現.

    【問題点と介入】SLB は前後への剛性が高く,左Mst~Tst に左股関節の伸展が難しいため,下腿のカフに寄りかかり左片脚支持期の安定性を得ていた.しかし,左下腿とカフの接触面に疼痛が生じ,歩行機会が増えず耐久性の向上が得られなかった.そこで,歩行機会を増やすために環境調整と可撓性を有するRAPS への装具の変更を行い,屋内・通院が自立となった.

    【考察】RAPS は軽量で,支柱の撓みによる下腿の前傾の誘導が可能である.RAPS に変更したことにより左Tst で左股関節の伸展が誘導され前方への推進力を得られ,左立脚期の疼痛が消失したと考える.結果,左下肢への荷重量が増加し,体幹筋・腸腰筋が促通され,左振り出しが容易になり,左鼡径部の疼痛が消失したと考える.自宅環境も変更し、外来リハビリ以外に歩行頻度が増え,左下肢への荷重量が増し,耐久性が向上したと考える.結果,屋内歩行・通院が自立に至ったと考える.

  • 橘田俊宏
    p. 302-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】本症例はCYBERDYNE 社製ロボットスーツHybrid assistive Limb(以下HAL)の両脚型HAL を慢性期脳卒中片麻痺患者に使用し、運動学習が困難な患者に対してプログラム前後に効果が得られるかを検討したので報告する。

    【対象及び方法】対象は外傷性脳内出血後発症から13 年経過。重篤な高次機能障害及び片麻痺を呈した30 代男

    性。Br.stage 上下肢2。HAL を用いた歩行練習を週2 回(装着10 分歩行練習30 分装具歩行20 分)12 週間計26

    回実施した。歩行評価はHAL 装着前のAFO 装着歩行(以下A)HAL 装着時歩行(以下B)HAL 着脱後装具歩行

    (以下C)の計3 回を実施。評価項目は10m 快適速度、時間、歩数、麻痺側下肢荷重率、FRT を数値化。麻痺側荷重率は体重計の麻痺側最大荷重を5 秒間保持値を体重比で求めた。処理は関連のある2 群の母平均の差の検定と推定検定を用いて有意水準を5%未満とした。研究様式はシングルケーススタディABA 型を用いた。

    【倫理的配慮、説明と同意】本症例はヘルシンキ宣言に基づき協力者に事前の説明を行い書面で同意を得た上で行った。

    【結果】各条件の結果、AC 歩数p<0.05 秒数p<0.05 速度p<0.05 と有意差が認められる結果となった。麻痺側荷重率及びFRT の項目に関しては平均値に改善傾向がみられた。

    【考察】装着前後に良好な信頼性が確認された。症例は足底圧覚が鈍く重心位置の把握困難からHAL 時に麻痺側筋出力促通と視覚的フィードバックを利用した歩行アシスト及び荷重訓練の結果、本来の歩行パターンに近づけたことが歩行速度上昇や歩幅拡大による支持性の向上、筋への促痛効果により下肢の振り出しがスムーズになったと考える。しかし、即時効果に改善傾向がみられたが次回への持続的効果に差異を認められなかった。

    【理学療法学研究としての意義】HAL 装着下での動作練習は歩行アシストや本来の歩行パターンを実現することが出来る可能性が示唆される。今後は症例数を増やし、比較を検討していきたい。

  • 佐藤詩菜 , 田中宇徳
    p. 303-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】脳梗塞による片麻痺,高次脳機能障害を呈した患者の復職までを担当した.注意障害に対して多重課題と職場への連携を行い,復職が可能となったためここで報告する.

    【症例紹介】50 代男性,脳梗塞(視床・後頭葉)により右片麻痺,右同名半盲を呈した.第23 病日に当院転院.Brs5 -5-5,軽度感覚鈍麻.入院時,基本動作軽介助,歩行軽介助.また,高次脳機能障害では,SLTA,BIT,リバーミード検査でもカットオフ値以下を認め,注意障害,病識,危険認識,記憶力低下,失語がみられた。病前,ADL 自立,独居であった.

    【説明と同意】本報告においてヘルシンキ宣言に基づき本人へ説明し同意を得た.

    【経過・結果】初期は身体機能面中心に介入,歩行動作は第90 病日にフリーハンド歩行院内自立レベルまで向上.復職には通勤のため屋外歩行が必須であった.外出訓練では,注意散漫であり,転倒,周囲の人や物へ衝突する危険高く,屋外歩行自立には,周囲の環境の把握が必要である為,多重課題を用いた歩行練習を実施.また,退院後の生活を考慮し,入院中に職場へ高次脳機能障害の理解の促しや対応方法,同居人への注意事項の提示を行うことで,入院時より復職へ向けた連携と環境設定を行い,結果,退院一週間後,第106 病日の復職が可能となった.

    【考察】本症例は復職をする上で通勤する際に屋外歩行が必要であった.渡邊の報告では,高次脳機能障害者の

    80%が外出頻度の減少,また,90%が同居での生活となり,介助者が必要となっている.今回,多重課題を実施し,周囲の人や物へ注意を向けることが可能となり,危険性が改善,屋外歩行が自立となった.また,職場では,業務の単純化,ダブルチェックにより,業務遂行が可能であるとし,受け入れが可能となったと考える.結果,社会生活を目標とする場合は,病院スタッフに留まらず,職場等への連携も必須であると考えた.

  • 羽鳥航平 , 高野利彦 , 横山浩康
    p. 304-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】近年糖尿病患者は増加しており、一般的に食事療法、薬物療法、運動療法が治療選択されている。当科では、業務後に職員向けの健康増進活動を行なっている。参加者の中に、糖尿病に罹患した症例がおり、運動療法を行う機会を得た。その際の運動療法以外の側面の重要性を検討した。

    【方法】健康増進活動は、業務後リハビリ室を解放し、参加者に合った運動を自主練習形式で行っている。症例は、約4 ヵ月間で計16 日、エルゴメーター10 分、3 分歩行2 セットを行った。毎回フィードバックを行い、心境の聴取や、日頃の疑問に答えるなどの心理的側面をフォローした。活動中、低血糖のリスクや運動負荷量について説明した。

    他に、管理栄養士による食事療法、診療看護師による薬物療法を行った。

    【結果】発症時平成27 年7 月7 日HbA1c6.7%、体重74.0kg であり、9 月24 日HbA1c5.9%、体重69.0kg と改善が見られた。思考の変化としては、体重減少、症状改善に伴い意欲が向上し、自主的にプールでの運動や食事療法について考えるようになった。症例からは、一度に全ての指導を受けるよりも、疑問に思った事をこまめに聞き、アドバイスを受ける方が生活に活かしやすいという声が聞かれた。

    【考察】今回症例の心理的側面をフォローしたことで、運動療法に対する意欲の向上に影響し、継続的な治療が行えたと考える。今回の経験から、理学療法士として、患者の背景を理解し、寄り添った関わり方を意識しながら、動機づけとリスク管理、他療法についてアドバイスを送ることの重要性は高いと考えられる。

    【倫理的配慮、説明と同意】本研究は、症例に対し、データの公開は研究目的であり他の目的には一切使用しないこと、データおよび対象者情報は個人が特定できる情報を削除した上で公開すること、データ提供者は本同意書で公開に同意してもいつでもこの同意を撤回できることを明記した承諾書にて説明と同意を得ている。

  • 土屋紅葉 , 高村哲仁 , 宮下大佑 , 森川涼子 , 田中僚 , 鈴木翔子 , 横内祐香
    p. 305-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】 座面後傾斜位の車いすは骨盤が後傾しやすく,片側上下肢の駆動において,体幹機能を十分に使用できず効率が悪いとされている.今回,脳卒中片麻痺の症例について,座面角度を調整し駆動について検討したため報告する.

    【対象・方法】 対象は脳卒中右片麻痺85 歳男性, Brunnstrom recovery stage は右上下肢III,Hoffer 座位能力分類(JSSC版)1.モジュラー型車いすで前座高は変更せずに,座面を4°後傾斜位・前傾斜位に調整し,駆動能力(5m

    直線,10m スラロームの駆動時間),駆動しやすさ(VAS 0:非常に駆動しやすい),矢状面での駆動姿勢評価を行った.

    【説明と同意】 本症例には,当院倫理委員会の承認を得た上で,研究主旨・倫理的配慮を説明し同意を得た.

    【結果】 駆動時間は,直線で後傾斜位8.85秒,前傾斜位7.23秒,スラロームで後傾斜位25.83 秒,前傾斜位30.56

    秒となった.駆動のしやすさは,後傾斜位で直線,スラロームともに49,前傾斜位で直線24,スラローム65 となった.後傾斜位での開始姿勢は骨盤・体幹後傾,駆動時に体幹前傾するが,骨盤前傾・股関節屈曲はない.前傾斜位での開始姿勢は骨盤・体幹は垂直に近く,駆動時に骨盤・体幹前傾し股関節は屈曲する.

    【考察】 前傾斜位では,後傾斜位に比べ重心は高い位置にあり,骨盤は垂直に近い位置にあるため体幹前傾で前方に傾きやすい.そのため,体幹前傾駆動の場合,下肢への荷重が多くなり,前方への推進力を得られたと考えら

    れる.しかし,下肢への荷重が多くなることで,足部での方向調整が不十分となり,スラロームでの駆動時間延長や駆動しにくさに繋がったと考えられる.

    【まとめ】 本症例では,座面角度で駆動能力の変化を認め,方向転換にも影響した.車いす駆動の座面角度の設定については様々な報告があるが,方向転換への影響や生活場面を考慮し,個々に合わせた調整が必要である.

  • 稲生絵利香 , 星野恵里佳 , 河合学 , 三浦千咲姫 , 中村彩菜 , 坂本美喜
    p. 306-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】温熱刺激によって誘導される熱ショックタンパク質(HSP)は,骨格筋におけるタンパク合成や筋肥大,筋萎縮抑制に効果を有することが報告されているが,筋線維タイプ組成が異なる骨格筋に対する温熱刺激の影響は一致した見解が得られていない.そこで,本研究では筋線維タイプと筋の違いに着目し,温熱刺激によるHSP72 発現量と筋横断面積への影響を調査することを目的とした.

    【方法】対象動物はICR 系雌マウス(12 週齢)とし,温熱群(n=7),対照群(n=4)の2 群に分けた.温熱刺激は,41℃で

    60 分間の全身温熱とし,1 回/日の頻度で5 日間毎日行った.最終温熱日から1 日後に両側の腓腹筋,ヒラメ筋を採取し, HSP72 発現量および筋線維タイプ別での筋線維横断面積を測定した.統計解析は,対応のないt 検定を行い有意水準は5 %とした.なお,本実験は当大学動物実験委員会の承認を得て行った.

    【結果】HSP72 発現量は,対照群では腓腹筋よりもヒラメ筋が高かった.各筋におけるHSP72 発現量は,腓腹筋の温熱群では対照群と比較して11.5 倍に増加し,ヒラメ筋の温熱群では対照群と比べ1.7 倍に増加した.温熱群のHSP72 発現量を対照群のHSP72 発現量で除したコントロール比は,ヒラメ筋と比較して腓腹筋で有意に高かった.筋線維タイプ比率は,ヒラメ筋では遅筋線維の比率が高く,腓腹筋は速筋線維の比率が高かった.筋線維横断面積は,腓腹筋のタイプll 線維において温熱群の面積が大きい傾向を示した. 【考察】HSP72 は遅筋線維に多く発現するが,温熱刺激に対する感受性は速筋線維が高いことが報告されている.本実験においても,対照群ではヒラメ筋にHSP72 が多く含まれていたが温熱刺激による影響は腓腹筋で大きい傾向がみられた.以上より,温熱刺激による影響は,速筋線維の多い腓腹筋に強く生じたことが示唆された.

  • 星野恵里佳 , 稲生絵利香 , 河合学 , 三浦千咲姫 , 中村彩菜 , 坂本美喜
    p. 307-1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】骨格筋に対する温熱刺激によって誘導される熱ショックタンパク質(HSP)は,筋萎縮抑制効果を有することが報告されている.しかし,先行研究での温熱刺激頻度は様々であり,タンパク合成促進に有効な頻度は不明確である.そこで本研究では,刺激頻度の違いによるHSP 産生と筋線維横断面積およびタンパク質合成の変化を調査することを目的とした.

    【方法】動物はICR 系雌マウス(12 週齢)を用い,毎日温熱群(n=7),隔日温熱群(n=7),無処置群(n=4)の3 群に分

    けた.温熱刺激は,41℃で60 分間の全身温熱とし、1 回/1 日の頻度で期間は5 日間とした.隔日温熱群は1 日・3

    日・5 日目に温熱を加えた.両温熱群ともに最終温熱日から1 日後に両側ヒラメ筋を採取した.ヒラメ筋は,筋線維タイプ別に筋線維横断面積を測定し,またHSP の発現量とAkt のリン酸化比を解析した.統計処理は一元配置分散分析を用い,有意水準は5 %とした.なお本実験は当大学動物実験委員会の承認を得て実施した.

    【結果】無処置群の平均直腸温は,38.1±0.2℃であった.温熱刺激後の平均直腸温は,毎日温熱群で

    40.3±0.1℃,隔日温熱群で40.0±0.2℃であった. HSP の発現量は,無処置群に比べ隔日温熱群では1.5 倍,毎日温熱群では1.6 倍となり有意に増加したが,毎日温熱群と隔日温熱群間の有意差はなかった. Akt リン酸化比および筋線維横断面積は,3 群間に有意差は認められなかった. 【考察】HSP 発現量は,無処置群と比較して有意に増加し,また毎日温熱群と隔日温熱群間での差がなかったことから,温熱負荷を加える場合は隔日でも有効である可能性が考えられた.一方,Akt リン酸化は,温熱刺激による有意な増加がなかった.Akt リン酸化は温度依存性に増加することが報告されていることから,本実験では体温の上昇不足が考えられた.

  • 小出慧
    p. 308-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】 頚椎と姿勢との関係を示す文献は多数あり、姿勢保持に対する頚椎の姿勢は重要なものと言える。その為、頚椎の姿勢変化による頚椎周囲筋の緊張の変化は、頚椎に連なる筋に大きく影響するのではと考えた。本研究では頚椎の姿勢変化が肩甲骨と下顎の運動に及ぼす影響を検討した。

    【方法】 対象は健常成人14 名(年齢24.1±2.7 歳)とした。測定肢位は背臥位での頚椎正中位と、頚椎の、a.右上・下位側屈、b.左上位・右下位側屈、c.左上・下位側屈、d.右上位・左下位側屈とした。各肢位にて片側ずつ肩甲骨外転動作と開口動作を自動運動で3 回ずつ行った。各最終域をデジタルカメラにて撮影し、その写真から肩甲骨外転角度と下顎の側方偏移量をimageJ にて解析し平均値を算出した。統計処理はwilcoxon の符号付順位検定、対応のあるt 検定を用い有意水準5%にて行い、正中位と各4 肢位とのそれぞれの差を検討した。対象者には研究の主旨を説明し同意を得た。また当院の倫理委員会の承認を得た。

    【結果】 肩甲骨外転角度では、a.b の両側とc.d の左側おいて下位頚椎側屈方向に対し有意に同側は大きく、対側は小さくなった。また下顎の側方偏移量もa.b.d にて有意に下位頚椎側屈方向に大きくなった。肩甲骨外転c.d の右側、下顎のc の項目では有意差は見られなかった。

    【考察】 下位頚椎を側屈させる前・中斜角筋と、肩甲骨外転筋である前鋸筋はどちらも第一肋骨に付着する。その為、下位頚椎側屈により同側斜角筋郡の緊張が緩和し第一肋骨への挙上方向の力が弱まることで、前鋸筋の肩甲骨外転作用が強まり可動域が拡大すると考えた。また開口動作に作用する舌骨下筋郡のうち3 つの筋が第一肋軟骨に連なっている。その為、上記同様に下位頚椎側屈に対し同側舌骨下筋郡の作用が強まり、下顎が同側方向へ偏移すると考えた。これにより、下位頚椎側屈による第一肋骨への張力の強弱が、肩甲骨、下顎の運動に影響することが示唆された。

  • 原ひとみ , 加藤あずさ , 齋藤愛結花 , 菅原愛実 , 渡部祥輝
    p. 309-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】周辺視野の制限が跨ぎ動作時の下肢関節運動に与える影響を明らかにすることとした.

    【方法】対象は健常成人18 名(年齢19.1±0.7 歳)とした.測定条件は,視野制限なしと視野制限ありの2 条件とした.視野制限には下方と側方を隠した眼鏡を用い,障害物が2 歩前で隠れるように設定した.課題動作は前方の固視点を注視し,快適速度で障害物を跨ぐ動作とした.測定には3 次元動作解析装置を用いた.測定項目は第5 中足骨(5MPH)と障害物上縁の最短距離(TC),5MPH が障害物直上時の各関節の矢状面角度(関節角度),各関節の最大屈曲・背屈位の時間から5MPH が障害物直上に位置した時間までの差(Timing)とした.統計解析は対応のあるt 検定を用いた.有意水準は5%とした.倫理的配慮として,研究の目的,内容を十分に説明し,書面及び口頭にて同意を得た.

    【成績】結果は(制限ありvs.制限なし)で示す.TC は制限ありで有意に増加した(21.9±4.6cm vs.20.1±4.0cm,p<

    0.05).Timing は,制限ありで股関節,膝関節とも有意に早まる傾向がみられた(股関節:0.01±0.03sec

    vs.0.02±0.00sec,膝関節:-0.12±0.02sec vs.-0.10±0.03sec,p<0.1 ).

    【結論】本研究の結果,周辺視野の制限は跨ぎ動作時の股関節,膝関節の運動に影響を及ぼすことが示唆された.中心視野はフィードフォワード制御に関与し,対象物を注視してその情報を運動計画に利用する.一方,周辺視野はオンライン制御に利用され,周辺の環境情報を知覚し,動作中の運動調整に利用される.本研究の結果は,障害物の2 歩前までの情報によりフィードフォワード制御による跨ぎ動作は可能であったが,周辺視野を制限したことにより,オンライン制御による動作中の運動調整が困難となった結果であると推測した.

  • 中本幸太 , 金村尚彦 , 村田健児 , 国分貴徳 , 清水大介 , 武川夏奈 , 峯岸雄基
    p. 310-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】末梢神経損傷に対する運動療法は従来から広く施行されており、末梢神経損傷後に旺盛な神経再生が起こることはよく知られている。しかし現在、末梢神経損傷後の運動療法が頻繁に行われているにも関わらず、直接神経再生に及ぼす影響に関しては、未だ一定した見解が得られていない。

    【目的】 本研究は末梢神経損傷後のモデルラットに対し外乱刺激装置を用い、低負荷の運動介入を行うことで、神経可塑性に与える影響を明らかにすることを目的とした。

    【方法】 Wistar 系雄性ラット10 週齢18 匹を対象とし、これらを無処置群 、坐骨神経圧挫後に運動を行う運動群、坐骨神経圧挫後に自然回復経過を観察した非運動群の3 群に振り分けた。運動群は外乱刺激装置(回転角度±7 度、回転速度20rpm のプラットホーム)を用いて、4 週間、週5 日、1 日1 時間実施した。実験終了後、運動機能評価としてRotarod test、インクラインテストを行い、組織学的評価として蛍光免疫組織化学染色法にて、抗GAP-43 抗体、抗S-100 抗体を用い、蛍光顕微鏡で平均輝度を算出し、その値をGAP-43、S-100 の発現量とし比較した。統計手法は一元配置分散分析を用いた。本研究は大学動物実験倫理委員会の承認により実施した。

    【結果】 組織学的評価にてGAP-43 で有意差が認められ、S-100 でも発現量が増加傾向にあったものの、運動機能面では統計学的有意差は認められなかった。

    【考察】 本研究の結果より、GAP-43 の発現量が増加したため、組織学的に有効な回復が得られたことから、術後から低負荷の運動を行うことが、組織学的に神経可塑性に有効である可能性は示唆された。しかし運動機能テストでは有意な差を認めなかったため、神経組織学的変化と運動機能面の回復との間にタイムラグが生じている可能性が示唆され、神経機能回復と機能的回復について更に詳細に継時的に検討していく必要がある。

  • 若松奨 , 永田祐介 , 永岡佑介
    p. 311-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【背景】歩行訓練の際,下肢の振り出しが左右非対称かつ努力性であることで上肢に痙縮を生じており,全身性の疲労のため歩行距離獲得に難渋した頚髄損傷患者に対して,Honda 歩行アシスト(以下歩行アシスト)を導入した.歩行アシストの特徴である股関節トルクの補助により,歩行の変化を認めたので報告する.

    【方法】1.対象者 頸髄損傷(C4/5)不全四肢麻痺を呈し前方固定術を施行した50 代男性.受傷後43 日に当院リハビリ病棟に転入院し,リハビリを進めていたが,歩行距離獲得に難渋した為,受傷後136 日より歩行アシストを導入

    した.MMT は腹筋群・下肢筋力:2~3 レベル,表在・深部感覚:重度鈍麻,FIM:49 点であった.歩行訓練ではPT2 人介助を要した.2.導入方法歩行アシストによる訓練は週2 回とし,計17 回実施した.歩行アシスト装着時,非装着時の連続歩行距離と歩調,股関節可動角対称度を歩行アシスト内蔵の計測機能を用いて検証した.歩行中止基準は患者の疲労,下肢の振り出し能力低下により歩行継続困難となった場合とした.なお,通常の理学療法は継続した.対象には本研究の趣旨,結果の取り扱いを紙面にて説明し同意を得た.

    【経過】 歩行アシスト非装着時の連続歩行距離は初期20m,最終38m であった.装着時は初期38m,最終80m であった.非装着時の歩調は初期42 歩/分,最終63 歩/分であった.可動角対称度は初期0.42,最終0.78 であった.

    【考察】 今回,連続歩行距離獲得に難渋した症例に対し,歩行アシストを装着することで歩行距離が延長し、積極的な歩行訓練が可能となった。また,非装着下においても連続歩行距離の延長を認めた.反復した股関節のトルクの補助により股関節の可動角の左右対称性,歩調も改善し,努力量の軽減や上肢痙性の抑制にも影響を与えたと考える.

    【結語】 理学療法に歩行アシストを追加導入することで相乗的な効果につながる可能性を経験した.

  • 河合学 , 三浦千咲姫 , 稲生絵利香 , 星野恵里佳 , 中村彩菜 , 坂本美喜
    p. 312-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】低出力パルス超音波療法(LIPUS)は創傷治癒促進を図る治療法であるが,筋損傷に対する効果は一致した見解が得られていない.その原因として強度や照射時間などのLIPUS 照射条件が一定でないことも関連すると考えられている.そこで,本研究では,筋再生過程に及ぼすLIPUS の影響について,照射時間を変えて検討した.

    【方法】実験動物にはICR 雌マウス(12 週齢)を用い,筋損傷後にLIPUS を照射しない筋損傷US-群(n=29),筋損傷後にLIPUS を10 分間実施するUS10min 群(n=22),筋損傷後にLIPUS を20 分間実施するUS20min 群(n=10)の3 群に分けた.LIPUS 実施条件は周波数3MHz,強度0.5w /cm<SUP>2</SUP>,照射時間率50%,照射時間は

    10 分もしくは20 分とし,損傷後2 時間経過時に1 回目の照射,2 回目以降は1 回/日,7 回/週の頻度で実施した.損傷後5 日と7 日に筋を採取し,筋線維横断面積および70-kDa リボソームS6 キナーゼ(p70S6K)の発現を解析した.統計処理は,一元配置分散分析を行い有意水準を5%とした.なお,本実験は当大学動物実験委員会の承認を得ておこなった.

    【結果】損傷7 日後の各群の平均筋横断面積は,3 群間で有意差はなかった.筋線維横断面積の分布をみると,US10min 群,20min 群は,US-群より筋横断面積が大きい線維の割合が高かった.損傷5 日後のリン酸化p70S6K の発現はUS-群よりUS10min 群で有意に高かった. 【考察】US10min 群では,p70S6K リン酸化比が増加したことからLIPUS 照射によりタンパク合成が促進されたことが示唆された.しかし,LIPUS 照射時間の相違による形態的な差やリン酸化p70S6K 比に差は認められず,LIPUS 照射時間の増加に伴い必ずしも筋再生促進効果が大きくなるとは限らないことが示唆された.

  • 三浦千咲姫 , 坂本美喜 , 中村彩菜 , 河合学 , 稲生絵利香 , 星野恵里佳
    p. 313-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】低出力パルス超音波療法(LIPUS)は,機械的刺激を組織に加え創傷治癒促進を図る治療法である.筋損傷に対するLIPUS の効果は筋分化促進や筋横断面積の増加等が報告されているが,その作用機序は明らかではない.そこで本研究では,筋損傷に対するLIPUS の作用を検討することを目的に,タンパク質合成に関与する因子である接着斑キナーゼ(FAK)および70-kDa リボソームタンパクS6 キナーゼ(p70S6K)の発現を検討した.

    【方法】実験動物は,ICR 系雌マウス(12 週齢)を用いて,筋損傷群(n=10),筋損傷後にLIPUS を実施したUS 群(n=

    10),無処置のコントロール群(n=3)の3 群に分けた.筋損傷は左前脛骨筋にカルジオトキシンを注入し作成した.LIPUS 実施条件は,周波数3 MHz,強度0.5W/cm<SUP>2</SUP>,照射時間率50 %,照射時間10 分として,筋損傷後2 時間に1 回目を実施し,損傷後2 日から4 日まで毎日1 回実施した.損傷後5 日で前脛骨筋を採取し, FAK およびp70S6K のリン酸化を測定した.統計処理は,対応のないt 検定を用い有意水準は5%とした.本実験は当大学動物実験委員会の承認を得ておこなった.

    【成績】組織所見では,筋損傷群,US 群ともに再生筋線維が観察された.筋損傷群・US 群間の組織学な違いは認められなかった.FAK リン酸化比は,筋損傷群とUS 群間で有意差はなかった.p70S6K リン酸化比は,筋損傷群に比較してUS 群では2 倍に増加し有意に高値を示した.

    【結論】US 群においてp70S6K リン酸化比が増加したことからLIPUS 実施によりタンパク合成が促進されたことが示唆された.しかし,FAK リン酸化比には両群間で有意差は認められず,LIPUS によるp70S6K のリン酸化はFAK/PI3K/Akt 経路とは別のシグナル伝達経路の関与が示唆された.

  • 星川希洋 , 池田由美
    p. 314-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】結果の知識(Knowledge of result:以下, KR)を高頻度に提示した条件下で, 協応運動課題学習における自己評価の有効性を検討することを目的とした.

    【方法】対象は健常成人28 名とし, クラブ・部活動でのサッカー経験が中学以降で3 年以上の者を“経験者”, 中学以降に経験のない者を“初心者”とした.対象者には研究の趣旨を説明し, 同意を得たうえで研究を行った.学習課題は直径10cm のリフティングボール(ミズノ製)のキック動作で, 同心円状の的の中心に近づけて止めることとした.キック地点から的の中心までの距離は850cm, 的はコース上に直径30cm から30cm 刻みで150cm まで同心円を描いた.学習前テスト(KR なし5 試行)を実施後, 的が見えないようスクリーンを設置し, 学習試行(9 試行を1 ブロック,計

    36 試行)を実施した.KR は毎試行後に提示した.自己評価をする条件は,蹴った強さ・方向, ボールが止まった地点を予想し, 毎試行後に評価用紙に記入させた。自己評価をしない条件は, 妨害課題として毎試行後にルービックキューブを行わせた.以上の2 条件を経験者と初心者それぞれに実施した.学習試行終了後に直後再生テスト(5 試行), 10 分後に遅延再生テスト(5 試行)を実施した.的の中心が原点(0,0)である横軸がX, 縦軸がY の直交座標とし, 原点からボールが止まった地点までの距離を算出し, 学習試行ではブロック毎に平均値を求めた.また, 直後再生・遅延再生テストの平均値を学習前の平均値で除したパフォーマンス変化率を算出し, 学習試行期・各テスト期について条件内・条件間の比較を行った.

    【結果】経験者・評価あり群において, 学習前と遅延再生間で有意差を認めた(p=0.034).

    【考察】経験者は自身の動作の自己評価とKR を比較し, 主体的に誤差を修正していたと考える.本研究から経験者における自己評価の有効性が示唆された.

口述
  • 鶴岡祐治 , 糸部恵太 , 東史朗 , 真鍋雅春 , 陣内雅史 , 豊田敬
    p. 1-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】肩関節屈曲動作で肩甲骨運動は重要であり上腕骨との関係で肩甲上腕リズムがしられている。肩甲骨は胸郭上に浮遊するため胸椎運動も関係する。甲斐らは上肢挙上時に胸椎伸展運動が起こると報告している。本研究の目的は肩関節屈曲時の肩甲骨と胸椎の関係を分析する事とした。

    【方法】対象は肩関節や胸腰椎に既往のない健常男性11 名。被験者に実験主旨及び方法について説明し同意を得た。計測はデジタルカメラを使用し、マーカーは上腕骨外側上顆、肩峰、肩甲棘三角、下角、C7、Th7、Th12 とした。計測肢位は骨盤中間位で椅子坐位とし3 秒間で右上肢最大屈曲を3 回実施した。解析はImage J を用い矢状面上で行い、肩関節屈曲角は体幹と上腕骨外側上顆-肩峰、肩甲骨後傾は垂直軸と肩甲棘三角-下角、胸椎後弯角はC7-Th7 とTh7-Th12 の成す角とした。測定変数は屈曲全体0 度~最大挙上、屈曲前半0~120 度、後半

    120 度~最大挙上とし、それぞれの肩甲骨後傾、胸椎後弯角の変化量の平均値を算出した。統計処理は屈曲全体、前半、後半の肩甲骨後傾と胸椎後弯角の変化量の関係をスペアマンの順位相関係数を用いて検定した。

    【結果】 屈曲全体で肩甲骨後傾26.6±4.6、胸椎後弯角5.8±2.8、0~120 度で肩甲骨後傾17.7±3.4、胸椎後弯角1.9±2.3、120 度~最大挙上で肩甲骨後傾8.9±3.5、胸椎後弯角3.8±6.4 であった。0~120 度の肩甲骨後傾と胸椎後弯の変化量の間で有意な相関がみられた(r=0.83、p<0.05)。

    【考察】 屈曲前半の肩甲骨後傾と胸椎後弯角の間で有意な相関がみられた。屈曲前半で肩甲骨が先行して動き、胸椎が緩やかに伸展していた。屈曲後半はLanz らが胸椎伸展は肩甲骨の基底面を後傾させ上肢挙上を補助すると報告しているが、今回は肩甲骨と胸椎をバランス良く動かすタイプ、肩甲骨を動かすタイプ、胸椎を動かすタイプがみられため、相関がみられなかったと思われる。今後この関係性を明らかにしていきたい。

  • 三上紘史 , 仲島佑紀 , 望月良輔 , 石垣直輝
    p. 2-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】腰椎椎間板ヘルニア(LDH)患者では神経障害部位に一致した多裂筋横断面積(MA)が減少することが知られているが、罹病期間との影響を報告した研究は少ない。本研究はLDH 患者のMA と罹病期間との関連性を検討することを目的とした。

    【方法】当院を受診した片側下肢症状を有するL4/5LDH 患者49 名を対象とした。これらを罹病期間3 ヶ月(3M)未満26 名(男性20 名、女性6 名、罹病期間1.0±0.4 ヶ月)、3M 以上23 名(男性19 名、女性4 名、罹病期間

    12.4±24.0 ヶ月)の2 群に分類した。L4/5、L5/S1 のMRI 横断画像より棘突起外側と椎弓および筋膜で囲まれた部分を計測範囲とし、同一検者が2 回測定を行った平均値をMA とし、体重で正規化(MA/w)した。症状側・非症状側MA/w を対応のあるt 検定を用いて比較を行った。2 群間の比較にはMann-Whitney 検定を用いた。有意水準は5% とした。対象者データの取扱いにはプライバシーの保護に充分配慮し解析を行った。

    【結果】3M 未満群のMA/w はL4/5 症状側13.6±2.8、非症状側13.6±2.8、L5/S1 症状側15.0±3.1、非症状側

    15.0±3.2 であり、3M 以上群のMA/w はL4/5 症状側12.0±2.0、非症状側12.2±2.5、L5/S1 症状側13.6±2.2、非症状側13.6±2.3 であった。両群共に症状側・非症状側MA/w に有意差はなかった。2 群間の比較において3M

    以上群のL4/5 症状側MA/w は3M 未満群よりも有意に小さかった(p=0.04)。またL4/5 非症状側やL5/S 両側において有意差はみられないものの3M 以上群が小さい傾向にあった。

    【考察】Kim らは3M 以上のLDH 患者では症状側MA が有意に減少していたと報告している。本研究では3M 以上群においてもMA/w の非対称性はみられず、罹病期間が長くなるとMA/w が減少する傾向にあった。これは神経根障害による影響というよりも廃用性萎縮が関係していた可能性がある。今後はMA の減少や非対称性がLDH 患者の臨床所見とどの程度関連しているかを検討することが必要と考える。

  • 鈴木康仁 , 鍋島雅美 , 君塚実和子 , 平井竜二 , 北村望美 , 山北令子
    p. 3-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】臨床上,頸椎疾患を有する症例は,頸椎回旋可動域に左右差を認めることが多い.また頸椎は隣接する胸郭からの影響を受けやすく,側腹筋筋力の左右差も同時に認めることが多い.本研究は,健常者における頸椎回旋可動域と側腹筋である外・内腹斜筋の関係性を検討することを目的とした.

    【方法】対象は健常成人男性13 名(年齢25.2±1.88 歳,身長172.5±6.29cm,体重62.7±5.42kg)とした.側腹筋筋厚測定には,荷重値機能付き超音波画像装置Views i(酒井医療)を使用した.対象筋は左右の外腹斜筋(以下:EO),内腹斜筋(以下:IO)とした.筋厚測定肢位は背臥位,坐位,坐位頸椎回旋時(以下:回旋)の安静呼気とし,部位は前腋窩線上の肋骨辺縁と腸骨稜の中央部とした.回旋可動域は,両肩峰を結ぶ線と頭頂を通る両耳介を結ぶ線のなす角とした.デジタルビデオカメラにて得られた静止画より,画像解析ソフトImageJ を用い測定した.回旋可動域の大きい側を優位側,小さい側を非優位側とし,背臥位,坐位,回旋のEO 筋厚,IO 筋厚に関して二元配置分散分析および多重比較検定を行った(有意水準5%未満).さらに優位側と非優位側において回旋時のEO とIO を比較するため,それぞれ回旋による筋厚の変化量(回旋筋厚-背臥位筋厚)をEO,IO ごとに対応のあるt 検定を行った

    (有意水準5%未満).

    【説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づき対象者に研究内容を説明し同意を得た.

    【結果】優位側EO とIO は,IO の背臥位と回旋,非優位側EO とIO は,EO の背臥位と回旋の間に有意差が認められた(p<0.05).優位側と非優位側の比較は,優位側IO のみが有意に高値を示した(p<0.05).

    【考察】本研究では,優位側においてIO,非優位側においてEO が頸椎回旋に影響を及ぼす可能性が示唆された.優位側では胸腰筋膜,腹横筋と筋連結を持つIO が下部体幹stability に作用し,非優位側ではEO が頸椎回旋方向に拮抗する脊柱回旋に作用すると考える.

  • 雨宮耕平 , 来間弘展 , 山内智之
    p. 4-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】腹臥位股関節伸展テストは腰椎骨盤帯の安定性評価として用いられ,股関節・体幹伸筋群の活動開始時間により股関節伸展運動の際の筋活動パターンを判別する.健常者を対象とした先行研究では大殿筋が最後に活動するという報告や,一定のパターンはなく対象者毎に多様性があるとした報告があり,見解は一定していない.本研究では大殿筋を上部線維と下部線維に分け,より詳細に腹臥位股関節伸展運動時の股関節・体幹伸筋群の活動開始時間を測定し,健常者における筋活動パターンを検討する事を目的とした.

    【対象】対象は健常男性11 名とした(20.8±0.7 歳).本研究は,平成27 年度首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会の承認(承認番号15065)を得て行った.

    【方法】測定は表面筋電計(WEB-1000,日本光電社製)を用い,腹臥位にて膝伸展位で股関節伸展を行わせた際の両側脊柱起立筋,両側多裂筋,測定側大殿筋上部・下部線維,測定側半腱様筋・大腿二頭筋の筋活動を測定した.データは整流平滑化し,安静時の平均振幅+3SD を50msec 以上持続して越えた点を筋活動開始時間と定義した.測定は軸足側で行い,各筋の活動開始時間は半腱様筋を基準に標準化し,3 回の平均値を解析に用いた.統計解析はSPSSver.23.0 を用い,一元配置分散分析及びTukey の多重比較法を有意水準5%にて実施した.

    【結果】各筋の活動開始時間に有意差を認め,大殿筋上部線維が両側脊柱起立筋・両側多裂筋よりも遅く活動開始していた.その他の筋の活動開始時間は有意差を認めなかった.

    【考察】本研究より,健常者における腹臥位股関節伸展運動時の股関節・体幹伸筋群の筋活動パターンについて,大殿筋は筋線維毎に活動パターンが異なっていた.上部線維では脊柱起立筋・多裂筋よりも遅く活動し,下部線維においては一定のパターンはなく対象者毎に多様性があった.これは,大殿筋の上部・下部線維の機能的な相違が要因として考えられる.

  • 小川明久 , 松葉好子 , 磯部江里 , 石田桃子
    p. 5-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【背景】当院は45 床の脊椎脊髄外科を有し、入院患者の約70%が手術例である。理学療法(以下PT)では、術後病状が安定した患者に対し2014 年から合同プログラムの取り組みを実施している。今回は合同プログラムの紹介と参加後の機能変化を報告する。

    【合同プログラムの内容】数名のPT が担当し1 日1 回40 分間のプログラムを週5 日実施。参加基準は、歩行器や杖の併用で病棟歩行が自立し、指示理解が可能な患者。1 回の参加人数は最大7~8 名。プログラムは機能改善と歩行能力向上を目的に、全員で実施でき、自主トレーニングやADL 動作に結びつけることを考慮した18 項目。1 回の流れは、筋力増強やバランス練習等の機能練習を20 分間、歩行や階段昇降練習を20 分間実施。毎回プログラム開始時にVAS で疼痛と痺れを確認し、終了時に時間内の歩行距離と階段昇降回数のフィードバックを実施。また初回参加時と最終時には、TUG、時間内歩行距離、Borg Scale の評価を施行。

    【倫理】本研究は当院倫理委員会の承認を得た。

    【参加前後の機能変化】調査期間は2014 年7 月~15 年11 月。この期間の参加者は134 名(同時期の術後患者の

    36%)。このうち参加が2 日以下、データに不備がある患者を除外した93 例を検討。平均年齢は67.0±13.3 歳、男

    47 名、女46 名、疾患名は腰部脊柱管狭窄症51 例、脊柱変性側弯症7 例、椎体骨折6 例、頸椎症性脊髄症6 例、後縦靭帯骨化症5 例、その他18 例。平均入院期間は39.9±25.1 日、手術からプログラム参加までの平均期間は

    21±13.5 日、平均実施回数は9.1±7.0 回。機能変化は初回時、最終時の評価を比較。統計処理は対応のあるt 検定とWilcoxon 符号付順位和検定を行い、有意水準は1%とした。最終時のTUG、歩行距離、Borg Scale は有意に改善し、VAS は減少傾向であった。

    【考察】合同プログラムは効率的にPT が施行でき、一定の効果が得られると考えられた。今後はグループ練習の効果や、患者相互の影響の検証が課題である。

  • 佐久川拓郎 , 兒丸智幸
    p. 6-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】昨今重要視されてきているSPDCA サイクルに基づいて,リハビリテーション(以下リハビリ)を提供した.そのアウトカムの1 つとして「満足度」の集計を行った.満足度は患者・利用者との信頼関係を構築していく中の1 つの指標であり,また介護保険でのリハビリについては継続・終了に直結していく重要な指標のでもある.尚,本報告は患者・利用者・KP に対して研究・発表の主旨の説明を行い同意を得た.

    【調査対象】MMSE24 点以上・JCS0・KP が設定されている,外来・訪問看護によるリハビリを利用している40 名及びそのKP.

    【方法】初回介入時にSurvey の1 つとして,本人とKP に対してリハビリに対する希望とした用紙に記入をしてもらい,それを基にGoal を設定.2 ヶ月後にリハビリに対する満足度とした用紙を記入してもらい集計を行った.

    【結果】集計結果は,本人が非常に満足している48%,満足している50%,改善してほしい2%.KP が非常に満足している45%,満足している50%,改善してほしい5%,となった.理由としては,満足しているは目標の一致・ADL の向上,改善してほしいは内容の変更,が本人・KP 共に多かった.

    【まとめ】SPDCA サイクルに基づきリハビリを提供した所,満足度は非常に高い結果となった.特に,本人・KP 共にリハビリの目標が希望と一致している事と日常での動作に変化があった,という点で満足している事がわかった.今回の集計から,活動・参加の面においての改善を望んでいる事が多く,またSurvey を重点的に行いそこから知り得た情報を基にGoal 設定を行い,リハビリを提供していく事が満足度に好影響を及ぼしているともわかった.今後もセラピストにはSurvey をしっかりと行い,ニードとデマンドを踏まえた上で最良なGoal を設定する能力が求められると考える.今後は対象を広げ更には地域へと拡大していき,セラピストへ求められている事を読み取っていきそれに応えるべく活動を継続していく.

  • 井上和久 , 丸岡弘
    p. 7-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】今回むくみや疲労感などの何かしらの更年期障害を有する女性を対象とし、A サロンで施術される1 回の簡易リンパドレナージが生体におよぼす影響について検討した。

    【方法】本研究は、ヘルシンキ宣言に則り被験者に調査の目的や手順を説明して署名による同意を得た。なお、所属の倫理委員会で承認済(第26102 号)。対象は、更年期障害を有する女性20 名とした。方法は、簡易リンパドレナージ施術(軽擦法、施術30 分)前後の唾液中に分泌される物質(Salivary EIA Kit を使用しα-Amylase:α-A、Cortisol:Corti、Dehydroepiandrosterone:DHEA、Secretory Immunoglobulin A:SIgA を採取)を採取し、簡単なアンケート(施術前後の視覚的評価スケールVisual Analog Scale:VAS、簡易リンパドレナージ施術後の体の変化・簡易リンパドレナージを受けて感じたこと・思ったことなど)を行った。統計処理は、IBM SPSS Statistics21 を使用し各パラメータの比較はWilcoxon の符号付順位検定を用い有意水準5%とした。

    【結果】施術前後を比較(中央値)すると、Corti(0.131→0.091)、DHEA(73.46→57.75)、VAS(5→1)に有意差が認められた(いずれもp<.05)。α-A およびSIgA には有意差は認められなかった。アンケートは、「楽になった」「脚が軽くなった」などの肯定的な意見があった。

    【考察】今回1 回の簡易リンパドレナージを施術することによりCorti やDHEA が減少し、ストレスの軽減効果が示唆された。さらに、施術することにより精神的・身体的な効果も得られたことが示された。なお、今回コントロール群を設定できなかったため今後コントロール群の結果を含めて再度検証していく。

  • 池田崇 , 南條恵悟 , 前田真吾
    p. 8-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに】平成26 年に日本老年医学会(日老医)は要介護状態の前段階にあたる状態を「フレイル」と定義すると発表した。しかし、要介護高齢者の状態は障害・虚弱・併存症の3 者が重なり合うことで成立するため必ず3 つの全てに当てはまるとは限らない。本研究の目的はFrailty phenotype(FP)とCo-morbidity index(CMI)を用いて、要介護高齢者がどの程度のFP とCMI 有しているのか、通所リハ利用者の実態把握を行う事とする。

    【対象と方法】対象は短時間通所リハ利用者で6 か月間連続利用のあった要支援および要介護高齢者49 名(平均

    年齢78.5 歳、男性31 名女性18 名)とし、握力および15feet(4.55m)歩行時間の評価を行った。認知症を有する者は除外した。患者情報(年齢・性別・主病名・要介護度・身長・体重・BMI)を診療録より調査した。上記の情報に問診を加えてFP とCMI の評価を行った。FP は歩行時間、握力、体重減、消耗感、活動量の5 項目の内、3 つ以上に該当した場合をFrail(Fr)、2つに該当をPre-frail(Pre)とした。本研究はヘルシンキ宣言に基づき、リハビリケア湘南かまくら小倫理審査委員会の承認(16-01-001)を得て実施した。

    【結果】FP はFrail:13 名、Pre-Frail:14 名、該当なし(N):22 名であった。CMI は4.3 点であった。介護度の区分ごとでは(Fr:Pre:N,CMI 点)、要支援1(1:3:6,CMI4.3) 、要支援2(0:3:6,CMI4) 、要介護1(1:3:6,CMI3.6) 、要介護

    2(3:5:4,CMI5.3)、要介護3-4(4:0:1,CMI4)であった。

    【考察】これまで要介護はFr に、要支援はPre に相当するとされてきた。本研究の対象者は要介護29 名、要支援

    20 名であったがどちらにも相当しないN が22 名含まれていた。認定区分別でも、要支援~要介護1まではN の割合が高く、要介護3 以上ではFr の割合が多く、日老医の発表と矛盾しなかった。「フレイル」の概念の解釈において要支援および軽介護度は注意を要すると思われる。

  • 小澤貴史 , 上出直人 , 近藤里穂 , 新井健司 , 大森豊 , 柴喜崇
    p. 9-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【はじめに,目的】介護予防運動教室に関して,量と質の両面の評価・分析をする混合研究法(Creswell JW ら,

    2011)を用い,従来の量的評価だけでは捉えきれない効果を検討した.

    【方法】対象は介護予防運動教室に参加した65 歳以上の地域在住自立高齢者12 名(69.0±4.3 歳)とした.運動教室は週1 回3 か月間実施され,教室の前後で運動機能と生活機能を量的指標で評価した.さらに,混合研究法の説明的デザインを適応し,3 か月の教室終了後に半構造化面接を行い質的な評価を行った.面接では,教室への参加で感じた変化について聴取した.運動機能と生活機能については,3 か月前後での変化率を算出し,その結果を基に機能改善群と機能不変・低下群に分類した.面接結果は,機能改善群および機能不変・低下群ごとにテキストマイニングを行い,最終的に階層的クラスター分析により結果を整理した.

    【結果】量的指標の解析の結果,6 名が機能改善群,6 名が機能不変・低下群に分類された.面接内容のクラスター分析の結果,機能改善群では「運動効果・運動習慣化」,「老いの自覚」,「体力の向上」,「日常生活における意欲」,「自己効力感」を教室参加による変化としていた.機能維持・低下群では,「主観的変化と客観的変化の違い」,「以前の生活との比較」,「教室への参加意欲、喜び」,「専門家の介入」,「教室継続への意識」を教室参加の変化としていた.

    【結語】量的評価では運動教室参加者の半数は機能が改善していなかった.しかし,意欲や意識といった心理面の変化が認められた.同様に,機能改善を認めた参加者でも,意欲や自己効力感といった心理面の変化を認めた.このことから,介護予防の運動教室では,量的指標だけでは捉えられない変化や効果も生じていると考えられた.

    【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言を順守し,対象者には書面と説明にて同意を得た.

  • 入山渉 , 加藤仁志 , 鳥海亮
    p. 10-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】本研究ではロコモ疑いありと判定された者の健康関連QOL と心身機能の関連を検討することを目的とした. 【方法】デイケアに通う要支援者38 名(男性12 名,女性26 名,平均年齢81.6±9.6 歳)を対象に質問紙調査と身体機能測定を行った.質問紙調査の内容はEuro QOL 日本語版5 項目法(以下,EQ-5D),腰痛症患者機能評価質問票の数日間の腰痛に関する7 項目,変形性膝関節症患者機能評価尺度の膝の痛みやこわばりに対する8 項目

    (以下,膝痛),the Falls Efficacy Scale-International,Life-Space Assessment,身体活動量であった.EQ-5D は健康関連QOLを評価する質問紙であり,「移動の程度」,「身の回りの管理」,「普段の生活」,「痛み/不快感」,「不安感/ふさぎ込み」の5 つの質問項目で構成され,「問題なし」,「いくらか問題あり」,「問題あり」の3 件法で評価を行う質問票である.さらに5 項目の結果から効用値と呼ばれる0(死)から1(完全な健康)までの値を算出した.身体機能項目は握力,等尺性膝伸展筋力,Timed Up and Go test,5m 最大歩行速度,開眼片足立ち時間,Functional Reach test,長座位体前屈距離であった.解析はEQ-5D の効用値を従属変数,その他の質問紙調査項目と身体機能項目を独立変数とした重回帰分析を実施した.有意水準は5%とした.なお,対象者には事前に本研究の趣旨や目的などを紙面にて説明し,署名にて同意を得た.

    【結果】EQ-5D に関連する心身機能として膝痛と握力が抽出された.

    【考察】本研究の結果からロコモ疑いの要支援者のうち,膝痛が強い者や握力が低下している者ほど健康関連QOL が低くなることが明らかとなった.先行研究では膝痛に代表される痛みの程度や痛みによる活動制限は高齢者のQOLの維持・向上に大きく関与し,握力が高いことはQOLに正の影響を与えると報告されている.このことから,EQ

    5D に関連する身体機能として膝痛と握力が抽出されたことが考えられた.

  • 青柳達也 , 丸山仁司 , 菅沼一男 , 金子千香 , 佐野徳雄 , 五味雅大 , 齋藤孝義
    p. 11-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】理学療法教育ガイドラインには,卒前教育が果たす役割として自ら学ぶための能力と習慣を形成することであると述べられている.このことから理学療法教育においても自己教育力は必要な要素である.本研究の目的は理学療法教育における自己教育力の変化について調査することを目的とした.

    【方法】対象は4 年制大学理学療法学科学生1~4 年生の計307 名とした.自己教育力調査表を用い,集合調査法で10 月に調査を実施した.自己教育力尺度は側面I(成長・発展への志向),側面II(自己の対象化と統制),側面III(学習の技能と基盤),側IV(自信・プライド・安定性)の下位尺度からなり,各10 項目の設問で構成される.はい2 点,いいえ1 点の2 件法で回答し,その合計得点が高いほど自己教育力が高いことを示す.統計学的手法として,自己教育力各側面の1~4 年生の学年間比較をKruskal-Wallis 検定を適用し,主効果が認められた場合はMannWhitney のU 検定を実施し,Bonferroni の補正を行った.統計ソフトはSPSS Statistics21 を用い,有意水準は5%未満とした.本研究はヘルシンキ宣言に従い,研究参加同意を得るため,調査主旨と研究内容,研究参加は任意であることを説明し,同意署名を得た.

    【結果】自己教育力各側面の学年間比較の結果,側面I,側II,側面III の得点において,1 年生が3,4 年生と比較して有意に高値を示した.

    【考察】側面I は目標の感覚・意識と達成・向上の意欲という2 つからなり,側面II は自分自身の現状と可能性,課題等を認識し,自分自身が選びとった方向へ自分自身が働きかけるという構えと能力を意味している.このことから,1 年生は理学療法士という目標に対して,自らを成長,発展させることへの意識が高く,目標達成への意欲が高いことが示唆された.しかし,学年進行とともに自己教育力が低下していることが示唆された.今後は自己教育力低下に影響を及ぼす要因の検討が必要であると考えた.

  • 井上美幸 , 松田徹 , 樋口典男 , 小林好信 , 秋山大輔 , 藤原正之 , 堀川光司
    p. 12-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】当校で新たに導入した実習指導ツール([1]To Do リスト、[2]フォーマット化したデイリーノート、[3]症例レジュメ作成時の患者まとめシート)の有用性について学生へのアンケート調査から検討すること。

    【方法】2015 年度臨床評価実習を行った当校理学療法学科3 年生26 名に対し、新たに導入した実習指導ツールの使用状況、使用の有用性についてのアンケート調査を集合調査法(自記式)で実施した。アンケート用紙への回答をもって本調査への同意を確認した。

    【結果】回収率100%。上記[1]を概ね使用した学生は50%であり、使用した学生のうち与えられた指示や課題の優先順位付けとして概ね機能したと73%回答した。またSV が与えた指示・指導が誤解なく伝わるツールとして概ね機能したと80%が回答した。上記[2]は90%の学生がほぼ毎日使用し、使用上の困難は概ねないと80%が回答した。

    また今後の実習や学習に概ね役立つと75%が回答した。記載に要した時間は1 時間以内が67%であった。上記

    [3]は70%の学生が担当症例のレジュメ作成過程で使用し、使用方法については概ね理解していたと75%が回答した。統合と解釈の進捗状況を伝える手段として機能したと回答した学生は47%と低い一方、レジュメ作成に概ね機能したと67%が回答した。実習全体を通して実習指導に関連するやり取りがしやすかったと83%が回答し、実習に概ね満足と92%の学生が回答した。

    【考察】To Do リスト、フォーマット化したデイリーノートの使用はSV と学生間のコミュニケーションを促すツールとして一定の有用性を認めた。患者まとめシートは、SVと症例について意見交換するツールとしては機能していないが、自分の考えを整理するツールとしては有用である可能性が示唆された。

    【まとめ】新たな実習指導ツールが学生とSV のコミュニケーションに与える影響について多角的に検証していく。

  • 樋口大輔 , 越後あゆみ
    p. 13-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】本研究の目的を臨床実習に関連するストレッサーを調査・分類し、ストレス度との関連性を明らかにすることとした。

    【方法】ある理学療法士養成校に所属する3 年生および4 年生を対象とした。臨床実習においてストレスを感じた状況(自由記載、最大4 つ)とストレス度(「0 点:まったくストレスを感じていなかった」~「10 点:最大限のストレスを感じていた」)を臨床実習終了後1 週以内に質問紙にて調査した。ストレス状況を職業性ストレス簡易調査票の下位項目

    (心理的負担(量)、心理的負担(質)、身体的負担、対人関係、実習環境、実習のコントロール度、技能の活用度、適正度、やりがい)に準じて分類し、主要なストレッサーの有無でストレス度を比較した。なお、本研究は実施に先立ち倫理審査委員会の承認を得るとともに、対象者から研究参加の同意を得た。

    【結果】77 人(年齢22 歳[中央値];男性51 人、女性26 人;3 年生40 人、4 年生37 人)から回答が得られ(有効回答率100%)、うち70 人がストレス状況を報告した(90.9%)。対人関係がストレス状況としてもっとも件数が多く、3・4

    年生いずれも16 件(3 年生40%、4 年生43.2%)の計32 件であった。次いで心理的負担(量)であり、3 年生が17

    件(42.5%)、4 年生が8 件(21.6%)の計25 件であった。実習のコントロール度、技能の活用度、適正度、やりがいに該当するストレッサーを報告した学生はいなかった。対人関係のストレッサーがあった学生のストレス度の中央値は

    8 点(四分位偏差2 点)、なかった学生のそれは5 点(同2.5 点)であり、有意な差を認めた(p=0.00)。ただし、学年別では、3 年生においては有意な差を認めたが(p=0.00)、4 年生においては有意な差を認めなかった(p=0.33)。

    【まとめ】特に長期臨床実習に初めて取り組む理学療法学生において、対人関係が主要なストレッサーであり、対人関係ストレッサーの有無はストレス反応と関連する。

  • 木島隆
    p. 14-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】臨床実習の目的は、臨床の場面でしかできないことを経験させ、学んだ知識を臨床での業務を通じ統合し解釈することである。しかし、現在の臨床実習の大半はレポート作成に時間を費やし本来の目的が未達成のように思われる。今回、学生時代の臨床実習に行ったことが現在の臨床にどう影響を及ぼしているかを分析し、今後の臨床実習に役立てることを目的としアンケート調査を実施したのでここに報告する。

    【方法】11 施設207 名(男性123 名、女性84 名)の理学療法士にアンケート調査を実施した。経験年数5.16±3.61

    年(平均経験年数±標準偏差:経験年数範囲:1~22 年)であった。アンケート項目は1.臨床実習にレポート作成は必要と思うか、2.もう一度行うとしたら臨床実習か国家試験かとした。項目1.は「はい」「いいえ」のいずれかを、2.は「臨床実習」「国家試験」のいずれかを回答し、それぞれ理由を問うた。なお、調査用紙には無記名であること、統計的に処理され回答が明らかにはならない旨を明記し、アンケートに回答したことを同意とみなした。

    【結果】アンケート回収率は99.0%であった。項目1.に関し「はい」82%(168 名)、理由は「文章能力の向上」や「学生指導に役立つ」などであった。「いいえ」18%(37 名)、理由は「学生・指導者の負担が多い」や「レポートが目的となり本質がみえていない」などであった。項目2.に関し「国家試験」は75 名(37%)、理由は「実習が辛い」や「ストレスが多い」などであった。「実習」は130 名(63%)、理由は「見学や体験を行い自己研鑚したい」などであった。

    【考察】臨床実習はほとんどがレポート作成を必要と考えていた。理由は「文章能力の向上」や「学生指導に役立つ」などであり、本来の臨床実習の目的とは異なるように思われる。また、項目2 の理由で「実習が辛い」や「ストレスが多い」ことからも、現在行われている実習内容を検討する必要があるように思われる。

  • 松田徹 , 井上美幸 , 樋口典男 , 小林好信 , 秋山大輔 , 藤原正之 , 堀川光司
    p. 15-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】当校で新たに導入した実習指導ツール([1]To Do リスト、[2]フォーマット化したデイリーノート、[3]症例レジュメ作成時の患者まとめシート)の有用性について、実習指導者(以下SV)へのアンケート調査から検討すること。

    【方法】2015 年度臨床評価実習SV に対し実習終了直後に、新たに導入した実習指導ツールの使用状況、使用の有用性について質問紙による郵送法で調査した。アンケート用紙への回答をもって本調査への同意を確認した。

    【結果】回収率84%。SV の70%が臨床経験5 年以上であった。新たな実習指導ツールの導入について95%のSV が実習開始時に把握していた。上記[1]を概ね使用した学生は50%であり、能力的に問題の無い学生は非使用であった。使用した学生のうち与えた指示や課題の優先順位付けとして概ね機能したと80%が回答したが、SV の意図した指示・指導が誤解なく伝わるツールとして機能したとの回答は47%と低かった。上記[2]は90%の学生がほぼ毎日使用しており、日々の実習状況の把握に概ね機能したと70%が回答し、学生に与える課題設定の材料として機能したと65%が回答した。上記[3]は70%がレジュメ作成過程に使用したが、使用方法について概ね理解していた学生は55%と少なく、統合と解釈の見える化に機能したとの回答は36%、レジュメ作成の手段として機能したとの回答は

    30%と低かった。実習全体を通して学生指導を概ね行いやすかったと55%のSV が回答した。

    【考察】To Do リスト、フォーマット化したデイリーノートの使用はSV と学生間のコミュニケーションを促すツールとして一定の有用性を認めた。患者まとめシートはレジュメ作成時の統合と解釈の見える化には機能せず、学生の使用方法の理解不足が課題として挙げられた。

    【まとめ】今後は実習指導ツールの運用方法を見直しながら、学生の理解度向上を目指す。

  • 新田智裕 , 時任楓太 , 山本愛 , 宮本謙司 , 三浦麻子 , 田中弥生
    p. 16-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    [目的] 回復期リハビリテーション病棟では、症例の状態に応じて漸増的にリハビリテーション(以下,リハ)を進めるが、個々の運動負荷に見合った栄養摂取が行えていない場合がある.運動負荷と栄養摂取に不均衡が生じた場合、リハ効果が最大限に得られない可能性がある.その中で当院では,2014 年より回復期リハ病棟に入院した整形外科患者を対象に,HMB 含有飲料の飲用が身体の組成,機能,能力に与える影響について効果検証を開始した.現在進行中の研究だが,当院の取り組み紹介を目的に経過報告を行う.

    [方法] 対象は,整形外科疾患で当院回復期リハ病棟に入院した65 歳以上の高齢者である.本研究はヘルシンキ宣言に則り,実験の主旨を十分説明し署名にて同意を得た.研究デザインは,単盲見法による無作為比較対象試験.リハとHMB 含有飲料「Abound」を併用したA 群と,リハと「オレンジジュース」を併用したO 群に対象を振り分けた.現在,A 群8 名(男性:3 名,女性:5 名,年齢:83.5±9.6 歳),O 群7 名(男性:2 名,女性:5 名 年齢:82±6.4

    歳)が研究に参加している.本研究の主評価項目である筋肉量は,In body 660 にてSkeltal Mass Index(以下,SMI) 値を算出.副次項目は,血液検査,MNA,筋厚値,筋力,上腕・下腿周囲長,10m 歩行,FIM の測定を実施.測定は,当院回復期リハ病棟入院後4 週毎及び退院直前に実施した.対象除外基準は,立位保持が困難な者,著しい認知機能障害を認める者,腎機能障害を認める者とした.

    [結果] 本項は経過報告のため,SMI 値の初回平均値と最終平均値及び変化量のみ紹介する.SMI 値は,A 群で

    5.12±1.92kg/m<SUP>2</SUP>→5.24±2.01 kg/m<SUP>2</SUP>となり、概ね2.3%の増加となった.O 群で

    5.42±0.899 kg/m<SUP>2</SUP>→5.48±0.58 kg/m<SUP>2</SUP>となり、概ね1.2%の増加となった.

    [まとめ] 現段階ではA 群の方が,O 群よりも筋量が増大する傾向がある.今後も検討を継続し報告を行いたい.

  • 櫻井貴浩 , 山田学 , 大沼真也 , 小宮里紗
    p. 17-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】平成28 年4 月からの診療報酬改定に伴い,回復期リハビリテーション病棟(以下;回リハ病棟)では,アウトカム評価と実績指数が設定された.宮井らは,回リハ病棟では,高齢者や認知症等のADL 改善が難しい例への関わりが課題の一つとして挙げている.また,2025 年に地域包括ケアシステムの構築に向け,発症から在宅に向け中間施設の役割を持つ回復期とし,地域の医療・介護サービススタッフへ情報発信が必要となってきている.そこで,今回の診療報酬改定に伴い,実績指数計算から除外される可能性のある患者層に絞り実績指数の比較を行った.

    【対象】2012 年9 月1 日から2015 年3 月31 日までに当院を退院した回リハ病棟患者の内,急性増悪等により,急性期病院へ転院した患者を除く,1612 名(運動器算定患者,732 名・脳血管算定患者,841 名・廃用算定患者,39 名)とした.

    【方法】対象を入院時運動FIM(以下;m-FIM)得点20 点以下(以下;i),認知FIM 得点24 点以下(以下;ii),年齢80 歳以上(以下;iii)m-FIM 得点76 点以上(以下;iv)の4 群に分け,これらの分類間で一元配置分析を行い,その後の多重比較には Tukey-Kramer 法を用いた. なお,有意水準は5%未満とし,統計処理にはSPSS を使用した.得られたデータは全て数値化し,個人情報の取り扱いには充分に配慮を行った.

    【結果】・ii の群(54.0±169.9)とiv の群(14.5±25.9)で実績指数に有意差を認めた.・iii の群(49.9±137.8)とiv の群

    (14.5±25.9)で実績指数に有意差を認めた.

    【考察】iv の群と比べてii の群及び,iii の群における実績指数が有意に高いことが示唆された.ii の群とiii の群では,認知機能の低下している患者の層が多く存在していることが考えられるが,m-FIM の改善は見られた.また,m-FIM の得点には上限が有り,天井効果により差が出たことが考えられる.iv の群には,脳血管患者の割合が高く,高次脳機能障害を有する患者の入院期間の長期化が,実績指数低下の一要因に考えられる.

  • 中村慶佑 , 長澤祐哉 , 澤木章二 , 横川吉晴 , 大平雅美
    p. 18-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
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    【目的】我々は、先行研究において起立頻度の増加に対して酸素摂取量が直線的に増加することを確認し、漸増起立運動負荷試験(以下、ISTS)のプロトコールを作成した。本研究の目的は、中高年健常者を対象にISTS の運動耐容能測定法としての再現性を検証することとした。

    【方法】当院職員の中高年健常者 7 名(男性4 名、女性 3 名)を対象とした(平均年齢53.4±4.2 歳)。ISTS(ISTS1, ISTS2, ISTS3)は3 回とし、別日に実施した。反復起立運動は座面高を腓骨頭上縁までの高さとし、上肢でストックを使用しながら実施した。ISTS のプロトコールは最初6 回/分の起立頻度から始まり、45 秒毎に2 回/分ずつ漸増し、最大12 分で終了とした。起立頻度はメトロノームの発信音で調整した。一般的な運動負荷試験の中止基準に準拠した場合、起立動作がメトロノームの発信音から3 動作遅れた場合はその時点で運動負荷を終了した。3 回のISTS の最高酸素摂取量(以下、peak VO2)、運動実施時間を測定した。各施行間の再現性は、級内相関係数(ICC:1,1)(95% 信頼区間)にて確認した。本研究は信州大学医学部倫理委員会の承認を得て実施した。

    【結果】ISTS1 、ISTS2、 ISTS3 のpeak VO2 (ml/min/kg)の平均値±標準偏差は各々23.6±2.6、23.8±2.1、

    23.8±1.8、運動実施時間(秒)は646.3±78.6、657.9±72.7、659.3±67.8 であった。ISTS1-ISTS2 でのPeak VO2 と運動実施時間のICC(1,1)(95%信頼区間)は各々0.92(0.66-0.99)、0.98(0.91-0.99)であり、ISTS2 - ISTS3 は各々

    0.96(0.82-0.99)、0.98(0.94-0.99)であった。

    【考察】ISTS が運動耐容能評価として再現性が高い理由は、心肺運動負荷試験と同様に外部から負荷がコントロールされるexternal-paced test であるためと考えられる。ISTS1-ISTS2 よりも、ISTS2-ISTS3 の方がPeak VO2 と運動実施時間の再現性は高く、中高年者を対象にISTS を実施するには1 回練習をすることで高い再現性が得られることが示唆された。

  • 兎澤良輔 , 川崎翼 , 平野正広 , 高木亮輔 , 柊幸伸 , 中村浩
    p. 19-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】定期的な運動習慣のある中・高齢者における運動頻度の違いが歩行,バランス能力,転倒率におよぼす影響について検討した.

    【方法】対象は,地域の体操教室に参加し,定期的な運動習慣のある中・高齢者50 名であった.平均年齢は72.0

    歳,身長,体重(平均値±標準偏差)は,155.2±7.1cm,54.0±8.5kg であった.測定は,前方・後方歩行速度,前方・後方2 ステップテスト,横歩き時間,Timed up and go test(以下,TUG),Functional reach test(以下,FR)とした.問診にて1 年以内の転倒歴,運動習慣を聴取し,運動習慣が週3 日以下(以下,低頻度群)と週4 日以上(以下,高頻度群)の2 群に分け,各項目において2 標本t 検定およびMann-Whitney 検定を実施した.統計はR2.8.1 を使用し,有意水準は5%とした.本研究は,了徳寺大学生命倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号

    2719).また,対象者にはヘルシンキ宣言に則って研究の説明を実施し,同意を得て実施した.

    【結果】各群(高頻度群,低頻度群)における測定項目の平均値±標準偏差は,前方歩行速度は1.8±0.2 m/s,

    1.9±0.3m/s,後方歩行速度は1.0±0.3m/s,1.2±0.3 m/s,前方2 ステップテストは1.4±0.1,1.4±0.1,後方2 ステップテストは1.1±0.2,1.1±0.2,横歩き時間は5.9±1.3 秒,6.1±1.8 秒,TUG は6.8±1.1 秒,6.6±1.1 秒,FR は32.1±6.3cm,32.0±5.4cm で,すべての項目に有意差はみられなかった.転倒率は高頻度群で15%,低頻度群で7%であった.

    【結論】両群に有意な差はみられないにも関わらず,転倒率は一般的な中・高齢者の値と比較して低い結果となった.これにより,地域の体操教室にて長期的かつ定期的に定められた内容の運動を実施することで,運動頻度に関わらず歩行やバランス能力が保たれる可能性が示唆された.本研究では身体機能のみの検討であった点が限界で

    ある.今後は,認知機能を含めて検討する必要があると考えられる.

  • 上出直人 , 佐々木健人
    p. 20-
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/03/12
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】ハンドヘルドダイナモメーター(HHD)による膝伸展筋力の評価は,高齢者の転倒や要介護状態の発生予測に有用である.本研究は,メタ分析により日本人高齢者のHHD による膝伸展筋力標準値を算出することを目的とした.

    【方法】2015 年8 月までに出版された膝伸展筋力に関する研究論文をPubMed で検索した.検索語には高齢者および膝伸展筋力に関する用語を適宜組み合わせて使用した.論文の採用基準として,60 歳以上,地域在住日本人,自立歩行可能,HHD による膝伸展筋力値の記載,など全8 項目を設定した.採用した論文からHHD による膝伸展筋力のデータを抽出し,変量効果モデルを用いて標準値を算出した.なお,標準値は筋力実測値とトルク値の両者について算出した.さらに,標準値に対する系統的バイアスをメタ回帰分析で検討した.有意水準は5%未満と

    した.なお,本研究は文献研究のため該当する倫理指針はない.

    【結果】3,320 論文が検索され,採用基準を満たした21 論文50 データを解析に採用した.対象者数は合計11,773

    名(男性4,259 名,女性7,514 名),年齢は60~90 歳代であった.解析の結果,膝伸展筋力標準値は男性

    313.8[281.0-346.7](N),女性206.6[164.1-249.0](N)であった.また,膝伸展筋力トルク値の標準値は男性

    84.9[63.1-106.7](Nm),女性51.8[46.6~56.9](Nm)であった.標準値に対する系統的バイアスとしては,男性では年齢と使用機器の違い,女性では使用機器の違いにおいて有意に標準値が変動した(p<0.05).

    【結論】本研究により,HHD による膝伸展筋力の標準値を得ることができた.一方,年齢や使用機器の違いにより標準値は変動することから,評価の際には,対象者の年齢や使用機器に留意して標準値との比較をすることが重要で

    ある.

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